提言・オピニオン

東京都墨田区で野宿者襲撃が10分に1に減少

提言・オピニオン

東京都墨田区で、当事者と支援団体の要望に応える形で「ホームレス問題の授業」が教育委員会主導で始まったことは、以前にもお知らせしましたが、山谷労働者福祉会館活動委員会によると、今年に入って、区内での襲撃件数が10分の1まで減少しているとのことです。

活動委員会が野宿の当事者向けに配布しているチラシの文面を転載する許可をもらったので、以下に貼り付けます。

関連記事:「ホームレス問題」の授業が墨田区教育委員会の主導で始まりました

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この夏、墨田区で野宿者襲撃を10分の1に減らせることができた!

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野宿している仲間に対する暴力は最も卑劣な行為だ。石を投げる、ペットボトルを投げる、ダンボールを蹴るといった暴力を多くの仲間が受けている。

繰り返される襲撃に「襲撃を止めなくては」と立ち上がった仲間と共に取り組みを続けてきた。見張りをやったり、襲撃者を追いかけたり、写真をとったり。その中で2年続けて襲撃の加害者が明らかになり、2件とも墨田区立中学の生徒だった。どちらもグループで何度も襲撃を繰り返していた。

墨田区と団体交渉を何度も持った。はじめは他人事のようだった人権課、教育委員会。なぜ野宿者に暴力をふるうのか。「おもしろ半分」 いやちがう。その子らは一般の大人を襲うことはしていない。野宿者だから襲ったのだ。そこにはっきりとした差別意識がある。そこを直視しなければ襲撃は決して止められない。

差別意識の原因を掘り起こすと野宿する人のことを生徒も親も教師も知らないということが浮かび上がってきた。

どんな仕事をしてきたのか。どうして野宿になったのか。今どうやって生き抜いているのか。何も知らずに「怠けもの。いてはいけない人」などと思い込んでいることがわかった。役所の追い出しやアルミ缶仕事に対する条例を作ったことも偏見の原因を作っていることも。

墨田区教育委員会がようやく本腰をいれ取り組みをはじめた。この夏休み前に区内の全ての小中学校で「野宿者を知る」授業が行われた。ある小学校には区内で野宿する仲間が授業に行って自分の暮らしについて話した。10代からペンキ屋として働きその後日雇い労働者の土方になった。ドロドロになりながら基礎工事の穴掘りの仕事をやってきた。50代でバブルの崩壊、年齢制限で仕事に就けなくなりドヤに泊まれなくなった。今もアルミ缶を拾いながら小屋で暮らしている。

子供たちの感想は「大変な暮らしをしているのを知らなかった」「絶対石を投げてはいけないと思った。」

この夏墨田区内の襲撃は激減した。(わかっているだけで区内の夏の襲撃件数は2012年28件、2013年20件、2014年3件)「野宿者襲撃は問題にもならない。」そんな現状に対し立ち上がった仲間たちのねばり強いとりくみの成果だと確認したい。

墨田区が引き続き本気で取り組んでいくこと、墨田区だけでは問題は解決しないので台東区をはじめ他の区や東京都もきちんととりくみを始めることが必要だ。

襲撃を根絶するまでがんばっていこう。

山谷労働者福祉会館活動委員会
山谷争議団/反失実

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墨田区では大きな成果をあげることができましたが、野宿者への襲撃が発生しているのは墨田区だけでなく、他区にも広がっています。
これは本来、東京都が対応すべき問題であり、現在、都内の複数の支援団体で、東京都に対しても具体的な襲撃防止策の実施を求めて要望をしているところです。
ところが、都の対応は8月に舛添都知事が「対策を徹底する」と記者会見で公言したにもかかわらず、担当者レベルでは具体的な動きが未だに出てきていません。

関連記事:舛添都知事が野宿者襲撃への対策を徹底すると表明!実効性ある対策を求めます。

引き続き、東京都に対しても粘り強く働きかけをしていくので、こちらもご注目をお願いします。

 

住宅政策という「パンドラの箱」を開けよう!

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昨年8月から始まった生活保護の生活扶助基準の段階的引き下げにより、生活保護利用者の暮らしはますます厳しくなっています。

厚生労働省はそれに追い討ちをかけるように、住宅扶助基準(賃貸住宅の家賃分に相当)の引き下げも狙っています。社会保障審議会の生活保護基準部会では、今年に入り住宅扶助に関する議論が急ピッチで進んでおり、今年11月に報告書をとりまとめる方針だと言われています。

これに対して、生活保護問題対策全国会議と住まいの貧困に取り組むネットワークが中心となり、7月9日に「生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する共同声明」を発表し、記者会見をおこないました。

9月15日(月)には、この問題に関する緊急集会も開催されます。

9月15日(祝) “低きに合わせる”のが、この国の生存権保障なのか?~次に狙われる住宅扶助基準と冬季加算の削減

厚生労働省は今年の7月、「生活保護受給世帯の居住実態に関する調査」を実施しました。これは各地の福祉事務所ケースワーカーが生活保護世帯を家庭訪問した際に、住居の状況(家賃、面積、設備など)を調査するというもので、「近隣同種の住宅等の家賃額と比較して、明らかに高額な家賃が設定されている」という疑いがあるかどうかについても調べているようです。

この調査結果はまだ公表されていませんが、厚労省が「生活保護世帯は一般の低所得者世帯よりも高額な家賃の住居に居住している」という調査結果を導き出し、「だから、住宅扶助基準は下げるべき」という方向に議論を誘導しようとしているのは火を見るより明らかです。

しかし、ここで考えなければいけないのは、「なぜ生活保護世帯が割高の家賃のところに住まなければいけないのか」という問題です。生活保護の利用当事者にとって、住宅扶助費は受け取った額をそのまま大家に払うので、その金額が高くても本人には何のメリットもありません。

私はNPOもやいで多くの生活保護利用者のアパート入居の支援(連帯保証人や緊急連絡先の提供)を行なってきましたが、何人もの方から「不動産屋を何軒もまわっても、自分の年齢を言うと貸してくれない」という話を聞いてきました。

本来、住宅に困窮している人たちのためにある制度が公営住宅です。しかし近年、各地の自治体は財政難を口実に公的住宅の数を抑制・削減してきました。東京でも1999年以降、都営住宅が増えていません。

そうした中、ほとんどの生活保護利用者は民間のアパートを借りざるをえません。ところが、日本の民間賃貸住宅市場では、高齢者、障がい者、失業者、ひとり親家庭などに対する入居差別が蔓延しており、こうした人々が多い生活保護利用者はなかなか部屋を借りることができません。

そのため、住宅扶助基準の上限額を払って、ようやく貸してくれるところを確保するという状況が広がっているのです。地域によっては、上限額を払っても貸してくれるところがないため、「管理費」や「共益費」の名目で数千円を上乗せして、部屋を借りている人もたくさんいます。

厚生労働省が、生活保護利用者が暮らす部屋の家賃が「割高」であることを問題にしたいのなら、こうした実態こそ改善すべきなのです。

今回の住宅扶助基準をめぐる議論は、住宅政策を管轄する国土交通省とは全く無関係に進められようとしています。

国土交通省が今年7月に発表した「貸しルーム入居者の実態調査」はインターネットを使って、各地のシェアハウスに暮らす人びとの生活や就労の実態を調べたものですが、その中で興味深いのは、「狭小・窓無し物件」に暮らす人のデータをピックアップして公表していることです。

「狭小・窓無し物件」というのは、「部屋が7㎡未満」か、「窓のない」のいずれか、両方を満たす物件ということなので、事実上、「脱法ハウス」と言えます。

この「狭小・窓無し物件」に暮らす人の半数は15万円未満で、やはり低所得者が多いのがわかります。

狭小・窓無し収入

しかも、驚くべきは入居時に生活保護を受けていたという方が11%もいることです。生活保護を利用しているにもかかわらず、「脱法ハウス」に暮らしていると考えられます。

狭小・窓無し物件

厚生労働省は、国土交通省が発表したこの調査結果をどう考えるのでしょうか。

こうした実態に目を向けず、住宅扶助の金額だけを下げてしまえば、生活保護利用者はさらに劣悪な住まいへと追いやられてしまうでしょう。

生活保護の住宅扶助に関する議論を真面目にしたいのであれば、厚生労働省と国土交通省という省庁の縦割りによって議論が封印されてきた「日本の住宅政策のあり方」という「パンドラの箱」を開けるべきだと私は考えます。

貧困ジャーナリズム大賞2014発表!生活保護問題に挑む書き手たち

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9月4日、反貧困ネットワーク(代表世話人・宇都宮健児弁護士)は、「貧困ジャーナリズム大賞2014」の受賞作品13点を発表しました。

「貧困ジャーナリズム大賞2014」受賞者一覧

7回目となる今年の大賞は、ダイヤモンド・オンラインの長期連載「生活保護のリアル」などインターネットを中心に生活保護問題を発信しているフリージャーナリストのみわよしこさんと、下野新聞で半年にわたる連載「希望って何ですか 貧困の中の子ども」を報じた「子どもの希望」取材班に贈られました。

また、『陽のあたる家~生活保護に支えられて』を描いた漫画家のさいきまこさんとNHK(Eテレ)の「ハートネットTV」取材班に貧困ジャーナリズム特別賞が贈られました。

『陽のあたる家』は、普通に暮らしていた一家が父親の病気をきっかけに生活に困窮し、生活保護を利用しようとしたらどう扱われるのかをテーマにした作品で、生活保護制度の基礎知識や生活保護バッシングの問題点などをわかりやすく描いています。

 

『陽のあたる家』から。

『陽のあたる家』から。

作者のさいきさんは、NPO法人もやいの生活相談活動にもボランティアとして参加され、その経験が作品の中でも生かされています(「水際作戦の撃退法」も!)。

まだの方はぜひご一読ください。

貧困ジャーナリズム賞(9点)でも、生活保護基準引き下げや法「改正」の問題点を鋭く突いた東京新聞の上坂修子さんの一連の報道やTBS「報道特集」の生活保護報道が選ばれました。

また、連載が始まってまもないので、今回はノミネートされませんでしたが、「週刊ビッグコミックスピリッツ」では、柏木ハルコさんの話題作『健康で文化的な最低限度の生活』が現在連載されており、9月3日には単行本の第1巻が刊行されました。

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こちらは、福祉事務所の新人ケースワーカーが直面する生活保護行政の実態が非常にリアルに描かれています。

柏木ハルコさんはこの連載を始めるにあたり、各地の福祉事務所や民間の相談機関に徹底した取材をされています。NPO法人もやいにも取材に来られ、私も何度もお話をしました。

「スピリッツ」で連載中のお話がどのように展開していくのか、とても楽しみです。

近年、生活保護制度や利用者への誤解や偏見に基づく報道が各マスメディアで垂れ流される中、少数ながらも、生活保護をめぐる「本当の問題は何か」という点に着目して、発信するジャーナリストや著述家、漫画家の方がいらっしゃるということは、私にとっても大きな希望になっています。

*関連記事:相対的貧困率が16.1%、子どもの貧困率が16.3%に上昇

舛添都知事が野宿者襲撃への対策を徹底すると表明!実効性ある対策を求めます。

提言・オピニオン

8月14日、NPO法人もやい、山谷労働者福祉会館活動委員会、ひとさじの会など、都内の野宿者支援団体9団体は連名で、「野宿者襲撃への対策を求める要望書」を東京都に提出しました。

都内各地で野宿をしている人たち347人を対象に実施したアンケート調査で、「40%の人が襲撃を受けた経験がある」、「襲撃は夏季に多く、襲撃者(加害者)の38%は子ども・若者である」といった事実が判明したことから、「都としても実態調査をおこなうこと」、「都民にむけて広報・啓発活動をおこなうこと」、「学校教育において野宿者への正しい理解をうながす教育プログラムを策定し、実行すること」、「襲撃を受けた野宿者が訴えでた場合は必要な保護をおこない、再発防止に向けた協議の場をもつこと」を求めたのです。

関連記事:野宿者襲撃の実態に関する調査結果を発表。都に申し入れを行いました。

東京都の各部局との話し合いの場には、野宿の当事者も参加し、被害の実情を訴えましたが、都の各担当者は「持ち帰って検討します」と言うばかりで、今後の動きに期待できるような対応ではありませんでした。

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東京都の担当者に要望書を提出。

東京都の担当者に要望書を提出。

しかし、このニュースが各マスメディアで大きく報道された影響もあったのか、翌日(8月15日)に動きがありました。

舛添都知事が定例記者会見の場で、野宿者襲撃問題への対応を質問され、「対策を徹底する」と答えたのです。

NHKニュース:ホームレス襲撃問題 対策徹底へ

東京都庁のウェブサイトに掲載された舛添知事の記者会見録によると、舛添知事の発言は以下のとおりです。

【記者】毎日新聞の竹内と申します。昨日、市民団体の発表で、都内でですね、ホームレスの方が襲撃された経験があるというのは4割だと。うちですね、また約4割ぐらいが子供とか若者に襲われたという調査結果が出ているということです。都にも調査を求めてますけど、今後、都としてこういう問題にですね、どう取り組まれるのでしょうか。

【知事】そういう誰に対しても暴力というのは決してやってはいけないことだと思いますし、特にホームレスの方々という、ある意味では弱い立場にある方に対して暴力振るうというのは決してやってはいけないと思います。特に若い人たちが加害者になるというのは、これは教育現場の問題でもありますので、教育の現場でも、今までもずっと都の教育委員会を中心にやってきておりますけど、しっかりと徹底したいと思っています。
 それから、いろいろな事情があってホームレスになられたのだと思いますけれども、できれば1日も早くホームレスから脱却していただきたいということで、都のほうはそれぞれの区とですね、一緒になって定期的な巡回活動をして、聞き取りをしたり、一時的な宿泊場所の提供とかいろいろなことをやってますので、今後ともこれを継続的に続けてやっていきたいと思っております。
 今申し上げましたように、直接声をおかけして、例えば新宿、隣の中央公園にもブルーテントがありますけど、そういう所に直接行って、直接ホームレスの方に声かけして、どうですかと。状況を聞いて、例えばこういう仕事を探されたらどうですかと、こういうところありますよということをですね、都の職業紹介場所として飯田橋にあるところを紹介したりというようなこともやりたいと思っています。
 それから、やはり人権週間とかイベントにおいて、こういう啓発活動をやっていきたいと思っております。非常にこういう暴力というのは、何か陰湿な感じがしますし、決してあってはならないので、全力を挙げてこういうことがないように、都としてもこれまでもやってきていますけども、継続的にこういう活動を続けていきたいと思っています。

私たちとしてはこの動きを歓迎し、都知事の発言が「リップサービス」に終わらないよう、実効性のある対策を求めていきたいと考えています。

野宿者への襲撃を止めるための教育プログラムは、川崎市では1990年代半ばから実施されてきました。また今年に入り、東京都墨田区でも当事者や支援団体の働きかけに応じる形で、墨田区教育委員会が襲撃事件の再発防止プログラムを区内の全ての小中学校(小学5年~中学3年の全学年が対象)で実施しています。

関連記事:「ホームレス問題」の授業が墨田区教育委員会の主導で始まりました

川崎市でも墨田区でも、プログラムが形だけのものにならないよう、野宿の当事者や支援者と話し合いを重ねながら具体的なプログラム内容を詰めていきました。

私もこの5月から7月にかけて、墨田区教育委員会の教職員研修に3回にわたって呼ばれ、「子どもに『ホームレス』をどう伝えるか」をテーマにレクチャーをしてきました。そして、襲撃が多発する夏休み前に、区内の全ての小中学校で襲撃の再発防止を目的として授業が実施されたのです。

こうした取り組みの結果、川崎では襲撃件数を激減させることができ、墨田区でも今年の夏休みには今のところ襲撃が報告されていないと聞いています。

また、民間では私も理事を務める「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」が学校の先生たちにも協力してもらいながら、学校の授業で教材として使えるDVDや資料集を制作してきました。

舛添都知事や都教育委員会の関係者にまず取り組んでいただきたいのは、こうした先駆的な事例に学ぶことです。
そのために私たちも民間の立場で協力をしたいと考えています。

襲撃をなくしていくためには、継続的な取り組みが必要とされます。
ぜひ引き続き、多くの方のご注目、ご支援をお願いいたします。

関連記事:子どもたちと野宿者の出会いの場をつくる(2001年)

関連記事:中学生のみなさんへのメッセージ(2003年)

関連サイト:生田武志さんのウェブサイト「野宿・貧困問題の授業を行なっています」

野宿者襲撃の実態に関する調査結果を発表。都に申し入れを行いました。

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6月28日から7月14日にかけて、東京都内の野宿者支援団体、生活困窮者支援団体が合同で、野宿者への襲撃の実態に関するアンケート調査を実施しました。

新宿、渋谷、池袋、上野、浅草・山谷地域など都内各地で野宿をしている347名の方に聞き取りをした結果、以下のような衝撃的な事実が明らかになりました。

・40%の人が襲撃を受けた経験あり。

・襲撃は夏季に多く、襲撃者(加害者)の38%は子ども・若者。

・襲撃者は75%が複数人で襲撃に及んでいる。

・襲撃の内容としては、なぐる、蹴るなどの「身体を使った暴力」やペットボトルやたばこ、花火などの「物を使った暴力が62%を占めている。

・子ども・若者の襲撃は「物を使った暴力が53.6%にのぼる。

この結果を受け、本日(8月14日)、NPO法人もやいなど9団体の連名で東京都知事、東京都教育委員会、都人権部、都福祉保健局に対して、実態の把握と人権教育・人権啓発の強化などを求める申し入れをおこないました。

調査結果の詳細と要望書の内容は、NPO法人もやいのブログをご覧ください。

もやいブログ:野宿者襲撃の実態と東京都への申し入れについて

2014-08-14 11.26.00

申し入れの後は都庁記者クラブで記者会見を行いました。

記者会見の文字起こしは以下のページで公開されているので、ぜひご一読ください。

シノドス:襲撃されるホームレス――聞き取り調査からみえてきた襲撃の実態

申し入れと記者会見には、都内で野宿生活をおくる当事者も参加し、発言しました。

墨田区内で野宿をしている60代の男性は「中学生が5~8人のグループでやって来て、ロケット花火を打ち込んだり、石を投げてくる。小石だけではなく、縁石を割った大きなかけらを投げられたこともあり、毎日、『今晩も来るんじゃないか』という不安を感じている。ノイローゼで眠れなくなってしまった」と述べていました。

また、「墨田区教育委員会が襲撃の再発防止教育を始めた影響があるか」という点については、「この夏休みはまだ襲撃が来ていない」ということでしたが、「夏休みが終わるまでは気を緩めることはできない」とも話していました。

*関連記事:「ホームレス問題」の授業が墨田区教育委員会の主導で始まりました。

記者会見への各メディアの注目は高く、各新聞やNHKなどで報道されました。

毎日新聞:ホームレス:4割が襲撃された経験

朝日新聞:ホームレス4割「襲われた経験ある」 都内で調査

NHKニュース:路上生活者の4割が襲撃受けた経験

私たちの申し入れに対して、東京都の各部局の対応は「持ち帰って検討します」という官僚的なもので、前向きな姿勢があまり見られませんでした。

後日改めて今回の要望に対する検討結果を聞く機会を持ちたいと思いますが、ぜひ皆さんからも都教委や各部局に対する働きかけをしていただければと思います。

襲撃をなくしていくための取り組みにご注目、ご支援をお願いいたします。

関連サイト:ホームレス問題の授業づくり全国ネット

 

生活保護基準引き下げに対する集団訴訟が各地で始まります。

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昨年8月1日、生活保護の生活扶助基準の第一弾引き下げが行われました。

今年4月には第二弾の引き下げが行われ、来年4月には第三弾の引き下げが予定されています。

最初の引き下げからちょうど1年にあたる今日、埼玉県で25人、三重県で28人の生活保護利用者が基準引き下げの違法性・不当性を問う集団訴訟を提訴しました。

これにあわせて、東京の厚生労働記者会でも、訴訟のとりまとめを行なっている「生活保護基準引き下げにNO! 全国争訟ネット」が記者会見を行いました。

私もこの記者会見に参加し、発言をさせていただきました。

すでに提訴している佐賀県、熊本県、愛知県を加えると、5県で訴訟が始まることになります。

【関連記事】中日新聞(7月31日):生活保護引き下げは「違憲」 愛知の16人提訴

この5県に引き続き、少なくとも23都道府県で提訴が準備・検討されています(詳しくは画像をご覧ください)。

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今年の夏は「冷夏」の長期予報が外れ、猛暑日が続いています。

生活保護世帯には高齢者や障がい者、病気を抱えている人も多く、生活保護基準が引き下げられたことにより、こうした人たちがエアコンの電気代を捻出するのが難しくなっています。

生活保護基準の引き下げが健康悪化につながっているのです。

また、生活保護基準はナショナルミニマムとして様々な福祉制度と連動しています。そのため、生活保護基準が下がることで他の制度を利用できる所得制限の上限も下がり、制度が縮小してしまうことが懸念されてきました。

現実に、全国で約157万人が利用している就学援助制度では、生活保護基準の引き下げにより、全国71の自治体(全体の4%)で影響が出ていることが文部科学省の調査で明らかになっています。

しかも、文科省に「影響は出ない」と回答した自治体の中にも、昨年度受けていた子どもが今年度、制度から外れないように対応しているだけのところが多く、来年度以降は基準が下がってしまうと考えられる自治体が全国に318自治体(18%)もあります。

このように、生活保護基準の引き下げは国による低所得者対策全体を地盤沈下させてしまうのです。

その意味で、生活保護基準引き下げに反対する集団訴訟は、生活保護利用者の生命や健康を守るだけでなく、この社会における貧困の拡大に歯止めをかける、という意義もあると私は考えています。

ぜひ各地でおこなわれる訴訟にご注目、ご支援をお願いいたします。

「ホームレス問題」の授業が墨田区教育委員会の主導で始まりました

提言・オピニオン

昨日(7月30日)、日本経済新聞に「路上生活者の姿知ろう 東京・墨田、全区立小中で『特別授業』」という記事が掲載されました(共同通信配信記事)。

若者が路上生活者(ホームレス)を襲う事件をなくそうと、東京都墨田区は全ての区立小中学校で、路上生活者について学ぶ取り組みを6月に始めた。野宿生活を送る人を「ゲスト教師」として招いた学校もある。

記事では、墨田区立曳舟小学校の6年生の授業で、山谷労働者福祉会館活動委員会の向井宏一郎さんと野宿の当事者お二人が話をした様子が描かれています。

こうした授業が実現した背景には、支援者と当事者による粘り強い働きかけがあります。

中高生らが路上生活者を襲撃する事件は東京都内各地で発生していますが、墨田区では加害者が区内の中学生であると判明したケースが複数ありました。

そのため、山谷労働者福祉会館と当事者の有志が中心となり、2年以上にわたって墨田区教育委員会や墨田区の人権課に働きかけを行なってきました。

2012年の夏には、『墨田区で暮らす若者のみんなへ』へというチラシを配布して、地域への若者への訴えもおこなっています。以下はそのチラシからの引用です。

小屋や人に石を投げたり花火を打つことについて、やった人は軽いいたずらのつもりだったかも知れない。でも、テントは私たちの家だし、石が当たればケガもします。そんなことをした少年たちに、私たちは怒っているし、自分や仲間の身は守らなければなりません。みんなも、自分の家に石を投げられたらどんな気持ちがするか、考えてみてほしい。

こうした働きかけがあって、今年春、墨田区教育委員会は重い腰を上げ、区として「人権課題『路上生活者』に対する指導方針を作成し、襲撃の再発を防止する指導プログラムを開発する」という方針を決めました。

その方針に基づいて、襲撃が多発する夏休み前に区立の全ての小中学校で「ホームレス問題の授業」を実施することが決まったのです。

「ホームレス問題を子どもたちにどう教えるのか」という点については、私も理事を務める「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」で実践を積み重ねてきました。同ネットでは、教材として活用できるDVDや書籍も制作・販売しています。

墨田区の小中学校で授業を実施するにあたり、墨田区教育委員会から私に依頼があり、5月以降、3回にわたって教職員研修の場でホームレス問題の授業実践についてレクチャーを行なってきました。

教職員研修ではDVDや書籍の紹介もしたのですが、私が一番強調したのは「差別や偏見をなくすために一番重要なのは直接、顔を見て話をすること。子どもたちと路上生活の当事者が直接出会える機会を作ってほしい」ということでした。

今回、曳舟小学校が当事者を授業に呼んで、子どもたちと直接対話する、という授業をおこなったのは、とても良かったと思います。

共同通信の記事では、墨田区教育委員会の担当者にもインタビューをしています。

墨田区教委指導室の岡本賢二・統括指導主事は「これまでは近づくな、かかわるなと『遠ざける』指導をしてきたが、襲撃事件が起きた。路上生活をしている人たちを正しく理解することが大切だと考え、方向転換した」と説明する。ただ効果が生まれるかどうか、「検証はこれから」(岡本さん)という。

北村年子さんの『「ホームレス」襲撃事件と子どもたち』という本に詳述されていますが、川崎市では90年代半ばに教育委員会主導で同様の授業実践をおこない、襲撃件数を激減させた、という実績もあります。

ぜひ墨田区でも実践と検証を積み重ねてもらいたい、そして他の地域でもこうした取り組みが広がってほしいと願っています。

 

国立競技場建て替えに伴う都営住宅立ち退き問題で、舛添都知事に再考を求める要望書の提出と記者会見をおこないました。

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国立競技場建て替えに伴う都営住宅立ち退き問題で、「霞ヶ丘アパートを考える会」は、本日舛添都知事に再考を求める要望書と居住者の方へ行ったアンケートを提出し、14時半から都庁記者クラブで記者会見を行いました。20140715194925

●霞ヶ丘アパートを考える会
●要望書とアンケートはこちら(PDF)

相対的貧困率が16.1%、子どもの貧困率が16.3%に上昇

提言・オピニオン

厚生労働省が本日(7月15日)、「平成 25 年 国民生活基礎調査の概況」を発表しました。

厚生労働省ウェブサイト:平成25年国民生活基礎調査の概況

ここでは、貧困に関わる指標を見ていきたいと思います。

2012年の相対的貧困率は16.1% 前回(2009年)と比べて0.1%アップしています。

子ども(17歳以下)の貧困率も16.3%になりました。前回は15.7%だったので、0.6%アップしたことになります。

貧困率年次推移

 

特に、ひとり親家庭の貧困は深刻で、貧困率は54.6%になりました。こちらも3.8%上昇しています。

 

貧困率年次推移グラフ

 

主観的にも、生活が「苦しい」と答える世帯が増えており、「普通」と答える世帯の割合がどんどん減ってきています。

 

生活意識の年次推移

1世帯当たり平均所得金額も537万2 千円(2012年)と、前年に比べて2%減少しています。

これらのデータは、日本社会における貧困の拡大にストップがかかっていないことを示しています。

政府は現在、昨年成立した「子どもの貧困対策法」に基づく「子供の貧困対策に関する大綱」をまとめつつありますが、給付型奨学金制度の創設など、子どもの貧困対策を進めるだけでなく、生活保護基準引き下げなどの社会保障削減策を撤回し、総合的な貧困対策に乗り出すべきだと考えます。

 

生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する記者会見を行いました

提言・オピニオン

本日(2014年7月9日13時~)、厚生労働記者会において、生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する記者会見が行われました。kaiken

●プレス向け告知・主な発言者一覧はこちら
●共同声明(全文)はこちら

会見の冒頭「生活保護の住宅保護基準引き下げの動きに反対する共同声明」の趣旨説明をした稲葉剛の発言と、身体障がいをもつ生活保護利用当事者として登壇された川西浩之さんの発言を以下に書き起こします。

稲葉剛


hatugen01よろしくお願いします。
「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の世話人で、「生活保護問題全国対策会議」の幹事も務めております稲葉と申します。
私からは生活保護の住宅保護基準引き下げの動きに反対する共同声明の内容についてご説明させていただきます。
お手元に共同声明の文章があるかと思いますが、それと基準額の一覧表がついた資料がありますので、あわせてご覧ください。

ご存知のように厚生労働省の社会保障審議会、生活保護基準部会で現在生活保護基準をめぐる議論が急ピッチで進められております。
基準部会では昨年一月に、まず生活扶助の基準について引き下げを容認する報告をまとめ、それに基づいて昨年8月から生活保護基準の段階的な引き下げが始まっております。
今年の4月にまた、第二段の引き下げが行われておりますが、その後基準部会では、今度家賃分にあたる住宅扶助に関する議論が進められております。

今年の5月16日には第17回の部会、30日には第18回の部会、一ヶ月の間に二度も部会が開催されるという状況になっていて、今後スケジュールと致しましては、7月以降調査を進めて、11月にはとりまとめを行うというような流れになっております。
7月以降には生活保護を受けている世帯の居住実態に関する調査を行うということで、細部について部会の中で作業部会を作って細部を詰めた上で実施して、その報告を受けて11月には取りまとめを行い、おそらく来年度から住宅保護基準の引き下げという動きになっていくのではないか、と推測しています。

こうした動きに対して反対するための共同声明を本日発表したわけですけれども、さまざまな問題点があるといえます。
まず、最初から、これは生活保護基準の時も同様のことがあったんですが、厚労省の方で最初から引き下げありきという形で議論を誘導しているのではないか、ということです。
たとえば第17回の部会の中では、財務省の財政制度等審議会の資料がそのまま出されているのですけれども、そこに「住宅保護基準の水準」ということで、生活保護基準の基準額と一般低所得世帯の家賃実態の棒グラフの比較がありまして、住宅保護基準が4.6万円、一般低所得者世帯の家賃実態が3.8万円ということで、わざわざグラフのところに「住宅保護基準の方が2割程度高い」というような指摘がなされています。

ただ、これを細かく見てみますと、住宅保護基準の方は、これは地域ごとに住宅保護の基準が定められてまして、これは上限額なわけですね。
あとで述べますように、特に大都市部においては住宅保護基準の上限額に家賃が擦り寄ってしまうという傾向はあるのですが、それでも実際は全ての生活保護世帯の方のアパートの家賃が全て上限額ということはありえないわけです。上限以下の方もたくさんいるわけです。
にもかかわらず、上限額と、一般低所得者世帯の家賃の平均額を比較するというのはミスリーディングではないかということが、実際部会の委員からも指摘が出ています。
これはあきらかに引き下げありきの方向に議論を誘導するものではないか。
おそらく財務省側からのいろんな圧力等もあるんじゃないかと予測していますけれども。

2つ目の問題点として、第18回の部会の中では住宅扶助に関する主な論点というものがまとめられています。
その中で最低居住面積水準に関する考え方というものも、いくつか出ています。
部会の資料の中において、質問の形で、住宅保護特別基準額の妥当性を検証するにあたって、健康で文化的な最低限度の住生活を営むことができる住宅かどうかを見るための基準・尺度は、住生活基本法に定められている最低居住面積でよいか、という、わざわざ質問にしてあって、その下に米印として、全国の民間借家で約三分の一の世帯でこの水準が未達成な状況にあると書いています。
さらに資料では、最低居住面積以下の世帯はどれくらいいるか、というデータが出ておりまして、全国の民間借家で約三分の一、東京の民間借家で四割を超えていると、わざわざこういう資料を出しているということでして。
これはあきらかに一般低所得者の世帯で、最低居住面積を割っているところが多い、だから、そうした基準というのは考慮しなくてもいいんだ、という方向に議論を誘導しているのではないかな、と考えております。

そもそも最低居住面積水準というのは、国土交通省のほうで定めている水準になります。
住宅政策に関しては、これは縦割りの問題があるんですけど、厚生労働省じゃなくて国土交通省の管轄ということになって、2006年以降、年によってこの基準は変わっていきますが、2006年度以上の基準についてはですね、単身で25平米以上というような基準が作られています。
2011年に閣議決定された住生活基本計画の全国契約の中でもですね、この最低基準面積水準の住宅については、早期に解消するようにということが指標として定められていると。
このように国土交通省で策定をして、国・政府として閣議決定をした指標を、こともあろうに厚生労働省が有名基準化してもいいんだ、そういう基準というのは無視してもいいんだ、といわんばかりの方向に議論を誘導している、というは、非常に由々しき事態ではないかと、考えています。

この最低居住面積水準というのは、今回は生活保護に関して議論が進んでおりますが、たとえば公営住宅であるとか、たとえば行政が民間の改修費の補助を出す際のさまざまな基準としても活用されているということで、こうした基準を有名無実化する、ないがしろにするということは、生活保護世帯だけではなくて、社会全体の住まいの貧困化、住まいの貧困の悪化、ということを招くのではないか、と考えております。

三点目の問題点と致しまして、今後、前回の第18回部会で話されてましたが、委員の一部によって作業部会を設置すると。そして生活保護世帯の居住実態に関する調査を行うとなっているわけですけれども、その作業部会は、この場合委員長が指名するということをいってましたけれども、その議論というのは非公開になっているということですので、検証がなかなか出来ない、出てきた時には結果が出てしまって、その後の流れが決まっていく、ということになっていくのではないかな、と思っております。これも問題であろうと思っております。

おそらく、この作業部会が行われて、そして生活保護世帯の居住実態の調査が行われると。
これは各地域で福祉事務所のケースワーカーが生活保護世帯を家庭訪問して、それで居住の状況、住環境を調査すると。そして、その中にはたとえばそのアパートの家賃や居住環境というものが、その地域の一般の低所得者世帯と比較してどうなのか、ということも含めて調査する、と。
部会の中では、それを本当にケースワーカーが調査する力があるのか、ということにも疑問の声が上がってましたが。そういう風な調査をするというような内容になっています。

一般低所得者世帯の住宅と比べた時にですね、おそらく生活保護世帯の方が同じ居住環境にあったとしても、割高の住宅に暮らしているというような結果が出るのは、ほぼそうなるであろうという風に予測しています。
というのも、生活保護世帯が暮らしている民間の賃貸住宅が従来の家賃水準よりも高めになってですね、それぞれの地域の住宅扶助の基準の上限額に近づいていくということが、さまざまな関係者から指摘されています。
私自身もずっと、NPOのもやいで生活保護世帯の方々のですね、アパートの保証人提供を行ってきたので、東京における生活保護世帯の方々の居住実態は知っているんでけれども、単身の高齢者の方とかですね、障がい者の方、一人親家庭の方、あるいは外国籍の方、こうした方々が生活保護世帯に多いのですが、そうした方たちに対する居住差別・入居差別というのが、かなり根強くあります。
そのために、借りる側からとするとオーナーさんや不動産業者から本来4万円とか、4万5千円で取引きしている・されている物件を紹介されても、でもオーナーや不動産業者からは、たとえば東京の場合上限額が5万3700円ですから、「ここは5万3700円なら貸しますよ」と言われてしまうとですね、入居者の側は交渉力がありませんので、他に不動産業者をまわっても断られてしまうという状況の中で、結局その家賃額を飲まざるをえないと、いうような状況があります。

さらに、社会的孤立の問題もあってですね、人間関係が切れてしまっている、親族・身内に保証人が頼めないという場合はさらに条件は不利になってきますので、そういう入居差別の問題ですね、民間の賃貸住宅における入居差別が結果的に生活保護世帯の家賃を割高にさせているという状況があります。
数字だけ見ると一般低所得者世帯より高いところに住んでいるじゃないか、という議論になりがちですが、その背景にはそのような問題があることを知っていただければと思います。

しかも、現在における住宅扶助の基準は十分であると思っておりません。
たとえば東京の場合は5万3700円、障害があったり複数世帯だったりすると6万9800円というようになっておりますが、地域によってはこれでも適切な住宅を確保するのが困難な地域があります。
昨年、住まいの貧困に取り組むネットワークでは、脱法ハウスの問題に取り組んでおりましたけれども、たとえば東京都の千代田区では、特別基準が6万9800円を出しても、賃貸住宅が借りられない、という状況があります。
そのために、なかなかドヤで生活保護を受けている、旅館で生活保護を受けている方が、アパートに移れない、アパートが見つからないんです、ということを福祉事務所の職員に相談したところ、「だったらこういうところがあるよ」といわれて、マンボーという会社が経営する脱法ハウス、違法貸しルームですね、そこを紹介されるという事案も起こっております。
今年度から厚労省はこうした違法貸しルームのようなところに生活保護世帯が暮らしている場合は適切な場所に移れるように支援しなさい、というような通知を出しておりますけれども、現在ですら、そういうような実態があります。

あと、後ほど、車椅子で生活されている生活保護世帯の方にも発言して頂きますけれども、特に車椅子で、室内でも生活をしている方がですね、その車椅子で使えるような居室を探すというのは非常に困難を極めておりまして、東京都内で6万9800円を出してもなかなか見つからない、そうするともともと7万5000円とかですね、8万円近い物件をやむなくですね、たとえば家賃は6万9800円、管理費・共益費が5000円・6000円というような形で、結果的に生活費の中から、生活扶助費の中から家賃分を出さざるを得ない、そのために場合によっては食費とかですね、生活費に使うお金を削って、実質的に家賃にあてている、というような状況も生まれておりますので、必ずしも十分ではない、といえるかと思います。

あと、非常に奇妙なのはですね、基準額の一覧表を見ていただければわかるかと思いますが、一番右のところですね、基準額1.3倍額、そして7人世帯基準というのがありますけれども、2人世帯から6人世帯までの基準がまったく同じだ、ということになっております。
東京では6万9800円、大阪では5万5000円、ということでして、特に子供の多い世帯ですね、お子さんが3人とか4人とかいらっしゃる世帯だと、東京で6万9800円だとワンルームしか借りられませんので、全く実態にあってない、というような問題もあって、現状でも住宅扶助基準は、決して高いとはいえないという状況があると考えています。

そうした住宅扶助をめぐる現状をなんですけれども、根本的には背景に、日本の住宅政策の失敗という問題があると私たちは考えております。
この間、どこの地域でも公営住宅を増やさない、東京でも増やさない、という政策が行われてきましたし、一方で低所得者の方々が公営住宅に入れないものですから、民間の賃貸住宅市場で部屋を探さざるを得ないんですけれども、その民間の住宅市場というのは、野放し状態になっている。
先ほど申し上げた、入居差別の問題も放置されているというような状況があります。
また、保証人の問題であるとか、貧困ビジネスに関する問題でも規制が進んでいないというような状況があって、そうした結果、さまざまな今言われているような住宅扶助をめぐる問題というようなことが起こっているんだろうと思っております。

そうした状況にきちんとメスを入れればまた話は別なんですけれども、こうした民間の賃貸住宅市場を放置したまま、住宅扶助基準の金額だけを切り下げると、そうすると結果どうなるかというと、ますます生活保護世帯の方が劣悪な住居に追いやられてしまうと、質の低下をまねくということで、これは健康で文化的な最低限度の生活を保障するという、生活保護の理念に真っ向から反しているといわざるをえない、と考えております。

最後に、私たちとしては、今回216団体の賛同も頂きましたが、この生活保護基準部会が作業部会も含めて、きちんと透明な形でオープンに議論することを求めていきたいと考えていますし、11月までに検討結果を取りまとめるというのは、あまりに拙速すぎると、こういうスケジュールは撤回すべきだと考えております。
そして、生活保護を実際に利用されている方、居住支援を行っているNPOの関係者、住宅問題に詳しい研究者・法律家などから意見を徴集し、議論を進めていくべきだと考えます。

そしてそもそも、根本に住宅政策の失敗という問題があります。
この間、脱法ハウスの問題、ネットカフェ難民の問題、と折に触れて住宅政策の問題というが社会に出てきていますけれども、本来は厚労省と国土交通省が縦割りではなくて、一緒になって、たとえば「住宅政策総合本部」というようなものを作って、健康で文化的な最低限度の住生活というものをどう保障すればよいのか、という観点のもと、住宅政策を転換すべきではないかと、住まいの貧困にきちんとメスを入れていくべきではないかと考えております。
そうした議論と平行して、この生活保護の住宅基準の問題も考えていくべきではないかというように考えております。

 

川西浩之さん(身体障がいをもつ生活保護利用当事者)


hatugen02私は東京世田谷に住んでいる車椅子の者です。
私は一日11時間弱ぐらいの、ヘルパーさんの援助を受けながらの生活をしています。そしてヘルパーさんには食事を作って貰ったり、着替えとかを手伝ってもらったりする生活をしております。
室内でも手動の車椅子を利用して、生活をしております。もうかれこれ、世田谷区内で生活をして14年目くらいになります。

ひとり暮らしを始める時に、不動産屋さんをまわってみた時のことを思い返しますと、車椅子を利用してすごせる住宅はありません、あなたはトイレとかお風呂周りに手すりをつけたいということですけれども、手すりをつけると壁に傷をつけるので、修繕と修復にトラブルが発生しますので、うちを貸したくありません、という不動産屋さんがほとんどでありました。
そんな中、10件か15件くらいヘルパーや支援してくれる仲間たちと探しましたが、全くそんなおうちはありませんでした。
公営住宅も少なく、非常に(住宅扶助基準の)引き下げに困っております。

なぜ私たちが車椅子ですごさなくてはならないかという、基本的な意味が、皆さんわかっておられないように思います。
車椅子は、私は脳性まひではあるんですけれども、車椅子がないとお腹の力が弱くて体が支えられていないからこそ、車椅子で生活しているのであります。
車椅子ですごしてはいけない家があるなんてことが、とても信じられません。アメリカ等の外国では、車椅子で室内をすごすこと、事務所内ですごすことが当たり前の生活になっています。
そういった僕たちの障がいの状況をちゃんと理解してもらった上で、生活を見ていただけたらと思います。

私は8万を超える住宅に住んでおります。
やはりワンルームとかですと食事する部屋と書類を書く部屋が一緒で、僕らの仲間にはワンルームなんかですと、車椅子で中に入るのが精一杯で、身動きが取れないおうちに住んでいるというものが大勢います。
住宅改造の問題で、室内で寝たきりでリフトとかベッドまわりでも必要という仲間は数多くいます。

そういった人たちが家賃基準が下げられてしまうと引っ越さなくてはいけなくなり、とてもどこへいっても嫌な目で、後ろめたい目で苦労する姿が目に浮かびます。そして、なにせ不動産屋さんは僕らが話をしても、あまり話を聞いてくれません。
ほとんど、僕の場合は、ヘルパーさんへ「こういううちに住みたいから」ということで、話をしてもらいました。
そしてその中で、やっと住宅を見つけてきました。
不動産屋さんにも話しました。僕たちは10軒・20軒まわっても住む家がありませんと。お風呂釜を代えたいということでしたが、手すりの位置とかもあるので、微妙に違うと入りにくくなってしまいますから、ということで、このままで住居も変えず生活しています。

もう少し実態に即した、私たちの本当に生の声を聞いた上でいろいろと見直しをして頂きたいと思います。
よろしくお願いします。

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