提言・オピニオン

今後10年の住宅政策の指針が閣議決定!パブコメは反映されたのか?

提言・オピニオン

3月18日、政府は今後10年の住宅政策の指針である新たな「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定しました。

新たな「住生活基本計画(全国計画)」の閣議決定について

私が注目していた「住まいの貧困」への対策では、「空き家を含めた民間賃貸住宅を活用して住宅セーフティネット機能を強化」という文言が盛り込まれましたが、その具体策の詳細は盛り込まれませんでした。

一方で、安倍政権が進める「三世代同居・近居の促進」はそのまま盛り込まれました。

住生活基本計画ポイント

私はこの基本計画の案が出た時、「住宅セーフティネットの強化を求めてパブリックコメントを出そう」という呼びかけを行い、私自身もパブコメを提出しました。

関連記事:空き家を準公営住宅に!パブコメを出して住宅政策を転換させよう! 

このパブコメ募集では、住宅政策の分野としては珍しく、219件もの意見が集まったそうです。

パブコメは計画に反映されたのでしょうか。以下のページにパブコメ結果が出ているので、見てみましょう。

「住生活基本計画(全国計画)の変更(案)」に関する意見募集の結果について

 三世代同居・近居促進はライフスタイルの干渉にならない?

私が出した意見(一部)とその意見に対する国交省の回答を以下に紹介します。

【稲葉】「希望出生率1.8 の実現につなげる」ことを住宅政策の目標の中に明記するのは、個人のライフスタイルへの干渉になりかねず、不適切なので、削除すべき。「三世代同居・近居の促進」も同様の理由で不適切であり、削除すべき。

【国交省】希望出生率は、夫婦の意向や独身者の結婚希望等から算出しているものです。また、三世代同居・近居についても、望む方々が実現できるような支援を行うものであることから、個人のライフスタイルへの干渉にはならないと考えており、また、政府全体として取り組んでいる一億総活躍社会の実現に向けた取り組みとも整合しており、原案通りとさせていただきます。

【稲葉】住宅困窮者対策として、一定の基準を満たす空き家、民間アパート、戸建て住宅を「準公営住宅」として位置付けるべき。対象は、子育て世帯や高齢者ひとり親世帯、若年単身者なども含めた低所得者全般とし、「準公営住宅」が従来の「公営住宅」とあわせて住宅セーフティネットの役割を果たせるように大量に供給できる体制をつくるべき。

【国交省】目標3(基本的な施策)(1)において、「住宅確保要配慮者の増加に対応するため、空き家の活用を促進するとともに、民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築も含めた、住宅セーフティネット機能を強化」と記載しております。これを踏まえ、今後具体的な施策を検討してまいります。

【稲葉】若者の間でシェアハウスが広がっているが、「シェア居住」を定義する法制度が整備されていないことが、空き家の一戸建てをシェアハウスに転用する際のハードルとなっている現状がある。新しい住まい方としての「シェア居住」を法制度の中で位置づけるべき。

【国交省】シェアハウスについては、まずその現状・実態の把握をした上で必要な措置について検討をする必要があると考えており、原案通りとし、計画の実施にあたり適切な対応をしてまいります。

家賃補助については慎重姿勢を崩さず

また、多くの方が求めた「家賃補助制度の導入」については、パブコメへの回答の2ヶ所で「なお、家賃補助制度については、対象世帯、民間家賃への影響、財政負担等の課題があり、慎重な検討が必要であると考えております。」と書かれています。

住生活基本計画が審議された国交省の社会資本整備審議会・住宅・宅地分科会では、委員から「民間の空き家を活用した準公営住宅の創設」や「家賃補助制度の導入」といった意見も出されていたのですが、今のところ、国交省は慎重な姿勢を崩していないようです。

ただ、国交省は住宅セーフティネットの「新たな仕組みの構築」を検討するため、住宅・宅地分科会に新たに小委員会を設置しました。今後、この小委員会で具体策を検討するとのことです。

住宅セーフティネット策の具体化はこれから。さらに声をあげよう!

多くの人がパブコメを出したにもかかわらず、住生活基本計画自体はあいまいな内容になってしまいましたが、今後、住宅セーフティネットの具体策を決める過程において、さらに声をあげていきたいと思います。

7月には参議院選挙もあるので、各政党にも住宅政策の拡充を求めていく予定です。

4月27日(水)には正午から、「住生活基本計画のこれからと家賃補助の実現」と題した院内集会を衆議院第二議員会館多目的会議室で開催します(詳細は後日お知らせします)。ぜひご参加ください。

住宅政策の転換に向けて、ぜひ多くの方のご注目、ご支援をお願いいたします。

複合的な障害・疾病を抱える生活困窮者をどう支えるのか

提言・オピニオン

「役所は銭湯やコンビニじゃない!今日はあっち、明日はあっちってその日の気分で生活保護受けるとこじゃないんだ!」

2013年年末、東京都内の某区に生活保護の申請に行った阿部さん(仮名・60代男性)に対して、福祉事務所の相談員は、声を荒げて叱責を始めました。

相談員が怒り出したきっかけは、阿部さんがわずか2年の間に首都圏の5つの自治体で生活保護の開始と廃止を繰り返していたことを知ったことでした。

路上生活をしていた阿部さんは、各地の福祉の窓口で相談をして、民間の宿泊所に入れられ、そこでの環境になじめずに、数か月後には自己退所をするということを繰り返していました。

その背景には、阿部さんが知的障害や精神疾患を抱えているという事情があった(後に認知症もあることが判明)のですが、どこの福祉事務所もその点を配慮することはありませんでした。

そして某区の相談員も、阿部さんを「福祉をコンビニのように使う困った人」として扱ったのです。

その場に同席をしていたNPO法人もやいのスタッフが抗議をして、無事に生活保護の申請はできましたが、身体的な疾患もあり、複合的な障害や疾病を抱える阿部さんへの支援は、私たちにとっても試行錯誤の連続でした。

残念ながら、生活保護申請から約1年後、阿部さんは病死されました。

阿部さんが亡くなった後、阿部さんに中心的に関わったスタッフが支援の記録をまとめ、その文章が『賃金と社会保障』2016年2月下旬号に掲載されました。

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阿部さんのように多重に困難を抱える生活困窮者をどう支えていけばいいのか、という点についての問題提起になっています。

約2万字に及ぶ長文ですが、生活保護行政や生活困窮者支援に関わる方にはぜひ読んでいただき、今後の支援のあり方に関する議論の素材にしていただければと思います。

『賃金と社会保障』は、専門誌で入手しにくいので、ネットで購入されるか、図書館などで見つけてお読みください。

また、この号の特集は「日本と英国における生活困窮者自立支援制度」です。あわせてご覧ください。

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『賃金と社会保障』2016年2月下旬号(1652号)

「こんなバカでしいません」- ある生活困窮者支援の記録

小林美穂子(認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいスタッフ)

【目次】

まえがき
初来所
路上と施設間のヘビーローテーション
生活保護が続かない
「たしけてください」
兄の死、故郷へ
故郷の拒絶
希死念慮
再び上野、そしてC区へ
生い立ち
〜おしんとしての幼少時代
〜働きづめの日々から路上へ
クリスマスイブのSOS
これが最後のチャンス
検査結果
綱渡りの入院生活
カッパ現る
使える制度を利用するために
まるでパンドラの箱
増える問題行動
最後の晩餐
無言の対面
故郷の土に帰る
お姉さんと幼なじみに見守られ
阿部さんの足取りをたどる
支援者の悩み
福祉事務所の悩み
シェルター事業から見えたこと

※関連記事:「路上からは抜け出したい。でも、劣悪な施設には入りたくない」は贅沢か? 

「生活保護利用者の人権は制限してもよい」の先には、どのような社会があるのか?

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拙著『生活保護から考える』が第2刷になったのを機に、内容の一部をご紹介したいと思います。

関連記事:27ヶ月かかりましたが、増刷になりました!

安倍政権の発足以来、生活保護基準の引き下げや生活保護法の改悪など、生活保護を利用している人の暮らしや権利を脅かす政策が続いています。

また、地方自治体レベルでも、兵庫県小野市の「福祉給付適正化条例」や、大分県別府市でのパチンコ店調査・保護の支給停止など、生活保護などの福祉制度利用者の「素行」をことさらに取り上げて監視をしていこうという動きが強まっています。

関連記事:パチンコで生活保護を停止した別府市の「罪と罰」|生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ|ダイヤモンド・オンライン 

こうした動きの背景には、自民党に根強い「人権制限論」があります。

自民党の生活保護に関するプロジェクトチーム座長を務めていた世耕弘成参議院議員は、『週刊東洋経済』2012年7月7日号に掲載されたインタビューで以下のように述べています。

「(生活保護の)見直しに反対する人の根底にある考え方は、フルスペックの人権をすべて認めてほしいというものだ。つまり生活保護を受給していても、パチンコをやったり、お酒を頻繁に飲みに行くことは個人の自由だという。しかしわれわれは、税金で全額生活を見てもらっている以上、憲法上の権利は保障したうえで、一定の権利の制限があって仕方がないと考える。この根底にある考え方の違いが大きい。」

税金が投入されている制度の利用者の人権は制限してもよい、とする「人権制限論」の先には何があるのか、拙著で考察しています。ぜひご一読ください。

以下、『生活保護から考える』より抜粋(P176~P179)

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■利用者バッシングと社会保障費抑制

制度利用者のモラルの問題を言い立てることで、制度自体の縮小を画策するという政治手法は、すでに生活保護以外の社会保障分野でも始まっています。

2013年4月24日、麻生副総理兼財務大臣は東京都内で開かれた会合で「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで糖尿になって病院に入るやつの医療費は俺たちが払っているんだから、公平じゃない」と述べました。麻生氏は「生まれつき弱いとかは別の話」と断った上で、「こいつが将来病気になったら医療費を払うのかと、無性に腹が立つときがある」とも語ったと言います。

これは、糖尿病患者への偏見を悪用し、「利用者のモラルハザード」を焦点化することで、医療費全体の抑制へと社会保障政策の舵を切るためのアドバルーン的発言だと思われます。生活保護バッシングと同様に、制度利用者を叩くことで制度自体を利用しづらくしようとしているのだと思われます。

社会保障制度の利用者に「清く正しく美しく」あることを求める発言は、他の自民党の政治家からも出てきています。

2012年9月11日、テレビの報道番組『報道ステーション』に出演した石原伸晃衆議院議員は、生活保護費などの社会保障費抑制の具体策について述べる中で、いきなり、こう切り出しました。

「一言だけ言わせていただくと、私はね、尊厳死協会に入ろうと思うんです、尊厳死協会に。やっぱりね、ターミナル・ケアをこれからどうするのか、日本だけです。私は誤解を招いたんですね、この発言で。私はやっぱり生きる尊厳、そういうものですね、一体どこに置くのか、こういうことも考えていく。そこに色々な答えがあるんじゃないでしょうか。」

石原氏はこの発言を「個人の意思」を述べたものだと強調しましたが、この直前には公営住宅を活用することで生活保護費を八千億円削減できるという独自の社会保障費削減策を述べていました。彼が社会保障費削減の手段として尊厳死を用いようとしているのは明らかです。

生活保護制度の見直しを盛り込んだ社会保障制度改革推進法は、医療保険制度について「原則として全ての国民が加入する仕組みを維持する」(第六条)と書かれています。「原則」とは「例外」があることを前提とした言葉であり、これまで日本の国是とされてきた国民皆保険制度を絶対堅持するという政府の姿勢はここには見られません。

2013年7月、日本は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉に正式参加しました。アメリカの圧力により、日本で混合医療(保険医療と自由診療の併用)が解禁されれば、診療費が高騰し、アメリカの民間医療保険が日本でシェアを拡大するでしょう。次第に保険医療がまかなえる範囲が縮小すれば、アメリカ型の「民間医療保険に加入しなければ、病気になることもできない」という社会が到来しかねません。いわば、健康が自己責任となるのです。

2013年8月6日には、政府の社会保障制度改革国民会議が最終報告書をまとめ、安倍晋三首相に提出しました。報告書には、介護を必要とする度合いが低い「要支援」者を介護保険制度の対象から外して市町村に委ねることや、七十~七十四歳の医療費窓口負担を段階的に一割から二割に引き上げることなどが盛り込まれました。最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止などを求めてきた民主党は、三党の実務者協議からの離脱を決めました。安倍政権がかつての小泉政権のように社会保障費を抑制する方向に舵を切ったことは明らかです。

介護の必要度が低い高齢者が介護保険の対象から外されれば、当然、家族や地域のボランティアに負担がのしかかることになります。この動きも、生活保護の扶養義務強化と同様、家族や地域で支え合うことを美徳として強制し、公的責任を後退させる「絆原理主義」の現れだと言えます。

生活保護バッシングから始まった生活保護制度「見直し」の動きは、これら社会保障制度全体の「見直し」に向けた先鞭をつけるものだと言えます。生活保護の分野は政治力のある圧力団体が存在しないため、「最初のターゲット」にされようとしています。しかし、生活保護利用者をバッシングし、制度を使いにくくしようとする動きの延長線上には、医療・介護・年金など、人々の命や暮らしを支える社会保障制度全体を縮小していく動きがあることを忘れてはなりません。

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以上は、2013年11月に発行された本に書いた文章ですが、今年に入り、TPPの署名が行われたほか、厚生労働省は介護保険の「要支援1、2」の介護予防サービスを市町村に移すだけでなく、「要介護1、2」の家事援助を介護保険から外し、自己負担を導入する方向で検討を始めました。
「介護離職ゼロ」どころか、本来、国が責任を持つべき社会保障を家族や地域の支え合いに丸投げしようという動きが強まっています。

また、問題発言をおこなった石原伸晃氏は甘利氏の辞任に伴い、経済再生担当相に就任しました。

「人権制限論」の先にどのような社会があるのか。そのことを私たちは本当に望んでいるのか。真剣に考えるべき時が来ています。

空き家を準公営住宅に!パブコメを出して住宅政策を転換させよう!

提言・オピニオン

今年1月22日、国土交通省は今後の住宅政策の方向性を示す住生活基本計画(全国計画)の見直し案を発表しました。

住生活基本計画見直し案概要

住生活基本計画見直し案概要

 

8つの目標のうち、「目標3」に住宅セーフティネットの充実が盛り込まれている。

8つの目標のうち、「目標3」に住宅セーフティネットの充実が盛り込まれている。

新たな計画案の最も大きな柱は、既存の住宅ストックの利活用推進です。年々、増加の一途をたどっている全国の空き家は、年には戸数で約820万戸、割合で総住宅数の13.5%を占めるまでに至っており、各地で深刻な社会問題となっています。

私たち、「住まいの貧困」に取り組むNPO関係者や研究者は、こうした空き家を住宅の確保に苦しむ低所得者への居住支援に活用できないかと、様々な形で提言活動を行なってきました。

空き家率同様、上がってほしくないのに上がり続けているのが日本の相対的貧困率です。「空き家を活用した低所得者支援」は、私たちの社会が抱える二大問題を一石二鳥で解決する方策だと言えます。

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こうした問題意識に基づき、昨年5月にも、『市民が考える!若者の住宅問題&空き家活用』というシンポジウム(主催:NPO法人ビッグイシュー基金)が開催されました。このシンポジウムの報告書は下記のページでダウンロードできます。

NPO法人ビッグイシュー基金:「若者の住宅問題&空き家活用」シンポ報告書が完成しました

また、一昨年、私が立ち上げた一般社団法人つくろい東京ファンドは、まさにこうした問題意識から民間の資金で「空き家を活用した低所得者への居住支援」を実施することを目的とした事業体であり、民間の物件オーナーの協力を得ながら、都内に複数のシェルターや若者向けシェアハウスを開設してきました。

民間のレベルで空き家活用事業を形にして見せることで、腰が重い行政に発破をかけようと思ったのです。

空き家を「準公営住宅」に!ついに国が動いた!

そうした私たちの動きに刺激されたのかどうかはわかりませんが、今回の計画案には住宅セーフティネット機能を強化するために「民間賃貸住宅を活用した新たな仕組み」を構築する、という文言が盛り込まれました。

また報道によると、国土交通省は耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を「準公営住宅」に指定し、子育て世帯や高齢者等などに貸し出す仕組みを検討しているとのことです。今後、詳細を詰めて、来年の通常国会にはそのための法案を提出する予定だということです。

日本経済新聞:空き家を「準公営住宅」に 国交省、子育て世帯支援

ようやく国のレベルで、空き家を低所得者支援に活用する動きが出てきたことは歓迎したいのですが、この「準公営住宅」構想は住生活基本計画の見直し案にはっきりと書かれているわけではありません。
せっかく出てきた構想が尻すぼみにならないように、住生活基本計画にきちんと書きこませることが重要だと私は考えています。
住生活基本計画の見直し案は、2月12日までパブリックコメントを受け付けているので、ぜひ多くの方に意見を寄せていただければと思います。

パブコメの出し方については下記のリンク先をご覧ください。

「住生活基本計画(全国計画)の変更(案)」に関する意見の募集について

基本計画の見直しにおいて、私が重要だと思うポイントは、以下のとおりです。

・一定の基準を満たす空き家を「準公営住宅」として位置付けることを計画に明記する。

・「準公営住宅」の対象は、子育て世帯や高齢者だけでなく、若年単身者なども含めた低所得者全般とする。

・「準公営住宅」が従来の「公営住宅」とあわせて住宅セーフティネットの役割を果たせるように大量に供給できる体制をつくる。従来の「公営住宅」も削減をせず、特に抽選倍率の高い都市部では戸数を増やす。

・「希望出生率1.8 の実現につなげる」ことを住宅政策の目標に掲げるのは、個人のライフスタイルへの干渉になりかねず、不適切。「三世代同居・近居の促進」も削除すべき。

 

まだまだ楽観はできない。パブコメで後押しを!

空き家を活用した「準公営住宅」が大規模に実施されれば、戦後の住宅政策の大転換とも言える事業になるでしょう。

その一方で、これまで国土交通省が作ってきた住宅セーフティネットがあまりに貧弱であった、という「実績」を踏まえると、楽観ばかりできないと私は考えています。

最悪のシナリオは、「準公営住宅」という仕組みを作ったものの、実際にはほとんど整備されず、「新しい制度ができたから」ということが口実になり、従来の公営住宅の戸数が削減される、という結果になることです。

そのため、ぜひ多くの方にパブリックコメントを出していただき、「空き家を準公営住宅に!」という声をあげていただければと思っています。

住宅政策の大転換を実現させるためにご協力をお願いします!

東京都内で、また野宿者襲撃事件が発生。人権行政・教委の対応を求めます。

提言・オピニオン

残念ながら、都内でまた中高生による野宿者襲撃事件が発生しました。

NHKニュース(「強盗の疑いで中高生逮捕 路上生活者も襲撃か」)によると、事件の概要は以下のとおりです。

東京・新宿区の路上で会社員の男性から現金などを奪ったとして中学生と高校生の少年合わせて3人が逮捕されました。新宿区内ではことし7月以降、公園などで路上生活者が暴行される事件が相次いでいて、警視庁は供述などから3人が関わったとみて調べています。

この事件の3時間ほど前、新宿区の都立戸山公園で60代から70代の路上生活者の男性3人が顔を殴られるなどしていて、少年らは一部について関与を認めているということです。ことし7月以降、この公園や近くの路上では路上生活者が暴行される事件がほかにも8件相次いでいて、警視庁は3人が関わったとみて調べています。

こうした襲撃事件は1990年代半ばから東京や大阪などで頻発しています。昨年夏、都内の野宿者支援団体、生活困窮者支援団体が合同で、野宿者への襲撃の実態に関するアンケート調査(野宿者347人への聞き取り)を実施したところ、40%の方が襲撃を受けた経験があるということがわかりました。

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昨年8月14日、私たちはこの調査結果を公表し、東京都に対して、襲撃の実態把握と人権教育・人権啓発の強化などを求める申し入れをおこないました。

舛添要一都知事は翌8月15日、定例の記者会見で対策を徹底すると明言しました。

舛添都知事が野宿者襲撃への対策を徹底すると表明!実効性ある対策を求めます。(2014年8月16日)

しかし、その後、具体的な対策はほとんど行われませんでした。

都が今年8月に策定した東京都人権施策推進指針では、人権課題の一つとして「路上生活者」の項目が設けられ、「ホームレスに対する偏見や差別をなくし、ホームレスの置かれている状況や自立支援の必要性について都民の理解を促進するため、啓発等を行っていきます。」という記述が盛り込まれましたが、具体的な取り組みが実施されたという話は聞いたことがありません。

「人権啓発や人権教育はあまり効果がないのではないか」という意見をいただくこともありますが、区内で襲撃が続いたことを受けて、教育委員会と学校現場が野宿の当事者・支援者と連携をして、野宿者の人権に関する授業をおこなった墨田区では、実際に襲撃が激減しています。

東京都墨田区で野宿者襲撃が10分に1に減少(2014年10月17日)

今回の事件を受けて、東京都が姿勢を改め、野宿者襲撃をなくすための対策に本腰を入れることを求めます。また、地元の教育委員会にも働きかけをおこなっていきたいと思います。

「パリを襲った悪夢は別の地域では毎日毎日続いている悪夢であり、私たちは無関係ではない」~フランスからの声

提言・オピニオン

11月13日(金)にパリで発生した同時多発テロは、世界に大きな衝撃を与えました。

オランド政権はシリアへの空爆を強化し、極右勢力を中心にシリアからの難民の流入を制限すべきだという声があがっています。

しかし一方でフランスには、国内で生まれた移民の二世、三世が過激思想に走ってしまう背景には、フランス社会に内在する貧困や社会的排除の問題がある、と指摘し、戦火から逃れてくる難民をもっと受け入れるべきだと主張する人たちもいます。

2013年に日本に留学生として滞在し、NPO法人もやいの活動にもボランティアとして参加したことのあるフランス人研究者のマリーセシール・ムリンさん(Marie-cecile Mulin)に、今回の同時多発テロに関する意見をうかがいました。

ぜひご一読ください。

 

先週の金曜日、パリで悲惨な事件が起きました。
この事件により、民主主義の土台が揺さぶられています。
また、安全な場所は世界のどこにももはやないということが明らかになりました。
標的となった地域は、人々が日常的にくつろぎ、楽しく時間を過ごす場所でした。市民の恐怖を最大限にするために計画的に選ばれた地域と言えるでしょう。

テロリストの正体はフランス人やヨーロッパの人たちであったことが判明しています。この事実は、彼らがどのような理由からこのような犯行に至ったか、その責任を誰が取るべきなのかという質問を私達に投げかけます。
この事件の責任は民主主義に生きる市民、個人の一人ひとりが負っているのです。

その理由は、テロの被害に悲しむ一方で私たちの国の「民主主義」は、中東やアフリカの紛争や混乱に深く関与しており、何百万人もの人々を貧困に陥れているからです。そういった国々から逃げ出すことができない人々が過激な思想を持つようになるのはたやすいことです。

他方で、ヨーロッパ諸国、特にフランスでは、アフリカからの移民がスラム街に置いてきぼりにされ、学校すら社会的流動性に機能しなくなっており、法律すら届かなくなっている現状があります。その土壌が若者のギャング化、思想の過激化への温床となっています。

私たち一人ひとりに責任があります。なぜなら私たちはこの状況を放置してきたからです。民主主義の担い手は市民一人ひとりのはずです。私たちが現在直面していることを政治家だけに委ねたところで解決は難しいでしょう。この国や世界に暮らす全ての人々の権利を守るべく、私たち一人ひとりが行動しなければなりません。

今のところ、フランスでは多くの人々が団結してテロに立ち向かっています。去年1月の『シャルリー・エブド』襲撃事件の時以上に自分や家族にも起こり得ることと捉えています。しかし、この団結はとても脆くなっており、極右の過激派の発言や、或いは新たなテロにより砕けてしまうものかもしれません。

いま、大きな危機に瀕している「自由」について、私たちは真剣に考える時にきています。
私たちが歩く「民主主義」の道は、とても不安定で細く、心もとないものとなりました。この道を歩き続けたいならば、何としても踏みとどまることが今、私たち一人一人に求められています。

先週金曜日にパリを襲った悪夢は、別の地域では毎日毎日、何年にも渡って続いている悪夢です。そして私たちは決して無関係ではないのです。紛争の国から命からがら逃げてくる人たちを追い返すべきではありません。難民を受け入れ、尊厳や人権を尊重する。その一方で国内の安全確保に尽力する。この両方をしなくてはなりません。これは私たちの意志と、体制と、モラルの問題です。(翻訳・編集:小林美穂子)


 

マリーセシールさんには、今年1月の『シャルリー・エブド』襲撃事件の際にも、メッセージをいただいています。あわせて、ご参考にしてください。

※関連記事:「共生」が憎しみ合いに転じるのを許さないために立ち上がる~フランスからの報告

 

今回の同時多発テロが起こった日の翌日(11月14日)、東京の立教大学では「ハウジングファーストと社会デザイン―フランスと日本の実践から」と題したシンポジウムが開催され、フランス・マルセイユで「ハウジングファースト」(精神障害を抱えたホームレスの人たちに無条件で適切な住居を提供するプログラム)を実践している精神科医のヴァンサン・ジェエラールさんが講演を行ないました。

【動画】公開講演「ハウジングファーストと社会デザイン」(その1):講演 ヴァンサン・ジェラールさん

ヴァンサンさんは冒頭、パリでの事件に触れて、「くれぐれもテロリズムを宗教や民族と混同しないでほしい」と強調していました。

ヴァンサンさんによると、マルセイユの人口の約3割は移民やその子孫であり、ヴァンサンさんたちが支援している人のほとんども移民やその2世、3世だと言います。

@Giorgos Moutafis / EMPP-MARSS

@Giorgos Moutafis / EMPP-MARSS

ヴァンサンさんは講演の中で、ホームレスの人に対して「まずはドラッグや酒をやめないとダメ」と条件づけをしたり、一方的にジャッジメントをするのではなく、一人ひとりの尊厳を尊重し、「基本的な人権」として住宅を提供することから支援を始めなければならないと強調していました。

ヴァンサンさんたちの活動は、テロの温床となっている国内の貧困や社会的排除をなくすための活動であり、真の意味での「テロとの戦い」と言えるのではないか、と私は感じました。

貧困や社会的排除、差別排外主義、暴力をなくすために奮闘しているフランスの市民に学びながら、私たちも日本の社会にもある同様の問題に対して立ち向かっていきたいと考えています。

 

「路上からは抜け出したい。でも、劣悪な施設には入りたくない」は贅沢か?

提言・オピニオン

あなたは「自分がホームレス状態になる」ということを想像したことがあるでしょうか。以下のストーリーを読んで、想像をしていただければと思います。

 

あなたは、仕事を失い、家族とも離散して、家賃を滞納。アパートを追い出されてしまう。仕方なくネットカフェに寝泊まりをし、必死に仕事を探そうとするが、履歴書に書くべき住所がないことが求職活動の大きな妨げとなってしまう。

次第に所持金が尽き、ネットカフェから24時間営業のファストフード店に移り、最後には路上での生活へ。慣れない野宿のため、睡眠は充分にとれず、食べる物にも事欠き、健康の維持も難しくなる。

そんな極限状態から抜け出すための最後の手段が生活保護の申請だ。あなたは役所の窓口に行って自らの窮状を訴え、職員に嫌味を言われながらも、事前に支援団体のウェブサイトで調べた知識を駆使して、なんとか生活保護の申請にこぎつける。

今夜から泊まる場所がないと言うと、民間の宿泊施設を紹介される。言われた場所に行ってみると、室内は二段ベッドがずらりと並んだ二〇人部屋。それでも路上で寝るよりは良いと割り切って、シミだらけの布団にもぐりこむ。

翌朝、体がかゆくて眼を覚ます。隣のベッドの人に聞くと、シラミやダニが大量発生していると言う。同室者には暴力団員のような風貌の男もいて、別の入所者から金品を恐喝しているようだ。

一刻も早くここを出たいと思うが、勝手に抜け出すとまたホームレスに逆戻り。いつになったら出られるのか、不安になる。隣のベッドの人はすでにここに8年いると言っていた…。

 

「極端な話だ」と思われるかもしれませんが、ここで描いた施設の状況は、私が実際に施設入居者から聞いたことのあるエピソードを総合したものです。最近でも、都内の貧困ビジネス施設で働いていた元アルバイトスタッフが、週刊誌で内部の劣悪な状況を証言しています。

週刊朝日ウェブ版:年金が生活保護以下で「老後破綻」 漂流し、搾取される高齢者

こうした施設での環境になじめず、路上生活へと逆戻りしてしまう人も少なくありません。特に、精神疾患や知的障害を抱えている人が施設内でいじめやたかりの被害に遭うケースは後を絶たず、路上と施設を何度も「往復」している人も数多くいます。

「もし自分がホームレス状態になったら…」という想像をすれば、「路上からは抜け出したい。でも、劣悪な施設には入りたくない」という願いが決して、贅沢なものではない、ということがわかるのではないでしょうか。

こうした状況を打破するために必要なのは、「ホームレスであろうと、障害があろうとなかろうと、すべての人に基本的な人権として適切な住まいを提供することを最優先にする」という「ハウジングファースト」の発想です。

重度の障害のある人であっても、まずはアパートを提供し、その上で専門家のチームが地域生活を支えるという「ハウジングファースト」型の支援は、1990年代にアメリカで生まれ、近年、各国に広がりつつあります。

日本でも「ハウジングファースト」に基づく支援を広げられないか。そんな問題意識から、このたび国際シンポジウムを企画しました。ぜひ多くの方に参加していただければと思います。

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科主催・公開シンポジウム
「ハウジングファーストと社会デザイン―フランスと日本の実践から 」
11月14日(土)12時~17時、立教大学池袋キャンパス5号館1階5123教室にて。

詳細は、こちらをクリック。

151114立教シンポ

翌15日(日)にも、世界の医療団主催で「ハウジングファースト」をテーマにした国際シンポジウムが開催されます。こちらは予約制です。

なぜ住まうことから始める(ハウジング・ファースト)と回復(リカバリー)するのか ~世界と日本の現場から~

ライターのみわよしこさんが「ハウジングファースト」について私にインタビューをしてくれました。あわせて、ご一読ください。

※ダイヤモンドオンライン「生活困窮者が路上生活を抜け出せない負のカラクリ」(みわよしこ)

 

70年目の8月6日に~戦争法案反対国会前集会スピーチ

提言・オピニオン

本日8月6日(木)は、広島に原爆が投下されて70年の節目の日になります。

今日18時半から衆議院議員会館前で開催された「戦争法案反対国会前集会」(主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)には約3000人が集まりました。私も短いスピーチをおこないました。

以下にそのスピーチ原稿を転載するので、ご一読いただけるとありがたいです。

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稲葉剛です。この4月から、NPOもやいの活動を続けながら、立教大学大学院で特任准教授として貧困問題を教えています。

7月31日に発足した「安全保障関連法案に反対する立教人の会」の呼びかけ人も務めさせていただいています。

「立教人の会」が学内のチャペルで開催した「発足の祈り」には立教大学の教職員・学生・卒業生が190人も集まり、「もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、 私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます」という声明を読み上げられました。

その声明の中に以下の言葉があります。

「『戦争』とは決して抽象的なものではありません。具体的な名前をもった若者たちが戦場で向かい合い、殺し殺されることを意味します。そして、子どもたちを含む多くの戦争犠牲者を生み出し、いのちの尊厳を踏みにじるものです。」

具体的な名前をもった若者が戦場で殺し殺され、具体的な名前をもった一人ひとりの子どもが命を奪われたり、心や体を傷つけられる。それが、戦争です。

70年前の今日、8月6日、10歳だった私の母親は、広島で幼なじみの友だちと叔母を失い、同じく10歳だった私の父親は家族を失って、原爆孤児になりました。

被爆二世として原爆の話を親から聴かされて育った私は、大学生の時に起こった湾岸戦争に反対するために友人たちと学生のグループを作り、平和運動に参加しました。

その後、バブル経済が崩壊し、1990年代半ばから街に路上生活を強いられる人があふれ出すと、私は炊き出しや夜回りなどの支援活動に関わりました。当時は新宿区だけで年間40~50人の人々が路上で命を落とすという状況があり、私は路上の人々の命を守ることが自分にとっての平和運動だと思って活動を続けてきました。

路上生活をしている人からライフヒストリーを聴くと、戦争の話がよく出てきました。

ある男性は9歳の時に大阪の空襲で戦災孤児となり、長年、各地の建築現場を渡り歩いて生きていました。家族全員が亡くなったために、自分が誰であるか証明できる人が一人もいなくなり、自分自身も空襲で死んだことにされて戸籍がなくなった。そのために正規の就職をすることができずに日雇いの仕事を続けている、ということでした。

また、私の父親と同じように広島の原爆により家族を失い、天涯孤独の人生を送ってきた男性にもお会いしました。この男性も戸籍を失い、炭坑や建築現場で働いてきた、という話をしてくれました。

路上生活者からは、自衛隊で働いた経験を聴くことがよくありました。

演習場での訓練の爆音によって難聴になって失業した人や、隊内の人間関係のストレスから精神疾患を患って働けなくなった人にもお会いしました。そうした人々のほとんどが、もともとは地方の貧困家庭の出身でした。

このように貧困家庭出身の若者たちが自衛隊にリクルートされるという経済的徴兵制は昔から存在しました。
安保法制が成立すれば、自衛隊の活動エリアは飛躍的に拡大し、自衛隊員が殺し殺されるリスクは確実に高まります。それによって自衛隊が人材不足に陥れば、防衛省はこれまで以上に貧困家庭の子どもたちにターゲットを絞って、経済的徴兵制を強化していくでしょう。

憲法違反の安保法制を推し進める安倍政権は、同時に生活保護基準を引き下げるなど、人々の命と暮らしを支える社会保障制度を後退させ、さらに労働者派遣法を改悪することによって貧困を拡大させようとしています。ある意味、安倍政権は自ら率先して、経済的徴兵制を拡大するための社会環境を整備していると言えます。

安保法制が通れば、具体的な名前を持った一人ひとりの人間の命が危険にさらされます。海外の戦場に送られた自衛隊が殺し殺される。国内に暮らす子どもや大人がテロの危険にさらされる。
一人の命が奪われれば、その家族や友人も人生が変わるほどのダメージを被ります。

戦後70年の夏に安保法案をぶつけてきた安倍首相が望んでいることは何でしょうか。

それは私たちが歴史を忘却することです。

ヒロシマ、ナガサキ、オキナワを、日本の被害や加害の歴史を私たちが忘却すること。それこそが彼の望んでいることです。

そうであれば、私たちは戦争の記憶を継承していくことで抵抗をしていけると私は考えます。

70年前の夏に、広島や長崎の子どもたち、大人たちに何が起こったのか。戦場に送られた若者たちに何をおこない、何をされたのか。

私が親から原爆の話を聴いて育ったように、親の世代から子の世代へ、祖父母の世代から孫の世代へ、記憶を継承することで、戦争への道をくい止めることができる。私はそう信じています。

※関連記事:【2015年7月1日】 平和フォーラムニュースペーパーにインタビュー記事掲載

※関連記事:「安全保障関連法案に反対する立教人の会」発足!声明に込められた戦争の記憶とは?

 

シドニー「ホームレス議定書」を見習い、自己決定権に基づく支援を!渋谷区に提言しました。

提言・オピニオン

東京都渋谷区は、今年4月に行われた区長選で初当選した長谷部健・新区長のもと、新たな野宿者支援プロジェクトを実施するための検討を始めました。

プロジェクトメンバーの一人である駒崎弘樹さん(認定NPO法人フローレンス 代表理事)が、自身のブログで明らかにしたところによると、プロジェクト名は「アイ リブ シブヤ」プロジェクトという名称になったようです。

「アイ リブ シブヤ」プロジェクト始めました(駒崎弘樹ブログ)

プロジェクトの検討会議は6月29日に第1回会合が開催され、7月24日の第2回会合には都内で生活困窮者への支援を実施している団体へのヒヤリングが行われました。

私は一般社団法人つくろい東京ファンドの代表者として、このヒヤリングに呼ばれたので、「東京におけるハウジングファーストの実践」というタイトルで発表をおこない、個室シェルター「つくろいハウス」の取り組み等について説明しました。

渋谷区がこれからホームレス支援施策を実施するにあたって、私が提言したのは以下の3点です。

ヒヤリング発表資料より

ヒヤリング発表資料より

 

このうち、「自己決定権の尊重」に関しては、オーストラリア・シドニー市における「公共空間におけるホームレスのためのプロトコル(議定書)」を紹介しました。

2000年にオリンピックが開催されたシドニーでも、野宿者への排除が問題となり、支援団体と行政が議論を重ねました。
その結果、ホームレスの人は、本人が支援を要請した場合や苦しんでいる場合、その人のふるまいが自身や他者の安全を脅かしている場合などを除き、「介入されるべきではない」とする内容のプロトコルが締結されたのです。

ヒヤリング発表資料より

ヒヤリング発表資料より

 

実は、このプロトコルの存在については、7月上旬にお会いした東京工業大学の土肥真人研究室の研究者から教えてもらったばかりだったのですが、あまりに素晴らしい内容なので、さっそく活用させてもらいました。

参考文献:「行政機関が締結している公共空間におけるホームレス・プロトコルの研究ーオーストラリアNSW州シドニー市を対象としてー」(PDF)

 

「公共空間にいるホームレスのためのプロトコル」(日本語訳:シドニー大学 河西奈緒)

プロトコル1 プロトコル2

渋谷区では、長年、行政による野宿者への排除が繰り返されてきました。その様子は、2012年に公開されたドキュメンタリー映画『渋谷ブランニューデイズ』(遠藤大輔監督)の中で、克明に描かれています。

ドキュメンタリー映画「渋谷ブランニューデイズ」予告編

この日のヒヤリングには、渋谷で野宿者支援をおこなってきた団体も呼ばれたようですが、参加していませんでした。

当事者と支援者でつくる「のじれん」は、7月23日付けで長谷部区長宛に手紙を出し、区長が直接、プロジェクトの趣旨や概要を説明することを求めています。

のじれんTwitterより。 ‏@shibuyanojiren

のじれんTwitterより。
‏@shibuyanojiren

私もヒヤリングの中で、地元の当事者・支援者と直接対話をおこなうことを求めました。
渋谷区が長年の対立を解消したいと本当に願っているのであれば、まずはシドニー市の取り組みを謙虚に学んだ上で、地元の団体と話し合いながら当事者の自己決定権に基づく支援の在り方を模索していくべきだと考えます。

「安全保障関連法案に反対する立教人の会」発足!声明に込められた戦争の記憶とは?

提言・オピニオン

衆議院で強行採決された安保法制に対する反対の声が広がっています。

私の所属する立教大学でも、このたび「安全保障関連法案に反対する立教人の会」を設立され、7月31日(金)に開催される「安全保障関連法案に反対する学生と学者による共同行動」に合流することになりました。

会の設立集会は、キリスト教系の大学らしく、学内のチャペルで「発足の祈り」として開催されます。

安全保障関連法案に反対する立教人の会・発足の祈り(設立集会)
日時:2015年7月31日(金)14時〜15時
会場:立教学院諸聖徒礼拝堂(チャペル)(立教大学池袋キャンパス)

「立教人の会」の声明「もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、 私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます」には、84名の教職員(チャプレンや元職の方も含む)と1つの学生団体(SPAR 平和のために行動する立教大生の会)が呼びかけ人になりました。

私はこの4月に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に着任したばかりで、立教にはまだ約4ヶ月しか在籍していないので、「呼びかけ人」になるのはおこがましいかとも思ったのですが、縁があって「呼びかけ人」に加えていただきました。

声明文の全文は以下のとおりです。ぜひご一読ください。

 

声明:もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、

私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます

 現在、国会では、安倍晋三政権が提出した「国際平和支援法」と 10 本の戦争関連法を改悪する「平和安全法制整備法案」が審議されており、衆議院平和安全法制特別委員会および衆議院本会議で採決・可決されました。これら安全保障関連法案は、日本国憲法第 9 条 に違反するものであり、日本を「戦争をしない国」から「戦争ができる国」へと変えようとするものです。安倍政権がこれを、十分に説明を果たさないまま審議を打ち切り、強行採決によって可決したことは、日本の立憲主義と民主主義を破壊する行為です。

私たちの立教大学は、太平洋戦争中の 1942 年 9 月に、創立以来のキリスト教主義による教育から皇国の道による教育に教育理念を変更して戦争に協力し、多くの学生を戦地に送り出したという歴史を持っています。その罪責の自覚のもと、戦後 70 年間、立教大学・立教学院はキリストの伝える平和に根ざした教育と研究を探求してきました。

「戦争」とは決して抽象的なものではありません。具体的な名前をもった若者たちが戦場で向かい合い、殺し殺されることを意味します。そして、子どもたちを含む多くの戦争犠牲者を生み出し、いのちの尊厳を踏みにじるものです。1945 年までの戦争への反省の上に立って戦後日本が国是としてきた平和主義に逆行し、日本に戦争への道を開く安全保障 関連法案の可決に、私たちは強く抗議し、法案の即時廃案を要求します。

古代キリスト教神学者であり、哲学者であるアウグスティヌスに帰せられる言葉に「希望には二人の娘がいる。一人は怒りであり、もう一人は勇気である」とあります。私たちは、人間としてのまっとうな怒りを持ち続け、それぞれの持ち場でできることをやっていく勇気をもって行動し、発信し、希望を創り出していくために、連帯していきます。もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます。

2015 年 7 月 24 日
安全保障関連法案に反対する立教人の会

 

現在、立教大学・立教学院教職員、元教職員、学生、卒業生、その他立教に関係する方に声明への賛同を呼びかけています。賛同していただける関係者は、ウェブサイトのフォームにご記入をお願いします。

声明は、立教大学が「太平洋戦争中の 1942 年 9 月に、創立以来のキリスト教主義による教育から皇国の道による教育に教育理念を変更して戦争に協力し、多くの学生を戦地に送り出したという歴史」に言及しています。

現在、立教大学の池袋キャンパスにある立教学院展示館では、企画展「戦時下、立教の日々―変わりゆく「自由の学府」の中で」が開催されています。

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私も先日、この企画展を見学に行き、1247名もの立教大生が学徒出陣で戦地に送られたことを知りました。

展示館の常設展には、稀有な運命をたどった「寄せ書きが書かれた一枚の旗」が展示されていました。

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この「寄せ書きの旗」は、学徒出陣で出征し、戦死した渡邊太平さんが身につけていたもので、戦場で相対した米兵アール・ツヴィッキーさんのもとで60年以上保管されていたのことです。

2010年、67年ぶりに日本に帰還し、立教大学でご遺族への返還式がおこなわれました。

祈念礼拝「平和を祈る夕べ~寄せ書きの旗返還」(立教大学)

「立教人の会」の声明にある「「戦争」とは決して抽象的なものではありません。具体的な名前をもった若者たちが戦場で向かい合い、殺し殺されることを意味します。」という言葉は、大学に残る戦争の記憶を踏まえて書かれたものです。

「寄せ書きの旗」の返還に尽力された立教大学文学部長で、前副総長の西原廉太先生は、今年7月18日、安保関連法案の廃案を求める個人的な声明を発表されました。その中で、「寄せ書きの旗」をめぐる経緯について詳しく説明をされています。

西原廉太先生の「声明」

また、立教大学チャプレン団と立教大学キリスト教教育研究所(JICE)が7月17日に発表した『敗戦70年を迎えて』という声明書では、戦争中に「皇国ノ道ニヨル教育」をおこない、「創立以来のキリスト教主義大学としての教育理念を手放し、結果、多くの学生を戦地に送り出した、という過去」についての反省に立って、戦後の立教は「平和の構築に寄与する学問の探究」をおこなってきたと述べた上で、学生や教職員に対して「再び、日本が戦争に荷担し、人を傷つける蛮行へと向かわないように、しっかりと見張っていてください。」と呼びかけています。

「立教人の会」が今回発表した声明には、こうした立教大学の中で継承されてきた戦争の記憶と自らが戦争に荷担した歴史への反省が刻み込まれている、と私は感じています。

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