提言・オピニオン

「他人事ではない」「構造的な問題」~お揃いジャンパー問題に各地の福祉事務所職員は何を思ったのか?(下)

提言・オピニオン

小田原市の福祉事務所職員が「保護なめんな」と書かれたお揃いのジャンパーを作り、生活保護世帯の訪問をしていた問題。

全国の法律家、研究者、NPO関係者らでつくる生活保護問題対策全国会議が小田原市長に提出した「公開質問状」では、ジャンパーに書かれた内容は「『利用者のウェル・ビーイング を支援する』というソーシャルワーク共通の価値観にも真っ向から反するもの」であると批判しています。

他地域の福祉事務所で働いている公務員の皆さんは、この問題をどのように考えているのかを知りたく、6人の方(現役5人、元職員1人)にコメントを寄せてもらいました。

前半の3人のご意見はこちらをご覧ください。

小田原市の「保護なめんな」ジャンパー問題、各地の福祉事務所職員は何を思ったのか?(上)

背景には構造的な問題がある。

4人目の方は、東京都内の福祉事務所で働くベテラン職員で、保護係長も務めたことのある人です。

————

大変残念な事件です。自治体職員といえども、全員が福祉に詳しい訳ではありません。社会福祉法では、福祉事務所職員(ケースワーカー等)は社会福祉主事の任用資格が必要としています。

しかしながら、保護担当職員の4分の1は任用資格が無いというのが現実です。さらに、国家資格であり、専門家ともいえる社会福祉士は50人にひとりしかいません。

生活保護の仕事には専門性が求められ、他の法律や制度にも精通していることが必要です。なにより社会福祉や貧困問題についての正確な理解も必要です。それなのに、充実した研修も受けられず、正確な法の理解を欠いたまま仕事をさせられている自治体があります。

さらに、受け持ち世帯数が標準の80世帯どころか、100世帯以上を担当している職員も多く、仕事に追われ余裕が全く無いのが実情です。あってはならないのですが、そのストレスを利用者にぶつける者も出てきます。

全国各地で利用者を劣った人間として扱う「劣等処遇」や、「水際作戦」などの違法な運用が後を絶たないのは、このような構造的な問題があるからです。専門性ある職員配置にするなど、改善を求める声をさらに上げたいと考えています。(了)

————

公務員であることさえ忘れなければ

5人目の方は、都内の別の福祉事務所で長年勤め、すでに定年退職されている元職員です。この方もケースワーカーの専門性が欠けていることを問題にされています。

————

ケースワーカーである前に公務員であることさえ忘れなければ、ジャンパーがあったとしても、それを着て家庭訪問などしないだろう。これは人権感覚の問題である。個人というより組織の問題と捉えるべきだと思う。

このような事態が起きるたび、いつも思うのは、なぜ、ケースワーカーの専門性を問題にしないのか、ということだ。福祉の「業界」では社会福祉士、精神保健福祉士、ケアマネなどの資格要件が必要とされているのに、利用者の生活全般を支援するケースワーカーは公務員でありさえすればいい、という程度でしか考えられていない。そもそもそこがおかしい。

生活保護が発足した戦後間もない時期には、経済給付さえすれば、自ずと自立する環境があったのかもしれない。しかし、ここ10年近く、利用者は増加を続け、十分な支援ができないばかりでなく、ケースワーカーにとっても心身ともに相当な負担になっている。その結果、福祉事務所は行きたくない職場の筆頭格になった。大卒の新人を配置しなければ組織が成り立たない所もある。

ではどうすればいいのか。微かな希望かもしれないが、当面できることとして、ケースワーカーの専門職採用(人件費は事務職と同じ)や福祉職の経験者採用、そして志のある職員を配置すること。利用者ひとりひとりに合った自立支援を共有し合う風土をつくること。

専門性だけでは解決できない問題もある。ケースワーカーの負担軽減のため、国が80世帯(標準数)としている担当世帯数を減らし、業務の大半を占める事務処理(各種調査、収入認定等)を簡素化し、支援業務に振り向けること等が必要だ。そのためには、生活保護の国庫負担(現在75%)を増やし、自治体の負担を軽減するなど、ケースワーカーを増員できるような環境を作ることが欠かせない。さらに、生活保護の手前のセーフテイネット(年金、住宅等)を強化することも必要だと思う。(了)

————

現場に広がる「監視・管理」の雰囲気

最後の方は、都内の福祉事務所で働く現役ケースワーカー、ペンネーム「なべ」さんです。2013年の生活保護法「改正」後に職場の雰囲気が変わった、ということを指摘されています。

————

「これは、他人事ではないな」、記事を目にした時に正直に思った感想である。

たまたま、私は、比較的規模の大きい自治体の、それもゆる~い雰囲気の福祉事務所で働いているのでこの「事件」と無関係でいられたのだと思う。

小田原市の福祉事務所で働いていたら、あのひどく悪趣味なジャンパーの着用を拒否できていたどうかは自信がない。

ゴリゴリの活動家ならともかく、「良心的」で秩序に従順な公務員がこうした作風の職場に身を置いていたら、はたして「自分たちは被害者で、悪いのは受給者だ!」といった倒錯した同調圧力に抗することができたどうか、はなはだ心許ない。

福祉事務所の作風を変えていくには、自分たちの人権意識を問い直すことはもちろんだが、外からの批判を受け入れていく開かれた姿勢が必要になってくるはずだ。

考えさせられたのは、人権意識は自然に存在しないという事実である。厚労省を頂点とする生活保護行政の中だけでものを考えていくと、あっというまに人権意識は擦り切れてしまうと思う。

とりわけ、生活保護法「改正」の後は、福祉事務所の現場に援助ではなく監視・管理の雰囲気が強く覆っているように感じている。こうした流れに抗うためにも、ひとりひとりが自分の人権意識を問い直し育んでいく必要があると思う。それは、圧倒的な力関係の中で自分たちの言動が受給者へどのように受け止められるかを想像したり、そのことを同僚のケースワーカーと意識的に話し合ってみることから始まるのだと思う。

私たちは、ひとを監視するのではなく、よりよく生きるための援助をする仕事に従事していることを思い返す必要がある。そのためにも、職場に閉じこもらず外に開いていく姿勢が必要だ。

それにしても、現行での生活保護の運用の仕組みはそろそろ限界を迎えつつあるのではないか?そのことも考えさせる「事件」だと思った。(了)

————

現場の心ある職員たちと共に声をあげていきます

今回、急なお願いにもかかわらず、東京と大阪の6人の職員の方(現役5人、元職員1人)からコメントをいただくことができました。ありがとうございました。

普段から、生活保護行政のあり方を厳しく批判している私の依頼に応えてくださった方々なので、皆さん、それぞれ職場では少数派として肩身の狭い思いをされている人が多いのではないかと推察します。

しかし、「監視・管理」の雰囲気が広がる各福祉事務所において、同調圧力に屈せず、本来あるべき福祉行政のあり方を追求している人たちがいる、ということは大きな希望です。

1月24日(火)には、生活保護問題対策全国会議として、小田原市の担当者との話し合いを行ないますが、小田原市役所の職員の中からも改善に向けた自主的な動きが出てくることを期待したいと思っています。

福祉事務所職員による人権侵害は小田原市だけではなく、全国各地の生活保護行政に共通する根深い「構造的な問題」として存在しています。

職員・元職員の方々が指摘されている「ケースワーカーの専門性(資格要件や研修)」、「職員配置」、「生活保護バッシングや法改悪」、「不正受給対策のあり方」等の問題について、内部の心ある人々とともに、引き続き、声をあげていきたいと考えています。

 

関連記事:ネットから無料で入手可能!知っておきたい生活保護のしくみ

 

小田原市の「保護なめんな」ジャンパー問題、各地の福祉事務所職員は何を思ったのか?(上)

提言・オピニオン

1月17日(火)に記者会見が行われて以来、大問題となった小田原市の「保護なめんな」ジャンパー問題。

本日20日、全国の法律家、研究者、NPO関係者らでつくる生活保護問題対策全国会議は、小田原市長宛の公開質問状を提出。
ジャンパー作成の経緯や生活保護行政の現状、今後の改革の方向性について回答を求めています。
24日(火)には、同会議のメンバーとして小田原市役所に行き、担当者との話し合いを行なう予定ですので、ご注目ください。

生活保護問題対策全国会議ブログ:小田原市長宛てに公開質問状を提出しました

また、ジャンパーだけでなく、小田原市の公式ホームページにも生活保護制度に関する誤った説明が掲載されていることがわかり、SNSでも大きな話題になりました(現在は修正されています)。

関連記事:【改善させました!】「保護なめんなジャンパー」の小田原市ホームページは制度を利用させない「仕掛け」が満載だった。 

私がこのニュースを知って考えたことの一つに、「小田原市以外の福祉事務所で働く職員は、この問題をどう感じたのだろう?」ということでした。

そこで、知り合いの職員にこの問題に関する意見を聞いてみました。匿名を条件に送っていただいたコメントを2回に分けてご紹介します。

 

誰か一人でも「おかしいんじゃないか」と言えれば、違っていたのでは?

まずは、東京都内の福祉事務所で働く現役ケースワーカーの方からのコメント。この方の職場でも、ジャンパー問題は大きな話題になったと言います。

—————-

私の職場ではネットのニュースが流れた時点で、すぐ広まりました。
日頃、受給者ヘイトや保護ヘイトも耳にする私の職場ですが、幸いにして今回の報道では、ジャンパー問題を擁護する論調は聞きませんでした。

もっぱら「ダセっ」「センス悪すぎ」「あんなジャンパーを4000円でなんか買いたくない」と言うセンスにまつわる非難か、「キモ〜」などの揃いのジャンパーを着る気持ちワルさなどの発言しか聞きませんでした。

小田原では過去に刺傷事件があったことがジャンパー製作のきっかけだそうですが、この職場の団結力というのか密集力を、どの方向性に使うのかという問題なのでしょうね。

同調圧力に抗するのが苦手な国民性に加え、地方都市の役所ならば、私のような変わり者が一人もいない(ないし「生息」できない)可能性があります。誰か一人でも「オレは着ないから買わない」「おかしいんじゃないか」とかでも言えれば違ってたんじゃないか、と思います。

ただし希望のひとすじ的に深読みすれば、10年かかってジャンパー嫌悪派・反対派の少数派が勝負をかけたリーク作戦にでた!とは言えまいか。

今回の小田原のみならず、これだけ不正受給の問題がクローズアップされる職場は、どんな援助が行なわれ、どんな雰囲気か、想像できます。これに良しとしない人が内部にいたからこそ表沙汰になったのではないでしょうか?(と、問題がヒドイだけに思いたい)

アト、そもそも論ですが、援助と取締りを同じ職員がしなければならないというのが、矛盾の大きな一つです。究極の感情労働です。

私としては昔から夢見てますが、金銭給付とケースワークの分離、そして限りなく社会手当化すること、最終的にはベーシックインカムを実現することしか、感情労働の問題は克服しえないと思っています。(了)

—————-

普段から、この方が職場で孤軍奮闘されているのがうかがえるコメントです。
ジャンパー問題が発覚した背景に、職場内の少数派がリークをしたのでは?という推測を述べられていますが、確かにこの点は気になるところです。

 

「お揃いのジャンパーを着て家庭訪問」そのものがありえない。

次に大阪市内の福祉事務所でケースワーカーとして働く、ペンネーム「ぴょん吉」さんのご意見です。
「お揃いのジャンパーを着て、家庭訪問をしていた」という事実そのものの問題点を指摘されています。

—————-

生保の現場の感覚から言うと、「お揃いのジャンパーを着て家庭訪問」そのものがあり得ません。

生活保護制度とその利用者に対しては、まだまだ偏見が根強くあります。
貧困は個人の責任ではなく、制度の利用は権利であり、恥ずべきことではないのですが、そうは言っても利用者の方のほとんどが「まわりには知られたくない」という気持ちを強く持たれています。そのため家庭訪問に際しても、生活保護ケースワーカーが訪問していると近所の人に気づかれないように配慮します。

制服やお揃いのジャンパーなどの着用は厳禁です。乗っていく自転車にも役所の名まえは書きません。

生活保護の利用を周囲に知らしめるような行為は、受給抑制につながります。
そういう当たり前の感覚を喪失しているところが大問題だと思います。(了)

—————-

「ぴょん吉」さんには、一昨年、大阪市の保護費プリペイドカードの試験導入についても、ご意見をうかがったことがあります。

この事業は結局、利用が65世帯にとどまり、大阪市は本格実施を取り止めましたが、「生活保護世帯のみ、プリペイドカードで家計を管理する」という発想と、「お揃いのジャンパーで家庭訪問する」という行動は、どこかでつながっていると私は考えます。

この時の「ぴょん吉」さんのご意見もぜひあわせてご覧ください。

関連記事:大阪市・生活保護費プリペイドカード導入は「ケースワーカーにもメリットなし」 現場からも異論の声

 

生活保護バッシング報道が職場に影響を与えている

3人目は、東京都内の福祉事務所で面接員として働いている方です。
ケースワーカーのストレスの原因や、日本社会に根強い自己責任論の影響を考察されています。

—————-

2009年頃、関東のある自治体労働組合が「生活保護現場のケースワーカーにとってストレスは何ですか?」というアンケート調査を行ったことがあります。その時の結果は、約40%の人が「生活保護利用者の方に嘘をつかれること」と回答し第1位でした。

行政職員として勤務している他の部署で「住民の方から嘘をつかれる」という経験をすることはあまりないかと思いますが、なぜ生活保護利用者が嘘をついたのか?その背景に何があるのか?等、本来はそこから福祉的な援助が始まるはずなのですが多くの職員にとっては、それが多大なストレスとなっている実態があるのです。

ちなみに回答の第2位は、「生活保護の仕事に全く遣り甲斐を感じていない」で約30%の方の回答でした。 

近年の生活保護バッシング報道等による「自己責任論」も生活保護現場に大きな影響を与えており、そこから生活保護利用者に対する差別・偏見等が増幅されていると感じています。

生活保護利用者に対する差別・偏見等が強い職場では、生活保護利用者に対して敬称を使わず「〇〇はさー」と利用者の方を呼び捨てにして日常の会話が行われています。今回の問題は、これらの日常が表面化した一部の事例だと思っています。(了)

—————-

この方は、ジャンパーを作った小田原市福祉事務所の体質には、「生活保護利用者に対する差別・偏見等が強い職場」に共通の問題がある、と指摘されています。

一人目の方も「日頃、受給者ヘイトや保護ヘイトも耳にする」と書かれており、こうした差別や偏見が小田原市だけでなく、各地の福祉事務所に広がっていることが推察されます。

小田原市だけでなく、全国各地の福祉事務所のあり方が問われていると言えるでしょう。(次回に続く)

 

【改善させました!】「保護なめんなジャンパー」の小田原市ホームページは制度を利用させない「仕掛け」が満載だった。

提言・オピニオン

※皆様がこの記事を拡散してくれたおかげで、その後、小田原市ホームページの内容は改善されました。詳細は末尾の「追記」をご覧ください。

昨日(1月17日)、神奈川県小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな」等と書かれたお揃いのジャンパーを作り、それを着用して生活保護世帯の家庭訪問を行なっていた、というニュースが飛び込んできました。

この問題は各メディアによって取り上げられましたが、特にTBSと東京新聞が詳しく報じています(一定期間が過ぎるとリンクが切れる可能性があります)。

小田原市 生活保護担当職員、ジャンパーに「なめんな」 News i – TBSの動画ニュースサイト

東京新聞:小田原市職員の上着に「不正受給はクズ」 生活保護担当が市民訪問に着用も:社会(TOKYO Web) 

問題のジャンパーは2007年に当時の係長らの発案によって作られ、これまで64人もの職員が購入したと言います。

記者会見の場で、小田原市の福祉健康部長は「着ていることは承知していた」と認めながらも、「受給者に対する差別意識をもっている職員はいません。そう言い切りたい」と述べましたが、福祉事務所において生活保護利用者を支援の対象ではなく、監視・管理の対象として見る目線が支配的であったのは間違いないと思います。

小田原市の生活保護行政は、生活に困窮している人たちに対して、ふだんどのような対応を行なってきたのでしょうか。

社会学者の岸政彦さんがTwitterで以下のようにつぶやかれているのを見て、私も小田原市の公式ホームページをチェックしてみることにしました。

岸さん

 

こちらが小田原市公式ホームページのトップです(画像をクリックするとリンク先に飛びます。以下、同じ)。

小田原1

 

生活保護に関する情報は、「暮らし」をクリックして、「福祉/健康」というコーナーで見ることができます。

こちらが「生活保護」関連ページのトップ。4つの項目が並べられています。

小田原2

 

もしあなたが小田原市在住で、生活に困窮していたら、このページにアクセスし、一番上にある「生活保護制度について」という項目をクリックするでしょう。

ところが、それは罠なのです。「生活保護について」という項目をクリックすると、出てくるのはこのページになります。

小田原3

 

このページは「生活保護について」というタイトルにもかかわらず、生活保護制度そのものに関する説明はありません。

その代わりに書かれているのは、以下のような内容です。一番問題のある部分を太字にしました。

生活保護よりも民法上の扶養義務(特に親子・兄弟間)の方が優先されますので、ご親族でどの程度の援助ができるか話し合ってください。また、生活保護以外にも生活を支えるための様々な公的な制度(年金・傷病手当・失業保険・労災・児童扶養手当・児童手当など)があります。生活保護は、これらの制度を利用しても最低生活を維持することができない方のための制度です。なお、働く能力のある方は、その能力を最大限活用していただくことが必要です。

生活保護制度には確かに親族の扶養が優先するという規定がありますが、それは保護の申請を受け付けた福祉事務所が親族に連絡を取るという意味であり、生活に困窮する本人が親族に自分で連絡をとることを義務づけるものではありません。

また、DVや親族間での虐待などの問題があれば、扶養できるかどうかの問い合わせは行わないことになっています。

この点について、厚生労働省のホームページでは、以下のように書かれています。

扶養義務者の扶養とは
親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください。

そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されます。

「援助を受けることができる場合は、援助を受けてください」(厚労省)と、「ご親族でどの程度の援助ができるか話し合ってください」(小田原市)では、大違いです。

もしあなたがDVや家庭内の虐待の被害者であれば、「ご親族で~話し合ってください」という文言を見て、絶望し、生活保護の利用をあきらめるでしょう。

小田原市ホームページの記載は、生活保護制度に関する間違った説明をしており、違法性が極めて高いものです。

この他にも、このページには「資産との関係」など、「こういう場合は生活保護を利用できない」という情報ばかり書かれています。

「生活保護制度について」というタイトルでありながら、制度そのものに関する説明は一切なく、「制度が利用できない場合」の説明ばかりが書かれているのです。

では、生活保護制度そのものの説明はどこにあるのでしょうか。

皆さんは、先ほどの「生活保護」に関する「4つの項目」の一番下に「生活保護とは」という項目がひっそりとあるのに気づかれたでしょうか。

小田原2

ここをクリックすると、以下のページが出てきます。

小田原4

 

このホームページの構成からも、小田原市の生活保護行政が意図していることは明確だと思います。

生活に困窮した市民がホームページの「生活保護」コーナーにアクセスしても、まず最初に「こういう場合は受けられない」という情報ばかりを提供する。そこには制度に関する誤った説明も盛り込まれている。

生活保護制度そのものに関する説明は、アクセスしにくいように4つ並べた項目の一番下に置く。

こうしたことからも、今回の「なめんなジャンパー」問題は一部職員の暴走ではなく、組織全体の問題であるとわかります。

公式ホームページの記載は、小田原市で日常的に「水際作戦」や生活保護利用者への人権侵害が行われていたことを疑わせるに充分なものです。

今後、さらに追及していきたいと思います。

ブログ発表後に改善されました!

【1月18日(水)13:30追記】

上記の記事を本日10:45にアップしましたが、その後、小田原市がホームページの一部を改善しました。

改善されたのは、生活保護コーナーの項目の順番です。

問題のある記述が含まれる「生活保護制度について」が一番上から一番下に下がり、制度の趣旨を説明した「生活保護とは」が上に来ました。

しかし、問題の記述自体は改善されていません。引き続き、改善を求めていきます。

改善後のホームページ

改善後のホームページ

 

【1月18日(水)16:00追記】

先ほどまた小田原市ホームページを見たら、問題の箇所が修正されていました。

改善後のホームページ

改善後のホームページ

 

【修正前】生活保護よりも民法上の扶養義務(特に親子・兄弟間)の方が優先されますので、ご親族でどの程度の援助ができるか話し合ってください。

【修正後】生活保護よりも民法上の扶養義務(特に親子・兄弟間)の方が優先されますので、ご親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください。

修正後は、厚生労働省の説明に沿った内容に変更されています。違法性が高いという指摘を受けて修正したものと思われます。

他にも生命保険の解約返戻金の扱い等、改善をすべき箇所はありますが、これで一つ問題が解決しました。

多くの方がSNSなどで声をあげていただいたおかげです。ありがとうございました。

ただ、こうしたホームページを作って放置していた小田原市の生活保護行政の責任は大きいと言わざるをえません。

発端となったジャンパー問題も含め、引き続き、追及をしていくので、よろしくお願いします。

 

2017年を「居住福祉元年」に!~新たな住宅セーフティネットの構築に向けて

提言・オピニオン

福祉行政と住宅行政の連携強化

昨年12月22日、「第一回福祉・住宅行政の連携強化のための連絡協議会」が開催されました。この連絡協議会には、厚生労働省の社会・援護局長や国土交通省の住宅局長を筆頭に関係局の職員が揃って参加し、今後、生活困窮者や高齢者、障害者、ひとり親家庭などを支えるセーフティネット機能の強化に向けて、福祉行政と住宅行政の連携を深めていく、という方向性が確認されました。

世間ではほとんど注目されていませんが、霞ヶ関で始まったこの動きは、この国の福祉政策や住宅政策のあり方を大きく変える可能性があるのではないか、と私は期待しています。

連絡協議会の開催要綱には、「住まいは生活の拠点である。そして、その住まいに医療・介護・生活支援等のサービスを包括的に提供する体制を地域ごとに構築することが生活を支えるために不可欠である。」という文言が掲げられました。これはまさに、神戸大学名誉教授の早川和男さんが提唱してきた「居住福祉」の理念そのものです。

行政の縦割りが貧困問題の解決を阻んでいる

私は、安定した住まいを失った生活困窮者を支援する活動を23年間続けてきましたが、その取り組みを通して痛感してきたのは、「行政の縦割りが貧困問題の解決を阻んでいる」という実態でした。生活に困窮している「ヒト」を支える福祉を厚生労働省が管轄し、その人たちが暮らす住宅という「ハコ」は国土交通省が管轄する、という行政の縦割り構造は、中央省庁だけでなく地方行政のレベルでも貫徹しており、その弊害は様々な場面で現れています。

一例を挙げると、2015年に始まった生活困窮者自立支援制度において恒久化された住居確保給付という制度の問題があります。

もともとこの制度は、「派遣切り」問題が深刻だった2009年に「住宅手当」という名称で始まったものですが、「対象は離職者に限る」、「家賃補助は原則3ヶ月」、「アパートの家賃は補助するが、入居する際に必要な初期費用は支給しない(別枠の制度で審査が通った人のみ貸付)」等といった使い勝手の悪さから、利用者が年々減少し、2015年度の新規利用決定件数は月平均で551人と、かつての6分の1程度まで落ち込んでいます(図の緑の線を参照)。

厚生労働省資料より http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000137286.pdf

厚生労働省資料より
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000137286.pdf

 

関連記事:仕事さえあれば、貧困から抜け出せるのか?~生活困窮者自立支援制度の問題点

こうした現状について、生活困窮者自立支援制度を行政とともに進めてきたNPOの関係者からも疑問の声が出ています。
NPO法人抱樸の理事長である奥田知志さんは、西日本新聞のインタビュー記事において、以下のように指摘しています。

制度は生活保護に至る前に自立を促すという狙いがあるため就労支援に偏りがちで、支援メニューが高齢者にはそぐわないケースが少なくない。居住支援も弱い。離職などで住まいをなくした人には家賃相当額を支給する仕組みがあるが、対象年齢は65歳未満。年齢や状況を問わず、総合的に住まいの確保を支援する策がいるはずだ。

生活困窮者自立支援制度における住宅支援がなぜ弱いのかという問題を突き詰めると、この制度が厚生労働省の管轄であり、国土交通省が関与していないという問題が浮かび上がります。

そのため、厚生労働省は「ヒト」に対して家賃を補助する際も、あくまでそれは再就職支援の一環としての短期的なプログラムという位置づけにとどまります。住まいという「ハコ」に直接関わる分野は、国土交通省の協力がなければ、手を出せないのです。

こうした各省庁の縄張り意識が問題の解決を遠ざけているのは、火を見るよりも明らかです。

一度、頓挫した住宅セーフティネットの整備

この縦割りの問題に国レベルで初めて取り組んだのは、鳩山政権時に内閣の緊急雇用対策本部に設置された「セーフティ・ネットワーク実現チーム」でした。同チームは2010年5月、「離職などによる貧困・困窮者の『居住の権利』を支え(中略)諸外国でとられている家賃補助政策等の状況や課題も踏まえつつ、『居住セーフティネット』の整備に向けた検討を進める。」とする中間とりまとめを発表しましたが、その直後に鳩山首相が退陣した影響もあり、その提言が生かされる機会は失われてしまいました。

しかしその後、国内における貧困拡大にどう対処すべきなのか、という議論が民間レベルで広がるにつれて、福祉政策と住宅政策を一体的に展開する「居住福祉」政策を実現すべきだという私たちの主張は徐々に支持を広げていきました。

近年は、貧困問題に取り組む人々のソーシャルアクションにより、「下流老人」問題(藤田孝典さんによる造語)が深刻化していることや、若年層の貧困が少子化にも影響を与えていることなど、世代を越えて貧困が広がっていることが社会に知られるようになり、これらの問題を解決するためにも生活保護の手前で、住宅セーフティネットを強化すべきである、という主張が広く受け入れられるようになっていきました。

そうした中、国土交通省は来年度から空き家を活用した新たな住宅セーフティネット制度を創設することを決めました。これは、高齢者や障害者、子育て世代の入居を促進するため、空き家の登録制を作り、改修費や家賃軽減化の補助を行うというもので、2017年度予算において27億円が計上されました。

しかし、この事業も国土交通省が単独で実施してしまえば、福祉的な視点を欠くものになりかねません。
そこで、どちらから働きかけたのかはわかりませんが、厚生労働省と国土交通省の連携強化という動きが出てきたのです。

2017年を「居住福祉元年」に!

長年の課題である福祉行政と住宅行政の縦割りは克服できるのでしょうか。不安がないわけではありませんが、ここは大きく、「2017年を『居住福祉元年』に!」と新年の目標を掲げておきたいと思います。

世代を越えて広がる住まいの貧困を解消するためには、新たな住宅セーフティネットの整備が「待ったなし」です。今年を後世から見て、「福祉政策・住宅政策の転換点になった年」と言われるようになるよう、働きかけを強めていきます。

ぜひ皆様からも、厚生労働省・国土交通省の双方に「つまらない縦割り意識を捨てて、居住福祉政策を推進せよ」という声をぶつけていただければと願っています。また、地方行政のレベルでも、福祉行政と住宅行政の連携が進んでいるのか、目を光らせていただければと思います。

ご協力よろしくお願いします。

 

ホームレス問題が解決していないのに、国の文書から「ホームレス」が消える?

提言・オピニオン

「ホームレス」の数が減少しています。厚生労働省の概数調査によると、2016年1月時点での全国の「ホームレス」数は6235人。過去最多だった2003年には25296人を記録していたので、13年間で4分の1まで減った計算になります。この数字の変化は、官民双方による支援策が広がった結果だと評価できると思います。

全国と東京23区の「ホームレス」の人数(厚生労働省と東京都の発表に基づく)

全国と東京23区の「ホームレス」の人数(厚生労働省と東京都の発表に基づく)

しかし、以前から指摘しているように、この概数調査には2つの大きな問題点があります。

一つ目は、昼間の目視調査であるため、ターミナル駅周辺などで夜間のみ野宿をしている人がカウントから漏れる傾向にある点です。
東京工業大学の研究者らで作る市民団体ARCHが今年の冬と夏、都内の複数の区で深夜に独自調査を実施したところ、行政の発表より約2.8倍の人数を確認していました。
「東京ストリートカウント」という名称のこの調査報告は下記のサイトでご覧になれます。

Tokyo Street Count ~東京ストリートカウント~

もう一つの問題点は、「ホームレス」の定義が路上・公園・河川敷など屋外で生活をしている人のみに限定されており、ネットカフェや友人宅など、不安定な居所を転々としている人を含んでいない点です。

これらの問題点は、行政による調査の法的根拠となっているホームレス自立支援法が2002年に施行された当初から指摘されていたのですが、改善がなされることはありませんでした。

ただ、そうした問題はあるものの、行政が「ホームレス」への支援策を実施しながら、その効果を測定するため、定期的に概数調査を行なってきたことは、一定の意義があることだと私は考えています。

2017年、ホームレス自立支援法が消滅?

ホームレス自立支援法は10年間の時限立法であり、2012年には5年間の延長措置が取られていますが、その期限も来年(2017年)には終了になります。

政府は、2015年に施行された生活困窮者自立支援法の枠内でホームレス対策も対応できる、という考えで、ホームレス自立支援法の再延長には消極的だと伝えられています。

この方針に対し、長年、ホームレスの人たちを支援してきた各地の団体の関係者から疑問の声があがっています。

ホームレス自立支援法が「消滅」することの問題点はいくつもあります。
最も深刻なのは、ホームレス対策の効果測定として実施されてきた概数調査が実施されなくなる可能性がある、という問題です。生活困窮者自立支援法には調査に関する規定が盛り込まれていないからです。

全国の支援団体でつくる「ホームレス支援全国ネットワーク」は、「なぜこれからもホームレス自立支援法が必要か―ホームレス自立支援法の政策効果を持続させるために」というリーフレットを制作し、同法の延長を求めています。

私も、従来の調査手法や「ホームレス」の定義の改善を求めながらも、ホームレス問題における国や自治体の責任を明記したホームレス自立支援法が消滅してしまえば、ホームレス問題が見えないものにさせられてしまうのではないか、という懸念を拭えないでいます。

改善しつつあるとは言え、この国のホームレス問題はまだ解決していません。
問題自体は無くなっていないのに、「ホームレス」という名前のついた法律が消えてしまえば、国の文書から「ホームレス」という単語がなくなってしまいかねません。

ホームレス自立支援法の再延長を求める動きにぜひご注目をお願いいたします。

 

関連記事:【2016年11月18日】 「『まず住まい』のホームレス支援 民間団体が試み」 ハウジングファーストの紹介記事が朝日新聞に掲載 

 

「誰が貧困を拡大させているのか」という議論を恐れてはならない。

提言・オピニオン

昨日12月13日、参議院内閣委員会で統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)が自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決されました。

また同日、年金支給額を抑制する新ルールを盛り込んだ年金制度改革関連法案(年金カット法案)も、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で参議院厚生労働委員会で可決されました。

両法案は、本日14日の参議院本会議で可決・成立する見込みです。

国会議事堂

私はカジノ法案について、現在でも深刻な国内のギャンブル依存症問題を悪化させ、ホームレス問題などの貧困問題を深刻化させるものだとして、反対の論陣を張ってきました。

関連記事:ギャンブル依存症問題を悪化させるカジノ法案は通してはならない。

こうした主張をすると、必ずと言っていいほど、「パチンコはいいのか?」という意見が飛んでくるのですが、私はパチンコへの規制も強化すべきだと考えています。少なくとも、駅前などアクセスしやすい場所での出店は規制すべきです。

参議院内閣委員会では、ギャンブル依存症対策を明示することなどの法案修正が行われましたが、生活困窮者支援の現場においてギャンブル依存症に苦しむ人たちを何人も見てきた者として、「対策をすれば、カジノを解禁してもよい」という主張はギャンブル依存症の怖さを全く理解していない言説だと言わざるをえません。

もう一方の年金カット法案も、将来にわたって高齢者の貧困を拡大させかねません。

今年3月に生活保護世帯に占める高齢者世帯の割合が初めて半数を超えました。その背景には、増え続ける低年金・無年金の高齢者が生活保護に頼らざるをえないという状況があります。

その後も生活保護を申請する高齢者世帯は増え続け、全体の生活保護世帯数も過去最多を更新し続けています。

生活保護世帯の増加に対して、厚生労働省の担当者は「依然として、1人暮らしを中心に高齢者世帯の増加に歯止めがかかっていない。高齢者が貧困に陥らないよう対策を検討していく必要がある」とNHKの取材(今年12月7日のNHKニュース。ネットはリンク切れ)に答えていますが、今回の年金カット法案は全く逆の方向を向いており、生活保護世帯の更なる増加を助長するものだと言えます。

このように、今国会における与党や日本維新の会の動きは、「政治が貧困問題の解決を遠ざけている」と言わざるを得ないものでした。

 

 「左派と見られるのが怖い」症候群?

私が気になるのは、こうした政治の動きに対して、生活困窮者支援に関わっている人たちからの問題提起が少なくなっているのではないか、ということです。

拙著『貧困の現場から社会を変える』でも書きましたが、今年2016年は日本国内で貧困問題が「再発見」されてから10年という節目の年になります。

関連記事:日本社会で貧困が「再発見」されてから10年。貧困対策は進んだのか? 

この10年間に、子どもの貧困対策法や生活困窮者自立支援法が制定され、貧困対策は徐々に制度化されつつあります(後者に対しては私は批判的ですが)。

民間レベルでも、「子ども食堂」や貧困家庭の子どもへの学習支援が広がるなど、10年前に比べると、広い意味で生活困窮者支援に関わる人の数は増えてきています。そのこと自体は歓迎すべきことだと思います。

私自身も、つくろい東京ファンドという団体で、「子ども食堂」や自前での住宅支援事業を展開しており、目の前で困っている人たちを支える活動の重要性は充分に理解しているつもりです。

そうした民間レベルでの支援活動を広げるためには、時には行政機関と連携する必要もあり、また企業も含めた幅広い人たちに活動を支持をしてもらう必要もあります。

しかし、貧困問題に関わる団体や個人が「幅広い支持」を求めるあまり、今の政治の動きに対して「まずい」と思っていても沈黙をしてしまう、という傾向が生まれてはいないでしょうか。

カジノ法案や年金カット法案、生活保護基準の引き下げといった「政治的」な課題に対して意見を述べると、自分たちの活動が色メガネで見られるようになり、支持が広がらなくなってしまうのではないか、と恐れてしまう。「左派と見られるのが怖い」症候群とでも言うべき現象が広がりつつあるように、私には思えます。

政治が良くも悪くも貧困に対して現状維持の立場を取っているのであれば、国政の課題にはタッチせず、目の前のことに集中する、という姿勢も有効かもしれません。

しかし残念ながら、今の政治が貧困を拡大させ続けているのは明白です。一人ひとりの生活困窮者を支えていく現場の努力を踏みにじるがごとき政治の動きに対して、内心、憤りを感じている関係者は多いのではないかと思います。

そうであれば、貧困の現場を知っている者として、社会に発信をしていくべきではないでしょうか。団体での発信は難しい場合もあるかもしれませんが、個々人がSNSなどで意見を述べるのは自由なはずです。

貧困問題を本気で解決したいのであれば、「誰が貧困を拡大させているのか」という議論を避けて通ることはできないのです。

現場レベルで貧困対策を少しでも進めることと、将来にわたる貧困の拡大を防ぐために政治に物を申していくことは決して矛盾していません。

その両方に取り組んでいくことの重要性を改めて強調しておきたいと思います。

 

生活保護引下げ違憲 東京国賠訴訟が進行中!12月19日(月)、傍聴に集まろう!

提言・オピニオン

私も応援している生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の第3回口頭弁論が、12月19日(月)11時より東京地裁103号法廷で開かれます。

傍聴をご希望の方は、早めに東京地裁の正門前に(地下鉄「霞ヶ関」駅A1出口すぐ)にお集まりください。

口頭弁論終了後は、報告集会も予定されています。ぜひご注目ください!

161219

 

以下は、弁護団のブログより。

【拡散お願い】
生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)の第3回口頭弁論期日が2016年12月19日(月曜)11時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。
2013年8月1日以降3回にわたって実施された生活保護基準の引下げは憲法25条違反だとして、都内の生活保護受給者の皆さんが、国などに対し、国家賠償と保護費減額の取消しを求めています。
原告のなかには、障害を抱えている方も多いです。「健康で文化的な最低限度の生活」の保障をないがしろにさせないためにも、ぜひ傍聴に来ていただきたいと思います。
閉廷後、11時40分ころから、TKP新橋内幸町ビジネスセンター601で報告集会も予定しています。
こちらにもご参加をお願いします。

※2013年8月1日以降1年8か月の間に3回にわたって生活保護費の引下げがありました。保護費は生活困窮者の命をつなぐもの。引下げは死活問題です。このため、全国の受給者850人以上が集団訴訟で国家賠償などを求めています。
東京地裁で行われている「生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟」の略称は、引下げの日を忘れないため「はっさく訴訟」としました。
市民による「支える会」の結成も予定しております。

弁護団・原告団・支える会連絡先:〒171-0021 東京都豊島区西池袋1丁目17番10号 エキニア池袋6階 城北法律事務所内 生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟弁護団/
電話03-3988-4866(担当=平松・木下)
Facebookページ:https://www.facebook.com/hassakusosho も見て下さい。

関連記事:生活保護基準引下げは違憲!東京国賠訴訟がスタートします! 

 

ギャンブル依存症問題を悪化させるカジノ法案は通してはならない。

提言・オピニオン

12月6日、衆議院本会議において、カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案(カジノ法案)が自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決されました。内部に反対意見の多い公明党は自主投票となり、自民党内にも異論の声があると報じられていますが、自民党の執行部は今国会での成立をめざしています。

推進派は、カジノ法案が地方の経済活性化につながると主張していますが、治安悪化やマネーロンダリング(資金洗浄)への悪用など、カジノ解禁に伴う懸念点は払拭されていません。

生活困窮者支援を行なってきた者として、私が最も懸念するのは、ただでさえ深刻な国内のギャンブル依存症問題がカジノの開設によって悪化するという問題です。

厚生労働省の研究班は2014年に発表した調査結果において、日本人の成人人口のうち約536万人が国際的に使われる指標でギャンブル依存の状態にあると推計しています。これは成人人口の4.8%にあたり、海外の同様の調査と比べても突出して多い数字です。536万人の内訳は、438万人(成人男性の8.7%)、女性が98万人(成人1.8%)で圧倒的に男性が多いことがわかっています。ちなみに、依存症の代表格として言及されることの多いアルコール依存は、同じ調査で109万人と推計されています。

こうした状況は国内のホームレス問題にも影響しています。NPO法人ビッグイシュー基金が2010年に発表した『若者ホームレス白書』では、聞き取りを行なった20代、30代のホームレス男性50人のうち、依存症傾向にある人は18人おり、そのうち、アルコール依存は4人、ギャンブル依存が14人という結果が出ています。

%e4%be%9d%e5%ad%98%e7%97%87%e5%82%be%e5%90%91
私がこれまで行なってきた路上生活者への相談活動の中でも、パチンコや公営ギャンブルに毎日のように通ってしまい、生活が破綻したという話は何度も聞いたことがあります。

欧米では薬物依存とホームレス問題の関連がよく知られていますが、日本では薬物でもアルコールでもなく、ギャンブル依存が最もホームレス問題に直結している依存症だと言えます。

本人の自己責任で片付けられることの多いギャンブル依存症ですが、精神科医で作家の帚木蓬生さんは、「ギャンブル障害には誰でも陥る可能性がある」、「陥るか陥らないかの差は、ほぼ環境要因で決まる」と指摘しています。

ギャンブル依存症の実態については、ビッグイシュー基金が作成した2冊の報告書がよくまとまっているので、ぜひご参考にしてください。

新レポート『疑似カジノ化している日本:ギャンブル依存症はどういうかたちの社会問題か?』完成しました!

依存症の実態に迫る!『ギャンブル依存症からの生還―回復者12人の記録』が完成

帚木蓬生さんは「環境そのものにギャンブルしやすさが整っていると、ギャンブル症者は確実に増えます」とも指摘しています。このことを踏まえると、カジノ解禁がギャンブル依存症問題の悪化に直結するのは確実だと言えます。

韓国では、外国人のみがカジノに出入りできる時代が長く続いていましたが、2000年に韓国人も利用できる「江原ランドカジノ」がオープンして以降、カジノで全財産を失った人がホームレス化するという問題が深刻化したという報道がなされています。

こうした依存症問題について、推進派はカジノ開設とともに依存症対策を強化するから問題ないと主張しています。

確かに自助グループへの支援など依存症対策の強化は必要ですが、依存症が完治しない病気である(回復はするが、いったん依存症になったら脳の状態は戻らない)ことを踏まえると、依存症対策をすればカジノを作っていい、という主張は「消防車を増やすから火事を出してもいい」といったレベルの論理であり、まさにマッチポンプでしかありません。

現在でも深刻な日本のギャンブル依存症問題に対する最も有効な対策は、新たなギャンブルを作らないことです。また同時に、パチンコへの規制強化も必要です。

カジノ法案には、最近にしては珍しく、全国紙5紙の社説が反対で一致しました。参議院が「良識の府」として、この法案にストップをかけることを心から望みます。

第3回国連人間居住会議が17日開催!日本政府は国内に住まいの貧困があることを認めたくないの?

提言・オピニオン

国内ではほとんど注目をされていませんが、10月17日からエクアドルの首都キトで第3回国連人間居住会議(ハビタットⅢ)が開催されます。

「適切な居住への権利」は基本的人権であることが宣言されたハビタットⅡから20年を経ての開催になります。

関連記事:「住まいは人権」から20年。今こそ、住宅政策の転換を! 

ハビタットⅢでは、前回会議からの20年間に進められてきた各国の取組実績をもとに、人間居住にかかわる課題の解決に向けた国際的な取組方針「ニュー・アーバン・アジェンダ」をとりまとめられる予定です。

いわば、各国の提出した「通信簿」をもとに、新たな計画を決めようというわけです。

では、日本政府はこの20年間の「人間居住」に関する取り組みをどのように自己評価しているのでしょうか。

外務省のウェブサイトに、日本政府が提出した「ナショナルレポート」の全体版(英語)と概要(日本語)がアップされています。

外務省:第3回国連人間居住会議(ハビタット3)に向けた国別報告書の提出 

%e3%83%8a%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%8a%e3%83%ab%e3%83%ac%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%88%e8%a1%a8%e7%b4%99

驚くべきことにこのレポートでは、日本国内の「住まいの貧困」について全く触れられていません。英語の全体版を見ても、homelessという単語は一度も登場せず、日本国内で適切な住宅を確保できていない人は存在しないかのような書きぶりです。

東日本大震災の復興に関しても、「新しい東北(“New Tohoku”)の創造」といった美しい言葉ばかりが並び、被災者の住宅状況については「住宅再建とコミュニティ復興を加速化」としか触れられていません。東京電力・福島第一原発事故からの避難者についても「長期避難者に生活のための基盤を提供」と、全く問題がないかのような記述になっています。

この甘すぎる自己採点に対して、国内の住宅問題に取り組んできた団体で、以下の共同見解を発表しました。ぜひご一読いただき、「ナショナルレポート」の問題点と「人間居住」に関して、本来、政府が行なうべき政策について、考えていただければと思います。

 

第3回国連人間居住会議(ハビタットⅢ)の開催にあたって

日本政府報告書の問題点と私たちの見解

 

2016年10月15日

日本住宅会議理事長 塩崎賢明
国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事 坂庭国晴
住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人 稲葉 剛

 

はじめに―ハビタットⅢ、南米エクアドルで開催

2016年10月17日~20日、南米エクアドルの首都キトで第3回国連人間居住会議(略称・ハビタットⅢ、人間居住に関わる課題解決のために開催される正式な国連会議)が開催される。

1996年トルコのイスタンブールで開催されたハビタットⅡから20年ぶりの開催で、テーマはhousing and sustainable urban development(住宅と持続可能な都市整備)で、前回Ⅱのテーマを引き継いでいる。その開催主旨は、「前回会議からの20年間進められてきた各国の取組実績をもとに、急速に進展する都市化を成長に結びつけることにより、幅広い人間居住に係る課題の解決に向けた国際的な取り組み方針『ニュー・アーバン・アジェンダ』をとりまとめる」こととなっている。

私たちは、日本における様々な住宅問題に携わっている団体として、「幅広い人間居住に係る課題の解決」は極めて重要であり、そのための議論が深められることを期待している。そして、「国際的な取り組み方針」がこうした議論を経て採択され、ハビタットⅢが成果をあげることを願っている。

日本政府報告書と居住貧困の現実

ハビタットⅢの開催に向けて、日本政府は2015年12月に「ナショナル・レポート」を提出している。これは「我が国のこれまでの経験と次世代に向けた課題について、有識者の意見等を踏まえ、我が国の人間居住に関する国別報告書をとりまとめた」ものとされている。

しかし、この報告書は、ハビタットⅢにおいて今後の国際的な取り組み方針に反映されるべき日本の公式文書としては、きわめて重大な問題を含んでいる。

・前回ハビタットⅡの宣言

そもそも前回のハビタットⅡのアジェンダ(行動綱領)では、「すべての人のための適切な住宅」が主要な柱として、次のように盛り込まれた。「われわれは、諸国際文書が定めた適切な住宅に対する権利の完全で漸進的な実現に向けての誓約を再確認するものである。この脈絡において、人びとが住まいを確保でき住宅と近隣を保護し改良できるようにする、政府のもつ義務を確認する」とし、「われわれは人権の基準と完全に合致する態度をとり、この目的を実施、促進しなければならない」と明確に宣言したのである。

したがって、当然日本はこの20年間における「住まいの確保、住宅と近隣の保護・改良」のための取り組みとその結果を報告すべきであるが、報告書はそうした内容にほとんど触れていない

・日本政府報告書での「住宅について」

報告書は、6つの章から成り立っているが、住宅については、最後の章で以下のようにごくわずか述べているだけである。

住宅については、2003年には、世帯数(4,700万世帯)を住宅戸数(約5,400万戸)が上回る状況となった。本格的な少子高齢社会、人口・世帯減少社会の到来等を契機に、2006年に「住生活基本法」を制定し、「住宅の量の確保」から「住宅の質の向上」へと政策を転換した。今日では、「サービス付き高齢者向け住宅」などによる高齢者が安心して暮らせる住まいと生活に係る福祉サービス等の一体的供給や住宅の省エネ性能の向上、低炭素社会の実現に向けた取組等が課題になっている。(日本語版概要)

・住宅貧困の記述なし―政府報告書

まず、ここで「2003年には世帯数を住宅戸数が上回る状況となった」としているが、わが国で、住宅戸数が世帯数を上回ったのは1968年であり、それ以来一貫して住宅戸数は世帯数より多いのである。2003年をことさら強調することには意味がない。

より重大な問題は、住宅戸数が世帯数よりはるかに多く、膨大な空き家が発生しているにも関わらず、ホームレス、ネットカフェ難民、脱法ハウスなど住まいに困窮する人々が大量に存在している現状に全く触れていない点である。現在大きな問題となっている空き家問題についても触れていない。また、住生活基本法の制定について述べているものの、住まいに困窮する人々(住宅確保要配慮者)に対する住宅セーフティネットについては、民間賃貸住宅を活用するために居住支援協議会を作るとしているだけで、現実に低所得者、被災者、高齢者、子育て世帯などの住宅貧困を解決する課題については記述がない。逆に、「地域優良賃貸住宅が効果的に使われている」、「公共住宅がUR(都市再生機構)などによって建設されている」(英文報告書)と述べられているが、実際には公共住宅の新規建設は事実上ストップしており、現実とかけ離れている。

・わが国の公営住宅の現状と居住権の侵害

今年7月、政府審議会の「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」は、高齢者等の住宅確保要配慮者にとって住宅セーフティネットである公営住宅の応募倍率が東京都22.8倍、全国5.8倍(2014年)となっていることをふまえ、「応募倍率は大都市圏を中心に高い状況にあり、希望しても入居できない世帯が多く存在する状況にある」としている。「希望しても入居できない世帯が多く存在する状況」を認めているのであるが、この状況は20年間何ら改善されていない。

それどころか、2009年度から実施された入居収入基準の大幅引き下げ(月収20万円以下から月収15万8千円以下に変更)によって、公営住宅を「希望することさえできない状況」が作り出されている。

事実、2006年度の全国の公営住宅応募者は931,771世帯(応募倍率9.6倍)であったが、2013年度には同642,614世帯(6.6倍)となり、29万世帯も減少している。つまり制度改悪によって応募者が締め出されたのであって、住宅セーフティネットの状況はむしろ悪化しているのである。

東京都内では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴う新国立競技場の建設や関連工事により、国立競技場近隣に300戸ある東京都の公営住宅・霞ヶ丘アパートの住民の追い出しが行われ、また、明治公園など各地の野宿者が立ち退きにさらされている。政府報告書は日本国内で居住の権利が侵害されている現実に向き合うべきであるが、その記述も見られない。

大震災・原発事故被災者の住まいの問題

報告書の第3章「地球温暖化対策と災害に強い地域づくりに向けて」では東日本大震災について次のように述べている。

2011年3月、東日本大震災により18,000人以上の死者・行方不明者が発生し、最重要課題として復興の加速化に取り組んでいる。復興に際して、『新しい東北』の創造、世界のモデルとなる『創造と可能性ある未来社会』の形成を全国に先駆けて目指す考え方も示された。2014年6月、『国土強靭化基本計画』が策定され、これに基づき、政府一丸となって強靭な国づくりを計画的に進めていく。また、わが国は、2015年3月に第3回国連防災世界会議をホストし(於仙台市)、我が国の知見を広く国際社会に発信共有し、防災の主流化を提案する。(日本語版概要)

・住宅難民の状態が続く―政府の理不尽な対応

驚くことに、ここには「被災者」やその住まいについての記述が全く登場しない。東日本大震災から5年半を経過するが、今なお14万人の人々が避難し、終の棲家に到達できず、先行きの見えない状況が続いている。また、兵庫県・神戸市・西宮市では、21年前の阪神・淡路大震災で借上げ公営住宅に入居した被災者が行政によって強制退去させられようとしている。東日本大震災や熊本地震等、近年頻発している災害の被災者の住宅再建は立ち遅れており、3000人以上の関連死を生み出した避難所や仮設住宅の非人間的な居住環境は一刻も早く改善されなければならない。

東京電力福島第一原発事故による被災者は全国に散らばり、先行きの見えない状態が長く続いている。加えて自主避難者を対象に、福島県が実施している住宅の無償提供が2017年3月末に打ち切られるという問題も発生している。

日本政府の報告書は、このような被災者の置かれている現状に触れないまま、復興庁の設置、復興予算25兆円の投入、復興の加速化、「新しい東北」の取り組みなどの記述に終始している。政府が取るべき姿勢は、現在進行中の被災者の深刻な居住問題に正面から向きあうことである。

「住生活基本法」とあるべき住宅政策

2006年の「住生活基本法」の制定と「政策転換」はどのようなものであったか。当時の政府は、「住宅及び住宅資金の直接供給のための政策手法について、抜本的な改革が行われてきたところであり、その総仕上げとして、今般、住生活基本法の制定により、住宅セーフティネットの確保を図りつつ、健全な住宅市場を整備するとともに、国民の住生活の質の向上を図る政策への本格的な転換を図る道筋が示された」と説明した。

しかし、「政策手法の抜本的な改革」のもとで、実際には、①ハビタットⅡが開催された1996年から、住宅セーフティネットの主柱である公営住宅制度の「抜本的改悪」が進められ、今日では新規建設供給の廃止に至っている。②住宅公団は、2004年に独立行政法人「都市再生機構」(UR)に改組され、賃貸住宅の直接供給が廃止された。③住宅金融公庫は、2007年に独立行政法人「住宅金融支援機構」に改組され、個人向け住宅融資は原則廃止された。

このように、「政策の転換」の中身は、公的住宅制度の縮小、廃止だったのであり、「その総仕上げとして、住生活基本法の制定」が行われたのである。

・「住宅セーフティネット」とハビタットの理念

住生活基本法の重要な柱である「住宅セーフティネットの確保」は、実現しない事態が今日まで続いている。そのことは今年3月閣議決定された「住生活基本計画」がよく示している。そこでは、「住宅確保要配慮者の増加に対応するため、・・・住宅セーフティネット機能を強化」するとし、「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」を設置して、「新たな仕組みの構築」に乗り出さざるをえなくなった。検討小委員会では、「高齢者世帯や子育て世帯のみならず、障害者、外国人、低所得の若年単身世帯を含む低額所得者等の住宅確保要配慮者について」対応することが示されている。そして「新たな住宅セーフティネット制度は、公営住宅を補完するものとして、公営住宅の入居対象世帯も含め、多様な住宅確保要配慮者を対象とすることが考えられる」として、公的住宅制度に準ずる仕組みの構築が検討されている。これは、1年前から政府が検討しているものであるが、これらの動きについては今回の政府報告書にはまったく触れられていないのである。

私たちは、ハビタットⅢの開催にあたって、現在検討されている「新たな住宅セーフティネット」が我が国の住宅困窮各層の実態と要求に基づき、実効性のあるものとすることを強く求めるものである。また、公営住宅制度をはじめとした公的住宅制度の再生、充実・強化を求めるものである。

さらに、私たちはこうした狭義の住宅政策のみならず、都市政策、福祉政策、災害復興等、「人間居住」に関連するあらゆる政策において、「住まいは基本的人権である」というハビタット(国連人間居住会議)の理念が貫かれることを政府に求めるものである。

空き家活用型セーフティネット住宅が実現へ!対象者は?家賃補助はどうなる?

提言・オピニオン

住まいの貧困が広がる中、国レベルで住宅セーフティネットの拡充を図る動きが本格化しています。

国土交通省に設置された「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」は、7月に「中間とりまとめ」を発表。
国交省はこれを受け、8月末の来年度概算要求で「子育て世帯や高齢者世帯が安心して暮らせる住まいの確保」、「民間の賃貸住宅を活用した、住宅セーフティネット制度を創設」、「サービス付き高齢者向け住宅や住宅団地に子育て支援施設の整備の推進」などに1320億円の予算を要求しました。

特に注目されるのは、空き家を活用した新たな住宅セーフティネット制度です。
小委員会は年内に最終とりまとめを行ない、来年国会に向け、予算案とともに関連法改正案が用意される予定です。

関連記事:「空き家活用+家賃補助」の新たな住宅セーフティネット整備へ!

 

しかし、この新たな住宅セーフティネット制度はまだまだ不明瞭な点がたくさんあります。

国土交通省住宅局の概算要求を見てみましょう。

子育て世帯や高齢者世帯などの住宅確保要配慮者の増加に対応するため、民間賃貸住宅や空き家を活用した新たな住宅セーフティネット制度を創設し、住宅確保要配慮者向けの住宅(あんしん入居住宅(仮称))の改修や入居者負担の軽減等への支援を行う。併せて、居住支援協議会等による住宅確保要配慮者の円滑な入居等を図るための活動への支援を行う。

また、イメージ図によると、「あんしん入居住宅」(仮称)は以下の2種類に分かれています・

・認定あんしん入居住宅(仮称)
一定の要件を満たす子育て世帯、高齢者世帯、障害者世帯等向けの専用住宅

・登録あんしん入居住宅(仮称)
子育て世帯、高齢者世帯、障害者世帯などの入居を拒まない住宅

このうち、「国・地方公共団体による家賃低廉化補助」や「保証料等補助」を受けられるのは、「認定」の方のみとなっています。

 

%e6%a6%82%e7%ae%97%e8%a6%81%e6%b1%822

「家賃低廉化補助」というのは、実質的な家賃補助だと考えられます。実際に低家賃になるのは「認定」だけのようです。
そうすると、「認定」の対象者や入居条件が気になりますが、「一定の要件を満たす子育て世帯、高齢者世帯、障害者世帯等」という書き方ではよくわかりません。

近年は、一人暮らしの若者の間でも住まいの貧困が広がっていますが、「等」の中に若年単身者が含まれるかどうかは、今の時点で明らかになっていません。

私が懸念するのは、空き家の登録制度ができて、登録される物件が増えても、実際には低所得者が入れる家賃水準の住宅がほとんど供給されず、しかもそこに入るのが公営住宅のように「狭き門」になる、という事態です。

そのためには、「認定あんしん入居住宅(仮称)」の対象者や入居資格をなるべく広くさせ、戸数も確保させる必要があります。

せっかくできる新制度を実効性のあるものにしていくためには、多くの人がこの制度に関心を持ち、声をあげていくことが必要だと考えます。

私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」など3団体は、10月26日(水)に「今こそ、住宅セーフティネットの拡充を!」と題した院内集会を参議院議員会館で開催します。ぜひご参加ください。

10・26院内集会
「今こそ、住宅セーフティネットの拡充を!」

と き 2016年10月26日(水)13時~15時30分
ところ 参議院議員会館1階101会議室 東京メトロ「永田町」駅すぐ。

※当日は12時30分から議員会館1階ロビーで会議室への通行証を配布します。

集会の詳細は、こちら。

 

< 1 2 3 4 5 6 7 8 >