メディア掲載

【2019年10月28日】「AERA」に住まいの貧困に関する記事が掲載

メディア掲載

週刊誌「AERA」2019年10月28日号に、住まいの貧困に関する記事が掲載され、稲葉のコメントも出ました。

ネット版は下記でご覧になれます。

若者に「住まいの貧困」が急増中 家をなくす背景には何が… (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

漫画喫茶で一人で出産…漂流する妊婦も 「住まいの貧困」対策が急務 (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット) 

【2019年10月25日】東京新聞特報面記事「『命を守る行動を』って何? 逃げられない人も」にコメント掲載

メディア掲載

2019年10月25日付け東京新聞特報面記事「『命を守る行動を』って何? 逃げられない人も」に、稲葉のコメントが掲載されました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2019102502000147.html

「命を守る行動を」って何? 逃げられない人も

今回の台風19号でも、テレビから何度も聞こえてきた「命を守る行動を取ってください」という言葉。人々を緊急に避難に駆り立てるには、これぐらい強い口調も必要だという声もあるのだが、違和感も拭えない。「命を守る行動」は各人によって違うし、行動できない災害弱者も多いはず。「自分の身は自分で守れ」と突き放すなら、災害から国民を守るという政府の責務はどうなるのか。「命を守る行動を」という言葉の裏側を探った。 (安藤恭子、中山岳)

(中略)

生活困窮者を支援する立教大学大学院の稲葉剛・特任准教授は、東京都台東区が避難所に来た野宿者二人の利用を拒んだケースを挙げ「社会的弱者に対する人権意識が乏しい自治体で問題があらわになった。野宿者だけでなく高齢者や障害者などにも、日ごろからきめ細かく支援する意識がなければ、災害時に対応できない」と指摘する。

(後略)

 

 

【2019年10月19日】毎日新聞「多摩川のホームレス 都内唯一の死者に 救えなかったか」にコメント掲載

メディア掲載

2019年10月19日付け毎日新聞記事「多摩川のホームレス 都内唯一の死者に 救えなかったか」に、稲葉のコメントが掲載されました。

亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

https://mainichi.jp/articles/20191019/k00/00m/040/075000c

多摩川のホームレス 都内唯一の死者に 救えなかったか

台風19号通過後の14日、東京都日野市の多摩川河川敷で路上生活者とみられる男性の遺体が見つかった。18日現在、今回の台風災害で都内唯一の死者とみられる。同市や日野署はこの男性とみられる人を含めて河川敷で生活する人の存在を把握していたという。救いの手は届かなかったのか。
日野署によると、14日午後、日野市日野の河川敷で通行人の男性から「男の人が木に引っかかっている」と110番通報があった。署員が駆け付けると、中州の木に体が引っかかっている状態の男性が見つかり、その場で死亡が確認された。

ズボンをはいていたが上半身裸で、身元の分かる所持品はなかった。同署は市、国土交通省京浜河川事務所(横浜市)と共同で7月に河川敷周辺の路上生活者を調査、その際に確認した70代の男性とひげや容姿が似ていたという。目立った外傷はなく、解剖の結果、溺死と分かった。12日午後以降に増水した川に流されたとみられる。

河川事務所は9、10の両日、多摩川河川敷を回り路上生活者に増水が予想されるので川の外に出るように呼びかけるビラを配ったという。市は防災無線で避難を呼びかけていたと説明する。

立川市で路上生活者を支援するNPO法人「さんきゅうハウス」の大沢豊理事長は「穏やかで、知識豊富な人だった。いつも中州にいたので、逃げようとした時には増水していたのかもしれない。台風前に避難を呼びかけていたら」と悔やむ。

路上生活者に食料を届ける活動をしている有賀精一・日野市議によると、男性は数年前から河川敷で生活し、3年ほど前に増水した時に流されたことがあると話していたという。「知的好奇心が高く、顔を合わせる度に選挙や社会問題について尋ねられた」と振り返る。今月4日に訪ねた際も元気そうな様子で、いつも通り世間話をして別れたという。

生活困窮者支援に詳しい稲葉剛・立教大大学院特任准教授は「日野市の状況が分からないが、男性の存在を把握していたはずで、台風が来る前に声を掛けていればよかった。本来、生活保護などの公的支援につなげるべき対象であり、行政には時間をかけた継続的な関わりが求められる」と話す。【安達恒太郎、和田浩明】

【2019年10月13日】台東区避難所「路上生活者拒否」問題で各メディアにコメント掲載

メディア掲載

2019年10月13日、台東区の自主避難所が路上生活者を拒否した問題で、各メディアに稲葉のコメントが掲載されました。

【毎日新聞】

https://mainichi.jp/articles/20191013/k00/00m/040/266000c

路上生活者の避難拒否 自治体の意識の差が浮き彫りに

専門家「究極の差別だ」

台風19号に伴って開設した避難所で、東京都台東区は路上生活者など区内の住所を提示できない人を受け入れなかった。生活困窮者支援の専門家からは「究極の差別だ」などとの批判が上がる。東京都内では住所の区別なく受け入れた区もあり、「災害弱者」への意識の差が浮き彫りになった。【塩田彩、江畑佳明/統合デジタル取材センター】
受け入れを断られた北海道出身の男性(64)は12日午前、支援団体の案内を受けて忍岡小の避難所を訪れたが、受付で北海道内の現住所を記載したところ、区の担当者から受け入れられないと言われたという。

男性は脳梗塞(こうそく)を患い、会話が不自由な状態だ。約1カ月前に上京し、路上生活を続けていたという。屋内に避難できなかったため、12日夜はJR上野駅周辺の建物の陰で傘を差して風雨をしのいだ。取材に対し男性は「避難所に受け入れてくれたら助かったのにという思いはある」と語った。

今回の台東区の対応について、生活困窮者支援に詳しい立教大大学院特任准教授の稲葉剛さんは「行政による究極の社会的排除であり差別と言わざるを得ない。緊急時に路上生活者が命の危機にさらされる、という意識が薄いのではないか」と批判する。

(後略)

【BuzzFeed ニュース】

https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/typhoon-evacuation-center-taito

台東区が路上生活者の避難所利用を拒否。「来るという観点なく援助の対象から漏れた」と担当者 

(前略)

「明らかな差別で命に格差をつけている」

NPO法人ビッグイシュー基金理事、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事を務める稲葉剛さんは、「人命に関わることであるのに、明らかな差別。命に格差をつけているということになる」と台東区の対応を批判する。

「そもそも現実として、気象庁も『命を守ることを最優先にした行動を』と呼びかけているのに、路上生活者は排除された。人々の命を守ることが行政に課せられた義務のはずです」

稲葉さんは立教大学大学院で貧困・社会的排除、居住福祉論などを教え、1994年から東京を拠点に路上生活者支援をしている。

風雨から身を守る家がない路上生活者は災害時にもっとも被害を受けやすく、これまでにも台風が来た際に、増水した多摩川で小屋が流されて路上生活者が亡くなったこともあったという。「住民票がない路上生活者は、亡くなっていても分からないというのが現実です」と稲葉さんは話す。

20年以上前から発生していた問題

ホームレス状態の人が路上で雑誌販売をするビッグイシューで現金収入を得ている方などは「台風が来るという情報を得ると、少しずつ現金を貯めて、台風の日はネットカフェなどに泊まる」という。

しかし、現金収入などもなく行き場がない路上生活者は台風の際、「ビルの隙間など、より安全な場所を求めて過ごしている」と、稲葉さんは説明する。

稲葉さんによると、路上生活者の避難所利用の問題は、1995年の阪神・淡路大震災の際に発生し、抗議の声があがった。そこからは行政の対応も整ってきていたという。

今回、台東区の対応で、その問題がまた再燃している形だ。稲葉さんはこう指摘する。

「山谷や上野公園がある台東区はそもそも都内でも1、2を争う路上生活者が多い区だが、福祉事務所の対応は普段から厳しい。今回の件はそれが露骨に浮き彫りになったのだと思います」

【2019年9月17日】毎日新聞「低所得者・高齢者住宅 物件登録6%止まり 居住支援、態勢整わず」にコメント掲載

メディア掲載

2019年9月17日付け毎日新聞朝刊の記事「低所得者・高齢者住宅 物件登録6%止まり 居住支援、態勢整わず」に、稲葉のコメントが掲載されました。

https://mainichi.jp/articles/20190917/ddm/012/040/040000c

低所得者・高齢者住宅 物件登録6%止まり 居住支援、態勢整わず

賃貸住宅への入居を断られやすい低所得者や高齢者ら向けの住宅を確保するため、空き住宅を活用する国の「新たな住宅セーフティーネット制度」がほとんど機能していない。空き家・空き部屋を活用し、2020年度末までに17万5000戸を確保するのが目標だが、今月4日現在で制度への登録は約6%の1万723戸にとどまる。住宅オーナーが不払いリスクを避けていることなどから、登録が進んでいない。【牧野宏美】

(中略)
稲葉剛・立教大特任准教授(居住福祉論)も「オーナーの善意を前提とした登録制度には無理がある。本当のセーフティネットとなるには、みなし仮設のように賃貸物件を自治体が借り上げる公的支援にするか、現制度を続けるなら家賃補助をもっと拡充させる必要がある」と提言する。

(後略)

関連記事:【2019年7月15日】東京新聞「低所得者らを拒まぬ物件『登録住宅』目標の5%止まり」にコメント掲載

【2019年7月10日】東京新聞「LGBT 行き場失い生活困窮 差別や偏見なくす法整備進めて」にコメント掲載

メディア掲載

2019年7月10日付け東京新聞「<参院選ルポ>LGBT 行き場失い生活困窮 差別や偏見なくす法整備進めて」という記事に、稲葉のコメントが掲載されました。

 

<参院選ルポ>LGBT 行き場失い生活困窮 差別や偏見なくす法整備進めて

梅雨空が広がる日曜午後。埼玉県の派遣社員の男性(47)は、東京・新宿二丁目で毎月開かれる同性愛者の交流イベントに参加した。十数人が集まったビル三階の会場。男性が三十代のゲイの友人に声をかけると、「元気そうじゃん」。長野に出掛けたことや、よく行く飲食店などたわいのない話をしながら一時間余を過ごした。

男性は二十代半ばでゲイと自覚した。「同性愛を隠さずにいられる居場所。自分が生きていると実感し、世の中とつながっていると確認できる」と話す。だが、そんな場所は多くはない。

男性は今年一月、派遣先の神奈川県内の工場を辞めた。親しい同僚にだけ、ゲイと打ち明けた直後、その同僚から仕事中に何回も後ろからズボンに手を入れられた。股間を触られそうになり、本人や派遣元の担当者に「セクハラだ」と訴えたが、対応してもらえず職場に居づらくなった。「ばかにされた感じがした」

退職して会社の寮を出たため、家を失った。男性は大手鉄道会社の正社員を辞めてから転職を繰り返し、蓄えもなかった。中野区のマンションの一室でNPO法人などが運営するシェルター「LGBT支援ハウス」を頼るしかなかった。

参院選では、与野党ともに多様性ある社会の実現やLGBT理解を掲げる。自民は選挙公約に「理解の増進を目的とした議員立法の速やかな制定」と明記する。先の国会で法案提出を目指していたが、見送っている。党内事情に詳しい関係者は「当事者が何に困っているか、まだ見えていない。党内の法整備の優先度は低い」と明かす。昨年十二月に野党六党派が共同提出した「LGBT差別解消法案」も審議されぬままだ。

男性は二月末に再就職してシェルターを出た。今は埼玉県内の工場で働く。新しい職場ではまだ誰にもゲイと打ち明けてはいない。

男性は「日本では同性間のセクハラを訴えても聞いてもらえない。同性カップルは結婚できないし、パートナーの死に際に会えなかったり、財産を相続できなかったりするのもおかしい。皆が生きやすい世の中へのルールを作ってほしい」と願う。

一人で苦しんでいるのは男性だけではない。シェルターの運営メンバーで、エイズに関する啓発や支援をしてきたNPO法人「ぷれいす東京」代表の生島嗣さん(60)は「LGBTには、セクシュアリティーの問題があるために家族と疎遠で、周囲に『助けて』と言えない人が少なくない」と説明する。

学校や職場で、いじめやハラスメントの被害を受けやすく、心身の不調から退職などに追い込まれ、住まいを失う場合もある。昨冬の開設以来、シェルターには男性を含め三人が入居した。運営に携わる立教大大学院特任准教授の稲葉剛さん(50)は「LGBT困窮者への支援ニーズが高いことが確認できた。背景には根強い差別や偏見がある」と話し、差別をなくす取り組みや支援の重要性を訴えた。 (奥野斐)

<LGBTと法整備> LGBTはレズビアン(女性同性愛者=L)、ゲイ(男性同性愛者=G)、バイセクシュアル(両性愛者=B)、トランスジェンダー(出生時の性別と異なる性を自認する人=T)を指し、性的少数者の総称としても使われる。世界では70超の国で性的指向に関する差別を禁じた法制度があるが、日本にはない。先進7カ国(G7)で同性婚やパートナーシップが法的に認められないのは日本のみ。同性カップルを自治体が認める「パートナーシップ制度」は全国24自治体(7月1日現在)に広がったが、法的効力はない。

 

※「LGBT支援ハウス」は、LGBTハウジングファーストを考える会・東京が運営をしています。同会のウェブサイトはこちらですので、ぜひご覧ください(下の画像をクリックしてください)。

【2019年7月23日】朝日新聞「耕論:選挙戦で見えたものは」にインタビュー記事掲載

メディア掲載

2019年7月23日付け朝日新聞「耕論:選挙戦で見えたものは」に、稲葉のインタビュー記事が掲載されました。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14108684.html

(耕論)選挙戦で見えたものは

■2019参院選

令和最初の参院選が終わった。衆参ダブル選挙を回避した与党の判断は功を奏したのか。野党の「共闘」はうまくいったのか。消費増税や年金の「2千万円」問題はどう影響したのか。「3分の2」を与えなかった民意に「改憲勢力」の次の動きは。この選挙を通じて、私たちに「希望」は見えたのだろうか。

社会運動からの課題提起、ようやく光 

稲葉剛さん(つくろい東京ファンド代表理事)  

今回の参院選では、野党が「2千万円問題」で与党を攻め立てる構図が見られました。年金だけでは老後の生活を支えられないのではないか、という有権者の深刻な不安を背景にした批判です。

2千万円問題があぶり出したのは、日本社会の「中間層」にあたる人々が経済的にやせ細り、その地盤沈下がいよいよ隠せなくなってきているという実態でしょう。実際、この十数年間に日本では、貧困の問題が拡大してきています。

選挙戦で示された野党の主張を見ていて以前と変わりつつあるなと感じたのは、住まいの問題に光が当てられ始めたことです。賃貸住宅で暮らす世帯への「家賃補助」が掲げられたり、低家賃の「公的住宅」を拡大する政策が訴えられたりしていました。持ち家を奨励する政策が中心で、賃貸住宅での暮らしを充実・安定させる政策が手薄だと言われてきた日本にあって、ようやく住宅政策の見直しが意識され始めているのです。

個々人の収入を増やす政策や生活保護などの福祉政策だけではもはや足りないことが明らかになり、生活の根幹である「居住」のありようを見直すことも必要だという認識が広がっている構図です。

振り返れば、日本社会で貧困の存在が可視化されたのは今から10年ほど前のことでした。派遣切りに遭った人たちを支援する派遣村が設けられ、注目を集めたことが契機になっています。

この10年間に起きた変化の一つは、絶対的貧困と呼ばれる問題の改善です。貧困に苦しむ人への支援が広がり、路上生活者がこの時期に約5分の1に減っていることが象徴的です。もう一つ起きたのが、相対的貧困の増大です。生活が苦しいと感じる人が増えてきたのです。相対的貧困の問題が深刻化したのは、政府の政策によって非正規労働が拡大されたことが要因だと私は見ます。目的は、企業の人件費負担を圧縮するためでした。

中間層に持ち家を持たせることを支援する従来の住宅政策は、正規労働者を中心とする「日本型雇用システム」の存在を前提にしていました。30年以上もの長期間にわたって住宅ローンを支払い続けられる労働者が必要であり、終身雇用と年功序列を特徴とする旧来の雇用システムが、それを支えていました。また住宅費と並ぶ重い負担である子どもの教育費についても、年功序列の賃金上昇でカバーできました。かつて老後が安定していたとすればそれは、ローンを払い終えた持ち家と、夫婦2人分の生活を支えられる年金があったからだと思います。

この旧システムの特徴は、住宅や教育への重い出費を各世帯が「賃金収入から払う」ことでした。しかし、それが成り立つ前提は2000年代を通じて崩れました。非正規労働が広がり、住宅費も教育費も賃金収入で担う方式の無理があらわになった。家賃負担にあえぐ世帯のために公的な家賃補助や公共住宅の充実といった政策が提示され始めたのは、そうした社会の変化を映したものです。

非正規労働の拡大によって従来の日本型雇用システムは崩壊しました。にもかかわらず、政治は人々の生活を支える新しい仕組みを提示できず、従来のシステムの手直しにとどまっています。こうした現状が、いま日本を覆っている行き詰まり感の根っこにあると思います。

社会をより良くしようと活動する人々と多く出会っていて少し不安を感じるのは、NPOや社会的起業による民間の創意工夫には高い関心を向ける半面、政府の政策を変えようとする動きが低調な傾向です。政治へのあきらめがあるのかもしれませんが、民間だけでは貧困は解決できません。貧困のような構造的な問題を解決するには、政府の巨大な力を活用して普遍的な支援の体制を築きあげていく作業がやはり欠かせないのです。

生活への公的な支援を充実させる方向に政府の役割を変えるべきだという異議申し立ては、参院選での議論にも表れたと思います。ただ、それが旧システムの終わりの始まりになるかは未知数です。投票率は低く、日本では自己責任論が広がり、社会としての連帯感は10年前より後退している印象さえあるからです。

先日、元ハンセン病患者の家族を支援する方向に政府が政策を転換しました。参院選を意識したものだと言われましたが、長年にわたる当事者や支援者の地道な活動があっての転換だった事実を忘れるべきではありません。日本では社会運動が弱いと指摘されますが、今回の転換から見えたのは、この社会にも「課題を設定する力」はあるという事実です。

問題は山積みですが、社会運動による課題提起の力を、野党の公約だけでなく現実政治の転換にまでつなげていければと考えています。(聞き手 編集委員・塩倉裕)

いなばつよし 1969年生まれ。つくろい東京ファンドなどを拠点に貧困解消の活動に取り組む。立教大学特任准教授(居住福祉論)。

【2019年7月15日】東京新聞「低所得者らを拒まぬ物件『登録住宅』目標の5%止まり」にコメント掲載

メディア掲載

2019年7月15日付け東京新聞の記事「低所得者らを拒まぬ物件『登録住宅』目標の5%止まり」に、稲葉のコメントが掲載されました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201907/CK2019071502000130.html

<参院選 ともに>低所得者らを拒まぬ物件 「登録住宅」目標の5%止まり

民間賃貸住宅の入居を断られやすい低所得者や高齢者、障害者らを拒まない「登録住宅」制度が、発足から一年半たっても、政府目標の5%程度の約九千戸にとどまっている。低所得者を受け入れた家主に家賃の一部を補助する仕組みも、本年度に予算化したのは全国で四十五自治体だけ。民間の空き家・空き室を活用して低所得者らの住まいの確保を目指す政策は、十分に機能していない。 (北條香子)

国土交通省への取材で分かった。制度は二〇一七年十月施行の改正住宅セーフティネット法に基づく。賃貸人が低所得者ら「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない物件を都道府県などに登録し、行政側は配慮が必要な人に情報提供する。専用の住宅にすれば、国や自治体からバリアフリー化や防火・消火対策工事費の補助を受けることもできる。

政府は登録住宅を年間五万戸程度増やし、二〇年度末までに十七万五千戸にする目標だ。だが七月一日現在の登録戸数は九千百十七戸で目標を大きく下回る。

自治体が家主に家賃の一部を補助する制度を、昨年度利用したのは四十九戸。本紙調べでは、東京特別区と関東六県の県庁所在地、政令市計三十一のうち、本年度に補助費を予算化したのは世田谷、豊島、練馬、墨田各区と横浜市だけ。板橋区住宅政策課の清水三紀課長は「補助は数年で終わるものではない」と、財政的な事情から制度化に踏み切れないと説明する。

制度が進まない背景には、周知不足に加え、家主の負担感があるとみられる。

国交省は昨年、登録手続きを簡素化し、自治体に手数料撤廃を要請した。住宅総合整備課の担当者は「手数料がなくなればハードルが減り、大手事業者にも登録をお願いしやすい環境が整った」と、家主の負担を減らしたことでの登録増を見込む。

東京都は今月九日、登録住宅に入居した高齢者の見守りサービス費の半額を支援するモデル事業を始めた。安否確認や孤独死の際の原状回復費を補償することで、家主の負担減を目指す。遠藤邦敏・安心居住推進担当課長によると「住宅セーフティネット制度」での自治体による見守りサービス補助は全国で初めて。

(中略)

住宅問題相談などに応じている「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人の稲葉剛氏は「家主の善意に頼るのは限界がある。借り上げ型公営住宅のような仕組みが必要だ」と提案している。(北條香子)

 

【2019年7月18日】 東京新聞「<参院選>隠れ住む『貸倉庫難民』」にコメント掲載

メディア掲載

2019年7月18日付け東京新聞の記事にコメントが掲載されました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019071802000162.html

<参院選>隠れ住む「貸倉庫難民」 非正規労働者「ここは底辺」

 

階段を上り、二階のフロアに通じるドアを開けると、狭い通路の両側にドアがずらり。二畳ほどのスペースが薄い板で仕切られている。「グオーン」と空調の鈍い音が響き、踊り場にある共用のトイレや洗い場からはカビの臭いが漂う。

ここは東京二十三区内にある三階建て雑居ビル。にぎやかな商店街にひっそりたたずみ、「レンタルルーム」や「レンタルスペース」と呼ばれる貸倉庫となっている。

「非正規労働者が増え、貸倉庫にまで住むようになった」。生活困窮者の支援者からそんな話を聞いた。窓がない、仕切りの素材が燃えやすいなど住居としての建築基準を満たさないが、利用料金の安さから住み着く人が出てきたという。

夕方、仕事終わりとみられる作業着姿の人や、弁当を手にする人がビルの鍵付きの玄関に吸い込まれていく。運営会社から住むのを禁じられており、利用者の口は一様に重いが、「絶対内緒ですよ」と、二十代の利用者が鍵を開けてくれた。

    ◇

午後六時すぎ。幾つかの部屋から物音が聞こえる。Tシャツ、短パン姿の中年の男性はリラックスした様子で用を足しに出てきた。

招き入れてくれた男性によると二十四時間出入りが可能でほとんどの部屋に人が住んでいるという。部屋の中を見ることは拒まれたが、ホームページによると約百室あり、窓がない部屋もある。一部屋の契約額は月三万円程度だ。

運営会社は「物置」や「休憩室」としての用途を示し、住むことは禁じている。だが利用者にとってはアパートより月の支払いが安く、敷金や礼金もない。毎日、入退室手続きが必要なインターネットカフェに比べても、月単位で借りられ、荷物を置いて仕事に行けるため便利。職場の口コミなどで広がり、住む人が増えているという。

男性は道路整備のアルバイトで日銭を稼いでいる。「住んで一カ月ぐらいだが、ここは底辺。狭いし、汚いし、早く抜け出したい」と吐き捨てるように言った。

後日、都内で同じ会社が運営する同種の雑居ビルを訪ね、一階のコインシャワーから出てきた四十代男性に話を聞いた。定職がないため不動産屋からアパート契約を拒まれ、一年前から住んでいるという。今は知り合いの親方の下で建築現場で働き、月の収入は二十数万円。「親方からの仕事がなくなれば、働く場所もなくなる」と、髪を拭いていたタオルで顔を覆った。

雇い止めされた非正規労働者らが寮などを追われ、インターネットカフェで寝泊まりする「ネットカフェ難民」が、世間に知られるようになって十年以上がたつ。生活困窮者を支援してきた立教大大学院特任准教授の稲葉剛さん(50)は「今はネットカフェだけでなく、貸倉庫やサウナ、二十四時間営業のファストフード店などに居住が広がり、実態が見えづらくなっている」と指摘する。

安倍晋三首相は、完全失業率が民主党政権下の4%台から2%台に改善したことを「アベノミクス」の成果だと強調しているが、昨年の国の調査では、雇用者のうち四割が非正規だ。

「団塊世代の大量退職で働き口はあるけれど、労働者は相変わらず低賃金で、雇用も不安定」と稲葉さん。「狭い部屋で寝泊まりすれば体を壊すし、孤立感からうつっぽくなる。生活保護に至る前に、低家賃の公営住宅や家賃補助制度を設けるなどの住居対策が選挙のもっと大きな争点にならないと」と訴えた。

コインシャワーで出会った四十代男性は「頭が悪いから政治はわからない」と投げやりだが、将来は不安だ。最近、同じ現場で働く高齢者に自分の未来が重なる。「物覚えが悪く、作業も遅い。それでもうちで働けなくなればホームレスになると親方も分かっているから、クビにできない」

「俺はそうはなりたくないけど、酒や遊びを控えても金はたまらないし、体もきつくなってきた。どうやってこの生活から抜け出せばいいのか」。力なく話し、倉庫への階段を上っていった。 (原田遼)

<生活困窮者の住居> 「オフィス」「倉庫」などとして貸し出され、実際には多人数が寝起きしている建物を、国土交通省は、住居の建築基準を満たさない「違法貸しルーム」と定義。昨年は防火や採光の設備が足りていないとして、全国の都道府県などが1458件の貸主に是正指導した。一方、東京都は2016年度にネットカフェやサウナなど夜通し営業する店舗で実態調査し、住居を失い寝泊まりしている利用者が都内に1日4000人いると推計を出した。

関連記事:参院選:各党の住宅政策を比較する~住まいの貧困対策に熱心なのはどこ?(住まいの貧困に取り組むネットワークブログ)

【2019年7月12日】 朝日新聞東京版「参院選 私の争点」にインタビュー記事掲載

メディア掲載

2019年7月12日付け朝日新聞東京版に稲葉のインタビュー記事が掲載されました。

https://www.asahi.com/articles/ASM787H1YM78UTIL03W.html

参院選2019 私の争点

つくろい東京ファンド代表理事 稲葉剛さん(50)

学生時代に路上生活者の支援に関わったのを機に、貧困問題に取り組んで25年になります。数字上の失業率は改善し、働ける世代の生活保護は減りましたが、実態をよく見ると、状況はよくなるどころか、悪化の一途をたどっているようにみえます。

若い世代では、非正規雇用の不安定な仕事が多いため、ネットカフェなどで暮らさざるをえない「住居喪失者」が増加。都内では2017年に4千人と、この10年間で倍増しました。24時間営業のファミレスやファストフード店、カプセルホテル、サウナ、友人宅などを転々とし、路上生活の一歩手前で都会を漂流する人が増えているのを実感しています。

高齢者も同様です。生活保護世帯に占める高齢者世帯の割合が年々増え、現在は半数を超えました。根っこにあるのは年金問題。家賃が高い東京で、年金が少ない一人暮らしの高齢者は生活できません。年金政策と住宅政策の失敗で、生活保護に頼らざるをえない高齢者が増えている。

07年に始まった反貧困運動にかかわりましたが、存在しないとされていた国内の貧困問題を可視化するのが目標でした。08~09年の派遣切り問題によって貧困は誰の目にも明らかになり、貧困を生み出す社会のあり方を再考しようとする動きが広がりました。

しかし、今は自分と家族が生き残るのが精いっぱいで、社会のあり方に目を向ける余裕のない人が増えているような気がする。悪い意味で、貧困が存在することがあたり前の社会になってしまったと言えます。

ここ数年はブラック企業批判など、若者の生きづらさや経済的な困難を言語化することで改善につながった例も出てきています。声を上げることで制度や社会の意識を変えるという経験を積み重ねていくしかない。選挙もその機会の一つなのだと思います。(聞き手・小林太一)

いなば・つよし 広島県生まれ。2001年に「自立生活サポートセンター・もやい」を設立し、14年まで理事長。15年から立教大大学院特任准教授。

 

関連記事:参院選:各党の住宅政策を比較する~住まいの貧困対策に熱心なのはどこ?(住まいの貧困に取り組むネットワークブログ)

 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >