提言・オピニオン

共同声明「人間と住宅の破壊をもたらす安保法制(戦争法案)の廃棄を」

提言・オピニオン

私が世話人を務める住まいの貧困に取り組むネットワークは、日本住宅会議、国民の住まいを守る全国連絡会とともに、共同声明「人間と住宅の破壊をもたらす安保法制(戦争法案)の廃棄を」を発表しました。

ぜひご一読ください。

2014年6月14日、「住まいは貧困デー」パレードにて。

2014年6月14日、「住まいは人権デー」パレードにて。

********************

住宅関係3団体の共同声明

人間と住宅の破壊をもたらす安保法制(戦争法案)の廃棄を

安倍政権は、国民の圧倒的な反対の声を押し切り、また多くの憲法学者や専門家の指摘を無視し、安保法制を強行しようとしている。この法案は、明確に憲法に違反するだけでなく、平和をもたらすどころか、日本を再び戦争の危険にさらすものであり、我われは、法案の即時廃棄を求める。

戦争は人間と住宅の最悪の破壊をもたらすものである。現代においては、とりわけ先の世界大戦での痛恨の教訓を忘れることはできない。日本の侵略戦争によって、中国、朝鮮、東南アジアをはじめとするアジア・太平洋地域では2千万人を超える人々が殺戮され、膨大な住宅が破壊されたのは70数年前のことである。

日本では300万人を越す人々が、戦争によってかけがいのない命を落した。そして戦争によって直接失われた住宅は265万戸にのぼった。この中には、強制疎開による取り壊し住宅55万戸が含まれている。さらに、海外からの帰国・引揚げ者の住宅不足67万戸、戦時中の住宅供給不足が120万戸あり、1945年の終戦時には合計420万戸(戦災死による住宅減約30万戸を差し引いたもの)という絶対的住宅不足におちいったのである。全国の住宅(この当時の住宅数は1,450万戸)の実に約2割が戦争により破壊され、戦争による住宅不足と合わせ全住宅の3割に及ぶきわめて深刻な住宅難、住宅困窮が生じたのである。こうして、わが国では、数百万人の人々がホームレスに突き落とされたのである。

この苦難と惨禍の上に、わが国の平和憲法が成立し、戦後の住宅復興が行われた。しかし、住宅政策が極めて不十分な中で、絶対的住宅不足の解消は戦後半世紀以上にも及んだのである。そして今また、住宅・居住政策の無策が続き、新たなホームレス、住まいの貧困が広がる今日にある。

我われは、日本国憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づく、すべての人々への住宅保障の実現を、第9条の順守と共に強く求める。また、戦争への道に突き進むのではなく、軍事費を大幅に削減し、公営住宅の新規建設、家賃補助制度の実施など住宅予算に充てることを要求する。
住宅関係3団体は、人間と住宅の破壊をもたらす安保法制(戦争法案)の廃棄に向けて共同し、たたかう決意を新たにするものである。

2015年7月14日

日本住宅会議・理事長 塩崎賢明
国民の住まいを守る全国連絡会・代表幹事 坂庭国晴
住まいの貧困に取り組むネットワーク・世話人 稲葉剛

********************

また、私は個人の立場で以下の声明・アピールにも賛同しています。

いのちと暮らしを脅かす安全保障関連法案に反対する医療・介護・福祉関係者の会

安全保障関連法案に反対する学者の会

「安保法案 東京大学人緊急抗議集会・アピール」実行委員会

各市民団体、大学、職場などで安保法制反対の声が広がっていますが、安倍政権は今週、衆議院で強行採決に踏み切ると言われています。

国会周辺では連日の抗議行動が予定されています。

強行採決反対!国会正門前行動(7.15~17)

私も一人の市民として行動に参加します。ぜひ多くの方のご参加をお願いいたします。

安保法制は戦争のための人材調達システムを生み出し、私たちの社会を決定的に変質させる。

提言・オピニオン

国会では安保法制の審議が進んでいます。報道によると、与党は来週にも衆議院特別委員会での強行採決を準備していると言います。

安保法制が通ってしまった場合、自衛隊の活動範囲は地球の裏側まで広がることになります。米軍など他国軍への軍事的な支援も実施されるようになり、自衛隊が海外で戦闘に参加したり、巻き込まれたりするリスクは高まることになります。

自衛隊員のリスクに関する野党議員の質問に対して、政府は一貫して「リスクは増大しない」と否定してきましたが、6月12日、中谷元・防衛相は衆議院特別委員会で、「法律に伴う(自衛隊員の)リスクが増える可能性はある」と認めました。

また、自衛隊員が海外活動によりPTSDなどの精神疾患を発症する可能性についても、中谷大臣は6月15日の特別委で「海外派遣は過酷な環境での活動が想定され、隊員の精神的な負担は相当大きい。PTSDを含む精神的な問題が生じる可能性がある」と認めた上で、「隊員のストレス軽減に必要な措置を講じ、メンタルヘルスチェックを常に行いたい」と述べました。

野党の追及により、自衛隊の活動拡大に伴う隊員のリスクを政府も認めざるをえなくなっています。

安保法制が成立して、自衛隊の海外派遣が常態化してしまえば、自衛隊は人員を大幅に増やす必要に迫られます。
しかし、隊員が命を落としたり、精神疾患に罹患するリスクが高まれば、人材の確保は困難になっていくでしょう。

政府はそうなることを見越して、自衛隊員のリクルートシステムをさらに強化していくでしょう。
以下は昨年7月に集団的自衛権を容認する閣議決定がなされたことを受けて書いた記事ですが、ここでも指摘した「経済的徴兵制」、「赤紙なき徴兵制」が強化されるのは必至だと考えます。

集団的自衛権容認で「赤紙なき徴兵制」が強化されるのか?

すでに様々な方から、自衛隊が高校生への違法な勧誘をおこなっていることや、奨学金の返済延滞者に防衛省のインターンをさせようとする動きがあることが報告されています。

高校3年生の子どもに自衛隊から「赤紙」届きました(※「赤紙」=「赤紙なき徴兵制」「経済的徴兵制」)(井上伸)

【田中龍作ジャーナル】「経済的徴兵制」 日本学生支援機構・委員がマッチポンプ

安保法制が通れば、こうした動きは一気に加速化し、全国津々浦々で自衛隊員をリクルートしていくシステムが張り巡らされることになるでしょう。
生命を失う「リスク」があることを前提に、常に人員を補充していくためのリクルートシステムが出来上がるのです。
その主たるターゲットとなるのは貧困家庭の子どもたちです。

IMG_2923

戦闘に駆り出されるのは自衛隊員だけではありません。
ジャーナリストの吉田敏浩さんは、自衛隊の海外での軍事活動には「輸送、装備の修理・整備、通信機器の設置・調整、物資の調達などの面で、幅広い民間企業のサポート」が必要であることを指摘し、過去のイラク派遣やインド洋派遣でもさまざまな民間企業が自衛隊の活動をサポートしてきたことを指摘しています。

戦争の足音 第26回 安倍政権の「戦争法案」を考える(2) 民間も戦争協力に組み込む (吉田敏浩)

戦争の足音 第31回 安倍政権の「戦争法案」を考える(7) 密かに進んできた自衛隊支援の”戦地出張” (吉田敏浩)

こうした民間企業の自衛隊支援は、形式上、政府が企業に協力を要請する形を取りますが、それぞれの企業で働く社員にとっては業務命令を断るのは難しいため、強制に近い意味を持つでしょう。

このように安保法制に伴う自衛隊の海外派兵拡大は、防衛省を中心に学校や企業を巻き込んだ「戦争のための人員調達システム」を必然的に生み出します。
「精神疾患になる可能性が高い」、「死亡するリスクが高い」ことを前提に人を集めることは、ある意味、社会全体が「ブラック企業」化してしまうことを意味します。
そのことは、私たちの社会を平時から決定的に変質させるでしょう。

この夏、私たちの社会はそうした岐路に立っているのです。

 

国会周辺では安保法制に反対する抗議行動が連日のように行われています。

私も一人の市民として、行動に参加していきます。皆さんもぜひご参加ください。

戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

自由と民主主義のための学生緊急行動

制度の狭間で孤立する低年金の高齢者をどう支えるのか(追記あり)

提言・オピニオン

2013年の大晦日、私の携帯に病院から電話がかかってきました。私が入院時に緊急連絡先になった70代のUさん(男性)が危篤状態にあるという内容でした。

その数時間後、Uさんは亡くなりました。病院関係者によると、内臓疾患のために入院していたUさんはその日、どうしても家に帰ると言い張り、看護師の静止を振り切って一時帰宅したと言います。夕方、無事に病院に戻ってきたのですが、すぐに病状が悪化。帰らぬ人となりました。Uさんが帰宅したかった理由は「部屋に置きっぱなしの現金が気になるから」。入院が長引き、医療費が支払えなくなることを心配したのでしょう。最後までお金の心配をし続けた人生でした。

Uさんとの出会いは十年以上前にさかのぼります。当時、渋谷で路上生活をしていたUさんは、ちょうど年金を受給できる年齢になり、アルバイトと年金の収入をあわせて、家賃が約3万円のアパートに入りました。その入居にあたっての保証人になることを頼まれたのです。

数年後、体調を崩したUさんはアルバイトを辞め、年金収入のみで生活をするようになりました。しかし、年金の金額は月額11万数千円ほどしかなく、ぎりぎりの生活を強いられることになります。2ヶ月に一度の年金の支給日の直前には、いつも「生活が苦しい」と訴えていたのを覚えています。

 生活保護を利用できない低年金の高齢者

私は何度かUさんの相談にのり、Uさんが生活保護を利用できないか検討しました。

しかし、70代単身の生活保護の基準は「現在住んでいるところの家賃額に7万数千円をプラスした金額」であり、何度計算をしてみても、Uさんは収入オーバーで、ぎりぎり対象にならないことがわかりました。生活保護の適用には医療費も考慮されるので、医療費も計算に入れてみたのですが、それもダメでした。

生活保護の基準は、よく13万円程度(東京の単身者の場合)と言われますが、これは家賃が上限額(53700円)かそれに近いアパートに住んでいる場合の基準になります。実際の基準は、その世帯の住宅費がいくらかかっているかによって変わります。Uさんの場合、家賃が高いところに住んでいれば、生活保護の対象となったはずですが、家賃が安いアパートに入ったために制度から排除される、という結果になったのでした。

さらに付け加えると、かつては70歳以上の生活保護利用者には月1万数千円の老齢加算がありましたが、この加算は2004年度から段階的に廃止されてしまいました。老齢加算があった時代なら、単身の高齢者の基準は「家賃プラス約9万」になるので、Uさんも生活保護を利用できたはずなのですが、老齢加算が廃止された結果、Uさんのような年金生活者は生活保護から排除されてしまったのです。

2013年8月からは、ほぼ全世帯で生活保護の基準が段階的に切り下げられてしまいました。これにより、低年金の高齢者はますます生活保護から遠ざけられています。

年金収入があっても、就労収入があっても、収入が基準以下で、活用できる資産がないなどの要件を満たせば生活保護は利用できるのですが、基準が下がると収入要件の幅が狭まってしまうのです。

私は何度かUさんの相談にのり、最終的には安いアパートから転居した上で、生活保護を申請する方法を考えました。しかし、その準備をしている間にUさんは体調を悪化させて入院し、そのまま亡くなられたのです。

年金

私はこれまで20年以上、生活困窮者の相談・支援活動をおこない、生活保護制度を利用することで生活を再建できた例を数多く見てきました。しかし、その一方で、一番対応に苦慮してきたのは、Uさんのようにぎりぎりで生活保護を使えない低年金の高齢者でした。

それは、月の年金額が「家賃プラス約8万円くらいの金額」の人ということになります。

日弁連は独自にまとめた生活保護法の改正案の中で、住宅費や医療費などの援助をもっと柔軟な基準で支給できるよう提言しています。パッケージとしての生活保護制度全体は利用できなくても、住宅のみ、医療のみといった支援がもっと柔軟に受けられれば、制度の狭間はなくなっていくはずです。

※日弁連「生活保護法改正要綱案」

年金額・家賃額と事件の起きた日付けは何を意味するのか

私がUさんのことを思い出したのは、6月30日に東海道新幹線で焼身自殺を図った男性の生活状況が徐々に明らかになり、彼の年金額が約12万、アパートの家賃が約4万であると知ったからでした。

当初、年金額が12万円とだけ聞いた時は、生活保護の対象になったのかもしれないと感じたのですが、部屋の家賃が4万円だと知り、彼もまたぎりぎりで対象外だったのかもしれないと考えるようになりました。

詳しい状況を踏まえないと何とも言えませんが、彼もまたUさんのように制度の狭間にいた高齢者だったのかもしれません。

また、彼が6月の最後の日に事件を起こしたのも、家賃の支払いと関係があったのかもしれないと感じました。報道によると、6月分の家賃を滞納していたようです。

通常、アパートの家賃は前月の末に払うので、6月末を過ぎると、7月分の家賃も滞納となり、家賃滞納が2ヶ月目に突入してしまいます。

アパートの入居者は借地借家法で定められた居住権があるので、本来、2ヶ月程度の家賃滞納では部屋を退去しなくてもいいのですが、そういった知識を持っていないと、「2ヶ月滞納が続いたので、もう退去しないといけない。ホームレスになるしかない」と感じたとしてもおかしくありません。

生活困窮の末に、家を失ってしまうという絶望感が、あのような行為の引き金になった可能性があるのではないでしょうか。

結果的に火災を発生させ、多数の死傷者を出した彼の行為は許されるものではありませんが、事件の背後に何があったのか、どうすれば悲劇をなくせるのか、私たちは考えていく必要があります。

【追記】

新幹線で焼身自殺をした男性の経済状況について、元福祉事務所職員の田川英信さんが国民健康保険料等を勘案すると 「保護の対象になる可能性が高いです」と指摘されています。田川さんのコメントは、みわよしこさんの記事に掲載されています。

下流老人の新幹線焼身自殺は、生活保護で防げたか|生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ|ダイヤモンド・オンライン

ご参考にしてください。

単身・低所得の高齢者が安心してアパート入居できる仕組みを!

提言・オピニオン

5月17日に川崎市で発生した簡易宿泊所火災は、26日に入院していた男性が亡くなったため、死者が10人まで増えました。
現在、各マスメディアが火災の背景にある「住まいの貧困」に関する取材を進めていて、私のところにも数社が取材に来ています。
劣悪な居住環境で暮らす単身・低所得の高齢者が犠牲になる火災は、2009年の「たまゆら」火災、2011年の新宿区木造アパート火災など、過去にも何度も繰り返されてきました。
そのたびに単身・低所得の高齢者が「住まいの貧困」に陥っている状況は報道されていたのですが、残念ながら根本的な改善策は取られてきませんでした。
今回の火災をきっかけとした議論が一過性のものに終わらず、住宅政策の転換を促すものになることを心より願っています。

本来、生活保護利用者の一時的な居所であるはずの「ドヤ」(簡易宿泊所)に、多くの高齢者が長期滞在している問題の背景には、福祉事務所が高齢者をアパートに移すことに消極的であるという問題があることを私は指摘してきました。
私が理事を務める認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいは、この問題に関して、厚生労働省に緊急要望を提出しました。

簡易宿泊所等に滞在する生活保護利用者への支援に関する緊急要望

アパート入居のハードルが高い

ただ、アパート移行が進まない背景には、こうした「送り出し側」の問題とともに、「受け入れ側」の問題もあります。

「契約者(借主)が単身で入居される方の保証人は、契約者(借主)が病気で倒れ、誰も気づかないまま、死亡される事故が多発しておりますので、常に連絡を取り合い、安否を確認してください。死亡されて時間が経過しますと、貸主・近隣に迷惑を及ぼすばかりでなく、部屋全体を原状回復することとなり、莫大な費用負担が掛かりますので充分注意して下さい」

これは、以前、NPO法人もやいで、80代の男性のアパート入居の連帯保証を引き受けた際に、不動産店から提示された連帯保証人確約書の文面の一部です。
この男性は以前暮らしていた東京都内のアパートが老朽化により取り壊しになったため、転居をせざるをえなくなりました。しかし、不動産店を何軒回っても、高齢を理由に入居を断られ続け、地元の区役所がおこなっている住宅相談の窓口で相談。ようやく入居できる物件を見つけることができました。

しかし、その物件は二年間の定期借家契約で、上記の内容を盛り込んだ連帯保証人確約書に保証人がサインをすることが条件になっていました。
私たちが確約書にサインし、彼はようやく転居することができました。しかし、定期借家契約では、契約期間が終われば、居住権が自動的に消滅するため、二年おきに居住が継続できなくなるリスクが生じます。彼が寝たきりになり、孤独死の危険が高まったと家主が判断すれば、大家が再契約を拒否することも可能だからです。

NPO法人もやいでは、2001年からの14年間に、約2350世帯の連帯保証人提供をおこなってきましたが、単身高齢者のアパート入居のハードルは年々上がってきているように感じています。

アパートに入居できない高齢者はどこに行くのでしょうか。その答えの一つが「ドヤ」ということになります。大都市では高齢者向けの福祉施設も不足しているため、高齢者の居住環境としてはふさわしくない「ドヤ」に多数の単身高齢者が滞留するという状況が生まれているのです。

国土交通省が「安心居住目標」を発表!

川崎の火災が起こる一か月前の今年4月17日、国土交通省の安心居住政策研究会は「中間とりまとめ」を発表し、2020年度までの「安心居住目標」として、高齢者、子育て世帯、障害者の入居に拒否感を持つ家主の割合を半減する、という数値目標を掲げました。

安心居住目標

日本賃貸住宅管理協会が2010年に実施した調査では、高齢者世帯の入居に「拒否感がある」と回答した家主は59.2%にのぼり、障害者のいる世帯、小さな子どものいる世帯に対しても、それぞれ52.9%、19.8%が「拒否感」を示していました。こうした現状に対して、同研究会は2020年度までの到達目標として、高齢者及び障害者のいる世帯については30%以下、子育て世帯は10%以下まで、家主の「拒否感」を減少させるという目標を設定したのです。

しかし、この数値目標に対して、不動産業者や民間賃貸住宅の家主の間では、戸惑いが広がっていると言います。どのような方法でこれらの世帯の入居を促進していくのか、という具体策が「中間とりまとめ」の中ではほとんど示されていないからです。

国土交通省は、住宅セーフティネット法に基づき、全国各地の自治体に設置されつつある居住支援協議会の活動を活性化させることにより、これらの世帯の入居を円滑にできると説明しています。各自治体の担当課、不動産関連団体、居住支援をおこなっているNPOなどで構成される居住支援協議会は、現在47の自治体に設置されていますが、国交省はこれを大幅に増やしたいという意向を持っています。

しかし、すでにある居住支援協議会の中には、意見交換のみをおこない、実質的な活動をおこなっていないところも少なくありません。高齢者の入居を円滑にするために必要な家賃債務保証や入居後の見守り、死亡時の家財整理といった分野にまで踏み込んで活動している居住支援協議会は全国に3地域にしかありません。

国土交通省には、数値目標を掲げるだけでなく、厚生労働省や業界団体とも協議し、どうすればこの目標を達成できるのか、具体的に詰めていただきたいと思います。

今から仕組みを作らないと大変なことに

単身・低所得の高齢者が安心してアパートに入居できる仕組みを作っておくことの重要性は、今後、ますます高まっていきます。

本来、高齢者の生活を支えるはずの日本の年金制度の給付水準は、「高齢になるまでに持ち家を取得している」、「夫婦両方の年金収入がある」ことを暗黙の前提にしてきました。

制度設計者たちは「高齢になっても単身で賃貸住宅に暮らしている人たち」がこんなに増えることを想定していなかったのではないでしょうか。

現在、生活保護世帯の約半数を高齢者の世帯が占め、その数と割合は年々増えつつあります。

今の雇用状況は若い世代ほど非正規率が高くなっていますから、将来ますます低年金・無年金の高齢者が急増するのは火を見るよりも明らかです。しかも、非正規の場合、住宅ローンの利用は困難であるため、高齢になっても賃貸住宅で暮らし続ける人たちが増えていくのは必至です。

単身・低所得の高齢者がアパート入居しやすくなる仕組みを今のうちから作っておくことは、将来の社会のためにも必要なことなのです。

ぜひ一過性ではなく、日本の賃貸住宅政策をどうするのか、という議論を巻き起こしていきたいと考えています。

※関連記事:なぜ単身高齢の生活保護利用者が「ドヤ」に滞留させられていたのか?

※関連記事:【2015年5月24日&26日】 朝日新聞:川崎・簡易宿泊所火災に関するコメントが掲載

 

なぜ単身高齢の生活保護利用者が「ドヤ」に滞留させられていたのか?

提言・オピニオン

5月17日未明、川崎市で簡易宿泊所2棟が全焼する火災が発生し、9人が死亡、19人が重軽傷を負うという大惨事になりました。

報道によると、2棟に宿泊していた74名のうち70名が生活保護の利用者で、単身の高齢者が多く含まれていたと言います。

簡易宿泊所とは旅館業法に基づく旅館の一形態で、かつては多くの日雇労働者が宿泊し、「ドヤ」(「宿」のさかさま読み)という俗称で呼ばれていました。高度経済成長期に日雇労働者を受け入れるために建設された木造の「ドヤ」の多くは老朽化しており、防火対策も充分に取られていないことが今回の火事で明るみに出ました。

火災が起こった「ドヤ」は2階建てを3階に改築した違法建築であったことが判明しています。

本来、福祉施設ではない「ドヤ」になぜ単身・高齢の生活保護利用者が多数宿泊しているのでしょうか。

私はその背後に、以下の3つの問題があると考えています。

  • 生活保護行政の問題
  • 住宅政策の問題
  • 高齢者福祉政策の問題

その3つの問題を説明する前に、まずはホームレス状態の人が生活保護を利用する際の流れについて説明します。

住まいのない状態に人が生活保護を申請した場合、首都圏では通常、福祉事務所が民間宿泊所か、「ドヤ」に宿泊することを勧めます。

民間宿泊所は、正式には社会福祉法に基づく「無料低額宿泊所」という名称があるのですが、この名称とはほど遠く、大部分は「無料」でも「低額」でもありません。

近年、この「無料低額宿泊所」に、生活保護費のほとんどを天引きしながらも劣悪なサービスしか提供しない「貧困ビジネス」の施設が多数含まれていることが社会問題になっています(一部に良心的な施設もありますが)。

※関連記事 埼玉新聞:<川崎火災>狭い居室密集 無料低額宿泊所、県内入所者も不安

一方、「ドヤ」は旅館業法に基づく簡易宿泊所という位置づけになります。民間宿泊所の多くが宿泊費だけでなく食費も天引きするために、生活保護費のほとんどが手元に残らない仕組みになっているのに対して、「ドヤ」では宿泊費しかかからず、生活費は自分で使えるため、生活保護を申請する人の間では、民間宿泊所より「ドヤ」での生活保護を望む人もたくさんいます。

また、民間宿泊所の多くが相部屋であるのに比べ、「ドヤ」は狭いとはいえ、曲りなりにも個室のところが多いので、個室での暮らしを希望する人が「ドヤ」での宿泊を自ら望むこともあります。

しかし、今回明らかになったように、「ドヤ」の中には建築構造に問題があったり、老朽化しているところも少なくありません。特に川崎の「ドヤ」は他地域に比べても、高度経済成長期に建てられたまま、建て替えをしていないところが多いようです。

 居宅保護の原則が守られていない

ポイントは、こうした民間宿泊所や「ドヤ」はあくまで一時的な居所に過ぎないという点です。生活保護法第30条では、居宅保護の原則が定められていて、一人暮らしができる人については一般のアパートやマンションで暮らすことが前提になっています。

地方都市の中には、ホームレス状態の人が生活保護を申請したら、すぐにアパートの転宅一時金(入居に必要な敷金等の初期費用)を支給して、アパートに入ってもらっている例もあります。

住まいのない人が生活保護を申請するケースが多い大都市では、一時的な受け皿として、民間宿泊所や「ドヤ」を利用するのは仕方がない面もありますが、そうであっても、早期にアパートでの生活に移れるよう支援すべきなのです。

ところが、福祉事務所の中には「一時的な居所」に過ぎないはずの民間宿泊所や「ドヤ」に多数の生活保護利用者を長期間、「滞留」させている例が散見されます。

私がこれまで受けた相談の中にも、「貧困ビジネスの施設に8年入れられていた」という人がいました。川崎の「ドヤ」にも10年以上、暮らしている高齢者がいるようですが、これらは福祉事務所の怠慢(あるいは意図的な不作為)と言わざるをえません。

一人暮らしができる人はアパートに、介護の必要などがあって一人暮らしが困難な高齢者は特別養護老人ホームなどの介護施設に移ってもらうのが、福祉のやるべき仕事だからです。

なぜ地域生活への移行が進まないのでしょうか?

1つには、福祉事務所職員の中に「あの人たちはアパート生活ができない」という偏見があって、なかなかアパートに移そうとしない、という問題があります。

これまで私は何人もの生活保護利用者から「ドヤ/民間宿泊所からアパートに移りたい」という相談を受けてきました。ご本人が福祉事務所のケースワーカーと話し合いをする場に同席にしたこともたくさんありますが、ケースワーカーが「もう少し様子(本人の生活状況等)を見させてくれ」と「待った」をかける場面が多くありました。

そうした場合、ご本人の権利としてアパートの転宅一時金申請を書面でおこなうこともよくありますが、それに対してあからさまに嫌な顔をされることもよくありました。

一部の職員の対応には、「プライバシーが確保され、適切な居住環境の住まいに暮らすことは基本的人権である」という考え方が欠如しているように感じられました。この問題は拙著『ハウジングプア』の中でも詳しく論じています。

他方、長く「ドヤ」住まいをしてきた高齢者の中には、アパートに移ると孤立してしまうのではないか、と不安を感じている人も確かにいます。

しかし、だからと言って劣悪な居住環境に人を長期間とどめていいことの理由にはなりません。
アパート入居後の見守りや地域での居場所づくりといったサポートを強化することによって、不安を解消する努力をするべきだと考えます。

2つ目には民間賃貸住宅市場における入居差別の問題があります。

NPO法人もやいでは、2001年より生活困窮者の入居支援(賃貸住宅に入居する際の連帯保証や緊急連絡先の引き受け)をおこなってきましたが、単身高齢者の孤独死が社会問題化する中、単身高齢者のアパート入居のハードルは年々上がってきているように感じます。

本来、こうした低所得者を受け入れるべき公営住宅は都市部での応募倍率が高く、なかなか入れない状況にあります。

単身の高齢者がアパートになかなか入居できない、入居できても劣悪な物件にしか入れないという問題は、2011年11月に新宿区で発生した木造アパートでの火災でも明らかになりました。

※関連記事 新宿区大久保アパート火災が投げかけたもの

3つ目には、特別養護老人ホームなど、高齢者のための適切な介護施設の不足があります。これは2009年3月に発生した群馬県の無届老人ホーム「たまゆら」の火災でも指摘された問題ですが、未だに解決していません。

このように「適切な住まい」(アパートや介護施設)への移行が進まない中、各地の民間宿泊所や「ドヤ」に単身高齢者が滞留している状況があります。

こうした問題に対する提言はこれまでもおこなってきましたし、今後もおこなっていく予定ですが、悲劇を繰り返さないために、まず多くの方に「なぜ単身高齢者が『ドヤ』に滞留させられていたのか」という問題を知っていただきたいと願っています。

 

※関連記事 【2015年5月24日&26日】 朝日新聞:川崎・簡易宿泊所火災に関するコメントが掲載

 

仕事さえあれば、貧困から抜け出せるのか?~生活困窮者自立支援制度の問題点

提言・オピニオン

2015年4月から生活困窮者自立支援法が施行されます。これにより、全国に約900ヶ所ある福祉事務所設置自治体に、生活困窮者向けの相談窓口が開設されます。

施行に先立ち、3月9日に厚生労働省の講堂で開催された「社会・援護局関係主管課長会議」で、厚労省はかなりの時間を割いて生活困窮者自立支援制度の説明をおこない、新制度にかける意気込みを示していました。

写真 (69)

社会・援護局関係主管課長会議の資料はこちら。

生活困窮者を支える新たな制度が始まることについて、マスメディアでも期待感を表明する報道が目立ちます。

しかし、私はこれまで様々な場で、この制度の問題点を指摘してきました。
以下の文章は、2013年に出版した拙著『生活保護から考える』(岩波新書)の記述の一部です(制度の名称や統計数字のみ修正)。
いま読んでみても、ここで表明した疑問点、問題点は払拭されていないと考えます。
ぜひ多くの方に、新たに始まる制度の問題点を知っていただき、その運用をチェックしてもらえればと願っています。

困窮者支援制度

『生活保護から考える』より

生活困窮者支援法は福祉事務所が設置されている地方自治体に「生活困窮者」に対する自立相談支援事業を実施することを求めています。相談窓口は外部に委託することも可能です。

また、2009年度から実施されている住宅手当事業も恒久化することを定めています(「住宅手当」は2013年度は「住宅支援給付」、法律の中では「住宅確保給付」と改称されていますが、ここでは「住宅手当」で統一します)。
他にも、任意事業として地方自治体は就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業などをおこなうことができます。

就労支援の目玉は、就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)です。生活困窮者が一般就労に至るステップとしての中間的就労を実施する事業体を都道府県が認定する仕組みを導入します。

この法律の評価すべき点としては、2010年度より一部の地域で実施されてきたパーソナルサポート事業(生活困窮者に対する寄り添い型支援)を恒久化し、財源の保障をしていること、貧困家庭の子どもたちへの学習支援の財源保障をしていることがあげられます。

困窮者支援予算

しかし一方で、以下のような問題点を指摘できます。

まず、入口の自立相談支援事業では、生活保護を必要としている人に対して、生活保護制度の説明や申請に向けた助言・援助がおこなわれるのかが法律には明記されていません。最悪の場合、新たな相談窓口が生活保護の水際作戦を担う「防波堤」として機能してしまうことも考えられます。窓口業務が外部に委託される場合、受託団体が福祉事務所に遠慮して生活保護申請をためらうという状況は、すでに他の事業で起こっており、受託団体の力量によって地域差が出ることも考えられます。

中間的就労では、一部で最低賃金の適用を除外するプログラムが組まれる予定です。ここに悪質な業者が入り込んで制度を悪用することが懸念されています。生活困窮者が劣悪な労働に従事させられ、労働市場全体の劣化を招く危険性があるのです。

また新制度では、就労による自立を支援することに力点が置かれているため、経済的な給付がほとんどありません。住宅手当は離職者に対してハローワークでの就労支援を受けることを前提に賃貸住宅の家賃を補助する制度ですが、原則3ヶ月間(最長9ヶ月)という期限付きであるため、再就職までの一時的な支援という性格が強いものです。

住宅手当の2009年10月~2014年3月における支給決定件数(延長決定分含む)は15万4493件でした。これは生活保護の手前のセーフティネットとしてはあまりにも貧弱だと言わざるをえません。

住宅支援給付推移

この住宅手当制度の問題点をあぶり出したのが、2013年に大きな社会問題となった「脱法ハウス」問題でした。「脱法ハウス」とは、多人数の人々を居住させながらも建築基準法や消防法などの関連法令に違反している物件を意味し、その中には、レンタルオフィスや貸し倉庫などの非居住物件であると偽っているものも含まれています。

「脱法ハウス」は、人が暮らす住居が最低限備えるべき安全性が損なわれており、居住環境も劣悪です。しかし、「脱法ハウス」の入居者は、通常の賃貸アパートの家賃や初期費用がまかなえない、あるいは賃貸契約に必要な連帯保証人を用意できないといった事情を抱えているため、こうした物件に暮らさざるをえない状況にあることがわかっています。入居者のほとんどは仕事があっても収入の低いワーキングプア層が占めており、生活保護基準よりも若干、収入が多いために生活保護を利用することはできません。

住宅手当などの「第2のセーフティネット」は本来、こうした人々が安心して暮らせる住まいを確保できるための支援策として確立されるべきものだと私は考えます。しかし、現行の住宅手当の対象はあくまで離職者であるため、働いていても収入の低いワーキングプア層は支援対象になりません。ここに「再就職支援」としての住宅手当の限界があると私は考えます。

私は住宅手当が2009年に始まって以来、この事業が普遍的な家賃補助制度に発展することを願って、事業の拡充と恒久化を求めてきました。しかし、生活困窮者自立支援法は従来の事業の問題点を改善しないまま、事業を固定化してしまいました。

これは、この制度が「雇用さえ確保されれば、貧困から抜け出せるはずだ」という発想に基づいて設計されているからだと私は考えます。この考え方に立てば、雇用の質や住宅の質が問われることはないため、「脱法ハウス」に暮らしながら働いている人は「自立している」と見なされ、支援対象から外れることになるのです。

近年の貧困の拡大の背景には、雇用や住宅の質が劣化してきたことがあります。その点を踏まえない対策は、「自立支援」の名のもとに貧困を隠ぺいしかねないものだと思います。

大阪市・生活保護費プリペイドカード導入は「ケースワーカーにもメリットなし」 現場からも異論の声

提言・オピニオン

大阪市は今年4月から生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業を実施する予定です。

このモデル事業に関して、2月12日、大阪弁護士会は、生活扶助費の金銭給付の原則を定めた生活保護法第31条第1項に違反すると同時に、生活保護利用者のプライバシー権・自己決定権(憲法第13条)を著しく侵害するものであり、撤回を求めるとする会長声明を発表しました。

大阪弁護士会:生活保護費をプリペイドカード支給する大阪市モデル事業の撤回を求める会長声明

大阪弁護士会館

大阪弁護士会館

このモデル事業は福祉事務所の現場ではどのように受け止められているのでしょうか。

大阪市内の福祉事務所でケースワーカーをされている、ペンネーム「ぴょん吉」さんから「ケースワーカーの立場から見た問題点」についてご意見をいただきましたので、転載をさせていただきます。

******************

(以下、転載)

今月、2回にわたって、プリペイドカードに関する説明会が開かれました。
これはVISAのスタッフが現場のケースワーカーに、今回のモデル事業への協力を求めるものでした。

まず利用対象者ですが、パソコンかスマートフォンを持っていてメール受信が可能な方に限られます。
これはカードの残額確認や紛失した場合のロックを会員サイトにログインして行わなければならないからです。加盟店舗では残額確認はできずサイトでのみの確認となります。
またサービスセンターのようなものは設けられず、紛失などの場合のロックも利用者が自分で行うのです。

毎月3万円がカードに振り分けられますが、これは生活扶助に限られており、収入が一定あり生活扶助が3万円に満たない人は対象になりません。また居宅の生活扶助に限定されており入院、入所中の人も対象外です。

【問題点】

その1 いい加減なチラシで勧誘

業者が作成した募集チラシが事務所に大量に届いています。
このチラシでは「先着2000名様に3千円の商品券をプレゼント」と記載されていますが、商品券がもらえるのは今年の5月から来年の3月まで毎月カードを継続利用し、アンケートに回答した人のみです。
途中で収入が増えたり、入院したりして一回でも利用しない月があれば商品券はもらえません。
チラシにはこの説明が記載されておらず、不自由なカード生活を我慢したのに商品券がもらえないという苦情が予想されます。

その2 さまざまな不便を強いられる

すでに指摘されているように使える店舗が限定され、近くの商店や安売りスーパーなどでは利用できません。
大阪には「スーパー玉出」など1円で食材を買えるようなスーパーがあり、よく利用されていますが、こういう所も利用できません。
説明会では業者のスタッフが「コンビニでも使えるから便利です」「ガソリンスタンドでも使えます」と説明していましたが参加したケースワーカーたちは「馬鹿じゃないの?」という反応でした。

また、残額が少なくなった場合は、カードと現金を併用して支払をすることも考えられますが、併用ができる店舗は限られているようです。併用できる店舗一覧は示されておらず、業者の方でも把握していないようです。
残額を現金化するのには、担当ケースワーカーに依頼し、残金分を業者から払い戻しさせ、その後に一時扶助をするという手続きが必要で日数を要します。
月末に手持ちの現金とカードの残金をあわせて何とか食材を買おうとしても買える店がないということになりかねません。

その3 ケースワーカーにもメリットなし

このような方法で依存症対策ができるとはまったく思えませんし、説明会でもそのメカニズムは何一つ説明されていません。
一方で、上記のような利用上の不便や紛失などのトラブルについて苦情がケースワーカーに持ち込まれることが予想されます。
業者はサービスセンターなどもつくらず負担はケースワーカーが負わされることになります。

その4 現場への強制は本当にないのか

大阪市は説明会では、現場のケースワーカーに対して「もちろん強制ではなくお願いです」としていますが、商品券がもらえない場合もあることや様々な不便があることをていねいに説明すればするほど協力者は少なくなるでしょう。
目標としている2000人にはなかなか届かないのではないでしょうか。
その時に本当に協力者を出すようにという圧力がケースワーカーにかからないのか心配です。

生活保護利用者にもケースワーカーにも何のメリットもない制度です。
業者が業者のために行政を利用するものではないでしょうか。

大阪市ケースワーカー ぴょん吉

(転載終わり)
******************

生活保護利用者、ケースワーカー、地元商店に多大な悪影響を及ぼし、「百害あって一利なし」のモデル事業。撤回を求めていきたいと思います。

※関連記事:【2015年1月25日】 東京新聞:差別助長、効果に疑問 大阪市の生活保護支給プリペイド化

公営住宅での強制退去に伴う悲劇をなくしていくために

提言・オピニオン

昨年9月24日、千葉県銚子市の県営住宅に住んでいた母子世帯が、家賃滞納を理由に明渡訴訟を提起され、その判決に基づき強制退去を求められた日に、中学生の娘を殺害し自分も死のうとする、という痛ましい事件(無理心中未遂事件)が起こりました。

生活に困っている人が安定した住まいを失い、ホームレス状態になってしまうことは、生活困窮の度合いがさらに深まると同時に、当事者に多大な精神的なダメージを与えます。今回の事件は「ホームレス化」という現実がもたらした絶望感が引き金になったのではないか、と私は考えています。

事件当時の報道によると、この母親は2013年4月に銚子市市役所を訪問し、医療費について相談をしていたようです。その場で、生活保護の制度に関する説明を受けていたそうですが、申請には至っていません。

一方、県営住宅を管理する千葉県は部屋の明け渡しを求めて裁判手続きを進めていましたが、福祉部局との連携は行なっておらず、家賃減免制度を促すこともしていませんでした。

この事件に関して、1月19日、弁護士や市民グループでつくる「千葉県銚子市の県営住宅追い出し母子心中事件の現地調査団」(団長・井上英夫金沢大学名誉教授)が、千葉県と銚子市に公営住宅の家賃減免制度の周知徹底などを求めて申し入れをおこない、記者会見を開催いたしました。

写真 (57)

申し入れの内容は下記をご覧ください。

私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」も調査団に加わり、申し入れに参加しました。

調査団が調べたところ、千葉県内の県営住宅入居者のうち、家賃減免対象者が11616世帯(2013年度)もいるのに対し、減免を実施したのはわずか1961世帯(2014年3月末現在)と2割に満たないことがわかっています。

今回のような悲劇を繰り返さないために、各行政機関が縦割りの壁をのりこえて、生活に困窮している人を必要なサービスをつなげていくことが求められています。

この申し入れについての記事が、1月20日付け東京新聞千葉版に掲載されたので、ご参考にしてください。

*東京新聞:生活保護など「改善を」 弁護士ら申し入れ 銚子の心中未遂受け

———————

2015年1月19日

千葉県知事 森田健作 殿
千葉県県土整備部住宅課長 殿
千葉県健康福祉部長 殿
銚子市長 越川信一 殿
銚子市福祉事務所長 殿
銚子市保険年金課長 殿
銚子市住宅課長 殿

県営住宅での強制退去に伴う母子心中事件の対応についての要望書

    千葉県銚子市の県営住宅追い出し母子心中事件の現地調査団
自由法曹団/全国生活と健康を守る会連合会/
中央社会保障推進協議会/住まいの貧困に取り組むネットワーク

2014年9月、千葉県銚子市内に所在する千葉県営住宅の入居者(母子世帯)が、家賃滞納を理由に明渡訴訟を提起され、その判決に基づき強制退去を求められた日に、中学生の娘を殺害し自分も死のうとする痛ましい事件(無理心中未遂事件)が起こりました。
この事件の経緯について千葉県、および銚子市の対応は、後記のように問題があると考えられるので、緊急に以下の対応をおこなうよう要望します。

1.県は、県営住宅の入居者に対し、家賃の減額制度があることを、十分に周知させること。

2.県は、家賃の滞納者に対し、入居者の置かれた状況を確認し、家賃の減額制度や他の社会福祉制度が利用できる場合には、その制度を丁寧に滞納者に対して説明すること。また、この説明は手紙や文書だけでなく、民生委員などと協力してできるだけ訪問することより、対面で説明を行うこと。

3.県は、民間賃貸住宅よりも低額な県営住宅を家賃滞納で退去させられた入居者の多くは、ホームレス状態にならざるを得ないことを認識し、退去後の生活ができることを十分に確認するべきであり、明渡訴訟は最後の手段とし、安易にこれを提訴しないこと。

4.市は、保険証を失効する、水道料金を長期間滞納するなど生活困窮の様子が見られる市民に対し、利用できる社会福祉制度を丁寧に説明し、申請意思があるかどうかを確認すること。仮に申請意思が認められない場合でも、長期間の家賃の滞納や保険証の失効など職権保護が妥当と判断される場合には本人からの申請がなくとも生活保護を利用させること。なお、誤った説明により、生活保護が利用できないと思わせる言動は間違っても行わないこと。

5.県と市は、県営住宅の入居者が生活に困窮していることを認識した場合、互いに情報を伝え、市からも県営住宅の家賃の減額制度の説明をしたり、県からも利用できる社会福祉制度を説明をすること。

6.県と市は、今回の事件の事実経過を明らかにし、再発防止のためにいかなる措置を採るべきか検討し、その防止策を県民、市民に公表すること。

<千葉県および銚子市の対応の問題点>

報道によれば、入居者の母親は、県営住宅の家賃の減額ができる程度の収入しかなったとされています。しかし、千葉県では、この母親に対し減額の申請を促すような対応をした形跡はありません。そもそも、一般の民間賃貸住宅よりも低額な県営住宅の家賃すら支払えない場合には、生活に必要な収入が減少しているか、なくなっていることが予想され、極度に困窮している状況にあることは十分に考えられることです。このような場合、安易に明渡訴訟を提起するのではなく、生活困窮していないかどうかを確認し、生活困窮していることが確認された場合には、家賃の減額の申請や利用できる社会福祉制度を伝えるべきです。

また、千葉県では入居者と接触しないまま明渡訴訟を行うケースもあると報道されています。生活に困窮している入居者は、相談先さえ分からない場合や、不安定・低賃金、劣悪な労働条件の雇用で、仕事を休むと給与が減額されるなどの恐れがあることから相談に行く時間すら作れない場合が多くあります。家賃を長期間滞納している多くの入居者もそのままの状態でいいと思っているわけではなく、何とかしなければならないと思いながらも、上記のようなことからどこにも相談にいけない状況に置かれていることを予想して措置をとるべきです。

さらに、報道によれば、2013年4月にこの母親は銚子市保険年金課に保険証再発行の相談に訪れた際、保険年金課の職員は生活保護の申請を勧められ、生活保護の相談をしていますが、結局生活保護の申請には至っていません。本来、福祉事務所は生活に困窮している者に対しては、申請の有無にかかわらず職権で保護を開始するべき責任を負っています。

低額な県営住宅の家賃さえも支払えず、保険証を失効し保険年金課に保険証の再発行の相談をしていること自体で生活困窮は明らかです。このような場合にまで「申請がなかったから」との理由で保護を開始しないことは、生存権を尊重していないと言わざるを得ません。

このような問題点が多々見られることから、緊急に前記の要望を行うものです。

以上

「共生」が憎しみ合いに転じるのを許さないために立ち上がる~フランスからの報告

提言・オピニオン

1月7日に発生した『シャルリー・エブド』襲撃事件に始まる一連のテロは、フランス、そして全世界に大きな衝撃を与えました。
フランスでは、1月11日の午後、パリ中心部で開かれたデモ行進に百数十万人の人々が参加しました。フランス全土でデモに参加した人数を合わせると、参加人数は370万人を超えたと言われており、フランス史に残るデモ行進になりました。

10914786_10153035089509511_6735948033530714483_o-2

今回の一連の事件はフランスでどのように捉えられているのでしょうか。

かつて日本に滞在し、NPO法人もやいの活動にもボランティアとして参加したことのあるフランス人研究者のマリーセシールさん(Marie-cecile Mulin)に、今回の連続テロの背景についてメールでうかがったところ、お返事をいただきました。

マリーセシールさんは11日の歴史的なデモ行進に参加し、そこで撮影した写真も提供してくださいました。

多くの方にフランスからの報告を読んでいただき、私たち日本社会のあり方について考える材料にしていただければと願っています。

なお、マリーセシールさんが日本の貧困問題をどのように見たのか、という点については、もやいブログに連載記事がアップされているので、こちらもご参考にしてください。

「海外からのもやいボランティアインタビュー」
http://www.moyai.net/modules/d3blog/details.php?bid=1723
http://www.moyai.net/modules/d3blog/details.php?bid=1761
http://www.moyai.net/modules/d3blog/details.php?bid=1899

 

質問1:フランスでは事件はどのように受け取られているか?

フランスでは、1789年に「人権と市民の権利」の宣言が採択されてから、ブラスヒーム(神への冒涜行為)罪は撤廃されました。その結果、国家と宗教が分離され(1905年政教分離法成立)、そのことで原理が決定的に制度化され、世俗主義は私達の国家の核として形成されてきました。世俗主義のことをフランスでは“laïcité(ライシテ)”と呼んでおります。

これまでにも、『シェルリーエブド』に掲載された漫画によって侮辱されたと感じたフランスカトリック教会やフランス国内のイスラム教組織が風刺漫画家達を相手に何度も裁判を起こしてきましたが、それでも彼らが糾弾されずにきた理由はこういう背景があるからです。それは、宗教を扱った風刺画に対するフランスの寛容さとも説明できます。時には低俗で露骨なものであってもです。

『シェルリーエブド』は、その不遜なユーモアセンスと因習打破の漫画と記事でフランス国内でも有名な新聞社です。そこで働くジャーナリスト達(大体はアナーキストか極左の人たちですが)の信条は、反啓蒙主義とあらゆる形の支配的イデオロギー相手に闘うことです。

大部分の一般市民は自分の宗教が何であれ、≪laïcitéライシテ≫と≪表現の自由≫の原理に深く共感しており、1月11日にパリで行われるデモには多くの人が参加を表明しています。(仏内務省発表370万人!!が参加)

たとえ、『シェルリーエブド』の故意に挑発的な記事に対して、時に意見を異にする人でも、「フランスをひざまずかせようとした行為がフランスを立ち上がらせた」という一文によってテロリストに対する自らの態度を表明しているのです。

人々が示したいのは、一つは自分たちが決して恐怖に屈服しないということ、そしてもう一つは、狂信的なテロリストと他のイスラム教徒達を決して混同しないということ、最後に、私たちが団結して立ち上がる事で「共生」が憎しみ合いに転じるのを許さないという強い姿勢を示すことです。

極右政党を支持する人たちの中には、今回の事件をイスラム教徒全体のせいにしようとしている人たちもいます。私達はこういう危険な考えを注視し、阻止していかなければいけません。

それと同様、イスラム教徒の人々の中には、今回のテロ行為を非難しない者もあります。パリや大都市を囲むスラム地域に住む貧困層の若者などです。そういう人たちは、「JE SUIS CHARLIE 私はシェルリー」といったスローガンに共感できず、「私はシェルリ―ではない」と表明しています。この現象は二問目の質問の答えに続きます。

10923677_10153035028689511_2868623197394421013_o

質問2:今回の連続テロの社会的背景に何があると思うか?

最初の質問で、スラム地帯で育つ貧困層の若者の様子をお答えしましたが、どうして高校生たちがこのようなリアクションをしているのでしょう?その理由は、彼らが存在する環境と、将来の見通しの無さにあります。今回のテロリストたちがなぜあのような野蛮なテロ行為に及んだか、その説明にもなります。

60年くらい前のフランスでしたら、貧困に苦しむ者が貧困を脱出し、自分や家族がより豊かな将来を獲得する為の主な手段は学校教育でした。実際、教育は社会、民族、文化など、社会統合の強力な武器でした。様々な国からフランスに移ってきた移民や、社会的排除を受けてきた市民達は、教育によりフランス社会と統合し、さらに独自の文化と併せ、より一層文化を充実させていきました。それでも、みな同じ価値観を共有することができたのです。しかし、70年代初頭から状況は変わり始めます。失業者が増加し、個人主義の台頭…私たちの世俗主義的な社会の基盤が崩れ始めたのです。

かつて貧困層だったものの、教育システムを最大限に活用できた人たちは、スラム地域から出て行きました。今スラムに残っている人たちは、主に近年の新しい移民を中心とする人たちが多いのですが、失業と貧困に直面する人々は年々増え、その子どもたちはもはや教育システムがきちんと機能していない学校に取り残されてしまいました。それとともに高まるレイシズムや差別が彼らの困難に追い打ちをかけているのです。

同時に、大多数の政治家達の関心はこれらの貧困層から徐々に離れていき、彼らはひどい苦境の中で自力で生活していくことを課せられます。そんな苦境の中で、彼らは政治/宗教過激派のいいカモになってしまいます。共同体や地域社会で孤立した人々が外国人排他主義で知られる極右政党「国民戦線」に吸収されていく。そんな現象が知らず知らずに増殖する癌細胞のように社会に拡がっています。

将来に希望が見出せず、差別され続ける若者たちの中には、宗教に逃げ道を求める者も出てきます。それは貧困と無知によって拍車がかけられます。そして、そういった若者たちの苦悩は宗教の原理主義者に利用されてしまうのです。この憂慮すべき現象は、フランス以外のヨーロッパ諸国でも見られるようになってきました。パリで起きたような事件が、どこで起きてもおかしくないのです。

10915122_10153035034304511_3532708357743797783_o

質問3:最後に日本の皆さんにメッセージをお願いします。

困難な時代において社会的つながりは非常に重要な概念で、責任ある社会であれば、困窮している人々を助けていくのは必要不可欠です。しかし、このことをフランスはこれまで成し遂げることができないできました。しかし、皮肉なことではありますが、(事件が起きてからの)3日間で私たちは「共和国の良心の光」とでも呼ぶべきものを改めて始めることができたように思います。

『シェルリーエブド』の社員が命を落とした「表現の自由」に関してですが、あらゆる民主主義が絶対に死守しなければいけない極めて重要なものです。そして、「表現の自由」がテロ防止の為とか、国家防衛の為などという口実によって踏みにじられぬよう絶えず注意していなければなりません。私たちの社会や生活を守るためには、新聞やメディアの言論統制をさせてはいけないのです。私たちが油断していたら、フランスも日本もこのような脅威に直面することになるでしょう。(Marie-cecile Mulin)

あまりに非人道的な生活保護の住宅・冬季加算ダブル削減方針

提言・オピニオン

1月14日に閣議決定される2015年度予算案で、生活保護費のうち住宅扶助と冬季加算が削減されることが大臣折衝で決まりました。

※関連記事:【2015年1月13日】 東京新聞:15年度予算案 住宅扶助、冬季加算カット 「命にかかわる」

家賃に相当する住宅扶助は、国費ベースで2015年度に約30億円、2018年度には約190億円の削減を見込んでいると報道されています。

厚生労働省は、有識者で構成される社会保障審議会・生活保護基準部会の報告書を踏まえて引き下げを決めたと説明しているようですが、ライターのみわよしこさんが報告されているように、同部会の報告書は引き下げを容認する内容にはなっていません。

生活保護の住宅扶助引き下げを、社保審・生活保護基準部会は決めていません(みわよしこ)

報告書のとりまとめがなされた1月9日の部会を私も傍聴しましたが、民間の委員からは口々に「引き下げ方針」がマスメディアで事前報道されていることへの不快感が表明されていました。

社会保障審議会・生活保護基準部会報告書PDF

2015年1月9日の生活保護基準部会

2015年1月9日の生活保護基準部会

安倍政権が社会保障費全体を削減していくという方針を明確にする中で、厚生労働省は財務省からの削減圧力に屈してしまったのでしょう。

私は、NPO法人もやいで生活保護利用者の入居支援(アパート入居時の保証人や緊急連絡先の提供)をおこなってきた経験から、「現状でも生活保護の住宅扶助基準は十分ではない」ということを訴えてきました。

2013年には、東京都千代田区で生活保護利用者が福祉事務所職員の紹介により「脱法ハウス」に入居していたことが社会問題になりましたが、その背景には住宅扶助の基準内で入居できるアパートが地域の中にないことがあります。

国土交通省の調査でも、「狭小・窓無し」のシェアハウス(脱法ハウス)の入居者のうち、11%を生活保護利用者が占めていたことが明らかになっています。

関連記事:住宅政策という「パンドラの箱」を開けよう!

車いすで暮らす障がい者からも、現状の基準では車いす生活をできる居住環境を確保できない、という問題が指摘されています。

関連記事:生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する記者会見を行いました

厚生労働省の調査でも、生活保護利用者の住宅の13.8%に「腐朽・破損」があることが判明するなど、居住環境が劣悪であることが判明しています。

今回の削減方針は予算の大枠を決めただけであり、具体的にどの地域で、どのような形で基準が引き下げられるかは明らかになっていませんが、現状でも住宅扶助基準が充分と言えない状況で、さらに生活保護利用者の居住環境が悪化してしまう危険が高まります。

また、冬季加算の引き下げは寒冷地で暮らす生活保護利用者の健康悪化につながりかねません。

しかも、住宅扶助と冬季加算が同時に下げられると、2つの引き下げによる相互作用で、さらに深刻な影響を与えかねません。

一般に、家賃の水準と住居の断熱性・気密性は比例関係にあります。
家賃が低ければ、「腐朽・破損」があり、すきま風が吹く木造の住宅に暮らさざるをえません。すると、当然、暖房費は鉄筋の住宅に暮らすよりも高くかかります。

現在でも、そのために暖房費の捻出に苦慮している生活保護利用者は多いのですが、冬季加算が下げられると、最悪の場合、生命の危機に直結してしまいます。

厚生労働省や財務省は、こんなことも理解できないのでしょうか。あまりに人々の生活実態が見えていないと言わざるをえません。

ただでさえ、生活保護の生活費にあたる生活扶助基準は段階的に引き下げられています。食品などが値上がりしているにもかかわらず、厚生労働省は今年4月に第三弾の引き下げを強行しようとしています。

人々の健康を害し、いのちをないがしろにする非人道的な住宅扶助・冬季加算の削減方針の撤回を求めます。

 

< 1 2 3 4 5 6 7 8 >