提言・オピニオン
提言・オピニオン
2022年6月24日、東京地裁において生活保護費の減額処分の取消しを命じる勝訴判決が言い渡されました。
6月24日、東京地裁で全国3例目の原告勝訴判決が言い渡されました!(判決要旨・全文を掲載しています)
https://inochinotoride.org/whatsnew/220624_tokyo

全国29の都道府県で続けられている「いのちのとりで裁判」では、2013年に第二次安倍政権が強行した生活保護基準の引き下げの違憲性・違法性が問われてきました。
これまで11の地裁で出た判決のうち、原告が勝訴した判決は、2021年2月22日の大阪地裁判決、2022年5月25日の熊本地裁判決に次ぐ全国3例目となります。
6月27日には厚生労働省に控訴をしないこと、引下げ前の基準に戻すことを求める緊急要請が行われますが、すでに始まっている参議院選挙(7月10日投開票)でも、過去の基準引下げの不当性など、生活保護制度のあり方が争点になることを期待します。
生活保護に関する論点はさまざまありますが、特に生活困窮者支援の現場で問題になることの多い「生活保護基準」、「水際作戦」、「扶養照会」という3点に絞って各党の公約を調べてみました。
すると、大きく3つのグループについて分けられることがわかりました。
1. 各論点について改善案を明記している政党:立憲民主、共産、れいわ、社民
2. 各論点に触れず、生活保護制度について抽象的に記述している政党:自民、公明、NHK党
3. 生活保護制度そのものについて何も記述せず、ベーシックインカム等の別制度を提案している政党:維新、国民民主

私としては、私たちが支援の現場から問題提起をしてきたことを正面から受け止めている政党に議席を伸ばしてほしいと願っています。
ぜひ投票のご参考にしてください。
※「生活保護基準」、「水際作戦」、「扶養照会」に関する各党の公約
◆立憲民主党「立憲民主党政策集2022」
https://elections2022.cdp-japan.jp/static/downloads/2022_seisakushu.pdf
生活保護・⽣活困窮者⽀援
●健康で⽂化的な最低限度の⽣活を保障できる⽣活保護基準を検討し、必要な措置を講じます。
● ⽣存権保障を強化する観点から、⽣活保護法のあり⽅を⾒直します。
● 児童扶養⼿当は⼦ども1⼈当たり⽉額1万円を加算し、ふたり親低所得世帯にも⽉額1万円を⽀給します。
● ⽣活保護が適正に運⽤され実施されるよう、体制整備、⾏政処分のチェック機能の強化と⼈材育成、権利擁護を強化します。
● 親族による扶養は⽣活保護の要件ではないこと、⽣活必需品である⾃家⽤⾞の保有を認めることなどを運⽤⾯で周知徹底します。
● 福祉事務所の実施体制について抜本的な⾒直しを⾏い、総合相談体制の強化と正しく法の解釈と運⽤がなされる環境を確保します。
● 貧困が命に関わる危険な状態を招く事例も少なくありません。⽣活保護受給資格の要件を分かり易く提⽰し、要件を満たした場合は適切に受給資格を付与するとともに、受給資格があるにもかかわらず給付を受けない事態が放置されないように対応します。
●就労インセンティブを損なわないようにするために、⽣活保護の収⼊認定や⽣活保護の各扶助を単独で⽀給することの是⾮等について検討します。
● 2017年に⾏われた⽣活保護の基準の検証に⽤いられた⽔準均衡⽅式を⾒直して必要な措置を講じるとともに、その間、要保護者に不利な内容の保護基準を定めないようにします。
◆日本共産党 2022参議院選挙政策
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/06/202207-bunya06.html
日本共産党は、生活保護を、必要とするすべての人が利用できる制度にするため、以下のような改革案をかかげています。
―――自公政権が行った生活保護費削減・生活扶助費の15%カットを緊急に復元し、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げる。
―――保護申請の門前払いや扶養照会をやめる。自動車保有やわずかな預貯金などの「資産」を理由に、保護利用を拒む運用を改める。
―――名称を「生活保障制度」に改め、権利性を明確にし、生存権保障にふさわしい制度に改革する。
私たちはこの立場で、生活保護制度を、国民の命・くらし・人権を守る制度として改善・強化していきます。
◆れいわ新選組 れいわ社会保障政策
https://reiwa-shinsengumi.com/reiwa_newdeal/newdeal2021_04/
3 新しい生活保障制度(生活保護・年金制度等)
○「生きる権利」としての生活保護制度の拡充と、名称を「生活保障法」とするなど「受けやすい」制度への改革
○「最低保障年金制度」の慎重な検討(1)最後の砦としての生活保護制度の保護基準の見直し
(中略)
(1)最後の砦としての生活保護制度の保護基準の見直し
生活保護は生存権保障の最後の砦です。憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」とは、具体的にどの程度の金額なのか、保護基準額が恣意的に決められないよう、その決定プロセスを透明化し、民主的コントロールを導入するために国会の議決で行うことにします(日弁連「生活保障法」提言)。
安倍政権で実施された根拠のない生活扶助基準の引き下げを白紙に戻し、「健康で文化的な最低限度の生活」にふさわしい保護基準を新しく定めます。生活保護基準は、就学援助、住民税非課税限度額、最低賃金の基準にも連動し、国民生活安定の基礎であり、決定プロセスには利用者の意見を反映させる仕組みを新設します。
(2)水際作戦の禁止と支給漏れをなくす
生活保護の申請は国民の権利であり、いろいろ理由を付けて保護の申請を受け付けないのは違法です。自治体の水側作戦を禁止し、他の社会保障制度のように、生活保護申請の手引きを窓口に置き、誰でも申請できるような環境をつくります。
また、申請をためらわせる要因となっている扶養照会(親族への照会)については、問題になっている通知を廃止します。
生活保護の「濫給」は非常に厳しくチェックするのに、「漏給」に対しては鈍感で、生活保護が必要な状態の人が実際に受給できているかの捕捉率を行政はなかなか公表しません。憲法で定められた生存権保障が実現できているのかどうか、捕捉率の算定方法を研究協議し、定期的に調査・公表する仕組みをつくり(イギリス参照)、現状の2割から大幅に高めます。相談・申請受付・調査・決定のプロセスにかかわる、相談員、ケースワーカー(都市部では1人で100世帯を担当)も慢性的な人員不足で、申請抑制の原因となっています。専門性をもった人員を増員します。
◆社会民主党「参院選2022 選挙公約」
https://sdp.or.jp/political_promise/
13)生活保護申請を抑制する「水際作戦」や扶養照会をやめさせ、必要な人が当然の権利として利用しやすい制度に変えます。
社会の底が抜けたかのように生活困窮者が増えています。最後のセーフティネットである生活保護制度を権利として活用できるよう行政に徹底します。各市町村の福祉事務所窓口で生活保護申請者を追い払ったり、申請書を提出させないよう誘導する“水際作戦”を止めさせます。“水際作戦”をなくすために、生活保護制度のオンライン申請の導入を検討しすすめます。
また、自治体が申請者の扶養義務者(民法上)に対して扶養できるかどうかを問う照会が、生活保護申請をためらわせる一番大きなハードルです。扶養照会を避け、申請を躊躇し栄養失調や病気、自殺に至るケースも少なくありません。生活保護法上、扶養は生活保護の要件ではないことを行政に徹底し、親族へ連絡されたくないという申請者の意向を尊重します。申請者の同意がなければ扶養照会をしてはならないという通知を各自治体に出すよう厚生労働省へ働きかけます。また、この間引き下げられてきた生活扶助費を引き上げます。
◆自由民主党「総合政策集2022J-ファイル」
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/20220616_j-file_pamphlet.pdf
368 国民の信頼に基づく生活保護制度の実現生活保護が、真に必要な人に行き渡るよう情
報発信を強化するとともに、制度に対する国民の信頼と安心を確保し、納税者の理解の得られる公正な制度にします。
◆公明党「参院選政策集Manifesto2022」
https://www.komei.or.jp/special/sanin2022/wp-content/uploads/manifesto2022.pdf
1 経済の成長と雇用・所得の拡大
◎生活保護制度について、コロナ禍で最後のセーフティネットとして機能しているかを検証し、関係機関による計画的な支援などにより、入りやすく出やすい制度へと見直します。
◆NHK党「NHK党の公約について」
公約10 年金・社会保障
https://syoha-senkyo.jp/policy/010/
生活保護の受給が必要にも関わらず様々な事情で受給が困難な方々に対して、党として相談体制の整備を進める(制度としては既に導入済み)。
◆日本維新の会「政策提言維新八策2022」
https://o-ishin.jp/sangiin2022/ishinhassaku2022.pdf
174.「チャレンジのためのセーフティネット」構築に向けて、ベーシックインカムまたは給付付き税額控除を基軸とした再分配の最適化・統合化を本格的に検討し、年金等を含めた社会保障全体の改革を推進します。
◆国民民主党「政策パンフレット」
https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2022/06/aa56be5ada4f88075e277df648acde2e.pdf
政策4「日本型ベーシックインカム」創設
〇給付と所得税の還付を組み合わせた新制度「給付付き税額控除」を導入し、尊厳ある生活を支える基礎的所得を保障します。
※各党の生活保護に関する考え方については、昨年の衆議院選挙の際、生活保護問題対策全国会議が各政党におこなった公開質問状の回答も参考になります。
「生活保護制度改革に関する公開質問状」回答(自民党、立憲民主党、社民党、れいわ新選組、共産党、国民民主党)
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-427.html
2022年6月26日
提言・オピニオン
この記事は、震災支援ネットワーク埼玉(代表:猪股正弁護士)で起こった性暴力事件を踏まえた上で、社会運動団体における性被害対応の問題点について対話形式で考察したものです。
この事件について被害者の女性が書かれた下記のブログ記事をまだ読まれていない方は、必ず先にお読みください。
震災支援ネットワーク埼玉事務局長による性被害について
https://imherekoko.blogspot.com/2022/01/blog-post.html
震災支援ネットワーク埼玉HP掲載文書と私の要望について
https://imherekoko.blogspot.com/2022/03/hp.html
この事件に対する団体の対応について、つくろい東京ファンドスタッフで、私のつれあいでもある小林美穂子が下記の記事を書きました。
震災支援ネットワーク埼玉で起きた性暴力、その対応がダメなわけ(小林美穂子)
https://maga9.jp/220223-2/
以下は、小林が記事の中で問題視している「事件が起こった後の団体の対応」のあり方について、小林と私が対話した記録です。
稲葉 「震災支援ネットワーク埼玉」で起きた性暴力の問題で、被害者がブログでの告発に踏み切らざるをえなかったのは、団体の代表が組織として対応をずっとネグレクトしてきたからだよね。スルーしていれば、逃げ切れるという考えがあったのでしょう。
団体のホームページに謝罪文のPDFがアップされたけど、団体や代表のSNSアカウントでは一切、このことに触れないまま。世間が忘れるのを待っているのか、と情けない気持ちになる。
小林 「良いことのためには多少の犠牲は仕方ない」という発想なんだと思うけど、説得力ないよね。目の前の一人を助けらないのに、どんな多くの人を助けられるんだと。
稲葉 社会運動への影響を考えてしまうのだろうね。僕もこういう問題が起こった時に、反射的に社会運動への影響を考えてしまう傾向があるので、被害に遭った方の尊厳を最優先に考える、という立ち位置からぶれてしまわないよう、気をつけないといけないと思っているけど。
被害者のブログのタイトルにもなっている“I’m here”という悲痛な声に応答しなければ、という思いで、団体の代表に対して被害者に真摯に向き合うことを求めてきたけど、その一方で、反貧困運動への影響ということについても考えたのも事実。代表は生活困窮者支援運動における中心的な法律家の一人でもあるから。
僕としては社会運動をバージョンアップしていくためには内部で起こる問題にも向き合っていく必要があると考えて、発言をしているけど、それは「社会運動にプラスかマイナスか」という判断基準での発想に過ぎないという限界も感じている。短期的にはマイナスになると考えて、この問題で沈黙をしてしまう人の気持ちも理解できてしまうところもある。
生活保護の問題でも他の問題でも、制度や政策を変えていくためには、社会運動が必要で、社会運動の主体としての組織というのはどうしても必要になると思っているので、こういうことが起こった時に「社会運動の力が削がれることは避けたい」という意識がどうしても頭をもたげてしまうんだよね。そういう「運動ファースト」の意識が、社会運動団体で問題が起こった時に内部の人や近しい人が沈黙してしまい、被害者を孤立させてしまう構図を作ってしまっている。自戒を込めて。
こういう時に、積極的に発信する人はフリーランスなど、立場的に独立している人がほとんどで、組織に属しながら発信している人はほとんどいないのだけど、美穂子さんはなぜ言えてるの?
小林 「野良」活動家だからじゃない?つくろい東京ファンドで、それぞれ考え方の違う個人がみんなバラバラに動き回っているような中にいるからこそ、こうやって別のところで起きている性暴力やハラスメントに対して言いたいことが言える立場を担保できている。つくろいではそういう発言を止める風潮も特にないし。しかも、このネットワークで私が孤立しようとも、私は「活動界隈」外の友達がいるので、そんなに損害を被らないというのもあるし、活動の中でも他の人と協力しないとできないということをやっているわけでもない。すごく独立した立場にいるから言えるのであって、これが別の団体にいたら、たとえ性暴力やセクハラ・パワハラは絶対にいけないと思ったり、被害者に心を寄せたいと思ったとしても、まず組織の中で「それはやめてくれ。うちの組織に不利益になるから」と言われてしまうから、そこで発言や行動を制限される。言われなくてもそういう空気ができ上がる。活動界隈で働きにくくなったり、完全に孤立して総スカンをくらったりするのを怖れて、沈黙するんだろうね。
稲葉 これまで他の社会運動団体でも問題が起こった時に、被害者に真摯に向き合おうとしなかったり、関係者が沈黙して隠ぺいに加担したり、ということが何度も繰り返されてきました。どの団体でも共通の問題だよね。
小林 社会活動をしている団体は「正しくあらねばならない」、つまり自分たちは「正しい」「正しいはずだ」と勘違いすることから問題は始まっているんじゃないかね。
稲葉 無謬性の神話だよね。「間違ってはいけない」という前提で動いているから、「そんな自分たちは間違っていないはずだ」と思いこんでしまう。
小林 そこに全てのシナリオを押し込んでいくんだよね。都合の悪いことがあると、排除することで「解決」をはかる。良いことをしている団体でもいろんなことが起こるわけで、私たちはどんなに正しくあろうとしても、いくらでも間違いをする生き物なんだから。その時に間違いに向き合えなくなるのは、結構、危うい状態なのに、それがもう当たり前になっているという。それはとても恥ずかしい状況なのだと他人を見ていて思うけど、とはいえ、問題が自分に降りかかってくるのは明日かもしれない。その時、自分はどんなふうに対応するのか。もしかしてすごく恥ずかしい、そこから逃げてしまうということをするかもしれないんだけど、一回、反射的に逃げてもまた戻ってこれるかどうか。そこにかかっているのかなと。
間違いは犯すんだし、もしかして一回は逃げるかもしれないけど、逃げ続けるのか。逃げ続けるために相手を悪者にし続けるのか、とか。ちゃんと向き合って、「問題は私にあった」と言えるのか。そういうのが常に自分に問われているよね。試され続けるよね。
稲葉 「間違えたら、自分が間違えたと言える」というのは大切だね。鶴見俊輔が「まちがい主義」ということを言っているけど…。
小林 また難しいことを言って。
稲葉 「自分たちは間違うことがあるんだ」ということを前提にした方が良いという話で。
小林 そりゃそうだよ。どんだけ傲慢なん。
稲葉 どの組織でも間違いうるんだという前提に立つ必要があるということだよね。本当は再発防止を徹底して、性暴力やハラスメントが起こらないようにするのが一番なんだけど、それでも起きてしまうという現実があって。それでも起きてしまった時にどうするか、ということをあらかじめ考えておく、というのが重要だよね。
小林 自分がやってしまった時、あるいは自分の所属する団体のスタッフがやってしまった時、あるいは活動を進めていく上で関わりのある第三者が加害者になった時とか、世話になっている人が加害者になった時とか、そういうのを全て想定して考えて、「その時、自分はどう考えるべきなのか、どう動くべきなのか」を常にシミュレーションしたり、考えたり、想像力を広げていくのが必要だね。加害者、被害者が誰であるのか、自分とどういう関係にある人なのかによって、心の微妙な動きは絶対に変わるので。その動きがどういう感情によって引き起こされているのか、とか、それが被害者にとってフェアであるのか、ないのかとか。そういうことをつぶさに観察しないといけない。
稲葉 今回の自分の立場というのを改めて考えてみると、僕は被害者の女性や団体の代表はよく知っているけど、加害者の男性とは面識がなかったんだよね。もし、これが逆に加害者側をよく知っていて、被害者側とは面識がない、という立場だったら、どうふるまったのだろうか、ということも考えるけど、その場合は沈黙していたかもしれない。
小林 常に自分を観察して振り返るのは大変な作業なのだけど、それをしないのなら、「人権」とか口にしてはいけない。政治家とかで、プライベートと政治的手腕は別だという言い方をすることはあるけど、「人権」とか「社会の不平等をただす」と言って活動をしている人たちの集団は、「自分が人としてどうあるべきか」から逃げてはいけないと思う。
稲葉 でも、そこで潔癖であることを求めてしまうと、最初から「正解」を求めてしまうのかも。ストイックに「正解」を求めていって、一回、「正解」を手にしたと思ったら、もう自らを省みることをやめて、「私は間違えていない」という発想になってしまうのかなと。
小林 なるほど。逆説的!それが今の現象ということ?
稲葉 「間違いがありうる」ということを念頭に置きながら、間違ったら、いったん立ち止まって、謝罪し、改める、というプロセスが大切なんだけど、自分も含めて、それが難しいなと。男性ジェンダーの問題なのかもしれないけど。
それが集団になると、「仲間をかばう」というホモソーシャル的な「かばい合い」の文化が作られていって、ますます修正が利かなくなる。
小林 なんで仲間がやらかしたことを隠蔽することで一致団結するのかね?なんで、それが「仲間意識」と思っているのかね?
稲葉 一緒に活動している仲間をリスペクトすることと、その人の犯してしまった間違いを見て見ぬふりをするということが同一線上になってしまうんじゃないかな。
小林 それで、整合性を取るために、無理矢理、被害者の方に非があるようなストーリーにして、自分もそれを信じ込んでしまう、ということでしょ。それはひどくアンフェアだし、極悪やで。リスペクトと批判は共存できるし、全然矛盾しないことなのに。つーか、間違ったことを指摘されて怒るような人は未熟な人だと思うけど。
稲葉 被害者も「仲間」なんだけど、栗田隆子さんが『ぼそぼそ声のフェミニズム』で指摘しているように、いつも被害者の側が活動から離れざるをえない、組織を出ざるをえない、という状況に追い込まれていって、被害者が離れてしまえば、「丸く収まった」という話にされてしまうんだよね。なんだろうね、この組織文化は。
小林 それは、日本社会に根深い「個よりも組織が大事」という文化でしょ。自分は「個」だけではなくて、その団体を支える駒の一つなんだろうね。みんなで重たい「組織」を背負っていて、その中で一人が他の人の言動に異を唱えると、「組織」の歩みが乱されると考えるのだろうね。そういう「調和を乱す」「和を乱す」人は許されないんだよね、日本では。だから村八分にして、出て行かせる。だけど、さすがに今の時代は昭和と違って、露骨に村八分にはできないから、その人の非をあげつらったり、でっち上げたりしてイメージを低下させて「空気」を作って、出て行かざるをえないようにする。それは本当にテンプレのように巧妙化していて、どこの団体でも行われてる。
それって小学校、中学校の時にあったいじめと全く同じ構図で、それが洗練されて、アップグレードされて、大人の組織でも行われている。この国には「いじめはいけない」と子どもに言える大人なんて誰もいないのではないか、と思うくらい、大人の世界の方が苛烈。でも、巧妙化しているから分かりにくくて、やられた方は、黙っていなくなるしかない。
発言や抵抗をすることで、どういう仕打ちを受けるかということを女性はよーく知っている。あるいは弱い立場にいる男性もそうだと思うけど、身をもって知っていたり、見てきたりしているわけだから。「次は自分がターゲットになる」というのは、いじめの中ではあまりによくあるシナリオだよね。被害者を守ろうとすると、今度は自分がターゲットになる。本当によくあるシナリオなので、それをみんな学習してきているので、言えない。
稲葉 疑問を持っても、沈黙を強いられる構造があるんだよね。どこから変えていけばいいか、わからなくなるね。
小林 わからないよね。黙るよね、みんな。個が確立していないから、自分の意見を主張する自由が約束されていないから、まぁ、黙りますよ、みんな。私は黙ってしまう心理的メカニズムや社会構造も理解はできるし。私自身、これまで支援団体で起こる性暴力について、事情がよくわからない場合、おもてだって批判せずに黙ってしまったという時があったからね、あの時どうして私は黙っていたのかなっていう自問自答は続いている。
だけど、全ての人が、どの立場にあっても、組織の中にいても「私はこう思う」と言えるようにならなければ、おかしいのよ。「私はこの組織に属しているし、この組織で頑張りたいと思っているけど、これには反対だ」ということを言える環境にしていかないとダメだと思うのね。組織も個人も成長をしない。失うものばかりだと思うんだけどね。退化!
稲葉 組織の中で一人ひとりが空気を読まずに異議を唱えるということを習慣化していくこと、組織の中での「居心地の良い」人間関係を相対化する視点を常に持つことが大切だよね。特に男性は組織と自分を同一化してしまう傾向があるので、気をつけないと。
この問題では、自分の考えをなかなか言語化できないでいたので、あえて対話という形を取ってもらいました。ありがとうございました。
※この記事を作る上で、以下の記事・文献を参考にさせていただきました。
ウネリウネラ「良きもの」の中の性被害について
https://uneriunera.com/2020/12/04/yokimono/
ウネリウネラ「震災支援ネットワーク埼玉」の性被害対応について
https://uneriunera.com/2022/02/04/seijitsunataiouwo/
栗田隆子『ぼそぼそ声のフェミニズム』(作品社、2019年)
星野智幸『だまされ屋さん』(中央公論新社、2020年)
2022年3月22日
提言・オピニオン
生活保護ケースワーク業務の違法な外部委託に続き、中野区でまた大問題が発生しました。
中野区が区役所の新庁舎などの整備に関する計画案を発表し、9月1日(水)までパブリックコメントを募集しています。
その中で、新庁舎には生活保護担当課だけが入れず、道路を隔てた社会福祉会館(すまいる中野)に移されることが明らかになりました。
中野区区有施設整備計画
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d030169.html
中野区区有施設整備計画(案)(PDF形式:6,990KB)
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d030169_d/fil/8.pdf
区有施設整備計画(案)のP45に以下の記述があります(画像参照)

● 多様化・複雑化する生活相談に対応するため、生活相談・自立支援窓口は区役所新庁舎に配置し、庁内窓口や社会福祉協議会、すこやか福祉センター等との連携強化を図る。
● また、生活保護受給者の増加に伴うケースワーカーの増員に対応するため、生活保護窓口は社会福祉会館に配置する。
この計画案では、生活保護の手前で生活困窮者への相談支援をおこなう生活困窮者自立支援制度の窓口は新庁舎に設置されるものの、生活保護の決定後の相談や保護費の支給などは新庁舎ではなく、社会福祉会館で行なわれることになります。
生活保護の担当課だけが新庁舎から排除される理由は「ケースワーカーの増員に対応するため」とされていますが、「生活保護利用者には新庁舎に来てほしくない」という差別的な意図があるのではないかと私は疑っています。
この計画案を止めるため、9月1日(水)までにパブコメを送っていただくことをお願いいたします(メールでもOKです)。
以下は、私が送ったパブコメの文章ですので、ご参考にしてください。「修正理由」は短くても構いません。
===========================
「中野区区有施設整備計画(案)」に係るパブリック・コメントの募集について
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d030940.html
中野区区有施設整備計画(案)へのパブリックコメント
*氏名:稲葉剛
*ページ番号 区有施設整備計画(案)のP45
*意見
2-2 「社会福祉会館・区役所新庁舎における生活援護機能の再編」について、生活保護担当課のみ区役所新庁舎ではなく社会福祉会館に移すという計画を撤回し、生活保護担当課も新庁舎内に移してほしい。
*修正理由
・計画案では、生活困窮者自立支援制度の担当課は新庁舎内に設置され、生活保護の担当課は社会福祉会館に移されることになっていますが、厚生労働省は各地方自治体に対して、この2つの制度は相互に連携して運用するように求めています。2つの担当課が別々の建物に設置されることになれば、両者の連携が取りにくくなり、結果的に利用者にしわ寄せがいくことが懸念されます。区役所の現庁舎同様、この2つの担当課は同一フロアに設置されるべきです。
・中野区は「新しい区役所整備基本方針」(2014年1月)において、「ワンストップ・クイック型サービスの充実」により区民サービスを向上させるという方針を提示しており、「新しい区役所整備基本計画」(2016年12月)では「新しい区役所は、障害のある方、高齢の方、お子様を連れた方、外国の方など、来庁したすべての方が不自由なく手続きや相談ができる、利便性の高い区役所とします。」という基本的な考え方が示しています。生活保護を申請した人は保護の決定後も、担当ケースワーカーと相談しながら、住民票手続きをおこなったり、高齢者福祉、障害者福祉、子育て支援等の相談をおこなうこともありますが、こうした場合、利用者は車道を隔てた2つの建物を行き来せざるをえなくなります。生活保護世帯の約8割は高齢者世帯及び障害者・傷病者世帯であり、移動により多大な不便を強いられることになります。言うまでもなく、生活保護利用者も区民であり、区のめざす「ワンストップ・クイック型サービス」を利用できるような設計にすべきです。
・生活保護担当課のみを新庁舎から排除するのは、差別の意図の有無にかかわらず、生活保護制度への社会の偏見や無理解、制度利用者への差別を助長しかねません。コロナ禍で生活困窮者が増加していることを踏まえ、厚生労働省は昨年から「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」という広報を強化しています。中野区が生活保護担当課のみを別の場所に移すという方針を強行すれば、「中野区は生活保護利用者を新しい庁舎に入れたくないと考えている」という憶測が広がることになり、その結果、生活保護利用者が今以上に肩身の狭いをしたり、困窮している人が申請をためらう事態になることも想定されます。早急な見直しを求めます。
==========================
※パブコメは、「中野区に住所、勤務先、通学先のある方、中野区に事業所や事務所のある個人又は団体、案件に直接利害関係を有する方(利害関係を有する理由を記入していただきます)」が送ることができます。
上記にあてはまらない方は、「中野区に事務所がある一般社団法人つくろい東京ファンドを応援している市民」という記載でも大丈夫です。
急な話ですみませんが、ご協力よろしくお願いいたします。
2021年8月30日
提言・オピニオン
私も運営委員として参加している「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」が作成して、全国各地の学校で上映してきた映像教材「『ホームレス』と出会う子どもたち」が期間限定(9月30日まで)で無料公開されました。
この映像は、全国各地で頻発する野宿者への襲撃事件をなくすことを目的に、野宿者への差別・偏見を解消するための教材として制作されました。
先日も、人気ユーチューバーによるホームレスの人たちへの差別発言が社会問題になりましたが、私はこうした発言が野宿者への差別襲撃を扇動しかねないことに大きな危機感を抱いています。
1980年代以降、全国各地で野宿者への襲撃事件により亡くなった方の人数は、確認できただけで27人にのぼります。襲撃を受けた被害者が怪我や物的損害を負った事件の件数は把握できませんが、この何十倍にものぼると推察されます。
襲撃による死亡者の人数を時系列でまとめると、下記の通りになります。
1983年 3人(横浜市)
1995年 2人(東京都北区、大阪市)
1996年 2人(渋谷区、東京都北区)
2000年 3人(墨田区、大阪市、練馬区)
2001年 1人(大阪市)
2002年 4人(東村山市、名古屋市、熊谷市、名古屋市)
2003年 4人(世田谷区、水戸市、名古屋市、江東区)
2005年 2人(墨田区、姫路市)
2006年 1人(岡崎市)
2008年 1人(府中市)
2009年 1人(世田谷区)
2012年 1人(大阪市)
2020年 2人(岐阜市、渋谷区)
襲撃事件による被害者の数は、全国的に野宿者数が増加し始めた1990年代半ばより増え続け、全国の野宿者数がピークに達した2000年代初頭に最も多くなっています。発生地域は野宿者の多い大都市部(東京、名古屋、大阪)が大半を占めています。
その後、事件の発生件数は減っていきますが、その背景には官民の支援策により野宿者数が減少に転じたこと、一部地域で襲撃をなくすための教育現場での取り組みが始まったことがあると見られます。
【関連記事】東京都墨田区で野宿者襲撃が10分に1に減少(2014年10月17日)
http://inabatsuyoshi.net/2014/10/17/1124
それでも、2014年に東京都内のホームレス支援団体が合同で実施したアンケート調査では、野宿者の4割が襲撃をされた経験があると回答しています。
【関連記事】野宿者襲撃の実態に関する調査結果を発表。都に申し入れを行いました。(2014年8月14日)
http://inabatsuyoshi.net/2014/08/14/926

2012年の大阪での事件を最後に、7年半、被害者が死亡する事件は起こっていませんでしたが、昨年(2020年)は岐阜と東京で被害者が死亡する事件が発生しています。
コロナ禍の影響で、新たに住まいを失う人は増加傾向にあるため、今後も予断を許さない状況にあると私は懸念しています。
下記の年表は、ホームレス問題の授業づくり全国ネットが作成した野宿者襲撃・略年表の中から被害者が死亡した事件のみを抜粋し、一部を加筆・修正したものです。
野宿者襲撃・略年表(ホームレス問題の授業づくり全国ネット)
http://hc-net.org/about/history/
同ネットの略年表は、長年、襲撃をなくすための授業実践に取り組んできた生田武志さんのホームページが元になっています。
野宿者襲撃・年表 2000~(生田武志さんホームページ)
http://lastdate.verse.jp/attackchronicle.htm
これらの年表は、主に当時の新聞報道をもとに作成したもので、事件後の審判・裁判結果などの詳細を確認できなかったものもあります。
ぜひご一読いただき、こうした襲撃事件をなくすために何が必要なのか、一緒に考えていただければと思います。
【野宿者襲撃・略年表(抜粋版)】
1983年
■2月5日 横浜市
横浜市・山下公園で野宿していた須藤泰造さん(60)を、市内の中学生5人をふくむ14歳~16歳の少年10人が襲い、殴る蹴る、ゴミかごに投げ入れて転がすなどの暴行を加えて逃走。須藤さんは内臓破裂などで2日後に病院で死亡。少年らは前年12月から「浮浪者狩り」をくり返しており、事件の直前にも横浜スタジアムで野宿者9人を次々と襲い、2月までに計13人に重軽傷を負わせたとされる。
同時期にほかに2人の野宿者が殺害されているが、犯人は特定されず未解決のまま。少年たちは「ゴミを掃除しただけ」「逃げまわる姿が面白かった」「スカッとした」などと話したといい、社会に大きな衝撃を与えた。
なお、この事件は当時、「横浜浮浪者襲撃事件」と呼ばれていたが、「浮浪者」という言葉は差別的な意味合いを持つため、現在は使用されなくなっている。
1995年
■10月15日 東京都北区
午前4:05頃、東京都北区で公園のベンチに寝ていた野宿者の佐藤博忠さん(69)が、暴行を受けて死亡。同区に住む無職少年(17)ら3人が、10分間にわたって殴る蹴るの暴行を加え、内臓破裂で死なせた疑いで、11月に逮捕された。少年たちは、たまり場にしている児童公園のベンチに寝ていた佐藤さんを「むこうに行け」と起こし、佐藤さんが抵抗せずに立ち去ろうとすると「無視するとはなにごとだ」と追いかけたという。
■10月18日 大阪市
午前8時半頃、大阪市中央区の道頓堀川にかかる戎橋で寝ていた野宿労働者の藤本彰男さん(63)が、通りかかった若者(24)に川に落とされ死亡した。当初、若い男2人が抱えて川に投げこんだ事件とされたが、共犯とみなされた友人の男性は冤罪で、99年一審判決で無罪判決、2000年控訴審で無罪が確定。
主犯の若者は99年控訴審で、懲役4年の実刑判決が確定。裁判長は「友人と共謀して川に投げこんだ」という供述は「取調官の誘導によるもの」と断定し、「2人で投げこんだ」とする一審判決(懲役6年)を破棄。検察側も上告せず、刑が確定した。
1996年
■5月24日 東京都渋谷区
午前1時すぎ、東京都渋谷区の代々木公園で、ベンチに寝ていた野宿者の今井一夫さん(46)と近くにいた男性(34)が少年グループに襲われ、16~17歳の私立高校生や無職少年6人が、のちに逮捕された。今井さんは頭を強く打ち、収容先の病院で8月に死亡。男性は1か月の重傷。少年たちは2つのグループで、「相手のグループに見下されるのがいやでやってしまった。無抵抗で、そのときは面白かったが、あとになって大変なことだとわかった」などと話したという。また野宿者を「虫けら」にたとえて、襲撃を「ケラチョ狩り」と呼んでいた。
■7月12日 東京都北区
午前4時頃、東京都北区の赤羽公園で、野宿生活の男性(62)が、少年5人に襲われ、意識不明の重体となり1か月後に死亡した。同区内に住む都立高校1年生ら15~16歳の少年5人が逮捕される。公園内で酒を飲んで話していたところ、たばこの火を借りに近よってきた男性に「生意気だ」などと因縁をつけ、頭などに殴る蹴るの暴行を加えた。近くで寝ていた別の男性2人も殴られ負傷した。少年たちは「ホームレスはゴミみたいに汚い」「地元の住民のためによくない」などと供述したという。
2000年
■6月15日 東京都墨田区
東京都墨田区と中央区にかけて夜間、連続して野宿者が襲撃される。金属バットで頭を殴られたり、襟首をつかまれ約30メートル引きずられた人もいた。墨田区亀沢の高架下で寝ていた小茂出清太郎さん(68)が内臓破裂などで死亡。3人が負傷。
7月26日に大学生(18)、アルバイト店員(19)、会社員(20)の3人が逮捕。「日々の生活にいらいらしていた」「殴るとスカッとするのでストレス発散のためにやった」などと供述。
■7月22日 大阪市
午前4:25頃、大阪市・JR天王寺駅前の路上で、野宿者の小林俊春さん(67)が、寝ていた段ボールの囲いに自転車でつっこまれ、殴る蹴るの暴行を受け、出血性ショックで死亡。8/1、同年1月頃から大阪城や天王寺公園付近を中心に、20件以上の野宿者襲撃をくり返していた格闘ゲーム仲間の高校生3人(15~17)とアルバイト店員(20)の男が逮捕される。「野宿者には暴行してもばれない」「ゲームの技を使ってノックアウトするまでやりたかった」などと供述。20歳の男は一審で懲役4年6か月の判決を受けた。
■8月27日 東京都練馬区
午後7:30頃、東京都練馬区の児童公園で野宿していた男性が、殴られ、殺される。公園で花火をしていた若い男女が、男性から注意されたところ、若い男が暴行を加えたという。男女はそのまま立ちさった。
2001年
■9月18日 大阪市
午前3:40頃、大阪市天王寺区の路上で、野宿者の棚橋健志さん(53)が顔を蹴られて転倒、後頭部を強く打ち、2日後に死亡した。9/20、中学3年の男子生徒(15)が出頭し傷害致死容疑で逮捕された。
2002年
■1月25日 東京都東村山市
東京都東村山市のゲートボール場で、野宿していた鈴木邦彦さん(55)が、夜間3度にわたって、地元の中学2年生4人と高校2年生2人の少年たちに暴行され、角材やビール瓶で殴られるなどして全身に打撲を受け、外傷性ショックで死亡した。事件の前日、中学2年生の少年3人は、同市内の図書館で騒いでいたのを、鈴木さんに注意されたことに腹を立て、図書館の前で小競りあいになっていた。翌25日、鈴木さんが寝泊りしているゲートボール場をつきとめた少年らは、同日午後6時頃と同7時頃に鈴木さんを襲って暴行。その後、塾に行く少年がいたためいったん引きあげ、再び合流。同9時20分頃から、高校生らも加わり、約1時間半におよぶ暴行を加えた。「謝れ」「お前が先に手を出した」などと少年らが叫んでいるのを別の野宿者男性が聞いている。
警視庁と東村山署は27日までに、出頭してきた同市立中学2年の男子生徒4人のうち、14歳の3人を傷害致死容疑で逮捕、13歳の1人を児童相談所に通告。少年らは「図書館で騒いでいたことを鈴木さんに注意されたので仕返しした」などと供述し、泣いたり「許してください」とわびたりする少年もいたという。14歳の3人は起訴されず、少年院送致。高校2年の2人は起訴され、それぞれ懲役2年6か月以上5年以下、懲役3年以上5年6か月以下の実刑判決を受け、少年刑務所に送致された。
■8月13日 愛知県名古屋市
午前2時すぎ、名古屋市中村区の公園で、野宿生活をしていた大橋富夫さん(69)が、若い男4人に暴行を受けて死亡。
■11月25日 埼玉県熊谷市
午後9時半頃~10時半頃、埼玉県熊谷市の路上で、同市立中学生2年の男子3人(いずれも14)が、野宿生活者の井上勝見さん(45)の頭や腹などを現場に落ちていた角材や水道管で殴る蹴るの暴行を加え、翌26日に急性硬膜下血腫で死亡させた。地検は12月20日、14歳の少年3人を、傷害致死の非行事実で家裁に送致。3人とも「少年院送致が相当」とする意見をつけた。少年審判の結果、3人は初等少年院送致となった。被害者の井上さんは1年ほど前から同市北部地域を転々と歩き回り、「おにぎりください」「あたたかいものください」などと物乞いしながら生活していた。
事件の2か月以上前の9月上旬、主犯の少年の家に井上さんが物乞いに訪れたことがあり、少年の父親は「出て行け」とどなって追い返した。その頃から少年は井上さんを暴行するようになり、つばを吐いたり、自転車に乗りながらとび蹴りを加えたりし、やがて別の少年も誘っていっしょに石を投げたりするようになった。
逮捕後、3人はいずれも「死ぬとは思わなかった」と話し、「ごめんなさい」と泣き続けた。少年審判で、少年の1人は「友だち以上にやることが強さだと思った。やらなければ男じゃないと思った」、別の少年は「いっしょにいてやらざるをえなかった。やらないと仲間はずれになると思った」と述べた。
■12月4日 愛知県名古屋市
午前0時すぎ、名古屋市中川区のガード下で、吉本一さん(57)が、若い男3人組にいきなりスプレーをかけられ鉄パイプで殴られ病院に運ばれたが、肺挫傷などで死亡した。
2003年
■2月5日 東京都世田谷区
午後7:50頃、東京都世田谷区の公園で寝ていた60歳くらいの男性を、中学3年の男子(15)がナイフで刺し、死亡させる。
■2月11日 茨城県水戸市
茨城県水戸市の橋下で、高校3年の女子生徒(18)をふくむ男女4人が、野宿生活をしていた海老根治さん(34)の頭や顔に暴行を加え殺害。「いっしょに酒を飲んでいたところ口論になり、服を脱がせて川に落とした」と供述。
■4月17日 愛知県名古屋市
午後10時頃、名古屋市の港北公園で、野宿者2名が数名の若者に暴行を受け、小笠原秀男さん(65)が死亡した。
■6月18日 東京都江東区
午前1時頃、東京都江東区の旧中川で、野宿者の東保起さん(64)が水死する事件が起こる。翌04年1月、東さんを強引に川に飛びこませて死なせたとして、同区に住む16歳の無職少年2人が逮捕された。調べによると少年2人は、東さんを無理やり川岸へつれていき、顔面を殴り「川に飛びこめ」と命令。いやがる東さんに石や鉄板を投げて川の深みへ追いこんだ。警視庁は当初、事件性がないと判断し、司法解剖もしていなかった。が、現場を目撃したほかの野宿者らの証言などから捜査。2人は03年4月頃から野宿者への暴行事件を10数件起こしており、「人間のくずなので、死んでもいいと思った」などと容疑を認めたという。
2005年
■7月13日 東京都墨田区
東京都墨田区・大横川親水公園の遊歩道で、香取正光さん(64)とみられる野宿生活の男性が襲われて死亡。死因は失血死で、左側頭部が陥没し大量に出血していたほか、肋骨が折れていた。16日、定時制高校の生徒で、同区内の少年(19)と江東区内の青年(20)が殺人の疑いで逮捕された。2人は午前3時半頃、仲間と酒を飲んで帰宅する途中に被害者を見つけ、襲撃したという。事件直前の12日は前期試験の最終日だった。
■10月22日 兵庫県姫路市
午前4:15頃、兵庫県姫路市の夢前川にかかる橋げたの下で寝泊りしていた雨堤誠さん(60)が、少年グループに火炎瓶を投げこまれて焼死した。雨堤さんは足が不自由で逃げ遅れたとみられる。翌06年3月、中学3年の男子(15)、高校3年の男子(18)、無職少年2人(ともに16)の4人が逮捕された。
家裁は同年5月、当時18歳の少年を「主導的役割を果たしており、刑事処分が相当」として検察官送致(逆送)し、地検が起訴。ほかの3人は初等・中等少年院送致とした。殺人罪などに問われた少年は、ほかの少年らと空き瓶にガソリンを入れて火炎瓶をつくり、雨堤さんの寝床に投げこんだことは認めたものの「なかに人がいるとは思わなかった」と殺意を否認。07年1月判決公判で、地裁は「人が死亡するにいたるかもしれないことを認識していた」として少年の未必の殺意を認定、懲役5年以上8年以下の不定期刑をいい渡した。
2006年
■11月 愛知県岡崎市
愛知県岡崎市内で連続して11件の野宿者襲撃事件が発生。11/19には、乙川河川敷で野宿生活していた花岡美代子さん(69)が金属パイプなどで顔や体を殴られ、失血死で死亡した。逮捕された市内の中学2年の男子生徒3人(いずれも14)は、少年の1人の自宅に居候していた無職の男(28)と共謀し、金品を奪う目的で花岡さんを襲ったとして、強盗致死の非行事実で少年院送致となる。少年2人は不登校、貧困で家庭環境が複雑な少年もいた。少年らを指示したとされる28歳の男は、10月に失職しホームレス状態だった。一連の襲撃事件への関与を認めたうえで、弁護側は「知的障害があり、死亡という結果を予想しえなかった」と殺意を否認。09年4月6日、地裁判決は、未必の殺意を認定し無期懲役をいい渡した。
2007年~2009年
■07年6月19日~09年1月2日 東京都府中市・国立市・世田谷区
2007年6月19日夜から20日未明、東京都府中市の多摩川河川敷で野宿者の男性(64)が頭などを鉄棒や刃物のようなもので10数回殴られ切りつけられるなどし、重傷を負った。
2008年6月20日午前4:25頃、国立市の多摩川河川敷で野宿者の男性(63)が頭部を鉄パイプで殴られ、全治約2週間の傷を負った。
2009年1月2日午後5:30頃、世田谷区内の高速道路高架下で寝ていた近藤繁さん(71)が鉄パイプで殴られ死亡。同年1月3日、多摩市に住む軽度の知的障害がある男性(36)が逮捕。上記3件の事件の殺人未遂および殺人で起訴された。
上記3件の連続襲撃の2件目の事件の8日後にあたる2008年6月28日未明、東京都府中市の中央自動車道高架下の公園で、野宿していた福岡正二さん(74)が何者かに襲われ、頭などを強打されて殺害された。検視の結果、頭部の損傷が特に激しく、死因は頭蓋内損傷の疑い。左脇腹や左腕、下半身など10数か所の切り傷があった。争った跡がないことから、突然襲われて殺害された可能性が高いとみられた。倒れていたベンチ周辺には血痕が多数飛びちり、約2メートルの高さの柱にも5ミリ程度の血のりが残っていた。
36歳男性はこの事件でも再逮捕されたが、地検は「公判を維持できるだけの証拠が集まらなかった」として、この事件については不起訴にした。一審では被告が軽度の知的障害のため、殺意を認定せず傷害致死、傷害とするとともに責任能力を認めなかったため、検察側が控訴。
2011年5月、一審懲役12年判決。12年3月、東京高裁は、3件とも殺意があったと認め、懲役22年の判決(一審破棄)。同年12月、被告側上告棄却、確定。
2012年
■10月13日~14日 大阪市
13日午前3時頃、JR大阪駅高架下で野宿していた富松国春さん(67)が、少年グループに頭や腹を殴られるなどの暴行を受け、搬送先の病院で翌14日、外傷性くも膜下出血で死亡した。ほかにも13日未明から14日未明にかけて阪急梅田駅周辺で、40~80代の野宿者4人があいついで暴行を受け、1人が脳挫傷で入院、3人が負傷した。関与したとされる無職少年2人(16、17)、飲食店アルバイト(16)、鉄筋工(16)が殺人など、府立高校1年生(17)が傷害などで逮捕され、大阪家裁に送致された。少年らは中学校の同級生で、「殺す気はなかったが、殴ったらスカッとするのでやった」「面白半分というかノリで襲った」「死ぬとは思わなかった」などと供述。アルバイト少年の携帯電話には、富松さんのほかに3人の野宿者を暴行する様子を撮影した動画が保存されていたという。
2013年2月1日、大阪家裁は、殺害に関与した疑いの少年4人を検察官送致(逆送)、府立高校生を中等少年院送致の保護処分と決定。2月8日、大阪地検は逆送された4人を殺人などの罪で起訴。裁判員裁判で審理される。2014年3月20日、大阪地裁は4人に対して、殺意は認められないとして傷害致死罪を適用し、全員に実刑判決を言い渡した(2人に懲役5年以上8年以下、1人に懲役5年以上7年以下、暴行に消極的とされた1人に懲役3年6月以上5年以下の不定期刑)。
2020年
■3月25日 岐阜市
25日未明、岐阜市の長良川にかかる河渡橋の下でテント生活をしていた渡邉哲哉さん(81)と69歳の女性に対して、未成年の若者5人組が襲撃。渡辺さんと女性は逃げたものの、少年らは約1キロにわたって石を投げながら追いかけ、土の塊を投げつけた際、渡邉さんの顔面に命中。渡邉さんは転倒して脳挫傷などにより死亡した。一緒に逃げた女性によると、襲撃は3月に入って繰り返されており、命の危険を感じた女性は警察に相談。本気で捜査してほしいと訴えていたが、「犯人といたちごっこになるから、(2人の方が)ここから出て行け」と言われたという。
警察は殺人事件として捜査し、4月23日に5人を逮捕した。5人はいずれも当時19歳で野球仲間だった。5人のうち2人が傷害致死容疑で起訴され、2021年3月25日、岐阜地裁は当時会社員だった元少年に懲役5年(求刑懲役8年)、無職の元少年に懲役4年(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。
■11月16日 東京都渋谷区
16日午前4時頃、渋谷区幡ケ谷2の甲州街道沿いのバス停「幡ケ谷原町」のベンチに座っていた大林三佐子さん(64)が、近隣に住む46歳の男性に石などが入ったポリ袋で頭を殴られ、外傷性くも膜下出血で死亡した。傷害致死容疑で逮捕された容疑者は「バス停に居座る路上生活者にどいてもらいたかった」と供述したと報道された。事件前日に大林さんに金を渡して移動してもらおうとしたが、断られたことに腹を立てたとみられている。12月11日、東京地検は容疑者を傷害致死で起訴した。
2021年8月22日
メディア掲載 提言・オピニオン
2020年7月14日付け朝日新聞朝刊「私の視点」欄に、「コロナ禍の困窮者対策 災害時と同様の住宅支援を」が掲載されました。

コロナ禍の困窮者対策/災害時と同様の住宅支援を
今年3月以降、不動産の賃貸契約を結ぶため、印鑑を押印するのが日課のようになっている。コロナ禍の影響で、仕事と住まいを失った人たちを受け入れる個室シェルターの増設を進めているからだ。
個人や企業からの寄付金をもとに、新たに借り上げた都内の民間アパートの部屋は、まもなく30室に達する。各部屋には、着の身着のままの状態の人がすぐに入居できるように、購入した家電製品と布団を搬入しているが、搬入の数時間後には入居者を迎え入れている部屋も少なくない。以前から借り上げている25室も活用しながら、連日、行き場を失った10代から70代の男女を受け入れているが、シェルターの整備は追いつかない状況だ。最近はペットの犬や猫と一緒に路頭に迷う人も出てきているので、ペットとともに暮らせるシェルターも整備する予定だ。
民間の私たちが個室シェルターの整備に奔走しなければならないのは、行政の支援からこぼれ落ちる人が続出しているからだ。東京都は今年4月、ネットカフェへの休業要請により寝泊まりをする場を失った生活困窮者に対してビジネスホテルの提供を開始したが、都内に約4000人いるネットカフェ生活者のうち、支援を受けられた人は約3割にとどまった。私たちのもとには、「都の窓口で相談したが、対象外と言われたので、野宿をせざるをえなくなった」「都と区の窓口をたらい回しにされた」「所持金がなくなり、生活保護を申請したら、ネットカフェより居住環境の悪い相部屋の民間施設に連れて行かれた」といった相談が相次いだ。また、ホテルの後に移れる一時的な住宅の提供も一部の人に限定されたため、6月以降、ネットカフェに戻らざるをえなくなった人も少なくない。
私たちは都に支援策の改善を求める一方、国に対しても災害時と同様の大規模な住宅支援の実施を求めてきた。近年、災害時には、行政が民間賃貸住宅の空き家を借り上げて、被災者に提供する「みなし仮設」方式の住宅支援が実施されているが、コロナ禍も「災害」と認定すれば、住まいを失った人に住宅を直接提供することは可能なはずだ。この提言は4月の国会審議で野党の提起で議論されたが、国の2次補正予算に盛り込まれることはなかった。
感染症の終息が見通せない中、経済危機は長期化の様相を呈している。今後、さらに住まいを喪失する生活困窮者が急増しかねない状況だ。私たち民間支援団体の努力も限界に達しつつある。「ステイホーム」をするべき「ホーム」を失った人をどう支えるのか。国の存在意義が問われている。
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事 稲葉剛
2020年8月7日
提言・オピニオン
東京都に緊急事態宣言が発令されて以降、ネットカフェ休業により行き場をなくした人たちへの緊急支援を連日、行なっています。
つくろい東京ファンド等の民間団体による支援の情報、行政による支援の情報は、こちらの記事にまとまっているので、ご参考にしてください。
コロナ禍で住まいを失う人が相談できる窓口紹介(東京)随時更新中|北畠拓也 #note
ネットカフェへの休業要請にあわせて、東京都はビジネスホテルを活用した緊急の宿泊支援を始めていますが、生活保護を申請した人に対して、各区・市があいかわらず、相部屋の民間施設への誘導を行なっていました。
詳しい状況については、下記の記事をご参照ください。
ネットカフェ追われた人々…ビジネスホテルに入れず、劣悪な「三密施設」に移る可能性も|弁護士ドットコムニュース
新型コロナ福祉のダークサイド、ネットカフェ難民が追いやられた「本当の行き先」
厚生労働省が新たな事務連絡を発出!
私たちの抗議、そして様々な立場の方からの働きかけにより、4月17日(金)、厚生労働省は、「新たに居住が不安定な方の居所の提供、紹介等が必要となった場合には、やむを得ない場合を除き個室の利用を促すこと、また、当該者の健康状態等に応じて衛生管理体制が整った居所を案内する等の配慮をお願いしたい」という内容の事務連絡を各自治体に発出しました。
これにより、少なくとも新規の相談者については、個室対応とするという原則が確立しました。
4月17日厚生労働省保護課・自立支援室の事務連絡(PDF)

東京都も「原則、個室対応」へと方針転換!
これまで私たちの抗議に対して、「従来の制度の運用は変えられない」と頑なな姿勢を崩さなかった東京都の保護課も、厚労省の事務連絡を受けて、方針転換。17日夕方、各区・市に「原則、個室対応」を伝える新たな事務連絡を出しました。
4月17日東京都保護課の事務連絡(PDF)
多くの方々が声をあげてくださったおかげで、「新型コロナウィルスの感染が拡大する中、相部屋の施設に誘導するのをやめさせる」という当たり前の原則をようやく確立させることができました。ありがとうございます。
ただ、厚労省から事務連絡が出たからと言って、ひと安心というわけではありません。これまでも自治体の職員が厚労省の事務連絡の内容を知らない、知っていても守らないということは、よくありました。
住まいがない状態で役所に相談に行かれる方は、ぜひ「原則、個室対応」という事務連絡が4月17日に出ていることを担当者に伝えてください。
各地で生活困窮者の相談支援をしている方々も、ぜひこの事務連絡を活用していただければと思います。
残された課題に取り組みます。
また、依然として下記の課題が残っています。
東京都では、民間の施設(無料低額宿泊所)がビジネスホテルに優先されるという点は変わっていません。
せっかくビジネスホテルを確保したにもかかわらず、出し惜しみをする都の姿勢を変えさせなくてはなりません。
コロナ危機以前から、相部屋の施設に入れられていた生活保護利用者の環境を改善させるという課題も残っています。
少なくとも、希望する人については早期の居宅移行か、ビジネスホテルへの転居を進めるべきです。
引き続き、残された課題にも取り組んでいきたいと思います。
つくろい東京ファンドでは、空き家・空き室を活用した独自の住宅支援も進めています。
新型コロナの影響で住まいを失った方を支えるため、個室シェルターを増設します!|つくろい東京ファンド
私たちの活動へのご支援、ご協力を引き続き、よろしくお願いします。
2020年4月19日
提言・オピニオン
(1)住宅維持編は、こちら。
http://inabatsuyoshi.net/2020/03/29/3725
生活を再建するために制度の活用を!
部屋から追い出されないためにできることを説明してきましたが、もちろん、家賃の滞納が続くのは、誰にとっても望ましいことではないので、同時に生活の再建を進める必要があります。
すでに全国各地の社会福祉協議会で、緊急小口貸付の特例措置が始まっています。貸付ですが、状況によっては償還が免除され、「返さなくてもよい」となることもあります。
生活福祉資金の特例貸付が本日から開始ー状況次第で10〜80万円がもらえる償還免除もありー(藤田孝典) – Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/fujitatakanori/20200325-00169705/
「新型コロナウイルス感染症を踏まえた⽣活福祉資⾦制度による緊急⼩⼝貸付等の特例貸付が⾏われます」(全国社会福祉協議会)
https://www.shakyo.or.jp/coronavirus/shikin20200324.pdf
失業によって家賃の支払いが困難になった人(まだ一定の貯金がある方)は、生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金」制度の活用を考えましょう。再就職までの間(3~9ヶ月間)、住宅の家賃を補助してくれる制度です。
相談は、各自治体の生活困窮者自立支援制度の窓口になります。
生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000073432.html
住居確保給付金は、従来、65歳未満しか使うことができませんでしたが、4月1日支給分から年齢制限が撤廃されました。
新型コロナウイルスに関連した生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金の活用について
https://www.mhlw.go.jp/content/000605807.pdf
貯金も尽きてきた方は、最後のセーフティネットである生活保護の申請をお勧めします。
生活保護に関しては誤解やデマが多いので、躊躇する方が多いのですが、以下の資料を読んで、正しい知識を得ていただければと思います。
「生活保護」は、働いていても、若くても、持ち家があっても、車があっても申請可能です – BIG ISSUE ONLINE
http://bigissue-online.jp/archives/1017549370.html
生活保護に関するQ&A
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
生活保護の申請は、各自治体の福祉事務所(生活福祉課等の名称)でできますが、適切に対応してくれない場合は、各支援団体や法律家にご相談ください。
生活保護のことで相談したい場合は、こちらへどうぞ(相談先リスト)
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-category-22.html
厚生労働省は、3月10日に「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度における留意点について」という事務連絡を各地方自治体に発出しています。
新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度
における留意点について
https://www.mhlw.go.jp/content/000609561.pdf
この中で厚労省は、リーマンショック時に発出した通知を再掲した上で、各自治体に以下のことを求めています。
・庁内の各部局が連携しながら生活困窮者に適切な支援を実施すること。
・特に住まいに困窮している人には様々な制度や社会資源を活用して一時的な居所の確保に努めること。
・福祉事務所は生活保護制度について十分な説明を行い、保護申請の意思を確認すること。
・生活に困窮する方が、所持金がなく、日々の食費や求職のための交通費等も欠く場合には、生活福祉資金貸付を活用したり、可能な限り速やかに保護を決定すること。
特に3点目については、「保護の申請書類が整っていないことをもって申請を受け付けない等、法律上認められた保護の申請権が侵害されないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきであることに留意願いたい」と各自治体に「水際作戦」(生活保護を必要としている人を窓口で追い返すこと)を実施しないよう、改めて釘を刺しています。
生活保護の申請に行く時に、この事務連絡をプリントアウトして持っていくのも効果的でしょう。
政府に対して、現金給付を求めよう!
すでにある制度について、正しく理解し、フルに活用するのと同時に、今回のような非常事態には政府に対して特別な支援策を求めていくことも大事です。
残念ながら、私たちが黙っていると、「和牛券」、「お魚券」のような生活再建に全く役立たない制度に予算がつけられてしまいます。
すでに家賃の支払いに困っている人が出ている状況を踏まえると、対象者を限定せずに、一律に現金を配るのが一番早いと私は考えます。
政府は、日本社会に暮らしている人全員に対して、思い切った額の現金給付を「大胆」に「躊躇なく」行なうべきです。
すでに困っている人も、まだ困っていない人も、SNS等を通して、「家賃を払えるように、早く現金をよこせ」という声をあげていきましょう。
2020年3月29日
提言・オピニオン
コロナ危機の影響で、収入が減少し、アパートやマンションの家賃を払うのが難しくなっている人が増えつつあります。
家賃が払えなくなったら、誰でも慌てると思います。でも、「もうダメだ」と思い、荷物をまとめて夜逃げをするのは、最悪の手段です。
一度、住まいを失ってしまうと、仕事を探す上でも不利になり、「住まいがないから仕事が見つからない」→「仕事がないから住まいを確保できない」という貧困のスパイラルにおちいってしまうことがあるからです。
もちろん、ホームレス状態になってからもそこから抜け出す手段はありますが、せっかく今ある部屋や家電製品などをみすみす失う必要はありません。
家賃を払えなくなった時にすべきことは2つあります。それは「部屋から追い出されないようにすること」と「生活を建て直していくこと」です。
以下にそれぞれ、どんな方法があるか、見ていきましょう。
あなたには「居住権」がある!
家賃を払えなくなったら、すぐに部屋を出ないといけないと思い込んでいる人は多いのですが、借家人には借地借家法に基づく「居住権」があります。
私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、コロナ危機を踏まえて、「すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール」を発表しました。
すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール ~家賃滞納者への立ち退き要求を止め、共に公的支援を求めましょう~
http://housingpoor.blog53.fc2.com/blog-entry-328.html
その中にも書きましたが、家賃を滞納した借家人(借主)に対して、家主や不動産業者、家賃保証会社などが裁判を経ずに、強制的に立ち退かせるのは違法行為です。こうした行為をした家主や業者は、民事上の責任だけでなく刑事上の責任も問われることがあります。
また、「緊急アピール」では、政府が充分な支援策を行なっていないから家賃を滞納せざるをえない人が増えているので、家賃滞納問題を解決するためにも、「大家さんも一緒に政府に公的支援の拡充を要求しましょう」と呼びかけています。
もし家主や不動産業者が家賃の滞納について問い合わせてきたら、この「緊急アピール」をプリントアウトして、渡してみてください。
もし「出ていけ」と言われたら
そうは言っても、強硬な手段に出てくる家主や業者もいることでしょう。
過去には2007年頃から数年間、賃貸住宅からの「追い出し屋」被害が社会問題になった時期がありました。
一部の家主や不動産屋、家賃保証会社が、家賃を滞納した人に対して、執拗に電話で督促する、訪問してきて玄関先で大声で取り立てる、ドアに貼り紙を貼る、強制的に鍵を交換する、荷物を撤去したりするなどの行為を行ない、「追い出し屋」として恐れられました。
「追い出し屋」への社会的批判が広がり、被害者への損害賠償を認める判決が相次いだため、近年は露骨な追い出し行為は少なくなってきていますが、今でも被害が根絶されたわけではありません。
これらの行為は違法行為ですので、もし被害を受けたら、まずは冷静になって、記録に残しましょう。
・電話であれば、かかってきた回数や時間、相手の名前、なにを言っているか、といったことをメモに残しましょう。
・貼り紙を張られていたとしたら、写真撮影をして記録しましょう。
・書面が送られてきて、違約金を支払えと要求されたら、その書面を捨てずに記録として残しましょう。
きちんと記録を取っていれば、後日、被害を訴えたり、損害賠償を求めることができるからです。
また、家主や業者が家に来て、支払いを約束させた上で、「支払えなければ部屋を出て行きます」という旨の「合意書」や「念書」を書くように求めてくるかもしれません。
その場合は、すぐにその場でサインをせず、「専門家に相談します」と言って、その場はお引き取り願いましょう。
賃貸住宅からの追い出しに関する相談は、全国の消費生活センター、借地借家人組合、法律家などが行なっています。立ち退きを要求されたら、早めに相談をしてください。
*追い出し屋に関する相談窓口
消費者ホットライン(全国共通188)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
全国借地借家人組合連合会
http://www.zensyakuren.jp/kakuchi/kakuchi.html
住まいの貧困に取り組むネットワーク
メール:sumainohinkon@gmail.com
全国追い出し屋対策会議
http://sikikinmondai.life.coocan.jp/oidasiya/zenkokugaigi.htm
家賃保証会社への規制は強化されている
過去に悪質な追い出しを行なった業者の中には、多くの家賃保証会社が含まれていました。
家賃保証会社は保証人の代わりをしてくれる業者ですが、家賃滞納が発生すると、家主に家賃を立て替えなければならなくなるため、入居者を追い出そうとする傾向があります。
この問題に対して、国土交通省は2009年2月、日本賃貸住宅管理協会に対して、「家賃債務保証業務の適正な実施の確保について」という要請文を送付しています。
この中で、国交省は「物件への立入り」や「物件の使用の阻害」(ロックアウト)、「家賃債務保証会社による賃借契約の解除」、「物件内の動産の搬出、処分」等は不法行為に該当する可能性があるので、実施しないようにと諫めています。
「家賃債務保証業務の適正な実施の確保について」
https://www.mlit.go.jp/common/000033066.pdf
2017年には民間賃貸住宅の空き家を住宅に困っている人のために活用する「新たな住宅セーフティネット制度」が始まりました。
この制度の中には、登録されている住宅に入居する人に対して、行政が家賃保証会社の保証料を補助する仕組みも作られたのですが、違法行為をする家賃保証会社に補助金が流れるのはおかしいという批判を踏まえ、国交省はこの制度に登録をする家賃保証会社に対する規制を導入しました。
もし登録をしている家賃保証会社が「賃貸住宅の賃借人その他の者に著しい損害を与え、又は与えるおそれがあると認められる違反行為」をした場合、登録を取り消されることになります。
家賃債務保証業者に対する登録の取消し等の措置基準
https://www.mlit.go.jp/common/001283718.pdf
今年3月12日時点で、この制度に登録をしている家賃保証会社は71社です。もしこれらの会社が違法行為をした場合、国土交通省に通報をして、登録取り消しを求めることができます。
登録家賃債務保証業者一覧
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr7_000028.html
家賃保証会社が入っている賃貸借契約を結んでいる人は、その保証会社がこの登録リストに入っているかどうか、確認をしておきましょう。
リストに入っていれば、「下手なことをすると、国交省に通報しますよ」と言うことができます(リストに入っていない業者でも国交省への通報は有効です)。
万が一、部屋から追い出されたら
専門家に相談をして、部屋から出されないに越したことはありませんが、万が一、追い出されたとしても、被害の救済を求めることもできます。
これまで30件を越える民事訴訟が提訴され、そのほとんど全部で原告(被害者)側が勝訴(または勝訴的な和解)しています。
家賃を滞納したら勝手にカギを変えられた! 「追い出し屋」の手法は許されるのか?|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_1012/c_10/n_1445/
「母の形見も捨てられた」家賃滞納で「追い出し屋」が家財道具処分…被害実態を聞く|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_5/n_4621/
鍵穴ふさいで家賃滞納の住民「追い出し」、家財道具処分…大家に慰謝料支払い命令|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_1012/n_7609/
裁判所も、「追い出し屋」被害を深刻に受け止めており、2012年3月9日の東京地裁判決では、部屋をロックアウトし、荷物を無断で廃棄した管理業者と仲介業者に対して、計220万円(財産的損害100万円、慰謝料100万円、弁護士費用20万円)の損害賠償を求める判決が言い渡されています。
日本では、行政でも、司法でも「賃貸住宅からの追い出し行為は違法で、許されない」ということは争いようのないルールとなっています。
ぜひそのことを知っておいていただければと思います。(2「生活再建編」につづく)
2020年3月29日
提言・オピニオン
台風19号が関東地方に襲来した10月12日、東京都台東区の自主避難所で路上生活者が受け入れを拒否されるという事件が発生しました。
東京の東部地域で生活困窮者支援活動を展開している一般社団法人「あじいる」は、本日(21日)、台東区に要望書を提出しました。


要望書には多数の団体や個人が賛同をしています。
私は要望書の作成段階から「あじいる」に協力し、賛同者として本日の要望書提出にも同行させていただきました。
その後、開催された台東区議会決算特別委員会の冒頭、台東区長は改めて「台風19号の際に、路上生活者の方に対する対応が不十分であり、避難できず、不安な夜を過ごされた方がおられたことにつきましては、大変申し訳ありませんでした」と陳謝しました。
しかし、要望書にもあるように、住まいのない人を拒否するという判断は「不十分」というレベルで済む話ではなく、台東区災害対策本部によって組織的に決定されたものです。このような決定が行われたプロセスを明らかにし、排除された当事者に届く形で謝罪をしていただきたいと願っています。
また、再発防止のため、今後の災害対策において災害対策基本法の理念を遵守し、当事者・支援団体の意見を聞くこと、生活保護を含めた日常業務を検証・改善し、職員への人権研修を実施すること等も求めています。詳しくは下記の要望書全文をご覧ください。
「あじいる」は、10月末までの回答を求めています。引き続き、この問題へのご注目をお願いします。
******************************************
台東区への要望書
災害対策からホームレスの人々を排除した件について
台東区長 服部征夫 殿
2019年10月21日
一般社団法人あじいる
代表 今川篤子
(事務局)
〒116-0014
東京都荒川区東日暮里1-36-10
日頃、大変お世話になっております。このたび、上記の件につき、申し入れをさせていただきたく、お願い申し上げます。
台風19号が接近し、メディアではさかんに「命を守る行動を!」と呼び掛けている中、台東区災害対策本部は、ホームレスの人々(路上生活だけでなく、ネットカフェ生活など広い意味でホームレス状態にある人)を避難所には入れないという決定をしました。
ホームレスの人々を、災害対策の対象から除外するということは、行政として命を守らないということを宣言したことになります。災害対策基本法は、その目的(第1条)として「国民の生命、身体及び財産を災害から保護する」と掲げ、基本理念(第2条の2)として、「人の生命及び身体を最も優先して保護すること」と定めていますが、この目的・理念を逸脱しています。
家がないという状態が、災害に対して最も弱い存在になるということは、言うまでもありません。
台東区は拒否をした理由として「事実として、住所不定者の方が来るという観点がなく、援助の対象から漏れてしまいました」と報道関係者に説明しています。台東区は、山谷を抱える地域であり、ホームレスの人々が多く住んでいる地域であるにもかかわらず、住所がない人たちの存在を想定していなかったというのは、日常の業務の中でも、その人たちの命や人権を守るという意識が欠如していたからではないでしょうか。
私たちは、災害対策だけでなく、台東区が住所のない人たちへの日常的な対応を全庁的に検証し、改善することを求めます。
今回の台東区の決定は、ホームレスの人々に対する差別、排除に基づく決定であり、行政が人の命に優劣をつけ、切り捨てていくという絶対許されない行為です。私たちは、今回の台東区の決定に、強く抗議するとともに、以下の要望をします。
1.台東区は、避難所にホームレスの人々を入れないという今回の決定について、被害者に届くように、謝罪をしてください。10月15日付の台東区長の出した謝罪とコメントには「避難できなかった方がおられた事」とありますが、謝罪すべきはホームレスの人たちを拒否すると決定し、受け入れなかったことです。改めて謝罪することを求めます。
2.台東区は、命にかかわる緊急時においては、災害対策基本法の基本理念「人の生命及び身体を最も優先して保護すること」に遺漏がないようその責任を果たしてください。
3.これからの災害対策において、当事者並びに支援団体の声を聞いてください。
災害大国日本と言われている中で、これまでにない事態に遭遇した時どう対処していくのか、これは今後の大きな課題です。特に都市部においては、多様な立場の人々がより多く存在していることを考えると、行政のみで対策を考えることには到底無理があります。ホームレス状態の人々のみではなく、社会的弱者と言われる人々の人権をしっかり守っていくためにも、当事者からの生の声を聞くことは不可欠です。
4.ホームレスの人たちに関わる生活保護行政、教育行政(ホームレスの人たちへの襲撃事件をなくすための授業の実施を含む)、人権行政などの日常業務が適切であったかどうかを全庁的に検証し、改善策を講じてください。また、ホームレスの人たちの人権に関する職員研修を定期的に実施し、幹部職員の参加を義務付けてください。
5.以上の点について、私たちとの話し合いの場を持つことを求めます。
以上、2019年10月31日(木)までに文書での回答をお願いします。
<10月12日の事実経過>
「一般社団法人あじいる」※1のメンバー5人が、12日の午後1時過ぎ、上野駅周辺(上野駅構内、文化会館周辺)のホームレスの人々に、非常食やタオル等を配ることと共に、台東区の自主避難場所で上野駅から最も近い忍岡小学校に避難するよう勧めるチラシを配布しました。
しかし、もうすぐ全員に配り終えるという時、1人の男性が、「午前9時ごろに行ってみたが、ことわられた。住民票が北海道にあるからといったら、ここは都民のための避難所ですと言われた」と言われました。
小学校に出向いて区職員に確認し、その場で台東区の災害対策本部に電話をつないでもらい、真意を確かめました。すると、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と明確な返答が返ってきました。
私たちは、上野駅に戻りチラシの情報は誤りだったと告げて回ると、上野駅の入り口に座っていた一人が「今さっき行ってみたけれど駄目だと言われて帰ってきた」と話されました。
その後、再度台東区災害対策本部に「今後避難準備や避難勧告が出た場合も避難所は利用できないのか」と問い合わせたところ、「ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定している」との返答でした。
※1 一般社団法人あじいるとは
2000年から活動している生活困窮者への食の支援をする「フードバンク」と、2001年からホームレスの人々の生活・医療相談活動を行ってきた「隅田川医療相談会」が統合して、2019年に発足した市民団体です。
【賛同団体】
一般社団法人 つくろい東京ファンド
蒲田・大森野宿者夜回りの会
きょうと夜まわりの会
ささしまサポートセンター
社会事業委員会ひとさじの会
新宿ごはんプラス
水族館劇場
住まいの貧困に取り組むネットワーク
特定非営利活動法人 神戸の冬を支える会
特定非営利活動法人 ジョイフルさつき
特定非営利活動法人 TENOHASI
特定非営利活動法人 長居公園元気ネット
特定非営利活動法人 みんないっしょ
日本寄せ場学会
認定特定非営利活動法人 こどもの里
認定特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい
認定特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン(世界の医療団)
ねる会議
ハウジングファースト東京プロジェクト
反貧困ネットワーク
部落解放同盟東京都連合会荒川支部
平和憲法を守る荒川の会
べてぶくろ
訪問看護ステーションKAZOC
ホームレス総合相談ネットワーク
ホームレス問題の授業づくり全国ネット
ゆうりんクリニック
夜まわり三鷹
【賛同個人】
浅井直美(江戸川区立松江第五中学校)
荒川茂子(企業組合あうん 代表理事)
石黒文子(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
石崎卓(東京路上鍼灸チーム)
泉博子(平和憲法を守る荒川の会)
泉みどり(こどものごはん委員会・東村山)
板橋敬(つながるネット)
伊東永子(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
稲垣絹代(沖縄県名護市 名桜大学)
稲葉剛(立教大学大学院特任准教授)
稲葉奈々子(上智大学)
瓜谷眞理(ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
遠藤美咲
大澤優真(一般社団法人つくろい東京ファンド)
岡本祥浩(中京大学)
奥山たえこ(杉並区議会議員・いんくるーしぶ杉並)
尾澤邦子(平和憲法を守る荒川の会)
尾澤孝司(平和憲法を守る荒川の会)
小野崎篤(部落解放同盟東京都連合会荒川支部)
小野崎佳代(部落解放同盟東京都連合会荒川支部)
甲斐田万智子(国際子ども権利センター:シーライツ)
片山文惠(きょうりゅうや)
加藤孝(東京都世田谷区)
川田正美(出版労連ネットワーク)
岸田直子(元TENOHASI・フリー編集者)
北川由紀彦(放送大学)
北嶋ゆりや(社会福祉士 精神保健福祉士)
北村慈郎(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
北村年子(ノンフィクションライター・ホームレス問題の授業づくり全国ネット代表理事)
木下友子(ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
沓澤則子(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
久保清隆(平和憲法を守る荒川の会)
倉林浩(郵政産業労働者ユニオン)
栗林佐知
小林美穂子(カフェ潮の路)
坂井康史(ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
坂本繁夫(平和憲法を守る荒川の会)
佐久間真弓(ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
佐々木雅子(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
佐藤和宏(東京大学社会科学研究所)
佐藤修三
佐藤正子
澤田裕(ユニオン出版ネットワーク・出版ネッツ)
芝田淳(司法書士)
荘保共子(認定NPO法人 こどもの里理事長)
白井裕子(愛知県 愛知医科大学)
白桃敏司(特定非営利活動法人 みんないっしょ)
杉村和美(ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
高沢幸男(寿支援者交流会・事務局長)
竹内すなお(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
田村義彦(ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
辻浩司(埼玉県議会議員)
土田綾子
鄭芝永(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
汀なるみ(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
Tom Gill(明治学院大学国際学部教授)
中桐康介(長居公園仲間の会)
中村訓子(ほしのいえ)
中山亜弓(タコシェ)
なすび(山谷労働者福祉会館活動委員会、被ばく労働を考えるネットワーク)
西村仁美(ルポライター)
野々村耀(神戸YWCA夜回り準備会)
野元弘幸(首都大学東京・教授)
橋立啓子(平和憲法を守る荒川の会)
橋本圭子(広島文教大学 人間科学部人間福祉学科)
原宝(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
平山隆浩
廣岡一昭(旅と思索社)
藤井克彦(ささしまサポートセンター)
堀江有里(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
本田次男(きょうと夜まわりの会)
牧野美登里(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
三上一雄(ほしのいえ)
三上悠佳 (ユニオン出版ネットワーク:出版ネッツ)
三森妃佐子(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
宮田真理子
三好義仁
三輪保夫(日本基督教団神奈川教区寿地区センター)
毛利一平(医療法人社団 ひらの亀戸ひまわり診療所)
森本孝子(平和憲法を守る荒川の会)
やじまあきこ
箭内良成(平和憲法を守る荒川の会)
結城翼(特定非営利活動法人社会理論・動態研究所)
横山晋(山谷労働者福祉会館活動委員会)
吉沢公良(平和憲法を守る荒川の会)
吉澤千枝子(平和憲法を守る荒川の会)
吉水岳彦(社会事業委員会ひとさじの会事務局長)
渡辺つむぎ(墨田区在住)
渡辺裕一(NPO法人地球対話ラボ)
渡邉由紀子(希望のまち東京をつくる会事務局長)
(五十音順・敬称略)
2019年10月21日
提言・オピニオン
東京都大田区で野宿者支援活動を続けてきた「蒲田・大森野宿者夜回りの会」の越智祥太医師からの情報提供です。
東京五輪を契機に各地で野宿者排除の動きが見られ、生活保護行政においても野宿者への対応が適切に行われていないことを踏まえ、「蒲田・大森野宿者夜回りの会」は、特に大田区の事例を以て、国交省、東京都法務局(法務省)、東京都庁(福祉部、人権局)、大田区(区長、健康政策局、福祉管理課、生活福祉課、総務課、人権・男女平等推進課)に申し入れを行いました。
申し入れ内容は下記のとおりです。
************
2019 年 9 月 30 日
国土交通大臣殿
法務大臣殿/法務省人権擁護局長殿
東京都知事殿/東京都総務局長殿/東京都総務局人権部長殿/東京都福祉保健局長殿
大田区長殿/大田区人権・男女平等推進課長殿/大田区地域基盤整備課長殿/大田区生活福祉課長殿
公益財団法人 人権教育啓発推進センター長殿
公益財団法人 東京都人権啓発センター長殿
以下を申入れます。
貴職のご活動に敬意を表します。
東京五輪が近付き、都内各地で、野宿者排除が、国土交通省や東京都・大田区はじめ各区によって行われることが増えてきております。
河原や、道路や、公園や、役所の前までも、認められます。
長い野宿生活で老化や病弱が認められる野宿者に対し、今後の生活や住居や医療福祉等について、本人とよくよく話し合い相談に乗る対応もなされぬまま、ただ排除されることが横行してきております。
特に最近は、委託業者に依頼し、公的職員の対応もないままの排除まで認められます。
東京五輪・パラリンピックで、本来は国際的に人権が尊重されるべきとされながら、足元での人権の軽視が許されてよいはずがありません。
誰もが人として権利が尊重され、軽率な排除をされず、本人と十分な対話の上で、本人の状態に応じた生活や医療福祉が保障される対応が行われることを確認していただきたく、申し入れます。
よろしくお願い申し上げます。
日本国憲法第 25 条には、
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に
努めなければならない。
と、規定されています。
日本も批准している国際人権規約(社会権規約)では、
第 1 条 1 で自決の権利としての、経済的、社会的、文化的発展の追求権、2 で生存のための手段を奪われない権利、が保障され、
第 2 条 1 で締約国は、権利の実現のため、援助及び協力の行動を約束しており、2 で権利はいかなる差別もなく保障することを約束しています。
第 5 条 2 で基本的人権、
第 9 条 で社会保険その他の社会保障についての権利、
第 11 条 1 で食糧、衣類、住居の生活水準・生活条件の権利、 2 で飢餓から免れる権利、
第 12 条 1 で到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利、2 (d) で病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出、
第 15 条 1 (a) で文化的な生活に参加する権利、を保障しています。
ましてや、東京五輪にあたり制定された、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例では、 「一人一人に着目し、誰もが明日に夢をもって活躍できる都市、多様性が尊重され、温かく、優しさにあふれる都市の実現」を東京は目指してきたことが述べられ、「 人権尊重に関して、日本国憲法その他の法令等を遵守」し、 「いかなる種類の差別も許されないというオリンピック憲章にうたわれる理念が、広く都民に浸透した都市を実現しなければならない」とされています。
「東京に集う多様な人々の人権が、誰一人取り残されることなく尊重され、東京が、持続可能なより良い未来のために人権尊重の理念が実現した都市」として、 「誰もが認め合う共生社会を実現し、多様性を尊重する都市をつくりあげるとともに、様々な人権に関する不当な差別を許さない」「 人権が尊重された都市であることを世界に向けて発信」すると、前文で明確に規定しています。
第 1 条 では、いかなる差別も許されない、オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となることを目的とし、
第 2 条 では、都は、人権尊重の理念や多様性を尊重する都市をつくりあげる取組を、2 で国や区市町村と、4 で事業者と、協力して推進することが謳われています。
第 10 条 では、都は不当な差別的言動を解消する啓発等を推進するものとしています。
現在、東京五輪を契機に都下において行われている野宿者排除は、日本国憲法にも、国際人権規約にも、そしてそもそも五輪憲章人権条例にも、違背するものです。
可及的速やかな野宿者への差別解消と、人権尊重を反映した対応を、お願い申し上げます。
1.多摩川河川敷
・野宿者の住まう所に河道拡幅工事ということで、10月から強制排除しようとしています。
・現実に、大人しい野宿生活者には、強制排除の話を国交省職員はしています。
・排除で困る野宿者が出ることが分かっているので、蒲田生活福祉課を紹介しています。

2.蒲田
(1)大田区役所入口の野宿者を、事前の福祉相談なく、大きな三角コーンを置き強制排除。
・窓ガラスにも、黄色い貼紙で、冷たく排除通告だけしています。

(2)蒲田庁舎前の野宿者も、事前の福祉相談なく、三角コーンとバーを置き強制排除。

(3)多摩川近くの路上
・警察の名を利用した役所の警告書。威丈高な命令口調です。

(4)JR 蒲田駅西口駅前広場
・元の樹木周囲の円形ベンチは野宿者が寝るということで排除され、工事後、樹木を取り巻く金属製の柵のみに変えられ、地域の高齢者が座れる場所もなくなってしまいました。
(5)蒲田庁舎などの生活保護窓口
・野宿者排除と軌を一にして、野宿者が単独で相談に訪れた際、生活保護を受け付けられず路上に戻る他なかったり、対人関係が苦手な人で本来は単身で住めるアパートやせめてドヤ( 簡易宿泊所)の方が適切であるのに特定の無料低額宿泊施設法人に優先的に紹介されて結局いじめられて路上に戻ってしまったり、ドヤに紹介されても週末金曜日に相談に行くと月曜日までドヤ代と食費合わせ 3 日間で少額金銭 7 千円しか支給されなかったり、という対応が多く、福祉相談をしても良い記憶がなくなり、二度と相談したくなくなり路上生活を継続せざるを得ないという選択に至る野宿者が多いことは、非常に残念なことです。最初の福祉相談での対応が非常に重要で、福祉事務所の皆様には、柔軟な受容的なご対応をお願いしたいと思います。
3.大森
・大森駅前の東口駅前広場の工事に関し、下記の様な発言まで出ています。
(2018 年 7 月 13 日まちづくり環境委員会から)
都市開発課長「……路上で住まれている方が憩える場になるのかというところにつきましては、……そういった方々が居座らないように、何ができるかというところを一緒に考えていきたいとは思います」( 答弁後に区議から質問され、その後に慌ててごまかしましたが。 )
・東口駅前広場の再工事は、下記のように野宿者が休むことができないように、そのために地域高齢者も休む場所がないように、設計されてしまっています。

※上記は提出時の情報であり、省庁・都庁・大田区役所との交渉の中で、不十分な把握が更に明らかになったこともあることを、ご承知置き下さい。
蒲田・大森野宿者夜回りの会 医師 越智祥太
************
「蒲田・大森野宿者夜回りの会」は今後も継続して、この問題に取り組んでいくとのことです。
引き続き、ご注目ください。
※関連記事:五輪まで1年、路上生活者はどこへ? – 稲葉剛|論座 – 朝日新聞社の言論サイト
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