提言・オピニオン

生活保護の利用当事者、経験者の声が国政の場に響き始めた!

提言・オピニオン

“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)

この言葉は、世界各国の障害者運動が長年、掲げてきたスローガンです。日本においても、近年、障害者福祉の分野では厚生労働省が政策を立案する過程において、障害の当事者が審議会の委員などの立場で参画し、当事者の意見が政策に反映されるのが通例になっています。

しかし、同じ福祉行政でも生活保護の分野では、制度を利用している当事者の声が政策に反映されるという機会はこれまでほとんどありませんでした。それどころか、安倍政権は前回(2013年度)と今回(2018年度)の生活保護基準見直しにおいて、当事者の声を全く聴くことなく、引き下げを決めました。

生活保護の利用当事者が厚生労働副大臣に直接申し入れ。

こうした状況に風穴を開けるかもしれない出来事が3月29日にありました。
生活保護の利用当事者4名が支援者らとともに高木美智代厚労副大臣に面会し、今年10月からの生活保護基準の引き下げや生活保護世帯のジェネリック医薬品使用を原則化する法改正に反対する申し入れを行なったのです。
きっかけは、山本太郎参議院議員が3月6日の参議院内閣委員会で行われた質疑で、安倍晋三首相に対し、生活保護基準引き下げに関して当事者の声を直接聴くように迫ったことでした。
安倍首相は「担当の厚労大臣がしっかりと所管をしているので、そうした声については担当の大臣あるいは役所からしっかりと承りたい」と答弁。このやりとりを受けて、私たちは厚労省の政務三役が当事者の声を直接聴く機会を作るよう、山井和則衆議院議員を通して要望を行いました。
しかし、3月19日に行われた申し入れには、政務三役は都合がつかないということで参加せず、代わりに社会・援護局長が要望書を受け取りました。

関連記事:生活保護「改正」法案に異議あり!厚労省政務三役が当事者に会うことを求めます。
私たちは生活保護基準見直しの決定権を持つのが厚生労働大臣である以上、政務三役が対応をすべきだと主張。厚労省側は難色を示しましたが、最終的に初鹿明博議員が3月23日の厚生労働委員会で加藤勝信厚労相より「政務三役で時間的に対応できるのであれば検討したい」という答弁を引き出してくれて、実現に至ったのです。

私自身は同席できませんでしたが、髙木副大臣との面談の場で、4名の当事者はそれぞれ自分の言葉で利用者の生活状況を説明し、これ以上の引き下げを行わないよう求めたと聞いています。副大臣は「(引き下げは)客観的なデータに基づいて判断している」と述べるにとどまったようです。

今回の面談により、生活保護をめぐる状況がすぐに改善されることはないでしょうが、野党の各議員のご協力により当事者が直接、政策を決定する政治家に生の声をぶつける機会を作れたことの意義は大きいと考えています。ご尽力いただいた議員の皆様に感謝いたします。

生活保護利用の経験がある議員2人が衆院本会議で発言!

3月29日には、生活保護をめぐって、もう一つ大きな動きがありました。
民進、立憲、希望、共産、自由、社民の野党6党が「子どもの生活底上げ法案」(正式名称「生活保護法等の一部を改正する法律案」)を衆議院に共同提出したのです。

この法案は、貧困の連鎖を断ち切るとともに、貧困世帯の子どもの生活の安定を図るため、以下の措置を行なうという内容になっています。

 

(生活保護法関連)
・厚生労働大臣は、2017年に行われた生活保護の基準の検証に用いられた水準均衡方式を見直して必要な措置を講ずるとともに、その間、要保護者に不利な内容の保護基準を定めてはならないこと
・高校卒業後も世帯分離をせず、世帯を単位とする生活保護を受けながら大学・専門学校等に通えるように配慮しなければならないこと

(児童扶養手当法関連)
・児童扶養手当の支給対象の拡大(20歳未満の者に拡大)
・児童扶養手当の月額の増額(42500円から1万円増額して52500円に引き上げ)
・児童扶養手当の支払回数の見直し(年3回から毎月支払に)

この法案の内容は私たちが要望してきたこととも重なっています。野党が提案した法案ですが、政府や与党もぜひ真剣に議論をしていただきたいと願っています。

3月30日には、衆議院本会議で「子どもの生活底上げ法案」と、政府提出の「生活困窮者自立支援法」改正案の趣旨説明と質疑が行われました。
この審議の動画は、インターネット中継のビデオライブラリで見ることができます。

この本会議での審議で私が特に注目したのは、立憲民主党が起用した2人の新人議員でした。2人とも過去に生活保護を利用していた経験があり、その経験をもとに発言をしていました。

「子どもの生活底上げ法案」の趣旨説明を行なった池田真紀議員は、冒頭でご自身の経験をもとに生活保護基準の引き下げを強く批判しました。

私は下の子が生まれる前に貧困状態となり、シングルマザーになりました。パートのかけもち、トリプルワークでも生活は厳しく、一時、生活保護を受給しました。命の恩人である弁護士に出会え、この制度につながり、私も子どもたちも命が救われました。法の解釈と運用によっては人の命が奪われる危険性のある生活保護制度が、正しく運用されることで命が救われる、まさに憲法第 25 条の実現でした。
私は、そのために福祉事務所の生活保護行政を正したい、その思いで福祉事務所ケースワーカーになり、子どもの貧困対策や権利擁護を行うフリーソーシャルワーカーとしても活動してきました。福祉の実態がまだまだ理解されていない、当事者の声や現場の声が、政治にまだまだ届いていない、そのことから政治をめざし、国会議員になりました。
そんな私からすれば、今回の政府の生活保護切り下げは、貧困家庭やその子どもをますます苦しめるもので、強い怒りを感じざるを得ません。
貧困家庭の子どもたちの生活を底上げする法案こそが今必要であると考え、私たちは子どもの生活底上げ法を提出しました。

その後、質疑に立った中谷一馬議員は、ご自身の子どもの頃の経験をもとに、安倍晋三首相に対して大変鋭い問いかけを行いました。

私は、自分自身が母子世帯の貧困家庭で育った原体験から、世の中の「貧困」 と「暴力」を根絶したい。そして「平和」で「豊かな」社会がいつもいつまでも続く世の中を創りたい。そんな想いで政治の道を志しました。
父と母は私が、小学生のときに離婚をしました。 母は、私と妹二人、兄妹三人をなんとか養おうと早朝から深夜まで働いてくれ ましたが、働いても働いても生活は厳しくなるばかりでした。ひとり親家庭のお母さんたちは 81.8%の人が働いているにも関わらず、平均収入は約 200 万円に過ぎません。そしてひとり親世帯の相対的貧困率は 50.8%に達します。 この状態は本人の努力が足りないのではなく、多数のひとり親家庭のお父さん、お母さんが必死に働いてもワーキングプア、貧困状態に陥るという社会的な構造に欠陥があることの証左です。
そして働き続けた母は、ある時期に身体を壊し、寝込むようになりました。 そしてうちは、生活保護を受けることとなりました。 その時、子どもだった私は、ただ無力で、そのことに悔しさを感じながらも、 母の代わりに働きに出て、家計を支える力はありませんでした。
そうした環境で育った私から見て、政府提出法案に最も足りないものは、市民生活に対する想像力と社会的弱者に対する共感力です。
そこで総理に伺います。 総理は、今までの人生の中で、生活するお金がなくて困った経験はありますか。エピソードなどあれば教えて下さい。

安倍首相は、この質問に対する答弁で、政府として子どもの貧困対策を進めていると強調しつつも、「私には生活するお金がなくて困った経験はありません。想像力と共感力が欠如しているのではとの批判は、甘んじて受けなければならない」と述べざるをえませんでした。

過去に生活保護を利用した経験のある議員が、そのことを国会の場で明らかにして発言した例を私は他に知りません。

3月29日に生活保護の利用当事者が厚生労働副大臣に直接申し入れをしたのに続き、30日に池田議員、中谷議員が衆議院本会議の場で生活保護利用経験者として発言したことは、生活保護の利用当事者、経験者の生の声が国政の場に響き始めたことを意味します。

もちろん、こうした事実によって、生活保護をめぐる政治の力学がすぐに変わることはないでしょう。3月28日には、今年10月からの生活保護基準引き下げを含む2018年度予算が成立しました。

しかし、少なくとも今後、政府は響き始めた声を黙殺することはできなくなりました。この声をさらに大きくできるよう、私もさらに働きかけを強めていきたいと思います。

 

関連記事:【2017年12月29日】SYNODOSに生活保護に関するインタビュー記事掲載

 

生活保護「改正」法案に異議あり!厚労省政務三役が当事者に会うことを求めます。

提言・オピニオン 日々のできごと

いのちのとりで裁判全国アクションと生活保護問題対策全国会議は、3月19日、厚生労働省に生活保護基準引き下げ撤回等を求める署名と生活保護「改正」法案に関する要望書を提出しました。

要望の項目は以下のとおりです。

1 2013年度からの史上最大(平均6.5%、最大10%、総額670億円)の生活扶助基準の引き下げを撤回してください。

2 2018年10月からのさらなる生活扶助基準の引き下げ(平均1.8%、最大5%、総額160億円)はしないでください。

3 今国会で審議予定の生活保護「改正」法案のうち次の各条文案は削除してください。

①生活保護法63条に基づく「払いすぎた保護費の返還債権」について非免責債権化するとともに保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護「改正」法案77条の2及び78条の2

②生活保護利用者については「原則として後発医薬品によりその給付を行う」とする生活保護「改正」法案34条3項

4 2018年度から全国的に推進するとしている「薬局一元化事業」は実施しないでください。

5 すみやかに政務三役が直接当事者・支援者の声を聴く機会をもうけるとともに,今後,生活保護基準の見直しや法改正を行う場合には,必ず当事者や支援者の意見を聞くようにしてください。

以 上

また、生活保護問題対策全国会議が作成した意見書も同時に提出しました。こちらの意見書には、現在、国会に提出されている生活保護「改正」法案の問題点が詳しく書かれています。全文は以下のページでご覧ください。

生活保護「改正」法案の一部削除等を求める意見書

申し入れには、国際NGOの「世界の医療団」のスタッフも同席して、生活保護利用者のみにジェネリック医薬品の使用を原則化することに反対する声明を提出しました。

声明:生活保護受給者に対する後発医薬品(ジェネリック)の使用を原則化する法案の撤回を求めます | 国際協力NGO 世界の医療団

要望書等を提出した後、定塚社会・援護局長との話し合いが行われました。
この話し合いには、各地で生活保護を利用している4人の当事者も参加し、発言をしました。

もともと、私たちは厚生労働省の政務三役が生活保護の利用当事者に直接会うことを求めていました。

今年3月5日、参議院予算委員会で、山本太郎議員(自由党)と安倍晋三首相との間で、以下のような質疑がありました。

山本:総理、(生活保護の)当事者の声聞いたことありますか。聞いたことがない、聞いたことがないのであればセッティングします、直接聞いていただきたいんです。(生活保護基準の引き下げによって)もう今みんなぎりぎりなんですよ。死ぬか生きるかなんです。よろしくお願いします。

安倍:まさにこれは担当の厚労大臣がしっかりと所管をしているわけでありますから、そうした声については担当の大臣あるいは役所からしっかりと承りたいと、このように考えております。

このやりとりを受けて、私たちは厚生労働大臣または副大臣、政務官が当事者と会って、直接、話を聞くことを求めてきました。しかし、「政務三役の都合がつかない」ということで、この日は社会・援護局長が対応することになったのです。

話し合いには、山井和則議員、山本太郎議員、初鹿明博議員、高橋千鶴子議員も同席してくれました。

ただ、社会・援護局長の対応は通り一遍のものでした。今後、政務三役との話し合いをセッティングしてほしいという要望にも、「私が三役の代わりに出てきている」と述べて消極的でした。

参加した当事者の方々は、その後の記者会見でそれぞれ「話が伝わった気がしない」とお話しされていました。

30代の女性は、「声は届いたとは思えない。政務三役に会いたいという気持ちでいたが、かなわなかった。社会・援護局長に、今回の基準引き下げ発表の後に緊急に実施したホットラインに寄せられた切実な声をお伝えした。食事の回数を減らすなど、基本的な生活の部分を削らないと生活できない状態になっている。愚痴を聞いてほしいわけではなく、当事者の声を聞いた上で制度に反映させてほしい」と述べていました。

最年長の八木さんは、「最近は、私たちの声は国会には届かないと思うようになった。5月で92歳になるが、歩ける間はがんばっていきたい」とお話されていました。

2013年法改正の「附帯決議」にも「受給者」の意見を聴くと明記

2013年に生活保護法の一部が「改正」された際、参議院厚生労働委員会で採択された附帯決議には、「5年後の見直しに際しては…生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を充分聴収した上で、必要な改正を行なうこと」と記されていました。

附帯決議の全文はこちら。

しかし、5年後にあたる今回の法改正の手続きにおいて、当事者の声は全く反映されていません。これは決議違反だと言えます。

引き続き、厚生労働省の政務三役が当事者に直接会う場の設定を求めていくので、ご注目をお願いします。

関連記事:【2017年12月29日】SYNODOSに生活保護に関するインタビュー記事掲載

世代を越えて広がる「住まいの貧困」。国会での真摯な議論を求めます。

提言・オピニオン

今年に入り、「住まいの貧困」に関連するニュースが相次いでいます。

 

「ネットカフェ難民」、都内だけで4000人

1月26日、東京都は「住居喪失不安定就労者」、いわゆる「ネットカフェ難民」の実態調査の結果を発表しました。

「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果|東京都

それによると、都内のネットカフェ、漫画喫茶、サウナ、カプセルホテルなどをオールナイト利用している人のうち、住居を喪失しているか、喪失するおそれがあると見られる人は約4000人いると推計されています。

年齢別には30代が38.6%と最も多く、次いで50代(28.9%)が多くなっています。20代も12.3%いて、20~30代の若年層が全体の半分を占めていることになります。

住居喪失者の平均月収は、11万4千円。お金のない時は路上生活をしている人は全体の43.8%もいて、かなり厳しい生活を強いられていることがわかります。

この問題については、新聞やラジオから取材を受けたほか、「若年者をめぐる格差への取り組み」をテーマに開催された2月14日の参議院国民生活・経済調査会に参考人として招致された際にも、都の調査結果を紹介しました。

私は調査会において、「ネットカフェ難民」が増えている背景に、都市部で住宅を確保する際の初期費用が高いという問題があることを指摘した上で、従来の住宅政策を転換して、若者への住宅支援を強化する必要があることを国会議員に訴えました。

私の問題提起に対する各会派の議員の反応はさまざまでした。私の提言に賛意を示してくれる議員も少なくありませんでしたが、中には「ネットカフェに暮らす若者たちは甘えているのではないか」、「きつい仕事を避けているのではないか」と、自己責任論を振りかざしてくる議員もいました。

調査会の議事録も公開されているので、ご参考にしてください。

第196回国会:国民生活・経済に関する調査会第3号(2018年2月14日)議事録

 

また低所得者が犠牲となった札幌・共同住宅火災

1月31日には、生活困窮者の自立支援を掲げる札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で火災が発生。入居者16名のうち11名が死亡する惨事となりました。
「そしあるハイム」を運営する合同会社「なんもさサポート」は、札幌市内において同様の共同住宅を約20ヶ所、運営しており、路上生活者など行き場のない生活困窮者の受け入れを行なってきたことで知られていました。

この火災については、新聞やラジオから取材を受け、火災の背景にある構造的な問題について解説をしました。

【2018年2月9日】毎日新聞などに札幌・自立支援住宅火災の背景を論じた記事が掲載

【音声配信】「低所得者・高齢者住宅の課題とは」稲葉剛×高橋紘士×荻上チキ▼2018年2月5日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

昨年の5月と8月には、北九州市と秋田県横手市で、それぞれ生活困窮者を受け入れていたアパートで相次いで火災が発生しました。

その際、私は2件の火災に共通する背景に、民間団体が独自の住宅事業を行なう際の資金不足など「民間の善意の限界」があるという点を指摘しましたが、今回の札幌の火災でも同じ構図があったと私は考えています。

まったくの偶然ですが、札幌での火災が発生した翌日の2月1日、NHKの『クローズアップ現代+』で「思いがけない退去通知 あなたも住宅を追われる!?」という番組が放映されました。

この番組は、老朽化したアパートの取り壊しなどで賃貸住宅に暮らす高齢者が立ち退きに遭うケースが増えており、高齢者が次の住宅を探そうとしても、孤独死を恐れる大家さんがなかなか部屋を貸してくれないという実態を紹介していました。

この番組にスタジオゲストとして生出演をした私は、前日に起こった札幌の共同住宅火災に関連して、「こうした住宅や宿泊施設は、ホームレスの人たちを受け入れ、アパートに移ってもらうまでの間の一時的な居所として民間団体によって整備されてきたが、近年、そうした場所に、もともとアパートで暮らしていた高齢者が立ち退きに遭って入所してくる、という『逆流現象』が起きている」と指摘しました。これも「住まいの貧困」の広がりを示す現象だと思います。

番組内容の文字起こしはこちらのサイトでご覧になれます。

思いがけない退去通知 あなたも住宅を追われる!? | NHK クローズアップ現代+

 

屋内での凍死増加の背後にも「住まいの貧困」がある。

高齢者の住宅に関連するニュースとしては、今年2月3日に共同通信が配信し、各紙に掲載された「凍死、熱中症死の1・5倍/冬の寒さ 屋内でも要注意」という記事もショッキングでした。記事の内容は、2000年から2016年にかけて低体温症で死亡した人の数は累計で1万6千人にのぼり、熱中症による死者の1・5倍に上る、凍死の大半が屋内で起こっており、背景には高齢化や貧困、孤立の問題がある、というものでした。

東京新聞:凍死、熱中症死の1.5倍 冬の寒さ 屋内でも要注意:社会(TOKYO Web)

私はこの問題でもラジオ番組でコメントを求められ、低所得者の住環境の問題が影響している可能性が高い、と指摘しました。

【音声配信】「熱中症よりも多い凍死!その実態と背景とは?」横田裕行×藤部文昭×稲葉剛×荻上チキ▼2018年2月13日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

2015年の厚生労働省の調査では、生活保護世帯の暮らす住宅の13.8%が「腐朽・破損あり」と判定されており、老朽化した木造住宅で隙間風に耐えながら生活をしている人が多いことがわかっています。

今年の冬は東京でも複数回、雪が降るなど、特に寒さが厳しかったのですが、私がふだん接している生活保護利用者の中には、築40年を越す木造アパートのエアコンのない部屋に暮らしているため、室内の気温が4度以下になったこともあったと話している人がいました。

この人は、毎晩、パーカーとジャンパーを重ね着して、その上から布団をかけることで、寒さをしのいだと言っていましたが、同様の住環境で暮らしている低所得者の中には、寒さにより健康を害している人も少なくないと思われます。

 

遅々として進まない「住宅セーフティネット」の整備

このように、国内における「住まいの貧困」は世代を越えて広がっています。
国の対策の「切り札」として、昨年4月に住宅セーフティネット法が改正され、10月に空き家を活用したセーフティネット住宅事業が始まりました。しかし、事業開始から5ヶ月近く経っても、空き家の登録数は全国で500戸程度と伸び悩んでおり、半年で2万5千戸という目標にほぼ遠い状況です。

【国土交通省】セーフティネット住宅情報提供システム

私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、改正住宅セーフティネット法の制定から間もなく1年になるのを踏まえ、4月18日(水)12時半から参議院議員会館で院内集会を開催する予定です(詳細は後日お知らせします)。ぜひご注目ください。

世代を越えて広がる「住まいの貧困」にどう向き合うのか。国会の場で正面からの議論が行われることを求めていきます。

 

関連記事:改正住宅セーフティネット法が成立!まずはハウジングプアの全体像に迫る調査の実施を!

国は生活保護引下げの根拠を示せるのか?2月9日(金)東京地裁口頭弁論にご注目を!

提言・オピニオン

昨年12月に安倍政権が閣議決定した生活保護基準の引下げに対して、各地、各方面から反対の声が上がっています。

そんな中、前回(2013年~2015年)の生活保護基準引下げを憲法違反だとする民事訴訟が全国29の都道府県で進行しています。東京での裁判(愛称「はっさく訴訟)の口頭弁論も第6回まで進んできました。

私はこれまで様々な裁判の傍聴を行なってきましたが、民事の訴訟は書面のやりとりが中心で、正直、見ていて、あまり面白いものではありません(もちろん、社会的な意義のある訴訟を傍聴を通して応援をすることは重要なのですが)。

ただ、「はっさく訴訟」の口頭弁論は回を重ねるごとに「見ていて、面白い」ものになっています。裁判傍聴が初心者という方にもお勧めです。

なぜ「面白い」のかと言うと、被告側(国、地方自治体)に対する弁護団のツッコミが激しいのと、途中から替わった裁判長がわかりやすい訴訟指揮をしているからです。

前回11月1日の第6回口頭弁論でも、生活保護基準引下げの根拠を示すように求める弁護団に対して、国が説明を回避しようと逃げ、それに対して裁判長が資料をきちんと提示するように諭すという一幕がありました。

引下げは政治的な理由で強行されたもので、そもそも合理的な根拠など存在しない、ということが法廷でのやりとりから明らかになりつつあるのです。

前回の口頭弁論から3ヶ月。国は引下げの根拠を示すことができるのでしょうか。それともまたごまかそうとするのでしょうか。要注目です。

口頭弁論の後には、弁護団による解説が聞ける報告集会もあります。あわせてご参加ください。

http://blog.goo.ne.jp/seihohassaku/e/a5840a9c340821e408f34e732b640cce

はっさく訴訟第7回期日の傍聴を!
生活保護基準引下げ違憲東京国賠訴訟

第7回期日
2月9日(金)午後3時~ 東京地裁103号法廷

(地下鉄「霞ヶ関」駅A1出口すぐ)

2013年8月1日から3回にわたって生活保護基準が引き下げられました。これは生存権を保障した憲法25条に違反するとして、東京都内の生活保護利用者32人が、国等に対し、国家賠償等を求めています。

昨年12月、厚生労働省は、今年10月からの生活保護基準のさらなる引下げを発表しました。全国の生活保護利用者が悲鳴を上げています。
このような暴挙を許さず、引下げを阻止するためにも、厚生労働大臣の責任を問う<はっさく訴訟>の闘いが非常に重要になっています。
原告を応援するため、そして引下げを阻止するため、多くの市民の皆さんの傍聴をお願いします。

閉廷後、報告集会を予定しております(午後3時40分ころ~)。

 

関連記事:社会の底割れを招く生活保護基準引き下げに反対!署名を提出しました。

社会の底割れを招く生活保護基準引き下げに反対!署名を提出しました。

提言・オピニオン 日々のできごと

本日(12月15日)、私が共同代表を務める「いのちのとりで裁判全国アクション」は、厚生労働省に「生活保護制度の充実を求める緊急署名」第一次集約分17471筆分を提出しました。

 

署名で要望しているのは、以下の4点です。

1.社会保障と教育への予算配分率を先進ヨーロッパ諸国並みに引き上げてください。
2.生活保護世帯の子どもの大学・専門学校等への進学を認め、低所得世帯の学費減免と給付型奨学金を拡充してください。
3.生活保護の母子加算の削減や級地の見直し等さらなる生活保護基準の引き下げをしないでください。
4.生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算を元に戻し、夏季加算を創設してください。

この緊急署名は、今年10月下旬から集め始めたものですが、12月に入り、「厚生労働省がさらなる生活保護基準の引き下げを検討している」との報道が流れて以来、オンラインを中心に署名が急速に広がりました。

本日提出分のうち、約4分の1にあたる3794筆分はオンライン署名でした。

署名提出の後、厚生労働記者会で記者会見を行いました。会見には生活保護の利用当事者も3人参加し、各メディアに「生活保護利用者の生活実態を知ってほしい」と訴えました。

署名提出と記者会見の様子は、すでに各社で報道されています。NHKとTBSの報道は下記リンク先よりご覧ください(一定期間が過ぎると、リンクが切れる可能性があります)。

生活扶助引き下げ方針 撤回求め署名提出 | NHKニュース 

生活保護費の引き下げ反対、弁護士ら要望書提出 TBS NEWS 

新聞各社は明日の朝刊に記事が出る見込みです。ぜひご注目ください。

一般低所得世帯との比較は「悪魔のカラクリ」

私は記者会見の場で、生活保護問題対策全国会議が発表した緊急抗議声明の内容を説明して、「下位10%の一般低所得世帯の消費実態と比較して、生活保護基準の方が相対的に高いので、基準を引き下げる」という厚労省の考え方を強く批判しました。

「一般低所得者世帯と比較して、生活保護基準を下げる」というのは、一見、合理的なように見えるかもしれませんが、この理屈で行くと、「政府が貧困対策に失敗すれば、失敗するほど、生活保護基準を下げて、社会保障費を抑制できる」ということになります。

例えば、「一般低所得世帯」の中には、生活保護を利用する資格がありながら、行政の「水際作戦」などによって利用できておらず、「受給漏れ」状態にある方が多数含まれています。

生活保護の捕捉率(利用資格のある人のうち、実際に制度を利用できている人の割合)が2~3割と言われる中で、生活保護基準を下位10%の層の人たちの消費実態と比較すれば、どういう結果になるのかは、最初から明らかです。

生活保護行政が充分に機能していない結果が、生活保護基準の引き下げという形で、制度利用者に押し付けられてしまうのです。

そして、生活保護基準は他の低所得者対策の基準とも連動しているので、その基準が下がれば、他の社会保障制度も利用しづらくなります。

その影響で、下位10%の人たちの生活がさらに苦しくなれば、その事実をもとにさらに生活保護基準を下げることが可能になります。これは「貧困スパイラル」と言われている現象です。

「貧困スパイラル」では、政府が貧困対策に失敗し、低所得者の生活が悪化すればするほど、生活保護基準を下げることができます。

極論を言えば、貧困が拡大し、国民の10%が飢える状態にまでなってしまえば、それとの比較で、生活保護基準をゼロに近づけることまで可能になるのです。

このように、格差や貧困が拡大している現代の日本社会において、「一般低所得者世帯との比較」論は「悪魔のカラクリ」になってしまうのです。

生活保護基準部会でも、この点については各委員から何度も懸念が示されていました。その指摘をスルーして、引き下げを強行すべきではない、と私は強調しました。

引き下げ幅が小さければ良いわけではない

引き下げ額は最大13.7%という報道もありましたが、5%に圧縮するという各社報道もあります。

この点について、記者から質問をされましたが、私は「引き下げ幅が小さければいいという問題ではない。私たちは前回、2013年の引き下げ自体が不当であり、違憲だと考えている。すでに現在の基準では、健康で文化的な生活をおくるのに困難な状況になっている。あくまで、前回の引き下げ前の基準(2012年までの基準)に戻すことを求めたい」と答えました。

 

緊急署名は継続中です!ぜひご協力ください!

緊急署名は、来年1月末まで継続して募集しています。まだの方はご協力をお願いします。

「生活保護制度の充実を求める緊急署名」を募っています(いのちのとりで裁判全国アクション)

同アクションでは、今後とも緊急の抗議行動を企画していきます。ぜひご注目ください。

 

11月1日(水)生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の傍聴に集まろう!

提言・オピニオン

2013年8月から生活保護の基準が三段階に分けて引き下げられました。

この過去最大の引き下げに対して、全国29の都道府県で引下げの違憲性を問う訴訟が行われています。

東京では、第6回口頭弁論が11月1日(水)11時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。

傍聴をご希望の方は、早めに東京地裁の正門前に(地下鉄「霞ヶ関」駅A1出口すぐ)にお集まりください。傍聴席を満席にしましょう!

口頭弁論終了後は、報告集会も予定されています。ぜひご参加ください。

 

以下は弁護団のブログからの引用です。

http://blog.goo.ne.jp/seihohassaku/e/05403cdd5752dcab2cc9b9b2d9348534

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の第6回口頭弁論期日が2017年11月1日11時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。
2013年8月1日以降3回にわたって実施された生活保護基準の引下げは憲法25条違反だとして、都内の生活保護受給者の皆さんが、国などに対し、国家賠償と保護費減額の取消しを求めています。

11月1日の期日では、国に対する求釈明(引下げに至った根拠・過程等についての事実や関連文書を明確にするよう求める原告側の要求)への誠実な回答を迫るとともに、原告と弁護団による意見陳述が行われる予定です。

「健康で文化的な最低限度の生活」の保障をないがしろにさせないためにも、ぜひ傍聴に来ていただきたいと思います。閉廷後、同日11時40分ころから、裁判所近くの会場で報告集会も予定しておりますので、こちらにもご参加をお願いします。市民による「支える会」の結成も準備しており、会場で入会を受け付けます。

弁護団・原告団・支える会連絡先:
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1丁目17番10号 エキニア池袋6階 城北法律事務所内
生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟弁護団
電話03-3988-4866(担当=平松・木下)

 

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【衆院選】政治によって壊された「私たち」を修復するために

提言・オピニオン

衆議院が解散したことを受けて、朝日新聞から「安倍政権の5年間をどう評価するか」という点について取材を受け、9月29日の朝刊にコメントが掲載されました。

【2017年9月29日】 朝日新聞「安倍流5年見極め 政権の軌跡、識者の見方」にコメント掲載 

字数の都合で舌足らずになった点も多かったので、記者に述べた内容に一部補足して、ここに掲載します。

「行政を歪めた」生活保護基準の引き下げ

2012年12月の衆議院総選挙で大勝し、政権に復帰した自公政権が真っ先に行ったのが、生活保護基準の引き下げでした。

今年の夏、加計学園の獣医学部新設をめぐって、前川喜平・前文部科学事務次官の「行政が歪められた。」という証言が注目されましたが、生活保護基準の引き下げも、まさに「行政を歪める」形で行われたと、私は考えています。
本来、生活保護の基準は科学的なデータに基づいて算定されなければならないのですが、「生活保護費の給付水準の一割カット」を政権公約に掲げた自民党が政権に就いたため、政治的な理由により引き下げが強行されました。

そのつじつまを合わせるために、厚生労働省は「デフレにより物価が下落した」という理由を後づけしましたが、実際にはほとんど下落していないため、消費者物価指数のデータを「偽装」するということまで行いました。まさに「行政が歪められた」のです。

生活保護の基準は、社会保障の岩盤として機能しており、その基準は他の低所得者対策の制度にも連動しています。生活保護基準の引き下げにより、就学援助など他の制度も所得制限が厳しくなるなどの悪影響が出ています。社会保障制度全般が「地盤沈下」しているのです。

アベノミクスで雇用は増えましたが、増えた仕事の多くは非正規の不安定な仕事です。生活困窮者の支援に取り組んできて感じるのは、派遣やアルバイトの仕事をしながらも、安定した住まいを確保することができず、ネットカフェや友人宅などで暮らさざるをえないワーキングプアが若年層を中心に増えているということです。「見えにくい貧困」が広がっていると実感しています。

差別や排外主義を政治的に利用

私が最も許せないのは、安倍政権や与野党の保守系議員がマイノリティに対する差別や偏見、排外主義的な風潮を政治的に利用してきたことです。

生活保護基準の引き下げに先立って、2012年に一部の自民党議員が生活保護バッシングのキャンペーンを仕掛け、貧困対策に積極的だった民主党政権(当時)の姿勢を批判し、翌年の引き下げに至る流れを作りました。これは生活保護利用者への偏見を悪用した例だと言えます。

最近では、「武装難民」の「射殺」も検討するという麻生太郎副総理の暴言がありました。日本も批准している難民条約を無視し、ヘイトクライムを誘発しかねない犯罪的な発言であるにもかかわらず、未だに麻生氏は謝罪・撤回をしていません。マスメディアでもこの発言を追及する報道は少なく、この5年間で社会のマジョリティが極端な差別発言も許容するようになってきたと感じます。

昨年の「貧困高校生」へのバッシングでは、「あんなのは貧困ではない」という意見が散見されました。安倍政権下で、中間層の崩壊がさらに進み、生活が苦しくなった人たちが、より弱い立場の貧困層をたたく形のバッシングも強まっています。安倍政権はそうした分断を意図的に助長しているように見えます。

障害者や外国人への差別も底が抜けた状況です。
先進諸国では社会的なマイノリティへのヘイトクライムが発生した場合、政治的なリーダーが事件の背景にある差別を非難する声明を発表します。しかし、相模原の障害者殺傷事件では、安倍総理から積極的な発言はありませんでした。
本来はこうした動きにストップをかけるべき政治家が、黙認、あるいは助長しているのではないでしょうか。

社会に内在する差別や偏見を政治的に利用するのは、政治家としてやってはならない「禁じ手」ですが、この「禁じ手」に積極的に手を染める政治家が増えているのは恐ろしいことだと思います。
その意味では、関東大震災での朝鮮人虐殺に関する追悼文の送付を取りやめた小池百合子都知事(希望の党代表)も同類だと言えます。

「私たち」が壊されている

貧困状態にある人も、障害を持つ人も、外国人も、誰もが命を守られ、個として尊重されるべきだ、という考えは、人類が20世紀の負の歴史を通してかちとってきた普遍的な理念です。近年、世界的にこの普遍的な人権という考え方が危機にさらされていますが、安倍政権下における日本社会の惨状は際立っています。

社会を構成する「私たち」という意識そのものが政治によって壊されているのではないでしょうか。
20世紀の歴史に謙虚に学び、誰もが「私たち」の社会の一員として尊重されるべきだと発信する政治家が一人でも増えることを切に望みます。
有権者は、個々の候補者が「私たち」を壊してきた人なのか、修復できる人なのか、これまでの言動を吟味して投票してほしいと思います。

 

厚労省の審議会で扶養照会の段階的廃止を直言しました。

提言・オピニオン

厚生労働省は、2018年度に生活保護制度と生活困窮者自立支援制度の一体的見直しを行うため、今年5月、社会保障審議会に「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」を設置しました。

部会は4ヶ月に6回というハイペースで議論を進めており、8月30日に開催された第6回部会では「有識者・利用者等からのヒアリング」が行われました。

私も、若年女性の支援をしているBONDプロジェクトの橘ジュンさんらと共に、ヒヤリングに参考人として呼ばれ、15分間の意見陳述を行いました。

私の提出資料を含め、当日の資料はこちらのページでご覧になれます。

第6回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」資料

私は、ホームレスの人たちに対する「ハウジングファースト」(安定した住まいの確保を最優先とする支援手法)の取り組みを紹介した上で、貧困ビジネス施設への規制を強化し、生活保護において「居宅保護の原則」を徹底すること、生活困窮者自立支援制度においても居住支援の対象者を広げることなどを主張しました。

そして最後に、扶養照会の問題について取り上げました。

部会に提出した資料より

この問題について取り上げたのは、厚生労働省が生活保護の扶養照会(福祉事務所が申請者の親族に扶養の意思を問い合わせること)の実態調査に乗り出しているからです。

2013年には、私たちの反対にもかかわらず、福祉事務所がこれまで以上に親族にプレッシャーをかけることを可能にする法改悪がなされてしまいました。今回の実態調査はさらなる改悪につながる危険性があります。

生活困窮者の相談支援の活動をしていると、この「親族に問い合わせる」という仕組みが生活保護申請への心理的なハードルになり、制度につながる人を減らしているという点を実感します。

そもそも、社会保障制度の利用において、親族の扶養を問題にすること自体が前近代的だと言えます。特に「成人した子どもの親に対する扶養義務」を問う仕組みは日本、韓国、台湾など、ごく一部の地域にしかありません。

その韓国では、日本以上に厳しい扶養義務の制度がありましたが、近年、親族の扶養義務を問うことが「福祉の死角地帯」に取り残される人を生んでいるという批判が高まり、今年に入り、扶養義務者の基準を段階的に廃止していく、という方針が示されています。これは制度につながる人を増やしていくための政策です。

扶養義務者の基準を段階的に廃止するという韓国の福祉改革については、こちらの記事もご参照ください。

日本の貧困対策はガラパゴス化へ進むのか? – 稲葉剛|WEBRONZA – 朝日新聞社の言論サイト

こうした韓国の動きを紹介した上で、目の前にいる厚労省の社会・援護局の官僚に対して、私は「国が本気で貧困対策をしたいのであれば、制度につながる人を増やす政策を取るべきです。これまでの動きを見ると、厚労省が制度につながる人を増やしたいのか、減らしたいのか、私にはさっぱりわかりません。」と述べました。

その上で、今の動きとは逆に、前近代的な扶養照会を段階的に廃止していく、という議論を日本も始めるべきだと問題提起しました。

現場の実態を伝えるのが、私たちの役割

「そんなことを言っても、どうせ動かないのだから、意味がない」という人もいるでしょう。

私はこれまで何度か、厚生労働省の審議会や国会の委員会で呼ばれたことがありますが、そのたびに「二度と呼ばれなくなっても、言うべきことを言おう」と心に決めています。

貧困の現場で起こっていることを政策を動かしている人たちにストレートに伝えるのが、私たち現場で活動をしている人間の役割であり、実現可能性を考えて、一部の主張を引っ込めたり、薄めたりすることはすべきではないと考えるからです。

部会では、委員の一部からも「扶養を強調することは貧困の世代間連鎖につながる」という懸念の声が出ているようです。

来年度の制度見直しの骨格はまだ明らかになっていませんが、「扶養義務の強調は、制度につながる人を減らし、貧困を悪化させる」、「貧困を社会的に解決するためには、前近代的な家族主義から抜け出す必要がある」という点をこれからも訴えていきたいと思います。

 

関連記事:小田原市ジャンパー問題を検証する書籍が出版されました!

 

7月19日(水)生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の傍聴に集まろう!

提言・オピニオン

2013年8月に生活保護の基準が強引に引き下げられて、まもなく4年になろうとしています。

厚生労働省の生活保護基準部会では、一部委員の働きかけにより、先月の会合で初めて「これまでの生活保護基準見直しの影響」が議題にあがりました。

※資料:第29回社会保障審議会生活保護基準部会資料

厚生労働省は2018年度の見直しでさらに基準を下げようとしているようですが、まずは2013年度からの引き下げの影響をきちんと検証すべきだと思います。

そんな中、全国29の都道府県で生活保護基準引下げの違憲性を問う訴訟が行われています。

東京では、第5回口頭弁論が7月19日(水)11時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。

傍聴をご希望の方は、早めに東京地裁の正門前に(地下鉄「霞ヶ関」駅A1出口すぐ)にお集まりください。傍聴席を満席にしましょう!

口頭弁論終了後は、報告集会も予定されています。ぜひご参加ください。

以下は、弁護団からの呼びかけ文です。

【拡散お願い】

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の第5回口頭弁論期日が2017年7月19日(水曜)11時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。

2013年8月1日以降3回にわたって実施された生活保護基準の引下げは憲法25条違反だとして、都内の生活保護受給者の皆さんが、国などに対し、国家賠償と保護費減額の取消しを求めています。

7月19日の第5回期日では、原告と弁護団による意見陳述が行われる予定です。「健康で文化的な最低限度の生活」の保障をないがしろにさせないためにも、ぜひ傍聴に来ていただきたいと思います。

閉廷後、同日11時40分ころから、弁護士会館11階第一東京弁護士会講堂で報告集会を行いますので、こちらにもご参加をお願いします。近く、市民による「支える会」の結成も準備しており、会場で入会を受け付けます。
弁護団・原告団・支える会連絡先:
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1丁目17番10号 エキニア池袋6階 城北法律事務所内

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟弁護団 電話03-3988-4866(担当=平松・木下)

ブログ http://blog.goo.ne.jp/seihohassaku
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※関連記事:【2017年3月29日】 朝日新聞に生活保護に関するインタビュー記事が掲載

改正住宅セーフティネット法が成立!まずはハウジングプアの全体像に迫る調査の実施を!

提言・オピニオン

4月19日、参議院本会議で改正住宅セーフティネット法が可決、成立しました。本サイトでも何度が取り上げていますが、この法律は高齢者、障害者、子育て世帯、低所得者など、賃貸住宅市場で住宅の確保に困難を抱えている人たちを「住宅確保要配慮者」と位置づけ、都道府県ごとに空き家の登録制度を新設して、オーナーが登録に応じた空き家を活用することで「住宅確保要配慮者」の入居を促進しようとするものです。

これはいわば、全国各地で増え続ける空き家問題と、深刻化する高齢者などへの入居差別の問題を「一石二鳥」で解決しようとする施策であり、「住まいの貧困」(ハウジングプア)を解決するために私がこれまで行なってきた提言とも合致する内容になっています。

増え続ける空き家を貧困対策に活用することを提言してきました。

 

国土交通省は2020年度末までに全国で計17万5000戸の登録住宅を確保したいとしています。しかし、若年層にも増えている低所得者の入居を促進するためには、空き家の登録制度を作るだけでは不充分で、貸し出される際の家賃を下げる施策が必要になります。そのため、政府は空き家のオーナーに月最大4万円の補助(国から2万円、地方自治体から2万円)を出すことで、家賃を低く抑えてもらう事業を実施するのですが、なぜかこの部分は法律の条文には盛り込まれず、予算措置にとどまっていました。

条文に明記されない事業は、その時々の財政状況によって縮小されたり、停止されたりする可能性が高まります。また、この家賃低廉化以外にも、支援の対象とされる「被災者」が災害発生三年以内に限られるという記述がある等、法案にはいくつか不充分と思える点がありました。

そこで、私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、この間、「家賃低廉化も条文に盛り込むこと」などを求めて、各政党に対する働きかけを行なってきました。4月7日には衆議院国土交通委員会における審議に私も参考人として呼んでいただき、意見陳述と委員との質疑を行ないました。

【関連記事】衆議院国土交通委員会で参考人招致。住宅セーフティネットの強化を提言しました。 

その結果、残念ながら条文の修正は行われませんでしたが、衆議院及び参議院の国土交通委員会での採決の際、それぞれ私たちが懸念している点についての「附帯決議」が採択されることになりました。

附帯決議に何が盛り込まれたのか

参議院国土交通委員会での附帯決議は下記のような内容になりました。重要な部分は太字にしています。

◆参議院国土交通委員会:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。

一 本法に住宅セーフティネット機能の強化と併せ、公営住宅を始めとする公的賃貸住宅政策についても、引き続き着実な推進に努めること。

二 低額所得者の入居負担軽減及び安定的な住宅確保を図るため、政府は予算措置を含め必要な支援措置を講ずること。

三 高齢者、障害者、低額所得者、ホームレス、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居が拒まれている実態について、国土交通省と厚生労働省とが十分に連携し、住宅政策のみならず生活困窮者支援等の分野にも精通した有識者や現場関係者の意見を聞きながら、本法律の趣旨を踏まえ、適宜調査を行うなど、各々の特性に十分配慮した対策を講ずること。

四 住宅確保要配慮者が違法な取立て行為や追い出し行為等にあわないよう、政府は適正な家賃債務保証業者の利用に向けた措置を速やかに講ずること。

五 地方公共団体による賃貸住宅供給計画について、その策定の促進を図るとともに、地域の住宅確保要配慮者の実情に即し、かつ空き家対策にも資する実効性のあるものとなるよう、必要な支援を行うこと。

六 住宅セーフティネット機能の強化のためには、住宅確保要配慮者居住支援協議会の設立の促進とその活動の充実等を図ることが重要であり、また、地方公共団体の住宅部局及び福祉部局の取組と連携を強化することが不可欠であることに鑑み、各地域の実態を踏まえ、必要な支援を行うこと。

七 災害が発生した日から起算して三年を経過した被災者についても、必要が認められるときには、住宅確保要配慮者として支援措置を講ずること。

 

このうち、「三」に盛り込まれた「調査」の実施については、私が参考人陳述において最も強調した点でした。ハウジングプア(住まいの貧困)問題については、国土交通省と厚生労働省という行政の縦割りの壁に阻まれ、これまで包括的な実態調査が実施されたことがありません。法改正を機に本格的な調査をぜひ実施してほしいと願っています。

4月7日(金)に衆議院国土交通委員会で参考人として意見陳述をした際の資料より

 

空き家を活用した住宅セーフティネット事業は、今年の秋に開始される予定です。法律が中身を伴ったものになるよう、事業の実施状況をチェックし、適宜、国や地方自治体に働きかけを行なっていきたいと考えています。

5月25日には、今回の法改正に至る経緯を振り返り、今後の課題について考えるための報告集会を開催いたします。私と一緒に衆議院の国土交通委員会で参考人として意見陳述をした坂庭国晴さん(国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事)、参議院の国土交通委員会で意見陳述をした塩崎賢明さん(立命館大学特別招聘教授)も登壇されます。

報告集会の詳細はこちらで。ぜひご参加ください。

5月25日(木)「住宅セーフティネット法改正」の報告集会 ―国会審議の特徴と今後の課題を考える

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