提言・オピニオン

立教カジノイベントの「一部変更」に関する見解 ~学内開催の中止は歓迎するが、数々の問題点は解消していない

提言・オピニオン

本日(6月28日)、立教大学がカジノ推進イベントについて内容の「一部変更」を発表しました。

【6/28 14:50追記:内容変更】グローバル・リーダーシップ育成プログラム第7回東京オープンフォーラム『日本統合型リゾート~健全社会のIRを目指して』

本日の発表は、以下のようにまとめられます。

・7月6日に学内で開催する予定であった公開シンポジウムは学外に会場を変更する。
会場変更の理由は「主催のマカオ大学が、よりアクセスの良いコンパクトな会場で、皆様と近しく知見や課題を共有できる形で開催したいとの主旨で判断した」からである。

・マカオ大学主催の3日間のIR人材研修プログラムへの共催は取り消さない。一部のプログラムは予定通り、学内で開催する。

・当初の予定から登壇者が変更になったこと、豊島区が後援を取り消したこと、イベント内容が立教にふさわしいものなのか等、この間、指摘されてきた問題点には全く言及していない。

 

カジノ経営者3人が講演する学生無料の公開シンポジウムの学内開催がなくなったことは歓迎すべきことだと思います。

しかし、学内外からの批判が強まったこと、豊島区が「中立性がない」と判断をして後援を取り消したことが学内開催の中止に影響したことは明らかであるにもかかわらず、そのことに全く触れていないのは不可解でしかありません。

立教大学は豊島区が中立性がないと判断したイベントを強行するのでしょうか。

私は個人サイトの記事において、今回のイベントの問題点を以下のようにまとめていました。

立教カジノイベントの何が問題なのか?

1.7月6日(土)に予定されている公開シンポジウムは、カジノ業界のPRイベントでしかなく、学術研究の要素はない。そもそも立教に限らず、教育機関で開催するのは不適切である。

2.公開シンポジウムの登壇者が大学の部長会で承認された内容から変更になっているという指摘があり、立教大学当局は説明をする責任がある。

3.公開シンポジウムは、3日間のプログラムの一部だが、カジノ業界の人材育成を目的とするプログラムに協力をすることが立教大学の教育理念とどう合致するのか、大学当局は説明をする責任がある。

このうち、1については学内での開催はなくなりましたが、立教大学が共催して同じような内容のイベントが学外で開催されるならば、カジノPRに協力するという点では変わりありません。

また、本日の大学当局の発表は、2、3の疑問についても全く答えていません。

立教大学当局は学内外からの批判をどう受け止めているのか。

なぜ登壇者が変更になり、豊島区が後援を取り消すという前代未聞の事態を招いたのか。

受講料15万円を徴収して、カジノ業界の人材を育成するプログラムに協力することが、立教の教育理念や建学の精神とどのように整合性がとれるのか。

引き続き、説明を求めていきたいと思います。
#立教はカジノに魂を売るなキャンペーンに引き続き、ご注目ください。

2019年6月28日

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事

稲葉剛

立教カジノイベントの何が問題なのか?

提言・オピニオン

私は2015年度より立教大学の社会人向け大学院(21世紀社会デザイン研究科)で特任准教授を務めています。

立教大学には大変お世話になっているのですが、今年6月16日、やむにやまれぬ思いで「#立教はカジノに魂を売るな」というSNSでのキャンペーンを一人で始めました。

私はこれまで25年間、ホームレスの人たちを支援する中で、ギャンブル依存症に苦しむ多くの人たちに関わってきました。

そのため、カジノ法案に反対の立場から声をあげてきました。

関連記事:ギャンブル依存症問題を悪化させるカジノ法案は通してはならない。

カジノ法案は残念ながら成立してしまいましたが、カジノに対する世論の反対は強く、開設の準備は足踏みしていると言われています。

そんな中、カジノ業界が世論工作の突破口として注目したのが大学だったのでしょう。立教大学というキリスト教系の大学の協力を得て、カジノ推進イベントを開催することで、カジノのイメージアップにつなげたいという戦略があったのだと思われます。

「#立教はカジノに魂を売るな」のキャンペーンは大きな反響を呼び、今日(6月25日)の段階で、最初のツイートは1290回以上、リツイートされました。

この問題の概要と経緯については、BuzzFeed Newsの記事によくまとまっているので、そちらをご一読ください。

大学がカジノ推進のシンポジウム? 「#立教はカジノに魂を売るな」と学内外から批判の声

ここではSNSでの反応も踏まえて、改めて問題点を整理したいと思います。

私の主張のポイントは、以下の3点です。

1.7月6日(土)に予定されている公開シンポジウムは、カジノ業界のPRイベントでしかなく、学術研究の要素はない。そもそも立教に限らず、教育機関で開催するのは不適切である。

2.公開シンポジウムの登壇者が大学の部長会で承認された内容から変更になっているという指摘があり、立教大学当局は説明をする責任がある。

3.公開シンポジウムは、3日間のプログラムの一部だが、カジノ業界の人材育成を目的とするプログラムに協力をすることが立教大学の教育理念とどう合致するのか、大学当局は説明をする責任がある。

では、順番に見ていきましょう。

 

カジノ経営者ばかりが登壇するシンポジウム

問題のイベントは、マカオ大学主催、立教大学共催で開催される「グローバルリーダーシップ育成プログラム 国際統合型リゾート経営管理学 第7回:『日本統合型リゾート~健全社会のIRを目指して』」(7月5日~7日)の一環として開催されるものです。

このプログラムには豊島区が後援しており、豊島区長の高野之夫氏による挨拶も予定されています。ちなみに、高野区長は立教大学の出身です。

プログラムの全体(3日間)の受講料は15万円という高額になっており、対象者は、「管理職またはホスピタリティ&ゲイミング産業での企業経験を有する者が望ましい。」とされています。事前申し込み制で定員は40名となっていましたが、当初の締め切り日までに定員まで達しなかったようで、募集期間が6月25日まで延長になっています。

3日間のプログラムを見ると、4人のマカオ大学の教員が講義をおこない、グループ討議も行なうという内容になっています。いちおう全体では、学術的な体裁を整えているようです。

マカオ側参加者は東京ディズニーリゾートでの「実地研修」も予定されています。

マカオ大学が立教大学と連携する理由は以下のように書かれています。

さてGLDP第 7 回は 2019 年 7 月 5 日~7 日に東京で開催します。今回は、日本で始めて観光学部を導入し、日本のホスピタリティ産業発展において、長年先駆的役割を果たしてきた立教大学と共催することに相成りました。立教大学は観光学士課程を有する他、大學院ビジネス研究科において観光学、ホスピタリティ学、観光施設開発学など多岐に亘り観光学の研究・教育に優れており、IR教育に特化するマカオ大学と観光学に力発揮する立教大学が協力することにより、日本IR産業発展へ高度人材育成を実現していけると確信しております。

 

プログラムでは、2日目の午後のシンポジウムのみ一般を対象としており、こちらのみの参加は「2,000円(ただし学生は学生証提示で無料。本学以外の学生も可)」となっています。

このシンポジウムには、講演者4人、討論会のパネラー3人の計7人がメインのスピーカーになっていますが、この中には研究者が一人もいません。

講演をする4人のうち、観光庁審議官の秡川直也氏以外の3人は、マカオやラスベガスのカジノ経営者で、ポスターで最も写真が大きいローレンス・ホー氏は「マカオのカジノ王」と呼ばれる人物です。

登壇者から判断しても、このシンポジウムは、あからさまな業界PRイベントであり、学術研究の名に値するとは思えません。

このシンポジウムのみ、学生無料としているのは、特にカジノ経営者の講演を学生に聞いてもらいたいという意図があるのだと思われます。

私がこれまで相談にのった生活困窮者の中にも、学生時代にパチンコ等のギャンブルにはまった結果、依存症になって生活が破綻したという方が何人もいました。若者にカジノの魅力を伝えようというイベントは、若者たちをギャンブル依存症へと誘導しかねないものだと言えます。

 

登壇者がいつの間にか変更に

BuzzFeedの記事では、私以外の別の教員の証言として、シンポジウムの登壇者が大学の部長会で承認された内容から変更になっているという指摘がありました。

別の同大学教授によると、このシンポジウムは4月25日に開かれた大学の意思決定組織である学部長会で承認されたが、その学部長会ではかられた提案書に書かれた人とは別の登壇者になっているというのだ。

「部長会にかけられた提案書では、登壇者はマカオ大学の教授3人とカジノコンサルタントとなっていたのです。大学が学内で行う学術シンポジウムは、多様な論点に目を配る学問のルールに則って行わなければならないはずです」

「研究者が登壇するのであれば、『学術的な側面を中心に議論する』という趣旨にも合っていたでしょう。けれども、承認されそうな研究者の名前を並べておいて、承認後に、カジノ運営者ばかりという偏った登壇者に変えたなら問題です。カジノ推進のプロパガンダと批判されても仕方ない内容です。大学は然るべき手続きを踏んで、この差し替えを承認したのでしょうか?」

学部長会では一部の学部長から、ギャンブル依存症問題などの指摘があり、デメリットも慎重に精査するよう求める発言もあったという。

 

私自身は特任教員という立場であり、学内の会議体に参加したり、議事録を読む資格がありません。

この教員の方が勇気を出して証言をされたことに感謝したいと思います。

なぜPR色を強める登壇者変更になったのか、立教大学当局は説明をする責任があります。

 

立教大学の建学の精神に反する

仮に大学で開催しても問題のない学術研究イベントだとしても、立教大学が共催するからには、立教の教育理念との整合性は問われるべきです。

立教大学の建学の精神や教育理念について、現総長の郭洋春教授は大学のホームページで以下のように語っています。

立教大学の物語は、1874年 聖書と英学を教える私塾「立教学校」から始まります。当時の日本は実利主義の傾向が強く、物質的な繁栄を目指す風潮にありました。このような時代の流れに危機意識を抱き、西洋の伝統的なリベラルアーツカレッジをモデルとして、心の豊かさとリーダーシップをあわせもち、世の中に自ら貢献できる人間を育むべく、立教は今日まで歩んできました。

現代のグローバリズムは、より便利に、ライフスタイルの多様化を促す一方、過剰な競争にさらされる面もあります。立教で学ぶ人は、そこでためらうことなく、他者に手を差し伸べられる人に育ってほしい。

 

私塾「立教学校」は、アメリカ聖公会の宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズ主教が設立しました。

「実利主義」や「物質的な繁栄を目指す風潮」に「危機意識」を抱いて学校を開いた創設者が、145年後、その学校がカジノ人材の育成に力を入れていると知ったら、何と言うでしょうか。

また、郭洋春教授自身も昨年、読売新聞への寄稿の中で、大阪のIR構想について「カジノはマカオなど各地にある。カジノは果たして、日本でしかできない体験だろうか。周辺の飲食店などの需要を奪うマイナス面も出てくるだろう。」と懸念を表明しています。

独自の観光資源 発掘を(郭洋春 立教大総長)

郭教授には、経済学者としての見解との整合性についても語っていただきたいと思います。

問題のシンポジウムの開催まで、あと2週間を切りました。

ぜひ学内外から立教大学当局に対して、声をあげていただけるとありがたいです。

貧困ビジネス規制のはずが、ハウジングファースト潰しに?パブコメにご協力を!

提言・オピニオン

厚生労働省は昨年11月から、「無料低額宿泊所」の規制強化などに関する検討会を開催し、検討を重ねてきました。

社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会

 

「無料低額宿泊所」(無低)とは、社会福祉法に基づく民間の宿泊施設です。無低に登録している施設は玉石混淆で、ホームレス支援NPO等が運営する良心的な施設も一部にあるのですが、高額な利用料を徴収しながら劣悪な居住環境やサービスしか提供しない「貧困ビジネス」施設も多く含まれているとして、ホームレス支援の現場では20年前から問題になっていました。

無低をめぐる問題については、東洋経済オンラインのこちらの記事がよくまとまっているので、ご参考にしてください。

生活保護費を搾取する「大規模無低」の正体 厚労省がお墨付き?貧困ビジネス拡大の懸念 | 政策 – 東洋経済オンライン

 

「施設」に対する規制に「住宅」も含まれる?

このたび、この検討会で無低規制の方向性が固まり、省令案が出されました。

省令案のPDFは、こちら。

ところが、その省令案の中身を見て、私は驚きました。無低という民間の「施設」を規制するはずの網が、NPO等が借り上げている「住宅」も規制対象とする、という内容になっていたからです。

この省令案の第二条の一(イ)には、無低の範囲として「入居の対象者を生計困難者に限定していること(明示的に限定していない場合であっても、生計困難者に限定して入居を勧誘していると認められる場合を含む。)」という定義があります。

規制をするにあたり、無低の範囲を広くして、全体に網をかけるという方向性だと思いますが、この定義だと、賃貸借契約を結び、家賃・共益費のみを徴収している住宅であったとしても、5人以上を受け入れていて、入居対象者を事実上、「生計困難者」に限定していれば、無低としての規制を受けるということになってしまいます。

そこで、改めて検討会で厚労省が提出していた資料を確認したところ、「無料低額宿泊事業の範囲」には、「生計困難者」を対象とする「住居貸付」も含むという説明があることがわかりました。

 

厚労省資料より。9つの区分の中で、「住居貸付」の一番上も無低という扱いになっている。

「無料低額宿泊事業の範囲」の資料(PDF)は、こちら。

 

このままだと、各地のNPOが運営している借り上げ住宅や、東京都が進めるハウジングファースト型のホームレス支援事業(今年度から本格実施される「支援付地域生活移行事業」)、国土交通省の進める「セーフティネット住宅」の一部も、無低としての規制を受けるという奇妙なことになってしまうのではないかと危惧しています。

ホームレスの人や生活保護利用者を積極的に受け入れている「善意の大家さん」も規制対象ということになってしまいます。

貧困ビジネス施設が規制されるのは歓迎すべきことですが、この規制の網がハウジングファースト型の事業にもかけられてしまうと、結果的に「ハウジングファースト潰し」につながりかねません。

現実的な判断として、ハウジングファースト型の「住宅」も無低としての届け出を出せばよいのではないか、という意見もあるかと思います。

しかし、その場合、入居者に対して「一日一回以上の状況確認を実施する」等、「施設」として入居者を管理することが求められます。

「住宅」と「施設」の違いとは何でしょうか。

それは「住宅」では「時間と空間が自由に使える」のに対して、「施設」では制約を受けるという違いだと私は考えています。

「住宅」という器を「時間と空間を自由に使える場」として提供する、というのがハウジングファーストの原則です。同じ器であったとしても、入居者の自由が制限されれば、「住宅」としての意味が失われます。その意味で、省令案はハウジングファーストの理念を否定していると言えます。

そこで私は厚生労働省に対して、下記のパブリックコメントを提出しました。

 随所に見られるパターナリズム

パブコメにも書きましたが、省令案には他にも、ホームレス経験のある入居者が「独立して日常生活を営むことができるか」という「能力」を、施設の管理者や行政が「判定」をして、誰がいつ地域生活に移行できるかを「決定」する、というパターナリズムに基づく記述が随所に見られます。

こうした発想は、生活保護法の居宅保護の原則をないがしろにするものです。

また、入居者の中にはさまざまな障害や生きづらさを抱えている人も少なくありませんが、これらの規定は、居住の選択に関して当事者の自己決定権を保障した障害者権利条約にも反するものだと私は考えます。

 

 パブコメ提出にご協力ください

パブコメは7月6日が募集の締め切りになっています。

「住宅まで無低の範囲に含めるな」、「居宅保護の原則に従い、入居者の自己決定権を尊重しろ」という意見をぜひ多くの方に寄せていただきたいと思います。

※パブコメはこちらから提出できます(下記をクリックしてください)。

無料低額宿泊所の設備及び運営に関する基準案に関する意見の募集について

ご協力よろしくお願いいたします。

 

【稲葉が提出したパブリックコメント】

私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドは、東京都内の6団体とともに「ハウジングファースト(HF)東京プロジェクト」というコンソーシアムを組み、世界的にも広がりつつあるHF型の路上生活者支援事業を都内で展開しています。つくろい東京ファンドは同プロジェクトの住宅支援部門を担当しており、都内で計26室の空き室を借り上げて個室シェルターや支援住宅として活用しています。

今回、厚生労働省が重い腰を上げ、貧困ビジネスの規制に乗り出したことは歓迎しておりますが、示された省令案には以下の点で問題があるため、修正を求めます。

第二条では無料低額宿泊所(以下、無低と略す)の範囲が示されていますが、「一のイ」では、賃貸借契約を締結して家賃・共益費以外を徴収していない住宅であったとしても、入居者の状況によっては無低の範囲とされると読み取ることができます。これは、「簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる」という社会福祉法における無低の定義を逸脱しています。

このままでは、民間団体や地方自治体が実施するHF型の住宅支援事業や、善意の大家さんが路上生活者に声をかけて入居させているアパート、国土交通省が進めるセーフティネット住宅の一部も、無低としての登録を求められることになり、現場の混乱は必至です。国土交通省とも協議の上、家賃・共益費以外を徴収していない住宅は無低の範囲から外すことを明確にしてください。

また、無低の入居者の自己決定権やプライバシーを保障し、生活保護法30条(居宅保護の原則)及び障害者権利条約19条(居住選択の自由)に示された原則を徹底するため、以下の条文の変更も求めます。

第三条「その有する能力に応じ」を削除。

第三条3「基本的に一時的な居住の場であることに鑑み」から「基本的に」を削除。「独立して日常生活を営むことができるか」を「~を希望しているか」に変更。

第三条4「独立して日常生活を営むことができると認められる入居者」を「~を希望する入居者」に変更。

第二〇条を全文削除。

附則第2条及び第3条の「居室に関する経過措置」を全文削除。

厚生労働省がこれまでの生活保護行政、ホームレス支援策を蝕んできたパターナリズムと決別し、国土交通省とも協議の上、「住まいは基本的人権である」との理念に基づき、福祉政策、住宅政策の再編を行なうことを求めます。

2019年6月25日

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事

立教大学大学院特任准教授(居住福祉論)

稲葉剛

「令和の宴」と貧窮問答~「統合」と「分断」の時代に社会活動家が詠む歌は?

提言・オピニオン

4月1日 、あらかじめ予定されていた2つのニュースが日本国内を駆け巡った。

1つは、天皇代替わりに伴う新元号の発表。
もう1つは、改正出入国管理法の施行と出入国在留管理庁の発足である。

新元号「令和」が発表されると、新聞の号外に群衆が殺到したり、次々と便乗商品が販売されたり、日本中がお祝いムードに包まれた。
「令和」の引用元となった「万葉集」の序文に記された「梅花の宴」が開かれたとされる太宰府市の坂本八幡宮は、一躍、有名スポットとなり、観光地化が急ピッチで進められている。

お祝いムードの影響か、新元号を発表した安倍政権の支持率も10%近くアップしたという世論調査の結果もある。
さながら、日本中が「令和の宴」に酔いしれているかのようだ。

私自身は元号は不要だと考えており、元号が変わることによって時代が変わるという考えは持っていない。
しかし、改元によって社会の空気が「変えられてしまう」ことに対しては、大変、危機感を抱いている。

新元号の発表により、テレビのニュースや新聞の紙面では「2番目のニュース」である外国人労働者の受け入れ拡大についての報道は後ろに追いやられてしまった。
実質的な移民の受け入れにつながる政策の実施こそ、「時代の転換点」として報道すべきニュースだと私は思うのだが、「令和の宴」によってかき消されてしまった感がある。

これは偶然だろうか。
昨年の入管法改正は、外国人の人権擁護が不十分であるとする野党のみならず、与党内の保守派からも「実質的な移民を認めるもので、日本社会の統合を損なう」という批判が根強くあった。
政府が具体的な政策の中身を省令に委ねる「スカスカの法案」を強引かつ拙速に通したのは、国会審議が長引けば、身内からの批判に耐えられなくなるからだと、当時、マスメディアが指摘していたのは、記憶に新しい。

その法改正が具体化する4月1日に、保守派に配慮した「初めて国書に由来する元号」が発表されたのは、タイミングが良すぎないだろうか。
「移民の受け入れによって社会統合にひびが入る」との批判を封じ込めるために、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(憲法第1条)である天皇の権威を最大限活用しようとしたのではないか、という疑念を私は持っている。

「統合」と「分断」が同時進行する日本社会

「令和」の発表にあたっては、総理大臣が新元号に込めた思いを語るという異例の記者会見も行われたが、その場で安倍首相は元号が「日本人の心情に溶け込み、日本国民の精神的な一体感を支えるもの」であると語った。
安倍首相は記者との質疑において「いかに時代が移ろうとも、日本には決して色あせることのない価値がある」とも語っており、新元号によってナショナリズムを鼓舞し、「国民統合」を進めようという意図が随所に見られる会見であった。

他方、政府の外国人政策は「統合」ではなく、「分断」を指向しているという点で一貫している。
政府は入管法改正に伴う政策変更を「移民の受け入れ」ではなく、「外国人材」の受け入れであると何度も強調してきた。
日本国内で働くため、外国から多数の「人」が来るのに、そのうち帰国する「人材」としてしか扱わないというのは、明白な欺瞞である。

だが、「外国人材」という呼び方には「人」として扱いたくないという態度表明も盛り込まれているように私には思える。

例えば、
数々の人権侵害が明らかになった技能実習制度を温存する。
新たな在留資格を持つ外国人が永住権を得るためのハードルは高く設定する。
国内に逃れてきた難民申請者の認定をほとんど認めない。入管の収容施設内での人権侵害を放置する。
外国人の子どもたちには義務教育を保障しない。

これら外国人政策における政府の方針は、外国から来る人々を「人」として認めないという姿勢に貫かれていると言われても仕方のないものである。

「国民共同体」の内側における「統合」と、外との「分断」。
今の日本社会ではその2つが同時進行しており、そのことを如実に示したのが4月1日の2つのニュースであったと私は考えている。

「令和」を「社会的包摂」と言いくるめる欺瞞

ところが、「統合」と「分断」が進んでいるという私の時代認識とは逆に、日本社会では「包摂」が進んでいると主張している人がいる。
社会活動家で、今春、東京大学特任教授に就任した湯浅誠である。

湯浅は、4月3日に発表した「新元号『令和』 私の受け止め」という文章の中で、安倍首相の記者会見談話を引きながら、「新元号『令和』に込められた想いは、2度の政権交代を経ても繰り返し唱えられてきた日本社会の理想を、元号という形に、さらに高めたものだと言えるように思う」という評価を披露している。

新元号「令和」 私の受け止め(湯浅誠) – Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yuasamakoto/20190403-00120722/

ちなみに私は湯浅とは二十数年来の付き合いで、生活困窮者支援のNPOで約10年間、ともに活動を進めてきた仲である。その分、どうしても彼の言説に対する見方が厳しくなってしまうのは、ご容赦いただきたい。

彼は「令和」に込められた思いは、民主党政権下で自分が提唱してきた「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」や、安倍政権の標語である「一億総活躍社会」と同じであると主張し、以下のように述べる。

若くなくても、仮に病気があっても、正規でなくても、日本国籍でなくても、そして男性でなくても、さらには親の介護があったり、子どもが病気がちだったり、地図が読めなかったり、満員電車に乗れなかったりしても、つまり、かつて想定していた「フルスペック」でなくても、その人なりの最大限をその人なりに開花させられるような、社会づくりが必要だ。

ここで、「日本国籍でなくても」という言葉がするりと入り込んでいるのが、この文章のミソである。
湯浅や私を含む社会活動家が主張してきた「社会的包摂」は、外国籍住民も社会の一員として尊重され、人権が保障されることを当然、含んだ理念である。

だが、新元号発表の安倍首相談話のどこに外国籍住民が包摂されているのだろうか。
そこで繰り返し語られているのは、「日本国民統合」の物語である。

湯浅は、「令和」=「一億総活躍社会」=「社会的包摂」(つまり、自分が主張してきたこと)という図式を作ろうとしているようだが、そもそも安倍政権の標語である「一億総活躍社会」も、多くの人が指摘しているように「社会的包摂」とは全く別物である。

「活躍」をすることを求められる社会は、誰もが排除されず、全ての人の人権が保障される社会とは違う。それは、「一億総活躍社会」を推進している安倍政権において、生活保護基準の引き下げ等、生存権保障の後退が行われてきたという事実によっても証明されている。

本来、「社会的包摂」とは、その対義語である「社会的排除」と闘うという意味が込められた言葉である。

たとえ政治家が包摂をイメージさせるような「きれいごと」を言おうとも、その内実が伴っているのか、問い質すのが「社会的包摂」を実現しようとする者の務めである。

湯浅のこの文章は、外国人を「人」として認めず、「人材」としてしか扱っていない日本の現実を覆い隠すものでしかない。

「社会活動家」の役割とは何か?

「万葉集」には、こんな内容の歌もある。

世界は広いとみんなは言うけれど、私にとっては狭くなってしまったのだろうか。太陽や月は等しく恵みを与えてくれると言うけれど、私のためには照ってはくれないのだろうか。他の人もみんなそうなのだろうか。それとも私だけなのだろうか。

これは山上憶良の「貧窮問答歌」の一部を現代語訳したものである。
奈良時代の農民の貧窮ぶりと苛酷な税の取り立てを写実的に描いたことで知られる歌だが、貧困状態にある人の心情を歌ったものとしては、2019年の日本の現実とも通じるものがあると私は考えている。

「令和の宴」の陰で、自分にとっての世界は「狭い」と感じている人が国内にはたくさんいる。

例えば、

最低賃金以下で働かされ、労災の補償も得られない外国人労働者。
天皇代替わりに伴うゴールデンウィークの10連休の影響で仕事が減り、路上生活へと追い込まれていく「ネットカフェ難民」。
来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックに関連する工事で、公園を追い出される路上生活者。

工事によって路上生活者のテントが排除された公園(東京都内にて)

「統合」と「分断」の時代における「社会活動家」の役割とは何だろうか。
政治家が「きれいごと」を言う時に、その言葉から誰が排除されているのか、見抜き、本来あるべき理念に基づき、追及すること。
梅の花を見る宴に混ぜてくれと言うのではなく、宴に入れてもらえない人々のもとに出向き、声を聴くこと。
政府に忖度をせず、現代の「貧窮問答歌」を詠み上げること。

それが私たち「社会活動家」の役割だと、私は思う。

レオパレス問題の背後にある住宅政策の歪みにメスを入れよ

提言・オピニオン

今年2月、賃貸アパート大手のレオパレス21が施工した1324棟(入居者計約1万4千人)の物件で、壁や天井に施工不良が発見されました。同社はそのうち耐火性能が不足している641棟の7782人に対して3月末を目安に転居するよう要請。入居者の間に不安と戸惑いが広がっています。

国土交通省は2月7日、同社に対し、オーナー等関係者への丁寧な説明、特定行政庁への報告、改修等の迅速な実施、原因究明及び再発防止策の報告、相談窓口の設置を指示しました。

※国土交通省プレスリリースより(画像をクリックすると、PDFのリンクに移ります)

居住者の立場から賃貸住宅の問題に取り組んできた関西の法律家がつくる「賃貸住宅トラブル阪神ネットワーク」は、2月16日、17日に「レオパレス居住者110番」という電話相談を緊急に実施。立ち退きを迫られている入居者らから40件以上の相談があったと言います。同様の相談会は仙台や福岡でも開催されました。

「敷金・礼金ゼロ」「家電・家具付き」をうたい文句に近年、急成長したレオパレスは、住宅の初期費用を捻出できない低所得者を主なターゲットとしていましたが、以前から「壁が薄くて、隣の部屋の物音が聞こえる」といった苦情が絶えませんでした。

DV被害者や外国人入居者等への転宅支援が必要

同社は転居費用を負担するとしていますが、3月は引っ越しシーズンにあたるため運送業者の手配が難しく、さまざまな事情を抱えた入居者の中にはすぐに転居できない人も少なくありません。

法律家による電話相談でも、初期費用が安く、家電・家具付きで借りられるため、DVの被害を受けて逃げる際に借りたという人が複数いたと言います。

また私自身、今回の件が発覚する前に、アジアからの複数の留学生から「レオパレスの物件に住んでいるのですが、大丈夫ですか」という相談を受けたことがあり、近年、国内で増加している外国人が暮らしているケースも少なくないと思われます。
転宅にあたっては、外国語対応も含め、個々の事情に応じた丁寧な支援が求められています。

レオパレスは土地の所有者からアパートの建設施工を請け負い、長期間のサブリース契約を結ぶことを特徴としていました。
物件オーナーなどで構成される「レオパレス違法建築被害者の会」は、違法建築を見逃した国土交通省にも責任があるとして、国交省と金融庁に対して修繕工事が完了するまで同社を支援することを要請しています。

3月9日には、レオパレス本社でオーナー向けの説明会が開催され、社長が謝罪しました。

レオパレスだけの問題ではない

同様のサブリース契約をめぐっては、昨年、女性向けシェアハウスを運営するスマートデイズ社がオーナーへのサブリース家賃を支払わないというトラブルが発生。その過程でスルガ銀行による不正融資が発覚したという問題もありました。
賃貸アパート大手の大東建託でも、アパートのオーナー契約でトラブルが起きているとして、特定適格消費者団体の消費者機構日本が情報提供を受け付けています。

私はこれらの問題の背景に、日本における民間賃貸住宅市場が不動産投資によって歪められているという構造的な問題があると考えています。

2015年の相続税法改正以降は、税対策でアパートを建てる資産家が増え、さらにその傾向が強まりました。
その結果、欠陥住宅や入居者のニーズに合わない住宅が大量に供給されてしまいました。

国土交通省は、民間賃貸住宅市場を野放しにしてきたことを反省し、公的住宅の拡充、空き家を活用した住宅セーフティネット制度の強化などを通して、賃貸住宅への公的介入を強めるべきだと考えます。

賃貸住宅が投機の対象として悪用されている現状そのものを見直し、居住者の立場に基づく賃貸住宅政策を再構築していくことが求められています。

【東京都ホームレス対策計画】排除ではなくハウジングファーストを!パブコメにご協力を!

提言・オピニオン

東京都が「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第4次)」素案を取りまとめ、3月19日(火)までパブコメを募集しています。

※画像をクリックすると、東京都のページに移ります。

 

東京では来年の東京オリンピック・パラリンピックを口実とした野宿者排除が進むことが懸念されており、第4次計画(計画期間は2019~2023年)の内容がどうなるかは、排除をめぐる今後の動きにも影響が出るものと思われます。

私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドでは、NPO法人TENOHASIなど都内の他団体とともに、民間によるハウジングファースト型の支援事業である「ハウジングファースト東京プロジェクト」を進めています。

これまで私たちは行政もハウジングファースト型の支援を取り入れてほしいと要望してきましたが、東京都はなかなか動きませんでした。

ところが、今回の計画素案には「支援付地域生活移行事業」というハウジングファースト型と見られる支援事業を2019年度から23区全域で実施するとの内容が盛り込まれています。

※画像をクリックすると、実施計画素案のPDFのリンクに移ります。

これは歓迎すべき動きとも言えますが、この事業の説明が本文ではなく「コラム」という形で掲載されており、具体的な支援の中身についてほとんど触れられていないこと、2024年度末までに「自立の意思を持つ全てのホームレスが地域生活へ移行する」という大風呂敷の目標を掲げているにもかかわらず、支援対象者の人数の数値目標が書かれていないこと等、不可解な点が少なくありません。

また、ハウジングファースト型の支援が実施されたとしても、それが排除とセットになれば、当事者からの信頼を得ることはできません。

そこで、私は下記の内容のパブリックコメントを送りました。

ぜひ多くの皆様に「排除ではなく、ハウジングファースト型の支援の拡充を!」という意見を都に寄せていただければと願っています。

ホームレス自立支援等に関する計画(第4次)への意見募集|東京都

下記の私の意見も参考にしてください。ご協力よろしくお願いします。

 

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ホームレスの自立の支援等に関する東京都実施計画(第4次)素案に関する意見

稲葉剛(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院特任准教授)

【「Ⅰホームレスの現状」について】

・P3では、東京都におけるホームレスの概数について、「平成30年1月の調査では1,242人で、調査開始以来最も少なくなっています。」とありますが、これまで多くの識者や支援関係者が指摘してきた通り、昼間の目視調査を中心とする現在の手法では正確な人数を把握することはできません。同一の手法の調査を継続して、経年変化を把握することは重要ですが、現行の調査手法の限界を補うため、独自の調査を実施している民間団体の協力を得て、深夜の調査も実施すべきだと考えます。

・P5~9では、ホームレスの生活実態について、高齢化と路上生活の長期化が進んでいること、健康状態が悪いと回答した人が3割を超えること、これまで生活保護を受けたことのある人が3人に1人の割合でいること、今後の生活について「今のままでいい」という回答が4割を超え、以前より増加していること等が指摘されています。これらの現状は、就労支援中心のこれまでの対策の限界と施設保護中心の生活保護の運用の問題が放置されてきた結果であると考えます。データを示すだけでなく、なぜこのような現状が生じているのかという点に関する分析を追加することが必要です。

【「Ⅱホームレス対策の現状」及び「Ⅲホームレス問題の解決に向けて」について】

・P13では、平成29年度から「支援付地域生活移行支援事業」が試験実施されたことが述べられ、P19では同事業がコラムで紹介されています。同事業は「既存の自立支援システムでは対応が難しい、路上生活が長期化し、高齢化したホームレスに対する取り組み」として位置づけられており、前述のホームレスの生活実態を踏まえると、今後のホームレス対策の中軸となるべき事業だと考えられます。それにもかかわらず、計画本文ではなくコラムという形で言及されているのは不可解であり、本文中に位置づけるべきです。

・P19のコラムでは、支援付地域生活移行支援事業について「平成36年年度末(2024年度末)までに自立の意思を持つすべてのホームレスが地域生活へ移行するという目標のもと実施していく」とあります。目標を達成するためには、毎年数百人を支援できる規模が必要になりますが、計画には今後の事業規模についての言及がありません。同事業によって地域生活に移行できる人の数値目標を年度ごとに設定し、計画に明記すべきです。

・支援付地域生活移行支援事業の本格実施にあたっては、アメリカ、カナダ、フランス、フィンランド等で実施されているハウジングファースト型事業で蓄積された知見を踏まえることを求めます。また、排除とセットに事業を実施しないこと、徹底した情報公開をおこなうこと、民間でハウジングファースト型の支援事業を実施している団体との定期的な意見交換の場を設置することを求めます。

・P16では、自立支援センターの若年の利用者の中に「就労経験の乏しい者や、不安定な就労を繰り返す者もおり、途中退所や安定した就労に結びつかない事例」があることが記述されています。P18では、こうした事例の増加に対して「効果的なアセスメントや支援方法を検討し、実施していきます」とありますが、具体策は盛り込まれていません。またP24でも、ホームレスの中に「健康状態が悪化している者が多く、その中にアルコール依存症や精神に疾患を有する者等も含まれています」との記述があります。これらの記述から、年齢にかかわらず、ホームレスの中に様々な疾患や障害を抱えている人が多いことがうかがえます。ホームレスの健康状態を踏まえた適切な支援を実施するため、精神医療の専門家や民間支援団体の関係者も交えた大規模な調査研究を実施することを求めます。

・P28では、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者への対応」として、「TOKYOチャレンジネット」事業が紹介されていますが、同事業の成果に関する記述がほとんどありません。同事業によって安定した居宅を確保できた人の人数等、同事業の成果とその評価を記述してください。

・P28では、「住居喪失不安定就労者の実態に関する調査」の結果が示されていますが、その調査結果を踏まえた今後の取り組み方針については、「支援内容の見直しや関係機関との連携強化」といった抽象的な表現にとどまっています。ネットカフェ等で居住する住居喪失者に対しては、都が率先して安定した住まいを確保できるための居住支援を強化する必要があると考えます。

・P32では、生活保護の適用に関して「直ちにアパート等の居宅生活をすることが困難な場合が多いという現状があります」と記述されていますが、保護施設や宿泊所がほとんどない一部の地方都市では、ホームレスに対して保護開始時からアパート設定がなされていることを踏まえると、主たる問題は一方的に「困難」とレッテルを貼っている都内の区市福祉事務所のマインドセットにあると考えます。根拠なく、「困難な場合が多い」とする記述は削除してください。

・P33では、宿泊所の「取組内容には事業者において大きな差が見られます」とありますが、一部の宿泊所において東京都が2016年に定めた「宿泊所設置運営指導指針」が守られていない現状があります。宿泊所の居住環境や契約内容、サービス内容に関する指導を強化する旨を盛り込んでください。

・宿泊所の入所期間について、P34では「1年以上の利用者が50.3%」いるとの調査結果が示されています。ホームレス状態から生活保護を申請して居宅に移るまでの期間については、区市によって対応のばらつきがあることが知られています。都内の区市において、ホームレス状態からの生活保護の申請件数、決定件数と、そのうち居宅生活に移行できた人の人数、移行までの平均日数を調査した上で、特に居宅移行に消極的な区市において、「本人の意思を確認しながら、援助方針を検討」(P32)しているのかどうか、確認をしてください。

・P37において、ホームレスに対する偏見や差別をなくすための教育や広報・啓発を推進していくことが書かれているのは評価できますが、これまでの実践例は必ずしも多くはありません。今後、どのように実践例を増やしていくのか、具体的に記述してください。

・P38では、「相談時やホームレスの入所施設」における人権尊重が述べられていますが、区市の福祉事務所窓口における「水際作戦」や職員による暴言、宿泊所等における職員の差別的言動は依然として散見されます。ホームレスの当事者や支援者がこれらの人権侵害行為に直面した際に通報できる専用の窓口を都に設置してください。

・P39の「地域における生活環境の改善」では、「公共施設の適正な利用が妨げられることのないよう対策が必要」とありますが、近年、ホームレス自立支援法第11条に定められた「ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携」が一切ないまま、ホームレスが公園等から排除される事案が散見されます。来年開催される東京オリンピック・パラリンピックを口実とした排除を行なわないことを強く求めます。

・P40では「地域住民に与える不安感の除去等」という言葉が二度出てきますが、「不安感」の中にはホームレスへの偏見や差別、誤解に基づくものも少なくないと推察されます。住民の「不安感」を前提とするのではなく、前述の広報・啓発も合わせたアプローチを求めます。

【「Ⅳ計画の推進及び見直し」について】

・P42に記述されている「民間団体の役割」については従前の計画にも盛り込まれていましたが、これまで東京都と民間団体による意見交換はほとんど実施されてきませんでした。民間団体に一方的に「期待」するだけでなく、支援のあり方について民間団体が都と率直に意見交換できる場を定期的に設定してください。

以上

 

祝!TVドラマ化!『健康で文化的な最低限度の生活』原作者、柏木ハルコさんとの対談

対談・インタビュー 提言・オピニオン

「週刊スピリッツ」(小学館)で連載中の人気マンガ『健康で文化的な最低限度の生活』がついにテレビドラマ化され、7月17日(火)から放映が始まります(毎週火曜日21時~)。

関西テレビ『健康で文化的な最低限度の生活』番組サイト

原作のファンとしては、原作の持つリアリティがドラマになっても保たれているかどうか、期待と不安が入り混じった思いで、ドラマのスタートを見守っています。

テレビドラマ化を記念して、2014年10月に行なった柏木ハルコさんとの対談を以下に再録します。

対談の冒頭でも触れられていますが、柏木さんはこのマンガの連載が始まる2年以上前から、当時、私が理事長を務めていたNPO法人自立生活サポートセンター・もやいに来られる等、生活困窮者支援の現場で取材を進めていらっしゃいました。私自身もインタビューを受けたり、知り合いのケースワーカーを紹介したりしています。

対談を読んで、原作者の思いに触れていただければと思います。

 

漫画家と活動家/ふたりの出会い

稲葉: 柏木さんとお会いしたのは、確か3年前ですかね、2011年震災後の……
柏木: 秋か冬くらいでしたかね。年明ける前の。
稲葉: その頃ぐらいに編集の方が連絡を取って下さって、新宿の炊き出しとか、もやいに来られて。それ以来、私も何度か取材を受けましたし、あと生活保護問題の関連の集会にいつも来ていただいて。
柏木: 私、最初「もやいはどういう活動してるんですか?」って聞いた時に、稲葉さんが「そこからですか」って答えたので、「ああ、すみませーん、恥ずかしい~!!」って。なんかもう、我ながらひどいなって思ったんですけど……。
稲葉: いえいえ。
柏木: 「もやい」はもっとビルみたいなところでやってると思っていたら、住宅街にある普通の民家で活動していて、ああ、こんな家庭的な場所でやっているんだって不思議な感じでした。
稲葉: 私に対する漫画家さんの取材って結構あるんですけど、柏木さんはあんまりガツガツしていなかったですね。それで、最初の取材が終わったあとも淡々とイベントのいろんな手伝いとかで継続的に関わって下さっていたので、半年くらいになると「いつになったら描くのかなぁ」と心配になって。
柏木: (笑)
稲葉: 今でこそ、淡々と積み重ねておられたのだなぁということがよく分かったのですが、当時はこれ、大丈夫なのかなぁ?って思っていました。

ケースワーカーが主人公?

稲葉: 早速ですが、なぜ今回、生活保護そしてケースワーカーを主人公にしたマンガを描こうかと思ったかというところからお話しを伺えますか?
柏木: はい。 何か、いろんなところでいろんなことを書いているので、どうだったか・・・(笑) 5~6年くらい前に、ある相談機関に勤めている友達がいて、仕事の愚痴を聞いていたら、いろんな人がいろんな相談をしに来る仕事は面白いなって漠然と思っていました。それで、震災のあとくらいからでしょうか。自分は今まで、自己表現ということだけやってきたんですけど、社会に目を向けなきゃいけないなって気持ちにだんだんなってきたんですね。
稲葉: それで生活保護を描こうと?
柏木: はい、生活保護って社会のいろんな問題が集約している場所だって思ったんですね。だから、マンガにしたらいろんなドラマを作れるんじゃないかなって。ケースワーカーを主人公にしようと思ったのは、あれは「新人」ケースワーカーなんですね。生活保護のこと、私も知らないし読者も知らないので、全く知らないところから「いろんな人がいるんだな」と同じ立場で分かっていくことができるかな、と思ったので。
稲葉: なるほど。
柏木: 最初、5人新人ケースワーカーを出したんですけど、かなり最初の頃は青春群像にして、いろんな人がいろんな風に思うという形にしたかったんです。結局は彼女(義経えみる)が主人公になっていますが、最初はもっとバラける予定だったんです。
稲葉: そうなんですか。
柏木: はい。でも、生活保護っていろいろ描くことが多すぎて、5人の青春群像なんかとても描けないっていう風になって、現在の形になっています。でも、キャラクターそれぞれに思い入れはありますし、ぼんやりと何人かがモデルになっていたりっていうのはあります。生活保護を受給している方もそうなんですけど、ケースワーカーも実際どういう人がやってるのか全然想像ができなかったので、イメージを掴むのに時間掛かりましたね。

長期に渡った取材の理由

稲葉: 2011年の暮れから取材を始められて、結構長かったですよね。2年半以上ですか?
柏木: そこから考えるとそうですね。まぁ、大体2年くらいって言ってるんですけど。
稲葉: かなり突っ込んだ取材をされてきて……
柏木: やっぱり、取材にすごい時間が掛かったのが想定外で。最初は勉強すればいいだろうと思っていたんですけど、本を読んでもお会いしないと想像できないんですね。会った人でないと画に起こせないし、雰囲気も出せないし。そもそも最初が知らなさすぎたので、どうやって取材していいかも分からなかったんですね。まず、ケースワーカーに知り合いが一人もいなかったので、稲葉さんに一人紹介していただいて。でも、その最初に紹介していただいた方は、もう会った瞬間に「(マンガに描くのは)無理だと思います」って。
稲葉: え、そうなんですか?あの人が?(笑)なんでまた。
柏木: 本当のことは描けないとか……。
稲葉: ああ、プライバシーの問題ですね。
柏木: あと、「取材でもみんな本当のことを喋ってくんないと思うよ」とも言われました。ただ、そう言いながらもその方は、高校生のバイトの不正受給の話などバーッといろいろ喋ってくれたあと「じゃっ!」って感じで帰って行かれて(笑)。
稲葉: ご存じの通り、もやいのような民間相談機関を通じて当事者の方の取材をされていると、ここは福祉事務所側と協力する場面もあるけれど、対立する場面も多い現場なんです。柏木さんは受給者側と福祉事務所側両方の取材をされていますが、見方の違いやスタンスの取り方で悩まれたりしましたか?
柏木: それはずっと悩んで、今でも悩んで、多分これからも悩むことなんだと思うんですよね。一つの事柄でもこっちから見るのとあっちから見るのでは、受け取り方が全然違うので。例えばケースワーカーの人が「あの人、何も喋ってくんない」と言っている当事者の方がいても、当事者から言わせれば「あんなこと言われたら何も喋れない」と思ってる。そういうすれ違いを、なるべく両方から描きたいなというのはありますね。
稲葉: なるほど。
柏木: もちろん、私がどちら側だけになりたくないなというのがあるんですけど、読者もいろんな方がいろんな見方をすると思うんですね。だから、いろんな人が「自分の意見もここに入ってる」と、そう思えるようにしたいなと。難しいですけどね。100%客観なんて無いと思うんで。

感情のメディアとしてのマンガ

稲葉: この前の社会保障関連のイベントでインタビューを受けられていて、その中で「マンガってのは感情にスポットを当てたメディアだ」とお答えになっていて非常に印象的だったんです。私たちは支援者であり活動家なので、割と生活保護問題っていうのを俯瞰して喋ることが多いんですけど、柏木さんのマンガは主人公や当事者がこの時にどう感じたののかがすごくリアルに描かれていると感じました。感情にスポットを当てることで、どっちが正しくてどっちが正しくないっていう視点ではなく、「現場のリアル」を伝えられているのかなと読んだのですが。
柏木: はい、そういう風にしたいなって思っています。うまくいってるか分からないですけど。やっぱりマンガの面白いところって、感情が動くところがドラマになるので、そこをどう物語に盛り込んでいくかなぁ……と思っています。マンガだから、やっぱり面白くないと読まれないので。イベントの時も言ったんですけど、一人一人の人間は、生活保護を受けていようが、一括りにできないと思うんです。私も取材していく中で、こんなにいろんな人がいるんだって結構びっくりしたんですね。

稲葉: まったくその通りですね。
柏木: まとめて総論、「生活保護受給者ってこうだ。こういう人たちだ。」って、絶対に言えない。だから、ケースワーカーも一人一人に向き合っているので、結局その人とのコミュニケーションってことでしかないと思うんですよね。
稲葉: 福祉事務所の担当ケースワーカーと利用者・受給者っていう、そこのあり方がすごく描かれていていると感じました。コミュニケーションしようとするんだけど、お互いの力関係だったり制度によってコミュニケーションがうまくいかなくて断絶する様子がすごくリアルに描かれている。その両者がどうやって乗り越えていくのかみたいなところも一つのテーマになっているのかな、と思っているのですが。
柏木: 総論ではない、一人一人のコミュニケーションのマンガっていう感じで描きたいというのはすごくあります。

長い長いタイトルの話

稲葉: このタイトルはいつ思いついたんですか?
柏木: これはかなり最初の方で、生活保護をマンガにしようと思った直後です。なんかキャッチーな感じがしたし、覚えやすいかなぁということもありましたが……。取材を進めていく中で、最終的なテーマは人権ってことになっていくのかなぁと気づいたので、このタイトルで良かったと思っています。結局は、このタイトルの意味を考えるマンガなのかなって。ただ、それは連載をずっと進めてみないとわかんないですけどね。
稲葉: 「健康で文化的な最低限度の生活」っていう憲法第二五条・生存権の言葉が繰り返されるわけですけど、それ自体が一つの問題提起「健康で文化的な最低限度の生活」って何?という問いかけになっているというのはすごいなぁと思いました。そうか、この手があったかと。自分の本を書くときにこうすれば良かったかなと。(笑)
柏木:やっぱりこう、パッと文字にした時に、マンガですからね、印象に残るのがいいって思ったんですよね。
稲葉: 残りますねぇ。
柏木: よく、どうやって略してるのって聞かれますけどね。
稲葉: 編集部では何て言ってるんですか?
柏木: 最終的には今、「健康」って感じで。長すぎるんで。デザイナーさんは「健文最生」って呼んでますね。
稲葉: 健文最生!それはすごいな。

気になる今後の展開は……

稲葉: 差支えない範囲で、今後どう展開していくのかを聞かせていただけますか? 今、第2クール目でしたよね。第1クールが就労支援の話で、第2クールで不正受給の問題という非常にホットな問題を取り上げているんですけど、今後はどのように展開していくんでしょうか?
柏木: これは……言っちゃっていいのかな?(笑) 生活保護っていうと、やはり就労とか不正受給ってホットな話題で、もう一つホットな話題が、扶養義務なんですよ。そこは早めに行きたいなっていうのがあるんですけど。
稲葉: 生活保護バッシングが拡がる中で、割と一般的な人たちが普通に持ってしまっている疑問があって、柏木さんのマンガは、敢えてそこに切り込んでるなっていう感じは持ちましたね。
柏木: そうですね、やっぱり読者が興味のあるところを描いていきたいというのがありますね。不正受給を描きたいのはそういう理由なんですけど。あと、就労支援編を一番最初にやったのは、ほとんどの人が「あいつらどうして働かないんだ」って思ってるってことから、興味あるかなって思って一発目はあれで行ったんです。
稲葉: なるほど。
柏木: 細かいことで取り上げたいこともいっぱいあるんですよね。依存症の人のこととか、住まいのこととか。住まいの問題もどんどん新たにいろんなことが起こってますし。でも、住まいの問題で活動してらっしゃる稲葉さんの動きを見ると、取材して載るまでの間に、もう状況がめまぐるしく変わってるんじゃないかとも思っています。

このテーマに「踏み込む」

稲葉: さきほど、「最終的には人権になる」っておっしゃいましたけど、私も人権を「人権」という言葉を使わないで表現するって、すごく大変だなっていつも感じています。
柏木: そうですよね。分かります、すごく。
稲葉: 人権は大切だって言っても、本当の大切さは伝わらないじゃないですか。学校の校長先生の朝の挨拶みたいになっちゃうので。本当にそれが大切だということを伝えるためには、すごく微に入り細に入り暮らしを描くしかないという気がしているのですが。
柏木: 人権って、普通に生きていると空気みたいに当然あるものだって気がしちゃうので、それが奪われたらどんな大切だったか分かると思うんですよね。空気なかったら生きていけないので。日頃、普通の家庭で普通に育ってきたら気付かないで済んでしまうと思うんですよ。
稲葉: そうですね。
柏木: だから大切さに気付かない人は多いし、考えなかったり、どうでもいいって思ってる人はたぶんいっぱいいると思うんです。私も正直、このテーマに取り組む前はそういうところがあったんですけど。でも、奪われた時にすごく困ることなので、そこのせめぎあいなんですよね。まだ、そこまで踏み込んだ描写っていうのはしてないんですけどね。
稲葉: 是非、長期連載して踏み込んで下さい!
柏木: そうですねぇ。人権って、こう、認めようと社会が合意するまですごく大変だったと思うんですよ。昔の、明治時代みたいなところから考えたら、人権ってものを認めようとなるまで、人間ってすごく苦労したと思うんです。
稲葉: ヨーロッパなんかだと血で血を洗うような歴史があって……
柏木: その結果、獲得したものですよね。
稲葉: 日本の場合はそれを数十年でやろうとしているっていうことなんで、上滑りになっちゃうのかなって感じますね。
柏木: でも、やっぱり絶対大切なものだと思うんですよね。獲得するまでの大変さを思うと、大事にしなくちゃいけないんじゃないかなっていうのはありますね。
稲葉: ただ、その伝え方で私もいつも悩むことではあるんですけどね。ともすれば私の本を見ていただければ分かるように、漢字ばっかりになっちゃうんですよ。
柏木: あはははは(大笑)
稲葉: 分かりやすく伝えようと努力はしているんだけど、どうしても漢字で伝えた方が、伝える側にとっては伝えやすく、そこに頼ってしまうところがあります。受け取る側がリアルにイメージできるようにどう伝えたらいいかというのがすごく課題だと常に思っていて。そういう意味でも、柏木さんのマンガは、私たちが日ごろ伝えようとしながらも、できないでいるメッセージが伝わりにくい人たちにも伝わるような形で描いてらっしゃるので、すごく感謝はしています。
柏木: ありがとうございます。

2014年10月、つくろいハウス事務室にて。

LGBT支援ハウスをつくりたい!クラウドファンディングにご協力を!

提言・オピニオン 日々のできごと

私が代表理事を務める「つくろい東京ファンド」では、LGBTコミュニティの各団体・個人と連携をして、「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」という団体を作り、中野区内にLGBT向けシェルターを開設する方向で準備を進めています。

7月13日(金)から、「日本初!貧困・孤独・病気 負のスパイラルから抜け出すための『LGBT支援ハウス』をつくりたい!」というタイトルで、中野区内に1部屋のシェルターをオープンするためのクラウドファンディングを開始しました。

※以下の画像をクリックすると、クラウドファンディングのページに移ります。

ぜひこのクラウドファンディングのキャンペーンにご協力ください。
SNSアカウントを持っている方は、以下の文章をコピペして、情報拡散にご協力いただけると大変ありがたいです。

 

日本初!貧困・孤独・病気
負のスパイラルから抜け出すための『LGBT支援ハウス』をつくりたい! | https://greenfunding.jp/fca/projects/2350
#LGBT支援ハウス

 

今回のキャンペーンの特徴は、私たち生活困窮者支援団体の関係者とLGBTコミュニティの諸団体・個人のネットワークによってプロジェクトを進めている点です。

私自身も、当事者団体の方々からLGBTの人たちの置かれている状況を学びながら、ディスカッションを重ね、合同プロジェクトを立ち上げるに至りました。
「これまでにない組み合わせ」という評価もいただいていますが、これまでにない組み合わせで、これまでにない事業に取り組んでいきたいと思います。

もう一つの特徴は、クラウドファンディングのお礼の品がこれまでになく、充実していること。
これは、アルファロメオと中村キース・ヘリング美術館、GREEN FUNDINGの全面協力により実現しました。10万円コースにはキース・ヘリングの自転車もあります。ぜひグッズもチェックしてみてください。

キャンペーンは9月末まで続くので、よろしくお願いします。

 

以下はプレスリリースの内容です。

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【LGBTと生活困窮】貧困・孤独・病気という負のスパイラルから抜け出すための『LGBT支援ハウス』をつくる、コレクティブ・インパクト型のプロジェクトが、複数のNPO団体や個人の協働によりキックオフ。

ホームレス状態になったLGBT当事者が利用できる支援ハウス(個室シェルター)を開設し、複数の団体・個人が協働して支援にあたることを目指し、プロジェクトの実現に向けたクラウドファンディングを立ち上げ。

LGBTについての話題が、メディアなどで華やかに取り上げられることも多い現在。さまざまな状況におかれたLGBT当事者・生活困窮者に関する実情は、なかなか情報として発信されていません。都内で活動するNPO団体等にて行なっている日々の相談業務においては、住まいを失い「ホームレス状態」になった、あるいは現在なっているというLGBT当事者の方から声が少なくありません。

特にゲイ・バイセクシュアル男性やトランスジェンダーの方が、一度路上に出てしまった場合に入ることが出来る支援施設は不足しています。また、『「お金がない」から「健康を保てない」。「健康ではない」から、適切な相談を考えることができない。「相談できない」から、よい条件の仕事がみつからずお金がない。』という「負のスパイラル」を立ち切り、安心できる「個室」と「経験のある支援体制」が、ホームレス状態になったLGBT当事者にも必要だと考えています。

この度、都内を中心に、さまざまな状況におかれたLGBT当事者・生活困窮者の支援を続けている複数のNPO・個人・行政・当事者が、立場を越えて社会問題に取り組む「コレクティブ・インパクト」のアプローチで、この解決に取り組む「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」を発足し、ホームレス状態になったLGBT当事者が利用できる支援ハウス(個室シェルター)の開設を目指すこととなりました。具体的な計画としては、中野区内に個室一室を借り、そこを「LGBT支援ハウス」として運用。多数の相談支援団体と連携して、支援を必要としている人につながり、ハウスを利用しながらニーズに合った支援を続けていきます。
「LGBT支援ハウス」の利用は原則として期間限定とし、私たちの会が掲げる「ハウジングファースト」の理念に基づき、できるだけ早い段階で安定した住まい(通常の賃貸アパート)へ移行をサポート。それぞれの新たな生活を応援していきます。また、今回のプロジェクトによる支援と平行して一年間をかけ調査もおこない、ニーズを探ることで、ここで得られた知見と成果を社会へフィードバックしていければと考えています。

なお、より多くの方々とともに本プロジェクトを実現していくために、クラウドファンディングをスタートします。ぜひ、ご支援および情報拡散のご協力をお願いします。

◆プロジェクト名

「日本初!貧困・孤独・病気、負のスパイラルから抜け出すための『LGBT支援ハウス』をつくりたい!」

◆主催

LGBTハウジングファーストを考える会・東京

◆呼びかけ人(50音順)

荒木順子(NPO法人akta)、生島嗣(NPO法人ぷれいす東京代表)、石坂わたる(中野区議会議員)、稲葉剛(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事)、稲吉久乃 、遠藤まめた(やっぱ愛ダホ!idaho_net.代表)、大江千束(LOUD代表)、大島岳(一橋大学大学院)、金井聡(一橋大学大学院)、金谷勇歩、カラフル@はーと、前田邦博(文京区議会議員)、松中権(認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ 代表)、山縣真矢(NPO法人東京レインボープライド共同代表理事)

◆支援体制(予定)

・相談対応:特定非営利活動法人ぷれいす東京
・入居者へのサポート:カラフル@はーと、LOUD(ラウド)
・住まい探しのサポート:一般社団法人つくろい東京ファンド
・広報・ネットワーキング:認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ

◆具体的なスケジュール

7月13日(金):プロジェクト・スタート(クラウドファンディング開始)
8月:物件の調査および内定
9月:物件と支援体制の確定
10月:各種設備の準備や告知の開始
11月:相談者の受け入れを本格化

◆クラウドファンディングの詳細

・WEBサイト
https://greenfunding.jp/fca/projects/2350
・スケジュール
2018年7月13日(金)〜9月30日(日)

◆その他

・FBページ
https://www.facebook.com/LGBTHF/
・Twitter
https://twitter.com/LGBT_HF
・ハッシュタグ
#LGBT支援ハウス

 

生活保護引き下げは貧困層の社会保障を脅かすと国連人権専門家が警告

提言・オピニオン

5月24日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の人権専門家(国連人権理事会の「特別手続き」に属する専門家で、テーマ別特別報告者)は、プレスリリースを発表し、日本政府が進めている生活保護基準の引き下げについて、貧困層の社会保障を脅かすとして警告を発し、見直しを求めました。

また現在、国会で審議されている生活保護法改正案の中に、生活保護利用者のみにジェネリック医薬品を事実上強制する条文が含まれていることについても、「生活保護受給を理由に、医薬品の使用に制限を課すことは、国際人権法に違反する不当な差別に当たる」と懸念を表明し、改正案を慎重に再検討することを求めました。

 

プレスリリース英語版はこちら。
国連の特別報告者に関する説明ページはこちら。今回のプレスリリースを行なったのは、4名のテーマ別特別報告者です。

プレスリリースの日本語版は下記の通りです。

特別報告者たちは日本政府との対話を求めていますが、強制力があるわけではないので、政府が対話に応じるかどうかはわかりません。
日本政府がこの警告を正面から受け止め、特別報告者との対話を行うことを求めていきたいと思います。

【以下はプレスリリースの日本語版全文です】

日本:「貧困層の社会保障を脅かす生活保護削減」国連の専門家が警告

ジュネーブ(2018年5月24日)国連の人権専門家*は、今年10月から実施予定の生活扶助費の段階的な引き下げについて、貧困層、特に障害者、一人親世帯、また高齢者の最低限の社会保障を脅かすものとして、日本政府に見直しを求めた。

昨年12月に生活扶助の支給額が今後3年間で最大5%引き下げられることが決定されたのを踏まえ、人権専門家が警告を発した。今回の措置により、現在の受給世帯の約3分の2の世帯で生活扶助額が減額される見通し。

「日本のような豊かな先進国におけるこのような措置は、貧困層が尊厳を持って生きる権利を踏みにじる意図的な政治的決定を反映している」と専門家は述べた。

「日本は緊縮政策が必要な時においても、差別を撤廃し、すべての人に基本的な社会的保護を保証する義務がある。貧困層の人権への影響を慎重に考慮せずに採択されたこのような緊縮政策は、日本の負っている国際義務に違反している」と付け加えた。

今回の削減は、2013年に行われた同様の生活保護の予算削減に続くものである。専門家は、年収を10段階に分けた場合の最も低い所得世帯層の消費支出の状況に基づいて生活保護基準を見直すという方式の正当性に疑問を呈している。

「この基準に基づいて決定される最低生活水準は、国際人権法で要求される適切な生活水準と合致しない。このような欠陥のある方式に基づく受給額減額によって、日本はますます多くの人々を貧困に陥れることになる」と主張した。

「高齢者の貧困と社会的排除により、またも多くの人々が声を上げられないまま苦しむことになろう。これらの政策が修正されなければ、貧困に最も影響を受けやすい人々、特に女性の高齢者、女性世帯主世帯、女性の障害者などを傷つけるだろう」と強調した。

「今回の削減によって最も打撃を受けるのは障害者であろう。経済的負担の増加により、施設に入ることを余儀なくされたり、自殺を図るケースが増えているとのが報告もある。生活扶助費の削減は、障害者権利条約によって保証された、障害者が地域社会で自立して生存する平等の権利を奪うものである」と専門家は述べた。

専門家は、国際義務に基づき、生活扶助費の引き下げの包括的な人権アセスメントを行い、そして負の影響を緩和するために必要な対策を講じるよう、政府に要請している。
また、専門家は、政府が生活保護改正法案を現在審議していることに触れ、生活保護受給者が非受給者と同等に医療を受ける権利を制限する可能性があると指摘した。「生活保護受給を理由に、医薬品の使用に制限を課すことは、国際人権法に違反する不当な差別に当たる。政府は改正法案を慎重に再検討するよう強く要請する」と述べた。

専門家は、日本政府にすでに直接懸念を表明した。

以上

* 今回の声明を発表した国連人権専門家一同:フィリップ・オルストン氏、極度の貧困と人権の特別報告者;ホアン・パブロ・ボホスラブスキー氏、対外債務と人権の独立専門家;カタリーナ・デバンダス氏、障害者の権利の特別報告者;ローザ・コーンフェルド・マッテ氏、高齢者の人権の独立専門家。
国連人権専門家は、国連人権理事会の「特別手続き」に属する専門家である。「特別手続き」とは数々の独立専門家を擁する、国連人権機構の中の最大組織である。特定の国における人権状況やテーマ別の人権状況について事実調査・監視を行う、国連人権理事会の独立した数々のメカニズムを総称して「特別手続き」という。全ての国が調査対象となる。「特別手続き」の専門家は国連職員ではなく、金銭的報酬も受け取らず、自らの意思で調査に取り組む。いかなる政府、組織からも独立し、個人の資格で任務にあたる。

-国連人権高等弁務官事務所(OHCHR) 各国ページ 日本:
http://www.ohchr.org/EN/countries/AsiaRegion/Pages/JPIndex.aspx

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5月23日(水)生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の傍聴に集まろう!

提言・オピニオン

2013年8月から生活保護の生活扶助基準が三段階に分けて引き下げられました。

この過去最大の引き下げに対して、全国29の都道府県で引下げの違憲性を問う訴訟が行われています。

東京では、第8回口頭弁論が5月23日(水)15時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。

傍聴をご希望の方は、早めに東京地裁の正門前に(地下鉄「霞ヶ関」駅A1出口すぐ)にお集まりください。傍聴席を満席にしましょう!

口頭弁論終了後は、ハロー貸会議室虎ノ門3階会議室で報告集会が予定されています。あわせて、ご参加ください。

 

生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(通称:はっさく訴訟)
弁護団・原告団・支える会連絡先:
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1丁目17番10号 エキニア池袋6階 城北法律事務所内
生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟弁護団
電話03-3988-4866(担当=平松・木下)

 

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