「住まいは人権」から20年。今こそ、住宅政策の転換を!
今から20年前の1996年6月、トルコのイスタンブールで第2回国連人間居住会議(ハビタットⅡ)が開催されました。ハビタットⅡは、20世紀の後半、世界各国で都市への人口集中が進み、住民の居住環境の悪化が深刻な社会問題となったことを踏まえ、人類が直面する居住問題の解決に向けた取り組みを促進するために開催されました。
会議には、各国の政府代表だけでなく、地方自治体、NGO、研究者、企業などが参加。6月14日に採択されたイスタンブール宣言では、「人間にふさわしい住まいは、命の安全、健康、福祉、教育や本当の豊かさ、人間としての尊厳を守る基礎であり、安心して生きる社会の基礎である」という前提のもと、「適切な居住への権利」は基本的人権であることが宣言され、各国政府は居住権の保障を自国の住宅政策の最重要課題として進めていくことを確認し合いました。
イスタンブール宣言には日本政府も署名しました。日本政府も「住まいは人権」であることを認め、住宅政策を拡充していくことを国際的にも確約したわけです。
それから20年経って、国内の住まいをめぐる状況はどうなったでしょうか。
住まいの貧困の極限形態であるホームレス問題については、2006年以降、生活保護の運用を改善させる運動が広がったことにより、路上生活をせざるをえない人は減りつつあります。
しかし、民間の賃貸住宅市場で高齢者や障害者、外国籍の住民といった人々が住宅を借りにくい状況は改善されておらず、高齢者や障害者の「入居に拒否感がある賃貸人の割合」はむしろ高まっています。
また、国内の貧困が若年層にまで広がったことにより、若者の住宅問題も深刻化しています。2000年以降は、ワーキングプアの若者がネットカフェや脱法ハウスといった不安定な居所で暮らさざるをえない状況が大きく広がりました。
2014年に、私も参加したビッグイシュー基金・住宅政策提案・検討委員会による調査では、首都圏と関西圏に暮らす年収200万円未満の未婚の若者のうち、6.6%が広い意味のホームレス状態を経験していることが明らかになりました。親と別居している若者に限定すると、その割合は13.5%にのぼります。
*「若者の住宅問題」調査の詳細は以下の画像をクリックしてください。
このように、まだまだ日本国内では「住まいは人権」が確立されたとは言えない状況があります。
国内の住宅問題に取り組む諸団体は、イスタンブール宣言が出された6月14日を「住まいは人権デー」と位置づけ、毎年、記念のイベントをおこなってきました。
今年の「住まいは人権デー」では、「住宅セーフティネットと若者の住宅問題」をテーマにした集会を開催します。
※6月14日(火) 「住まいは人権デー」の夕べ ―住宅セーフティネットと若者の住宅問題
また、6月12日(日)には若者を主体とするCALL for HOUSING DEMOCRACY が「家賃下げろデモ」をおこないます。
※6月12日(日) CALL for HOUSING DEMOCRACY 家賃下げろデモ at 新宿
これらの一連の行動を通して、今夏の参議院選挙でも住宅政策の転換を争点に押し上げたいと考えています。
ぜひ多くの方のご参加、ご協力をお願いいたします。
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2016年5月30日