貧困問題に取り組まない政治家はいらない!~「生活保護基準」「水際作戦」「扶養照会」に関する各党の公約を検証する

提言・オピニオン

2022年6月24日、東京地裁において生活保護費の減額処分の取消しを命じる勝訴判決が言い渡されました。

6月24日、東京地裁で全国3例目の原告勝訴判決が言い渡されました!(判決要旨・全文を掲載しています)
https://inochinotoride.org/whatsnew/220624_tokyo

全国29の都道府県で続けられている「いのちのとりで裁判」では、2013年に第二次安倍政権が強行した生活保護基準の引き下げの違憲性・違法性が問われてきました。

これまで11の地裁で出た判決のうち、原告が勝訴した判決は、2021年2月22日の大阪地裁判決、2022年5月25日の熊本地裁判決に次ぐ全国3例目となります。

6月27日には厚生労働省に控訴をしないこと、引下げ前の基準に戻すことを求める緊急要請が行われますが、すでに始まっている参議院選挙(7月10日投開票)でも、過去の基準引下げの不当性など、生活保護制度のあり方が争点になることを期待します。

生活保護に関する論点はさまざまありますが、特に生活困窮者支援の現場で問題になることの多い「生活保護基準」、「水際作戦」、「扶養照会」という3点に絞って各党の公約を調べてみました。

すると、大きく3つのグループについて分けられることがわかりました。

1. 各論点について改善案を明記している政党:立憲民主、共産、れいわ、社民
2. 各論点に触れず、生活保護制度について抽象的に記述している政党:自民、公明、NHK党
3. 生活保護制度そのものについて何も記述せず、ベーシックインカム等の別制度を提案している政党:維新、国民民主


私としては、私たちが支援の現場から問題提起をしてきたことを正面から受け止めている政党に議席を伸ばしてほしいと願っています。
ぜひ投票のご参考にしてください。

 

※「生活保護基準」、「水際作戦」、「扶養照会」に関する各党の公約

◆立憲民主党「立憲民主党政策集2022」
https://elections2022.cdp-japan.jp/static/downloads/2022_seisakushu.pdf

生活保護・⽣活困窮者⽀援
健康で⽂化的な最低限度の⽣活を保障できる⽣活保護基準を検討し、必要な措置を講じます。
● ⽣存権保障を強化する観点から、⽣活保護法のあり⽅を⾒直します。
● 児童扶養⼿当は⼦ども1⼈当たり⽉額1万円を加算し、ふたり親低所得世帯にも⽉額1万円を⽀給します。
● ⽣活保護が適正に運⽤され実施されるよう、体制整備、⾏政処分のチェック機能の強化と⼈材育成、権利擁護を強化します。
親族による扶養は⽣活保護の要件ではないこと、⽣活必需品である⾃家⽤⾞の保有を認めることなどを運⽤⾯で周知徹底します。
● 福祉事務所の実施体制について抜本的な⾒直しを⾏い、総合相談体制の強化と正しく法の解釈と運⽤がなされる環境を確保します。
● 貧困が命に関わる危険な状態を招く事例も少なくありません。⽣活保護受給資格の要件を分かり易く提⽰し、要件を満たした場合は適切に受給資格を付与するとともに、受給資格があるにもかかわらず給付を受けない事態が放置されないように対応します。
●就労インセンティブを損なわないようにするために、⽣活保護の収⼊認定や⽣活保護の各扶助を単独で⽀給することの是⾮等について検討します。
● 2017年に⾏われた⽣活保護の基準の検証に⽤いられた⽔準均衡⽅式を⾒直して必要な措置を講じるとともに、その間、要保護者に不利な内容の保護基準を定めないようにします。

 

◆日本共産党 2022参議院選挙政策
https://www.jcp.or.jp/web_policy/2022/06/202207-bunya06.html

日本共産党は、生活保護を、必要とするすべての人が利用できる制度にするため、以下のような改革案をかかげています。
―――自公政権が行った生活保護費削減・生活扶助費の15%カットを緊急に復元し、支給水準を生存権保障にふさわしく引き上げる。
―――保護申請の門前払いや扶養照会をやめる。自動車保有やわずかな預貯金などの「資産」を理由に、保護利用を拒む運用を改める。
―――名称を「生活保障制度」に改め、権利性を明確にし、生存権保障にふさわしい制度に改革する。
私たちはこの立場で、生活保護制度を、国民の命・くらし・人権を守る制度として改善・強化していきます。

 

◆れいわ新選組 れいわ社会保障政策
https://reiwa-shinsengumi.com/reiwa_newdeal/newdeal2021_04/

3  新しい生活保障制度(生活保護・年金制度等)

○「生きる権利」としての生活保護制度の拡充と、名称を「生活保障法」とするなど「受けやすい」制度への改革
○「最低保障年金制度」の慎重な検討(1)最後の砦としての生活保護制度の保護基準の見直し

(中略)

(1)最後の砦としての生活保護制度の保護基準の見直し

生活保護は生存権保障の最後の砦です。憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」とは、具体的にどの程度の金額なのか、保護基準額が恣意的に決められないよう、その決定プロセスを透明化し、民主的コントロールを導入するために国会の議決で行うことにします(日弁連「生活保障法」提言)。
安倍政権で実施された根拠のない生活扶助基準の引き下げを白紙に戻し、「健康で文化的な最低限度の生活」にふさわしい保護基準を新しく定めます。生活保護基準は、就学援助、住民税非課税限度額、最低賃金の基準にも連動し、国民生活安定の基礎であり、決定プロセスには利用者の意見を反映させる仕組みを新設します。

(2)水際作戦の禁止と支給漏れをなくす

生活保護の申請は国民の権利であり、いろいろ理由を付けて保護の申請を受け付けないのは違法です。自治体の水側作戦を禁止し、他の社会保障制度のように、生活保護申請の手引きを窓口に置き、誰でも申請できるような環境をつくります。
また、申請をためらわせる要因となっている扶養照会(親族への照会)については、問題になっている通知を廃止します。
生活保護の「濫給」は非常に厳しくチェックするのに、「漏給」に対しては鈍感で、生活保護が必要な状態の人が実際に受給できているかの捕捉率を行政はなかなか公表しません。憲法で定められた生存権保障が実現できているのかどうか、捕捉率の算定方法を研究協議し、定期的に調査・公表する仕組みをつくり(イギリス参照)、現状の2割から大幅に高めます。相談・申請受付・調査・決定のプロセスにかかわる、相談員、ケースワーカー(都市部では1人で100世帯を担当)も慢性的な人員不足で、申請抑制の原因となっています。専門性をもった人員を増員します。

 

◆社会民主党「参院選2022 選挙公約」
https://sdp.or.jp/political_promise/

13)生活保護申請を抑制する「水際作戦」や扶養照会をやめさせ、必要な人が当然の権利として利用しやすい制度に変えます。
社会の底が抜けたかのように生活困窮者が増えています。最後のセーフティネットである生活保護制度を権利として活用できるよう行政に徹底します。各市町村の福祉事務所窓口で生活保護申請者を追い払ったり、申請書を提出させないよう誘導する“水際作戦”を止めさせます。“水際作戦”をなくすために、生活保護制度のオンライン申請の導入を検討しすすめます。
また、自治体が申請者の扶養義務者(民法上)に対して扶養できるかどうかを問う照会が、生活保護申請をためらわせる一番大きなハードルです。扶養照会を避け、申請を躊躇し栄養失調や病気、自殺に至るケースも少なくありません。生活保護法上、扶養は生活保護の要件ではないことを行政に徹底し、親族へ連絡されたくないという申請者の意向を尊重します。申請者の同意がなければ扶養照会をしてはならないという通知を各自治体に出すよう厚生労働省へ働きかけます。また、この間引き下げられてきた生活扶助費を引き上げます。

◆自由民主党「総合政策集2022J-ファイル」
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/20220616_j-file_pamphlet.pdf
368 国民の信頼に基づく生活保護制度の実現生活保護が、真に必要な人に行き渡るよう情
報発信を強化するとともに、制度に対する国民の信頼と安心を確保し、納税者の理解の得られる公正な制度にします。

 

◆公明党「参院選政策集Manifesto2022」
https://www.komei.or.jp/special/sanin2022/wp-content/uploads/manifesto2022.pdf

1 経済の成長と雇用・所得の拡大
◎生活保護制度について、コロナ禍で最後のセーフティネットとして機能しているかを検証し、関係機関による計画的な支援などにより、入りやすく出やすい制度へと見直します。

 

◆NHK党「NHK党の公約について」
公約10 年金・社会保障
https://syoha-senkyo.jp/policy/010/

生活保護の受給が必要にも関わらず様々な事情で受給が困難な方々に対して、党として相談体制の整備を進める(制度としては既に導入済み)。

 

◆日本維新の会「政策提言維新八策2022」
https://o-ishin.jp/sangiin2022/ishinhassaku2022.pdf

174.「チャレンジのためのセーフティネット」構築に向けて、ベーシックインカムまたは給付付き税額控除を基軸とした再分配の最適化・統合化を本格的に検討し、年金等を含めた社会保障全体の改革を推進します。

 

◆国民民主党「政策パンフレット」
https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2022/06/aa56be5ada4f88075e277df648acde2e.pdf

政策4「日本型ベーシックインカム」創設
〇給付と所得税の還付を組み合わせた新制度「給付付き税額控除」を導入し、尊厳ある生活を支える基礎的所得を保障します。

 

※各党の生活保護に関する考え方については、昨年の衆議院選挙の際、生活保護問題対策全国会議が各政党におこなった公開質問状の回答も参考になります。

「生活保護制度改革に関する公開質問状」回答(自民党、立憲民主党、社民党、れいわ新選組、共産党、国民民主党)

http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-427.html

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