「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(案)」に意見を提出しました

提言・オピニオン

東京都が「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第5次)(案)」を取りまとめ、3月1日まで都民からの意見を募集しています。

「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第5次)(案)」について御意見を募集します

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/rojo/5thplan_public-comment.html

私からは、以下の8点について意見を提出しました。

ぜひご参考にしていただき、それぞれ意見を出していただければと思います。

*****************

P15 「2 東京都における取組状況」に関して

東京都は2014年12月に発表した「東京都長期ビジョン~『世界一の都市・東京の実現を目指して』」において、「全てのホームレスが地域生活へ移行」を2024年度までの政策目標として掲げていました(「政策指針17」)
「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第4次)」でも、「平成 36 年度末(2024 年度末)までに自立の意思を持つ全てのホームレスが地域生活へ移行するという目標」への言及がありました。
しかし、今回の第5次計画(素案)では、この政策目標への言及が一切ありません。

この政策目標は当初から実現可能性が低いこと、東京五輪の開催を名目に「ホームレス」当事者の自己決定権を尊重しない施策が強行される危険性があることが指摘されていましたが、東京都が「PDCAサイクル」(P46)を重視すると言うのであれば、一度掲げた政策目標について言及しないのは誠実な態度とは言えません。

政策目標を撤回あるいは目標年次を延期するのであれば、その旨を明記してください。また、当初の目標設定に実現可能性がなかったこと、目標設定のプロセスにおいて当事者や支援団体との対話を経なかったことへの反省も明記してください。

目標を目指したのにもかかわらず、達成しなかったと評価するのであれば、従来の支援策の何が不充分であったのか、検証してください。

P20~21 「利用者層の変化に対応した支援」について

「女性のホームレス」、「性的マイノリティのホームレス」、「路上生活者の家族」に対しての配慮が盛り込まれたことは評価します。
その一方で、多様化する相談者に対して、都区行政が施設入所を前提とした支援を続ける限り、当事者のニーズから遠ざかる一方です。
東京都として、従来のパターナリズム的な支援のあり方を転換し、「住まいは基本的人権である」という理念のもと、利用者の自己決定権を尊重する「ハウジングファースト」型の支援へと舵を切ると明言すべきだと考えます。
また、「支援付地域生活移行事業」については、路上生活の当事者から利用方法や入居後の流れがわからないという声が寄せられています。どのような事業規模、受付方法、支援プログラムで実施するのか、明記してください。

P25 「身元保証の確保」について

「身元信用保証事業」が効果的に実施されるための具体策を明記してください。

また近年、就職活動のために携帯電話の確保が必須になっています。通信手段を確保するための支援策についても盛り込んでください。

P29 「無料低額診療事業」について

無料低額診療事業を実施する医療機関は少なく、その要因として医療機関の財政負担が大きいことが指摘されています。東京都として無料低額診療事業施設の「効果的な活用を図る」だけでなく、同事業を実施する医療機関への支援策を実施してください。

P32 「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者への対応」について

第4次計画では、この項目において、東京都が平成30年 1月に発表した「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果が記載されていましたが、都はその後、同様の調査を実施せず、今回の計画(素案)では調査への言及が一切なされていません。

繰り返しになりますが、東京都が「PDCAサイクル」(P46)を重視すると言うのであれば、定期的に「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」を実施することを計画に明記し、その結果をもとに施策の効果検証をおこなってください。

P34 「緊急に行うべき援助の実施」について

2021年以降、ホームレス支援に取り組む各民間支援団体に、仮放免状態の外国人の相談が増えています。つくろい東京ファンド、北関東医療相談会、ビッグイシュー基金の3団体が実施した「仮放免者住居調査報告」では、仮放免者の22%が「路上生活の経験あり」と回答しました。

また、2022年以降は新規に入国をしたばかりの難民認定申請者がホームレス化する事例も増えており、新聞等でも大きく報道されています。中には、子ども連れや妊婦で路上生活になってしまっている人もいます。
現状では、在留資格がない外国人や短期の在留資格しか持たない外国人は、自立支援センター等のホームレス支援施策を利用することができません。
外国人のホームレス化という問題を人道問題として捉え、緊急的な援助(特に宿泊・医療)を早急に検討・実施してください。

P34~35 「生活保護法による保護の実施」について

路上生活者の高齢化が進んでいますが、その中には生活保護制度にまつわる誤解やスティグマにより申請をためらっている人が少なくありません。東京都がウェブサイト、ポスター、ラジオCM等、様々な手段を用いて、「生活保護は権利」との広報を積極的におこない、誤解やスティグマ、偏見の解消に努めるべきです。

また、生活保護法では施設入所の強制は禁止されていますが、実際には都内の多くの福祉事務所で施設入所前提の対応が行われています。都として違法対応がないか調査をおこない、各区市に対応の改善を求めるべきです。

P36~37 「ホームレスの状態に即した生活保護の適用」について

コロナ禍の初期では、住まいのない状態からの生活保護申請者が東京都の「協議ホテル」を一時的な宿泊場所として利用することができましたが、「協議ホテル」が実質的に終了した2022年10月以降、都内の各自治体で生活保護を申請しようとした人が千葉または埼玉の「山奥にある無料低額宿泊所に入るしかない」と言われ、申請を断念させられるという事例が続出しています。背景には、東京都内に安心して暮らせる個室の宿泊施設が圧倒的に不足しているという問題があります。

「協議ホテル」事業を再開する等、東京都が率先して生活保護申請者が安心して滞在できる宿泊場所の確保に努めてください。

 

以上

 

[`evernote` not found]

>

«