大阪市・生活保護費プリペイドカード導入は「ケースワーカーにもメリットなし」 現場からも異論の声

提言・オピニオン

大阪市は今年4月から生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業を実施する予定です。

このモデル事業に関して、2月12日、大阪弁護士会は、生活扶助費の金銭給付の原則を定めた生活保護法第31条第1項に違反すると同時に、生活保護利用者のプライバシー権・自己決定権(憲法第13条)を著しく侵害するものであり、撤回を求めるとする会長声明を発表しました。

大阪弁護士会:生活保護費をプリペイドカード支給する大阪市モデル事業の撤回を求める会長声明

大阪弁護士会館

大阪弁護士会館

このモデル事業は福祉事務所の現場ではどのように受け止められているのでしょうか。

大阪市内の福祉事務所でケースワーカーをされている、ペンネーム「ぴょん吉」さんから「ケースワーカーの立場から見た問題点」についてご意見をいただきましたので、転載をさせていただきます。

******************

(以下、転載)

今月、2回にわたって、プリペイドカードに関する説明会が開かれました。
これはVISAのスタッフが現場のケースワーカーに、今回のモデル事業への協力を求めるものでした。

まず利用対象者ですが、パソコンかスマートフォンを持っていてメール受信が可能な方に限られます。
これはカードの残額確認や紛失した場合のロックを会員サイトにログインして行わなければならないからです。加盟店舗では残額確認はできずサイトでのみの確認となります。
またサービスセンターのようなものは設けられず、紛失などの場合のロックも利用者が自分で行うのです。

毎月3万円がカードに振り分けられますが、これは生活扶助に限られており、収入が一定あり生活扶助が3万円に満たない人は対象になりません。また居宅の生活扶助に限定されており入院、入所中の人も対象外です。

【問題点】

その1 いい加減なチラシで勧誘

業者が作成した募集チラシが事務所に大量に届いています。
このチラシでは「先着2000名様に3千円の商品券をプレゼント」と記載されていますが、商品券がもらえるのは今年の5月から来年の3月まで毎月カードを継続利用し、アンケートに回答した人のみです。
途中で収入が増えたり、入院したりして一回でも利用しない月があれば商品券はもらえません。
チラシにはこの説明が記載されておらず、不自由なカード生活を我慢したのに商品券がもらえないという苦情が予想されます。

その2 さまざまな不便を強いられる

すでに指摘されているように使える店舗が限定され、近くの商店や安売りスーパーなどでは利用できません。
大阪には「スーパー玉出」など1円で食材を買えるようなスーパーがあり、よく利用されていますが、こういう所も利用できません。
説明会では業者のスタッフが「コンビニでも使えるから便利です」「ガソリンスタンドでも使えます」と説明していましたが参加したケースワーカーたちは「馬鹿じゃないの?」という反応でした。

また、残額が少なくなった場合は、カードと現金を併用して支払をすることも考えられますが、併用ができる店舗は限られているようです。併用できる店舗一覧は示されておらず、業者の方でも把握していないようです。
残額を現金化するのには、担当ケースワーカーに依頼し、残金分を業者から払い戻しさせ、その後に一時扶助をするという手続きが必要で日数を要します。
月末に手持ちの現金とカードの残金をあわせて何とか食材を買おうとしても買える店がないということになりかねません。

その3 ケースワーカーにもメリットなし

このような方法で依存症対策ができるとはまったく思えませんし、説明会でもそのメカニズムは何一つ説明されていません。
一方で、上記のような利用上の不便や紛失などのトラブルについて苦情がケースワーカーに持ち込まれることが予想されます。
業者はサービスセンターなどもつくらず負担はケースワーカーが負わされることになります。

その4 現場への強制は本当にないのか

大阪市は説明会では、現場のケースワーカーに対して「もちろん強制ではなくお願いです」としていますが、商品券がもらえない場合もあることや様々な不便があることをていねいに説明すればするほど協力者は少なくなるでしょう。
目標としている2000人にはなかなか届かないのではないでしょうか。
その時に本当に協力者を出すようにという圧力がケースワーカーにかからないのか心配です。

生活保護利用者にもケースワーカーにも何のメリットもない制度です。
業者が業者のために行政を利用するものではないでしょうか。

大阪市ケースワーカー ぴょん吉

(転載終わり)
******************

生活保護利用者、ケースワーカー、地元商店に多大な悪影響を及ぼし、「百害あって一利なし」のモデル事業。撤回を求めていきたいと思います。

※関連記事:【2015年1月25日】 東京新聞:差別助長、効果に疑問 大阪市の生活保護支給プリペイド化


>

« »