世代を越えて広がる「住まいの貧困」。国会での真摯な議論を求めます。

提言・オピニオン

今年に入り、「住まいの貧困」に関連するニュースが相次いでいます。

 

「ネットカフェ難民」、都内だけで4000人

1月26日、東京都は「住居喪失不安定就労者」、いわゆる「ネットカフェ難民」の実態調査の結果を発表しました。

「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果|東京都

それによると、都内のネットカフェ、漫画喫茶、サウナ、カプセルホテルなどをオールナイト利用している人のうち、住居を喪失しているか、喪失するおそれがあると見られる人は約4000人いると推計されています。

年齢別には30代が38.6%と最も多く、次いで50代(28.9%)が多くなっています。20代も12.3%いて、20~30代の若年層が全体の半分を占めていることになります。

住居喪失者の平均月収は、11万4千円。お金のない時は路上生活をしている人は全体の43.8%もいて、かなり厳しい生活を強いられていることがわかります。

この問題については、新聞やラジオから取材を受けたほか、「若年者をめぐる格差への取り組み」をテーマに開催された2月14日の参議院国民生活・経済調査会に参考人として招致された際にも、都の調査結果を紹介しました。

私は調査会において、「ネットカフェ難民」が増えている背景に、都市部で住宅を確保する際の初期費用が高いという問題があることを指摘した上で、従来の住宅政策を転換して、若者への住宅支援を強化する必要があることを国会議員に訴えました。

私の問題提起に対する各会派の議員の反応はさまざまでした。私の提言に賛意を示してくれる議員も少なくありませんでしたが、中には「ネットカフェに暮らす若者たちは甘えているのではないか」、「きつい仕事を避けているのではないか」と、自己責任論を振りかざしてくる議員もいました。

調査会の議事録も公開されているので、ご参考にしてください。

第196回国会:国民生活・経済に関する調査会第3号(2018年2月14日)議事録

 

また低所得者が犠牲となった札幌・共同住宅火災

1月31日には、生活困窮者の自立支援を掲げる札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で火災が発生。入居者16名のうち11名が死亡する惨事となりました。
「そしあるハイム」を運営する合同会社「なんもさサポート」は、札幌市内において同様の共同住宅を約20ヶ所、運営しており、路上生活者など行き場のない生活困窮者の受け入れを行なってきたことで知られていました。

この火災については、新聞やラジオから取材を受け、火災の背景にある構造的な問題について解説をしました。

【2018年2月9日】毎日新聞などに札幌・自立支援住宅火災の背景を論じた記事が掲載

【音声配信】「低所得者・高齢者住宅の課題とは」稲葉剛×高橋紘士×荻上チキ▼2018年2月5日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

昨年の5月と8月には、北九州市と秋田県横手市で、それぞれ生活困窮者を受け入れていたアパートで相次いで火災が発生しました。

その際、私は2件の火災に共通する背景に、民間団体が独自の住宅事業を行なう際の資金不足など「民間の善意の限界」があるという点を指摘しましたが、今回の札幌の火災でも同じ構図があったと私は考えています。

まったくの偶然ですが、札幌での火災が発生した翌日の2月1日、NHKの『クローズアップ現代+』で「思いがけない退去通知 あなたも住宅を追われる!?」という番組が放映されました。

この番組は、老朽化したアパートの取り壊しなどで賃貸住宅に暮らす高齢者が立ち退きに遭うケースが増えており、高齢者が次の住宅を探そうとしても、孤独死を恐れる大家さんがなかなか部屋を貸してくれないという実態を紹介していました。

この番組にスタジオゲストとして生出演をした私は、前日に起こった札幌の共同住宅火災に関連して、「こうした住宅や宿泊施設は、ホームレスの人たちを受け入れ、アパートに移ってもらうまでの間の一時的な居所として民間団体によって整備されてきたが、近年、そうした場所に、もともとアパートで暮らしていた高齢者が立ち退きに遭って入所してくる、という『逆流現象』が起きている」と指摘しました。これも「住まいの貧困」の広がりを示す現象だと思います。

番組内容の文字起こしはこちらのサイトでご覧になれます。

思いがけない退去通知 あなたも住宅を追われる!? | NHK クローズアップ現代+

 

屋内での凍死増加の背後にも「住まいの貧困」がある。

高齢者の住宅に関連するニュースとしては、今年2月3日に共同通信が配信し、各紙に掲載された「凍死、熱中症死の1・5倍/冬の寒さ 屋内でも要注意」という記事もショッキングでした。記事の内容は、2000年から2016年にかけて低体温症で死亡した人の数は累計で1万6千人にのぼり、熱中症による死者の1・5倍に上る、凍死の大半が屋内で起こっており、背景には高齢化や貧困、孤立の問題がある、というものでした。

東京新聞:凍死、熱中症死の1.5倍 冬の寒さ 屋内でも要注意:社会(TOKYO Web)

私はこの問題でもラジオ番組でコメントを求められ、低所得者の住環境の問題が影響している可能性が高い、と指摘しました。

【音声配信】「熱中症よりも多い凍死!その実態と背景とは?」横田裕行×藤部文昭×稲葉剛×荻上チキ▼2018年2月13日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

2015年の厚生労働省の調査では、生活保護世帯の暮らす住宅の13.8%が「腐朽・破損あり」と判定されており、老朽化した木造住宅で隙間風に耐えながら生活をしている人が多いことがわかっています。

今年の冬は東京でも複数回、雪が降るなど、特に寒さが厳しかったのですが、私がふだん接している生活保護利用者の中には、築40年を越す木造アパートのエアコンのない部屋に暮らしているため、室内の気温が4度以下になったこともあったと話している人がいました。

この人は、毎晩、パーカーとジャンパーを重ね着して、その上から布団をかけることで、寒さをしのいだと言っていましたが、同様の住環境で暮らしている低所得者の中には、寒さにより健康を害している人も少なくないと思われます。

 

遅々として進まない「住宅セーフティネット」の整備

このように、国内における「住まいの貧困」は世代を越えて広がっています。
国の対策の「切り札」として、昨年4月に住宅セーフティネット法が改正され、10月に空き家を活用したセーフティネット住宅事業が始まりました。しかし、事業開始から5ヶ月近く経っても、空き家の登録数は全国で500戸程度と伸び悩んでおり、半年で2万5千戸という目標にほぼ遠い状況です。

【国土交通省】セーフティネット住宅情報提供システム

私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、改正住宅セーフティネット法の制定から間もなく1年になるのを踏まえ、4月18日(水)12時半から参議院議員会館で院内集会を開催する予定です(詳細は後日お知らせします)。ぜひご注目ください。

世代を越えて広がる「住まいの貧困」にどう向き合うのか。国会の場で正面からの議論が行われることを求めていきます。

 

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