厚労省の審議会で扶養照会の段階的廃止を直言しました。

提言・オピニオン

厚生労働省は、2018年度に生活保護制度と生活困窮者自立支援制度の一体的見直しを行うため、今年5月、社会保障審議会に「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」を設置しました。

部会は4ヶ月に6回というハイペースで議論を進めており、8月30日に開催された第6回部会では「有識者・利用者等からのヒアリング」が行われました。

私も、若年女性の支援をしているBONDプロジェクトの橘ジュンさんらと共に、ヒヤリングに参考人として呼ばれ、15分間の意見陳述を行いました。

私の提出資料を含め、当日の資料はこちらのページでご覧になれます。

第6回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」資料

私は、ホームレスの人たちに対する「ハウジングファースト」(安定した住まいの確保を最優先とする支援手法)の取り組みを紹介した上で、貧困ビジネス施設への規制を強化し、生活保護において「居宅保護の原則」を徹底すること、生活困窮者自立支援制度においても居住支援の対象者を広げることなどを主張しました。

そして最後に、扶養照会の問題について取り上げました。

部会に提出した資料より

この問題について取り上げたのは、厚生労働省が生活保護の扶養照会(福祉事務所が申請者の親族に扶養の意思を問い合わせること)の実態調査に乗り出しているからです。

2013年には、私たちの反対にもかかわらず、福祉事務所がこれまで以上に親族にプレッシャーをかけることを可能にする法改悪がなされてしまいました。今回の実態調査はさらなる改悪につながる危険性があります。

生活困窮者の相談支援の活動をしていると、この「親族に問い合わせる」という仕組みが生活保護申請への心理的なハードルになり、制度につながる人を減らしているという点を実感します。

そもそも、社会保障制度の利用において、親族の扶養を問題にすること自体が前近代的だと言えます。特に「成人した子どもの親に対する扶養義務」を問う仕組みは日本、韓国、台湾など、ごく一部の地域にしかありません。

その韓国では、日本以上に厳しい扶養義務の制度がありましたが、近年、親族の扶養義務を問うことが「福祉の死角地帯」に取り残される人を生んでいるという批判が高まり、今年に入り、扶養義務者の基準を段階的に廃止していく、という方針が示されています。これは制度につながる人を増やしていくための政策です。

扶養義務者の基準を段階的に廃止するという韓国の福祉改革については、こちらの記事もご参照ください。

日本の貧困対策はガラパゴス化へ進むのか? – 稲葉剛|WEBRONZA – 朝日新聞社の言論サイト

こうした韓国の動きを紹介した上で、目の前にいる厚労省の社会・援護局の官僚に対して、私は「国が本気で貧困対策をしたいのであれば、制度につながる人を増やす政策を取るべきです。これまでの動きを見ると、厚労省が制度につながる人を増やしたいのか、減らしたいのか、私にはさっぱりわかりません。」と述べました。

その上で、今の動きとは逆に、前近代的な扶養照会を段階的に廃止していく、という議論を日本も始めるべきだと問題提起しました。

現場の実態を伝えるのが、私たちの役割

「そんなことを言っても、どうせ動かないのだから、意味がない」という人もいるでしょう。

私はこれまで何度か、厚生労働省の審議会や国会の委員会で呼ばれたことがありますが、そのたびに「二度と呼ばれなくなっても、言うべきことを言おう」と心に決めています。

貧困の現場で起こっていることを政策を動かしている人たちにストレートに伝えるのが、私たち現場で活動をしている人間の役割であり、実現可能性を考えて、一部の主張を引っ込めたり、薄めたりすることはすべきではないと考えるからです。

部会では、委員の一部からも「扶養を強調することは貧困の世代間連鎖につながる」という懸念の声が出ているようです。

来年度の制度見直しの骨格はまだ明らかになっていませんが、「扶養義務の強調は、制度につながる人を減らし、貧困を悪化させる」、「貧困を社会的に解決するためには、前近代的な家族主義から抜け出す必要がある」という点をこれからも訴えていきたいと思います。

 

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