衆議院国土交通委員会で参考人招致。住宅セーフティネットの強化を提言しました。

提言・オピニオン

空き家活用型住宅セーフティネット事業の新設を盛り込んだ住宅セーフティネット法改正案の国会審議が始まりました。

この改正法案について、私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」は、「法案の趣旨には賛同するが、不充分な点が多く、一部修正が必要」という意見を表明し、この間、各党の担当者への働きかけを行なってきました。

【関連記事】住宅セーフティネット法改正案は「住まいの貧困」解決の切り札となるのか?

【住まいの貧困に取り組むネットワークブログ】住宅セーフティネット法改正案について各党に要請書を提出しました!

このたび、法案が衆議院国土交通委員会で審議されるのにあたり、参考人として招致されることになりました。

本日4月7日(金)午前9時から、坂庭国晴さん(国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事)、浅見泰司さん(東京大学大学院工学系研究科教授)とともに、参考人として10分間の意見陳述を行ない、その後、各議員からの質疑を受けました。

坂庭さんは、「住まいの貧困」の解消に向けた社会運動を一緒に進めている仲間でもあるので、二人で役割分担を行ない、私は若年の低所得者層の「住まいの貧困」の実情と住宅支援の必要性を中心に発言しました。

委員会の場で配布したパワーポイント資料をもとに、発言の要旨をお知らせします。

 

・1990年代半ばから路上生活者など住まいを失った生活困窮者の相談支援を行なってきたが、活動の中で日本の福祉政策・住宅政策の縦割りの弊害を常に感じてきた。

・ヨーロッパでは「福祉は住宅に始まり、住宅に終わる」と言われてきた。日本でも「居住福祉」の理念に基づく政策が必要とされている。

・2007年に住宅セーフティネット法が施行されたが、生活困窮者支援の現場で、この法律に基づく仕組みはほとんど機能していない。


・2009年に『ハウジングプア』という書籍を出し、世代を越えて「住まいの貧困」が広がっていることを問題提起した。

・「ハウジングプア」とは、「貧困ゆえに居住権が侵害されやすい場所で起居せざるをえない状態」を指し、狭い意味での「ホームレス」だけでなく、ネットカフェや脱法ハウス、派遣会社の寮などにいる人たちも含んでいる。

・「住まいの貧困」の全体像を明らかにする調査を行ない、その上で対策を行なうべきだと提言してきた。

・だが、こうした「住まいの貧困」の全体像に迫る調査は未だ行われていない。

・2007年の厚生労働省による「ネットカフェ難民」調査も一度だけで、しかも対象は「ネットカフェに週3、4日以上寝泊まりしている不安定就労者」に限定されている。

・新たな住宅セーフティネット事業を実施する前提として、「住まいの貧困」の全体像に迫る実態調査は不可欠。国土交通省だけでなく、生活困窮者支援を管轄する厚生労働省と合同で調査を実施するべき。

・定期的に調査を実施することで、住宅セーフティネット事業の効果測定も可能になる。


・行政が調査をしないので、民間で実施した調査として「若者の住宅問題」調査がある。

・首都圏・関西圏の低所得の若者を対象に住宅状況を聞いたところ、全体の6.6%がネットカフェ生活や友人宅での居候など「広い意味でのホームレス」を経験していることが判明。親と別居して、自分でアパートやマンションなどを確保している層では、13.5%が「ホームレス経験あり」と回答した。


・同じ調査では、結婚に関する意向も質問したが、約7割が結婚に消極的・悲観的な回答。住まいの確保もままならない中、将来の見通しが立たない若者が多いと見られる。これは日本社会の持続可能性が危機にさらされていると言っていい状況。

・先日発表された国立社会保障・人口問題研究所の調査でも「生涯未婚率」が過去最高(男性約23%、女性約14%)になっていたが、その背景には住宅問題もある。

・欧米では家族政策、少子化対策として、若年層への住宅支援が行なわれており、日本でも若年単身者に対して低家賃の住宅を供給する政策が必要。


・厚生労働省は2015年度より生活困窮者自立支援制度を新設し、その中には住宅支援のメニューもあるが、実績は右肩下がり。その背景には、事業の使い勝手が悪く、住宅政策を管轄する国土交通省との連携が進んでいないという問題がある。


・世代を越えて広がる「住まいの貧困」を解消するためには、貧困対策としての住宅政策が必要である。


・その観点から住宅セーフティネット法改正案を見ると、不充分な点がいくつかある。

・特に家賃低廉化措置が法の条文に盛り込まれず、予算措置にとどまっているという問題は大きい。2017年度に家賃低廉化にあてられる予算は約3億円と聞いているが、これだと家賃が下がるのは2500戸程度(登録住宅全体の約1割)にとどまり、「住宅セーフティネット」と呼べる規模にならないのではないかと懸念している。

・若年層への住宅支援がどこまで進むのかも疑問であり、家賃保証会社が「追い出し屋」化しているという問題もある。

・また支援対象となる「被災者」の定義が災害発生3年以内に限定されているのも問題である。

・改正法の趣旨には賛成だが、これらの点の修正を求めていきたい。

 

参考人による意見陳述と質疑が終了した後、委員による質疑が行われ、住宅セーフティネット法改正案は全会一致で可決されました。
法案が修正されなかったのは残念ですが、私たちの懸念している点を踏まえた附帯決議も全会一致で採決されました。

************

衆議院国土交通委員会:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

一 本法による住宅セーフティネット機能の強化とあわせ、公営住宅をはじめとする公的賃貸住宅政策についても、引き続き着実な推進に努めること。

二 低額所得者の入居負担軽減を図るため、政府は必要な支援措置を講ずること。

三 高齢者、低額所得者、ホームレス、子育て世帯等の住宅確保要配慮者について、入居が拒まれている理由など各々の特性に十分配慮した対策を講ずること。

四 住宅確保要配慮者が違法な取立て行為や追い出し行為等にあわないよう、政府は適正な家賃債務保証業者の利用に向けた措置を速やかに講ずること。

五 住宅セーフティネット機能の強化のためには、地方公共団体の住宅部局及び福祉部局の取組と連携の強化が不可欠であることから、政府はそのために必要な支援措置を講ずること。

六 災害が発生した日から起算して三年を経過した被災者についても、必要が認められるときには、住宅確保要配慮者として支援措置を講ずること。

************

今後、議論は参議院に移っていきますが、住宅セーフティネット機能の強化に向けて、さらに議論が深まることを願っています。

※附帯決議の文面を追加しました(4月7日14:37)

[`evernote` not found]

>

« »