立教カジノイベントの何が問題なのか?

提言・オピニオン

私は2015年度より立教大学の社会人向け大学院(21世紀社会デザイン研究科)で特任准教授を務めています。

立教大学には大変お世話になっているのですが、今年6月16日、やむにやまれぬ思いで「#立教はカジノに魂を売るな」というSNSでのキャンペーンを一人で始めました。

私はこれまで25年間、ホームレスの人たちを支援する中で、ギャンブル依存症に苦しむ多くの人たちに関わってきました。

そのため、カジノ法案に反対の立場から声をあげてきました。

関連記事:ギャンブル依存症問題を悪化させるカジノ法案は通してはならない。

カジノ法案は残念ながら成立してしまいましたが、カジノに対する世論の反対は強く、開設の準備は足踏みしていると言われています。

そんな中、カジノ業界が世論工作の突破口として注目したのが大学だったのでしょう。立教大学というキリスト教系の大学の協力を得て、カジノ推進イベントを開催することで、カジノのイメージアップにつなげたいという戦略があったのだと思われます。

「#立教はカジノに魂を売るな」のキャンペーンは大きな反響を呼び、今日(6月25日)の段階で、最初のツイートは1290回以上、リツイートされました。

この問題の概要と経緯については、BuzzFeed Newsの記事によくまとまっているので、そちらをご一読ください。

大学がカジノ推進のシンポジウム? 「#立教はカジノに魂を売るな」と学内外から批判の声

ここではSNSでの反応も踏まえて、改めて問題点を整理したいと思います。

私の主張のポイントは、以下の3点です。

1.7月6日(土)に予定されている公開シンポジウムは、カジノ業界のPRイベントでしかなく、学術研究の要素はない。そもそも立教に限らず、教育機関で開催するのは不適切である。

2.公開シンポジウムの登壇者が大学の部長会で承認された内容から変更になっているという指摘があり、立教大学当局は説明をする責任がある。

3.公開シンポジウムは、3日間のプログラムの一部だが、カジノ業界の人材育成を目的とするプログラムに協力をすることが立教大学の教育理念とどう合致するのか、大学当局は説明をする責任がある。

では、順番に見ていきましょう。

 

カジノ経営者ばかりが登壇するシンポジウム

問題のイベントは、マカオ大学主催、立教大学共催で開催される「グローバルリーダーシップ育成プログラム 国際統合型リゾート経営管理学 第7回:『日本統合型リゾート~健全社会のIRを目指して』」(7月5日~7日)の一環として開催されるものです。

このプログラムには豊島区が後援しており、豊島区長の高野之夫氏による挨拶も予定されています。ちなみに、高野区長は立教大学の出身です。

プログラムの全体(3日間)の受講料は15万円という高額になっており、対象者は、「管理職またはホスピタリティ&ゲイミング産業での企業経験を有する者が望ましい。」とされています。事前申し込み制で定員は40名となっていましたが、当初の締め切り日までに定員まで達しなかったようで、募集期間が6月25日まで延長になっています。

3日間のプログラムを見ると、4人のマカオ大学の教員が講義をおこない、グループ討議も行なうという内容になっています。いちおう全体では、学術的な体裁を整えているようです。

マカオ側参加者は東京ディズニーリゾートでの「実地研修」も予定されています。

マカオ大学が立教大学と連携する理由は以下のように書かれています。

さてGLDP第 7 回は 2019 年 7 月 5 日~7 日に東京で開催します。今回は、日本で始めて観光学部を導入し、日本のホスピタリティ産業発展において、長年先駆的役割を果たしてきた立教大学と共催することに相成りました。立教大学は観光学士課程を有する他、大學院ビジネス研究科において観光学、ホスピタリティ学、観光施設開発学など多岐に亘り観光学の研究・教育に優れており、IR教育に特化するマカオ大学と観光学に力発揮する立教大学が協力することにより、日本IR産業発展へ高度人材育成を実現していけると確信しております。

 

プログラムでは、2日目の午後のシンポジウムのみ一般を対象としており、こちらのみの参加は「2,000円(ただし学生は学生証提示で無料。本学以外の学生も可)」となっています。

このシンポジウムには、講演者4人、討論会のパネラー3人の計7人がメインのスピーカーになっていますが、この中には研究者が一人もいません。

講演をする4人のうち、観光庁審議官の秡川直也氏以外の3人は、マカオやラスベガスのカジノ経営者で、ポスターで最も写真が大きいローレンス・ホー氏は「マカオのカジノ王」と呼ばれる人物です。

登壇者から判断しても、このシンポジウムは、あからさまな業界PRイベントであり、学術研究の名に値するとは思えません。

このシンポジウムのみ、学生無料としているのは、特にカジノ経営者の講演を学生に聞いてもらいたいという意図があるのだと思われます。

私がこれまで相談にのった生活困窮者の中にも、学生時代にパチンコ等のギャンブルにはまった結果、依存症になって生活が破綻したという方が何人もいました。若者にカジノの魅力を伝えようというイベントは、若者たちをギャンブル依存症へと誘導しかねないものだと言えます。

 

登壇者がいつの間にか変更に

BuzzFeedの記事では、私以外の別の教員の証言として、シンポジウムの登壇者が大学の部長会で承認された内容から変更になっているという指摘がありました。

別の同大学教授によると、このシンポジウムは4月25日に開かれた大学の意思決定組織である学部長会で承認されたが、その学部長会ではかられた提案書に書かれた人とは別の登壇者になっているというのだ。

「部長会にかけられた提案書では、登壇者はマカオ大学の教授3人とカジノコンサルタントとなっていたのです。大学が学内で行う学術シンポジウムは、多様な論点に目を配る学問のルールに則って行わなければならないはずです」

「研究者が登壇するのであれば、『学術的な側面を中心に議論する』という趣旨にも合っていたでしょう。けれども、承認されそうな研究者の名前を並べておいて、承認後に、カジノ運営者ばかりという偏った登壇者に変えたなら問題です。カジノ推進のプロパガンダと批判されても仕方ない内容です。大学は然るべき手続きを踏んで、この差し替えを承認したのでしょうか?」

学部長会では一部の学部長から、ギャンブル依存症問題などの指摘があり、デメリットも慎重に精査するよう求める発言もあったという。

 

私自身は特任教員という立場であり、学内の会議体に参加したり、議事録を読む資格がありません。

この教員の方が勇気を出して証言をされたことに感謝したいと思います。

なぜPR色を強める登壇者変更になったのか、立教大学当局は説明をする責任があります。

 

立教大学の建学の精神に反する

仮に大学で開催しても問題のない学術研究イベントだとしても、立教大学が共催するからには、立教の教育理念との整合性は問われるべきです。

立教大学の建学の精神や教育理念について、現総長の郭洋春教授は大学のホームページで以下のように語っています。

立教大学の物語は、1874年 聖書と英学を教える私塾「立教学校」から始まります。当時の日本は実利主義の傾向が強く、物質的な繁栄を目指す風潮にありました。このような時代の流れに危機意識を抱き、西洋の伝統的なリベラルアーツカレッジをモデルとして、心の豊かさとリーダーシップをあわせもち、世の中に自ら貢献できる人間を育むべく、立教は今日まで歩んできました。

現代のグローバリズムは、より便利に、ライフスタイルの多様化を促す一方、過剰な競争にさらされる面もあります。立教で学ぶ人は、そこでためらうことなく、他者に手を差し伸べられる人に育ってほしい。

 

私塾「立教学校」は、アメリカ聖公会の宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズ主教が設立しました。

「実利主義」や「物質的な繁栄を目指す風潮」に「危機意識」を抱いて学校を開いた創設者が、145年後、その学校がカジノ人材の育成に力を入れていると知ったら、何と言うでしょうか。

また、郭洋春教授自身も昨年、読売新聞への寄稿の中で、大阪のIR構想について「カジノはマカオなど各地にある。カジノは果たして、日本でしかできない体験だろうか。周辺の飲食店などの需要を奪うマイナス面も出てくるだろう。」と懸念を表明しています。

独自の観光資源 発掘を(郭洋春 立教大総長)

郭教授には、経済学者としての見解との整合性についても語っていただきたいと思います。

問題のシンポジウムの開催まで、あと2週間を切りました。

ぜひ学内外から立教大学当局に対して、声をあげていただけるとありがたいです。


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