家賃が払えない!生活費が尽きた!そんなあなたにできることは?(1)住宅維持編

提言・オピニオン

コロナ危機の影響で、収入が減少し、アパートやマンションの家賃を払うのが難しくなっている人が増えつつあります。

家賃が払えなくなったら、誰でも慌てると思います。でも、「もうダメだ」と思い、荷物をまとめて夜逃げをするのは、最悪の手段です。

一度、住まいを失ってしまうと、仕事を探す上でも不利になり、「住まいがないから仕事が見つからない」→「仕事がないから住まいを確保できない」という貧困のスパイラルにおちいってしまうことがあるからです。

もちろん、ホームレス状態になってからもそこから抜け出す手段はありますが、せっかく今ある部屋や家電製品などをみすみす失う必要はありません。

家賃を払えなくなった時にすべきことは2つあります。それは「部屋から追い出されないようにすること」と「生活を建て直していくこと」です。

以下にそれぞれ、どんな方法があるか、見ていきましょう。

あなたには「居住権」がある!

家賃を払えなくなったら、すぐに部屋を出ないといけないと思い込んでいる人は多いのですが、借家人には借地借家法に基づく「居住権」があります。

私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、コロナ危機を踏まえて、「すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール」を発表しました。

すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール ~家賃滞納者への立ち退き要求を止め、共に公的支援を求めましょう~
http://housingpoor.blog53.fc2.com/blog-entry-328.html

その中にも書きましたが、家賃を滞納した借家人(借主)に対して、家主や不動産業者、家賃保証会社などが裁判を経ずに、強制的に立ち退かせるのは違法行為です。こうした行為をした家主や業者は、民事上の責任だけでなく刑事上の責任も問われることがあります。

また、「緊急アピール」では、政府が充分な支援策を行なっていないから家賃を滞納せざるをえない人が増えているので、家賃滞納問題を解決するためにも、「大家さんも一緒に政府に公的支援の拡充を要求しましょう」と呼びかけています。

もし家主や不動産業者が家賃の滞納について問い合わせてきたら、この「緊急アピール」をプリントアウトして、渡してみてください。

もし「出ていけ」と言われたら

そうは言っても、強硬な手段に出てくる家主や業者もいることでしょう。

過去には2007年頃から数年間、賃貸住宅からの「追い出し屋」被害が社会問題になった時期がありました。
一部の家主や不動産屋、家賃保証会社が、家賃を滞納した人に対して、執拗に電話で督促する、訪問してきて玄関先で大声で取り立てる、ドアに貼り紙を貼る、強制的に鍵を交換する、荷物を撤去したりするなどの行為を行ない、「追い出し屋」として恐れられました。

「追い出し屋」への社会的批判が広がり、被害者への損害賠償を認める判決が相次いだため、近年は露骨な追い出し行為は少なくなってきていますが、今でも被害が根絶されたわけではありません。

これらの行為は違法行為ですので、もし被害を受けたら、まずは冷静になって、記録に残しましょう。

・電話であれば、かかってきた回数や時間、相手の名前、なにを言っているか、といったことをメモに残しましょう。
・貼り紙を張られていたとしたら、写真撮影をして記録しましょう。
・書面が送られてきて、違約金を支払えと要求されたら、その書面を捨てずに記録として残しましょう。

きちんと記録を取っていれば、後日、被害を訴えたり、損害賠償を求めることができるからです。

また、家主や業者が家に来て、支払いを約束させた上で、「支払えなければ部屋を出て行きます」という旨の「合意書」や「念書」を書くように求めてくるかもしれません。

その場合は、すぐにその場でサインをせず、「専門家に相談します」と言って、その場はお引き取り願いましょう。

賃貸住宅からの追い出しに関する相談は、全国の消費生活センター、借地借家人組合、法律家などが行なっています。立ち退きを要求されたら、早めに相談をしてください。

*追い出し屋に関する相談窓口

消費者ホットライン(全国共通188)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/

全国借地借家人組合連合会
http://www.zensyakuren.jp/kakuchi/kakuchi.html

住まいの貧困に取り組むネットワーク 
メール:sumainohinkon@gmail.com

全国追い出し屋対策会議
http://sikikinmondai.life.coocan.jp/oidasiya/zenkokugaigi.htm

家賃保証会社への規制は強化されている

過去に悪質な追い出しを行なった業者の中には、多くの家賃保証会社が含まれていました。

家賃保証会社は保証人の代わりをしてくれる業者ですが、家賃滞納が発生すると、家主に家賃を立て替えなければならなくなるため、入居者を追い出そうとする傾向があります。

この問題に対して、国土交通省は2009年2月、日本賃貸住宅管理協会に対して、「家賃債務保証業務の適正な実施の確保について」という要請文を送付しています。

この中で、国交省は「物件への立入り」や「物件の使用の阻害」(ロックアウト)、「家賃債務保証会社による賃借契約の解除」、「物件内の動産の搬出、処分」等は不法行為に該当する可能性があるので、実施しないようにと諫めています。

「家賃債務保証業務の適正な実施の確保について」
https://www.mlit.go.jp/common/000033066.pdf

2017年には民間賃貸住宅の空き家を住宅に困っている人のために活用する「新たな住宅セーフティネット制度」が始まりました。

この制度の中には、登録されている住宅に入居する人に対して、行政が家賃保証会社の保証料を補助する仕組みも作られたのですが、違法行為をする家賃保証会社に補助金が流れるのはおかしいという批判を踏まえ、国交省はこの制度に登録をする家賃保証会社に対する規制を導入しました。

もし登録をしている家賃保証会社が「賃貸住宅の賃借人その他の者に著しい損害を与え、又は与えるおそれがあると認められる違反行為」をした場合、登録を取り消されることになります。

家賃債務保証業者に対する登録の取消し等の措置基準
https://www.mlit.go.jp/common/001283718.pdf

今年3月12日時点で、この制度に登録をしている家賃保証会社は71社です。もしこれらの会社が違法行為をした場合、国土交通省に通報をして、登録取り消しを求めることができます。

登録家賃債務保証業者一覧
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr7_000028.html

家賃保証会社が入っている賃貸借契約を結んでいる人は、その保証会社がこの登録リストに入っているかどうか、確認をしておきましょう。

リストに入っていれば、「下手なことをすると、国交省に通報しますよ」と言うことができます(リストに入っていない業者でも国交省への通報は有効です)。

万が一、部屋から追い出されたら

専門家に相談をして、部屋から出されないに越したことはありませんが、万が一、追い出されたとしても、被害の救済を求めることもできます。
これまで30件を越える民事訴訟が提訴され、そのほとんど全部で原告(被害者)側が勝訴(または勝訴的な和解)しています。

家賃を滞納したら勝手にカギを変えられた! 「追い出し屋」の手法は許されるのか?|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_1012/c_10/n_1445/

「母の形見も捨てられた」家賃滞納で「追い出し屋」が家財道具処分…被害実態を聞く|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_5/n_4621/

鍵穴ふさいで家賃滞納の住民「追い出し」、家財道具処分…大家に慰謝料支払い命令|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_1012/n_7609/

 

裁判所も、「追い出し屋」被害を深刻に受け止めており、2012年3月9日の東京地裁判決では、部屋をロックアウトし、荷物を無断で廃棄した管理業者と仲介業者に対して、計220万円(財産的損害100万円、慰謝料100万円、弁護士費用20万円)の損害賠償を求める判決が言い渡されています。

日本では、行政でも、司法でも「賃貸住宅からの追い出し行為は違法で、許されない」ということは争いようのないルールとなっています。

ぜひそのことを知っておいていただければと思います。(2「生活再建編」につづく)

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