【2020年7月14日】朝日新聞「私の視点」欄に「コロナ禍の困窮者対策/災害時と同様の住宅支援を」が掲載。

メディア掲載 提言・オピニオン

2020年7月14日付け朝日新聞朝刊「私の視点」欄に、「コロナ禍の困窮者対策 災害時と同様の住宅支援を」が掲載されました。

コロナ禍の困窮者対策/災害時と同様の住宅支援を

 

今年3月以降、不動産の賃貸契約を結ぶため、印鑑を押印するのが日課のようになっている。コロナ禍の影響で、仕事と住まいを失った人たちを受け入れる個室シェルターの増設を進めているからだ。

個人や企業からの寄付金をもとに、新たに借り上げた都内の民間アパートの部屋は、まもなく30室に達する。各部屋には、着の身着のままの状態の人がすぐに入居できるように、購入した家電製品と布団を搬入しているが、搬入の数時間後には入居者を迎え入れている部屋も少なくない。以前から借り上げている25室も活用しながら、連日、行き場を失った10代から70代の男女を受け入れているが、シェルターの整備は追いつかない状況だ。最近はペットの犬や猫と一緒に路頭に迷う人も出てきているので、ペットとともに暮らせるシェルターも整備する予定だ。

民間の私たちが個室シェルターの整備に奔走しなければならないのは、行政の支援からこぼれ落ちる人が続出しているからだ。東京都は今年4月、ネットカフェへの休業要請により寝泊まりをする場を失った生活困窮者に対してビジネスホテルの提供を開始したが、都内に約4000人いるネットカフェ生活者のうち、支援を受けられた人は約3割にとどまった。私たちのもとには、「都の窓口で相談したが、対象外と言われたので、野宿をせざるをえなくなった」「都と区の窓口をたらい回しにされた」「所持金がなくなり、生活保護を申請したら、ネットカフェより居住環境の悪い相部屋の民間施設に連れて行かれた」といった相談が相次いだ。また、ホテルの後に移れる一時的な住宅の提供も一部の人に限定されたため、6月以降、ネットカフェに戻らざるをえなくなった人も少なくない。

私たちは都に支援策の改善を求める一方、国に対しても災害時と同様の大規模な住宅支援の実施を求めてきた。近年、災害時には、行政が民間賃貸住宅の空き家を借り上げて、被災者に提供する「みなし仮設」方式の住宅支援が実施されているが、コロナ禍も「災害」と認定すれば、住まいを失った人に住宅を直接提供することは可能なはずだ。この提言は4月の国会審議で野党の提起で議論されたが、国の2次補正予算に盛り込まれることはなかった。

感染症の終息が見通せない中、経済危機は長期化の様相を呈している。今後、さらに住まいを喪失する生活困窮者が急増しかねない状況だ。私たち民間支援団体の努力も限界に達しつつある。「ステイホーム」をするべき「ホーム」を失った人をどう支えるのか。国の存在意義が問われている。

 

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事 稲葉剛

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