メディア掲載

【2016年5月23日】 毎日新聞特集ワイド「自民党『憲法改正草案Q&A』への疑問」にコメント掲載

メディア掲載

2016年5月23日付け毎日新聞夕刊の記事「自民党『憲法改正草案Q&A』への疑問」に、稲葉のコメントが掲載されました。

関連部分を以下に引用します。

http://mainichi.jp/articles/20160523/dde/012/010/006000c

特集ワイド
自民党「憲法改正草案Q&A」への疑問 「小さな人権」とは 緊急時なら制限されてもいい…?

 

思わず首をかしげてしまった。「大きな人権」と「小さな人権」が存在するというのである。この表現は、自民党が憲法改正草案を解説するために作成した冊子「改正草案Q&A」の中で見つけた。大災害などの緊急時には「生命、身体、財産という大きな人権を守るため、小さな人権がやむなく制限されることもあり得る」というのだ。そもそも人権は大小に分けることができるのだろうか。【江畑佳明】

(中略)

ここまで論じたように、万一、改憲草案が現実化したら、人権が制限される懸念は高まりそうだ。その一方で「改憲を先取りするかのように、人権の制限は既に進められている」との声も出ている。

貧困に苦しむ人たちを支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事の稲葉剛(つよし)さんは「安倍晋三政権は生活保護の支給額を段階的に引き下げています。さらに2013年の改正生活保護法で、親族の援助が受けられない時は、福祉事務所がその理由の報告を求めることができるようになりました。これでは生活保護の申請をためらう事態になりかねない。憲法25条の生存権、『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』が脅かされつつあるのです」と実情を訴える。

稲葉さんは改憲草案が「家族のあり方」に手をつけることにも危機感を抱く。改憲草案では24条で「家族は互いに助け合わねばならない」とする。この狙いを「貧困により家族の支えが限界に来ているという現実を直視せず、自らが理想とする家族像を押し付けようとしているのではないでしょうか。国には尊厳ある個人の生存権を保障するよう努める義務があるにもかかわらず、『家族なんだから助け合いなさい』とその責任を家族に転嫁したい意図を感じます」とみる。

「小さな人権」を認めれば、社会的に弱い立場の人たちの人権が「小さい」と判断されてしまうかもしれない。

人権は常に制約される可能性がある。改憲反対や脱原発をテーマにした市民集会を巡り、自治体が「政治的中立」などの理由で公的施設の利用に難色を示すケースが出ている。表現の自由や集会の自由が「小さな人権」と制約を受け続けたら……。

Q&Aでは「人権は、人間であることによって当然に有するもの」と基本的人権を尊重する姿勢は変わらないと記している。であれば、「人権の大小」という発想自体、生まれてこないのではないか。

 

関連記事:「生活保護利用者の人権は制限してもよい」の先には、どのような社会があるのか?

【2016年3月24日】 中日新聞特集「老いて追われる」にインタビュー記事が掲載

メディア掲載

2016年3月24日付けの中日新聞の特集「新貧乏物語 第2部・老いて追われる」に、稲葉のインタビューに基づく記事が掲載されました。

4月2日付け東京新聞にも同じ記事が掲載されました。

無題

なお、この記事はインタビューに基づいて記者がまとめた文章で構成されています。内容の事前チェックは行なっていないため、稲葉が通常は使っていない言い回し(「中流から転落」)が含まれています。ご了承ください。

http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016032402000254.html

新貧乏物語 第2部・老いて追われる <特集>終のすみか求め

若い世代にも迫る危機 年金や格差、根の深い問題

自立生活サポートセンター・もやい 稲葉剛理事(46)

住まいを追われて困窮する高齢者には、どんな支援が必要なのか。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)の稲葉剛理事は、低年金や無年金に直面する恐れがある若い世代にとっても差し迫った課題であると指摘。その上で、「社会全体で考えていくべき問題だ」と強調する。

 

高齢者の生活保護受給者は増え続け、すべての受給者のほぼ半数に達します。アベノミクスで景気は良くなっていると言われていますが、格差は広がるばかりです。

そんな中、問題は経済的な貧困だけではなく、住まいの貧困にまで広がっています。高齢者の民間アパートへの入居は難しく、介護が必要な場合、特別養護老人ホームなどの公的施設も不足している。この現状をいち早く改善しなければいけません。

現在、もやいでは約九百世帯の困窮者の生活をサポートしていますが、六十五歳以上の高齢者が半分を超えています。さらに、その九割強が単身世帯。事業に失敗した自営業者が目立ちますが、介護離職や病気によって中流から転落した人もいます。

特に首都圏では東日本大震災後、住宅の耐震性の重要さが見直され、数が少ない公営住宅の代わりに低所得者の受け皿になってきた木造アパートの建て替えが急速に進んでいます。家賃が跳ね上がって倍近くになり、強制的に追い出される例も少なくありません。居場所をなくした高齢者が、貧困ビジネスの犠牲になることもあります。

高齢者の苦しみは、実は若い世代にも迫っています。年齢が下がれば下がるほど非正規雇用が拡大しており、現在の年金制度上では、将来的に低年金や無年金になる可能性が非常に高い。だから、今は心配ないと思っている若い人たちにとっても、決して人ごとではない。世代に関係なく、社会全体で考えていくべき問題です。

(西田直晃)

<いなば・つよし>1969(昭和44)年、広島市生まれ。東京大教養学部卒。2001年、もやいを設立し、ホームレスや生活困窮者の保証人を引き受け、民間アパートへの入居を支援している。立教大院特任准教授(居住福祉論)。著書に「生活保護から考える」など。

【2016年3月2日】 別府市の生活保護支給停止問題に関する朝日新聞オピニオン特集にコメントが掲載

メディア掲載

大分県別府市が、生活保護利用者がパチンコ店などにいないかどうかを調査し、一部の利用者に支給を停止していた問題に関して、1月12日付けの朝日新聞「声」欄に『生活保護者の「遊興」調査は妥当』という投稿が掲載されました。この投稿に対する様々な立場からの意見を集めたオピニオン特集で、稲葉へのインタビューに基づくコメントが掲載されました。

http://www.asahi.com/articles/DA3S12236185.html

 

(声 どう思いますか)1月12日付掲載の投稿

◆恩恵ではない生活保護
認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛理事

生活保護は、憲法に定められた生存権を保障するための制度で、その利用は困窮している国民の権利です。

その一方で、日本社会では福祉を「恩恵」と捉える考え方が根強くあります。それゆえ、生活保護の利用者は「清く正しく美しく」あらねばならないということになり、パチンコはダメ、生活の監視も許されると考える人が多いのでしょう。しかし、利用者を監視すると何が起こるでしょう。今でも偏見による差別や恥辱のため、権利があるのに利用していない人がいます。監視が強まれば、困っている人をますます福祉から遠ざけることになるでしょう。

道徳的に責めたくなる気持ちはわからなくもないですが、権利と道徳は切り離して考えるべきです。

※関連記事:「生活保護利用者の人権は制限してもよい」の先には、どのような社会があるのか?

 

【2016年2月26日】 週刊金曜日に住生活基本計画に関するコメントが掲載

メディア掲載

http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5835

国交省「希望出生率1・8」住生活変更案に異論続出――“家賃補助策”こそが必要

 

少子高齢化・人口減少が急速に進むなか、政府は、これに対応した住宅政策の転換ができるのか。

1月22日、国土交通省が発表した「住生活基本計画(全国計画)」の変更案(以下変更案)をめぐって期待と不安が交錯している。国交省では、変更案をもとに2月12日までパブコメを募集。こうした動きを受けて、2月13日、東京・上野区民館で「住生活基本計画(全国):国交省パブコメ徹底討論」(主催:日本住宅会議関東会議・住まいの貧困に取り組むネットワーク・国民の住まいを守る全国連絡会)が開催された。

新たな住生活基本計画は、「今後10年の課題に対応するための政策」を示すものとして、「目標(1)結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現」、「目標(2)高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現」など八つの目標を掲げる。

国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事の坂庭國晴さんは、「変更案には多くの問題があるが、とりわけ目標(1)を『結婚・出産を希望する』とし、本文中で『希望出生率1・8の実現』とうたうことは大きな問題」とする。「希望出生率1・8の実現」は、アベノミクスの「新三本の矢」の目標に対応するものだが、「これでは戦時中の『産めよ増やせよ』の住宅政策と同じ」と批判した上で、「(住宅宅地)分科会で出ていた『安価(住居費負担の軽減)で居心地のよい空間としての住まいの実現』という重要な論点が、変更案にはまったく反映されていない。希望する住宅を選択・確保できる環境の整備をうたうなら、住宅費負担の軽減、すなわち“家賃補助策”が不可欠」と指摘する。

この意見に対して、多くの参加者から賛同の声が相次いだが、別の角度から現在の住宅政策の問題点を語ったのは、中小建設業制度改善協議会会長の星野輝夫さん。住まいのつくり手の立場から集会に参加した星野さんは「いま、つくり手の存続自体が危機です。現在、建設就業者は500万人程度ですが、高齢労働者の定年や若手労働者の入職減で、今後10年間に約130万人が不足するとされています。かつての3K(危険、きつい、汚い)職場の要素はなくなりつつありますが、問題は、低賃金、長時間労働、社会保険なしといった悪い労働条件です」と、人手不足解消に向け、労働条件改善の必要性を訴えた。

【空き家の「準公営化」を】

一方、住まいの貧困に取り組むネットワークのメンバーで、この日の集会に参加できなかったNPO法人・自立生活サポートセンター・もやい理事の稲葉剛さんは、変更案について、「『希望出生率1・8の実現』は、個人のライフスタイルへの干渉になりかねず、不適切。『三世代同居・近居の促進』も削除すべき」としつつも、今回、「空き家の活用」目標(6)が明記されたことに注目する。

「私たち『住まいの貧困』に取り組むNPO関係者や研究者は、増加の一途をたどっている全国の空き家について、住宅の確保に苦しむ低所得者への居住支援に活用できないかと、これまで、様々な形で提言活動を行なってきましたから、変更案において空き家の活用が明記されることは重要です」

ただし、「空き家の活用」において、ポイントとなるのは、これを「準公営住宅」に位置づけることだとも強調する稲葉さん。低所得や高齢、ひとり親など、住宅確保に苦しむ人々の多くが、安価で利用しやすい公営住宅への入居を希望するが、競争率や条件などの壁があって、なかなか入居できないのが現実だ。それだけに「一定の基準を満たす空き家を『準公営住宅』として位置づけることを計画に明記すること。また、『準公営住宅』の対象は、子育て世帯や高齢者だけでなく、若年単身者なども含めた低所得者全般とすることが必要です」と語る。

今後、国交省は、答申を経て、3月中に閣議決定をしたいとしている。「住まいの貧困」克服への有効な一歩が踏み出せるのかどうかが注目される。

(山村清二・編集部、2月26日号)

【2016年1月6日&8日】 「ふとんで年越しプロジェクト2015」に関する記事が掲載

メディア掲載

2016年1月6日に「マガジン9」にアップされた雨宮処凛さんのコラムで、「ふとんで年越しプロジェクト2015」の取り組みが紹介されました。「つくろいハウス」についても紹介されています。

以下のリンク先からご覧ください。

2015年末、「越冬」の現場。の巻-雨宮処凛がゆく!-第361回 | マガジン9

また、2016年1月8日付けハフィントンポストの和田千才さんの記事でも「ふとんで年越しプロジェクト2015」の活動が取り上げられ、稲葉のコメントが掲載されました。

以下のリンク先からご覧ください。

ホームレスの居場所、ホテルのシングルは贅沢なのか。「ふとんP」の6日間から考える

 

【2015年11月18日】 クリスチャントゥデイ紙に講演に基づく記事が掲載

メディア掲載

2015年11月18日付け「クリスチャントゥデイ」紙に「戦争がもたらす貧困を考える NPOもやいの稲葉剛氏が聖イグナチオ教会で講演 」という記事が掲載されました。

以下のタイトルをクリックすると、リンク先に行きます。ぜひご一読ください。

 

戦争がもたらす貧困を考える NPOもやいの稲葉剛氏が聖イグナチオ教会で講演

【2015年11月6日】 ダイヤモンドオンライン「生活保護のリアル」にインタビュー記事掲載

メディア掲載

ダイヤモンドオンラインのみわよしこさんによる連載記事「生活保護のリアル~私たちの明日は?」第29回に稲葉剛へのインタビューに基づく記事が掲載されました。

ぜひご一読ください。

以下のタイトルをクリックすると、リンク先に移ります。

生活困窮者が路上生活を抜け出せない負のカラクリ|生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ|ダイヤモンド・オンライン

 

【2015年9月5日】 東京新聞:「熱中症死者3割がエアコン持たず 東京23区調査」にコメント掲載

メディア掲載

2015年9月5日付け東京新聞朝刊「熱中症死者3割がエアコン持たず 東京23区調査」に稲葉のコメントが掲載されました。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015090502000144.html

熱中症死者3割がエアコン持たず 東京23区調査

東京都心で気温三五度以上の猛暑日の連続記録を更新した今夏、東京二十三区内で熱中症で死亡したとみられる百一人のうち、三割以上は部屋にエアコンがなかったことが、東京都監察医務院の調べで分かった。死者の大半は高齢者で、死後二週間以上たってから見つかるケースもあった。専門家は「独り暮らしや生活苦で、周りと関わりが薄い人たちが犠牲になっている」と支援の必要性を訴えている。 (大平樹、石井紀代美)

都監察医務院は毎年、七~九月、二十三区内で熱中症の疑いで死亡した人を集計している。今年は七月三十一日~八月七日に八日連続で猛暑日になり、今月三日までに百一人が亡くなり、過去三番目の多さに達した。最多は二〇一〇年の二百十人。
室内での死亡は九十三人で、このうち三十五人は部屋にエアコンがなかった。四十九人はエアコンはあったが使っていなかった。

(中略)

生活困窮者を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛理事は「熱中症で多くの死者が出る背景に高齢者が孤立し、生活保護受給者が地域に出づらい事情がある」と指摘。「生活困窮者はエアコンを設置しなかったり、電気代を気にして使わなかったりする。夏に生活保護費を増やす夏期加算が必要だ」と話している。

◆搬送半数 お年寄り

総務省消防庁によると、全国で今年4月27日~8月30日の間、熱中症で救急搬送された人は5万4552人。このうち、ほぼ半数の2万7446人が高齢者だった。

首都圏での救急搬送者は東京が4561人。埼玉(3802人)、神奈川(2758人)、千葉(2466人)、茨城(1517人)、群馬(1186人)、栃木(1005人)で、静岡は1477人だった。各都県とも、半数近くを高齢者が占めた。
週別では、全国各地で猛暑日が続いた7月27日~8月2日が1万2038人で最多で、翌週の8月3~9日も1万1532人だった。

『子どものしあわせ』2015年7月号にインタビュー記事掲載

メディア掲載

『子どものしあわせ』2015年7月号に稲葉のインタビュー記事が掲載されました。

「私を育ててくれた人たち」というテーマで語っています。

90709095

リレートーク:私を育ててくれた人たち
「個々の実存とむきあう」稲葉剛さん

 

路上生活者の方の生活支援に携わるようになって以来、「いのち・すまい・けんり」という言葉にこだわって活動を続けています。二〇〇一年に設立した自立生活サポートセンター〈もやい〉では、最初は湯浅誠との共同代表、二〇〇三年にNPO法人化してからは理事長。若手に理事長職をゆずった今は、理事としてかかわりながら、ホームレスの人たちが一時入居する個室シェルター事業を新たに立ち上げ、活動しています。

戦争にたいする憤り

広島出身ということもあり、戦争で理不尽に人の命が奪われることへの憤りはずっともっていました。幼いころに両親が離婚したので、母子家庭で育ったのですが、両親ともに原爆で家族や友人を失った経験を持っていました。母親は、一〇歳のときに疎開先の学校の校庭でキノコ雲を見て、その数日後に広島市内に入り、「入市被爆」をしました。積極的に語るわけではなかったですが、毎年夏になるとぽつりぽつりと当時の話をしてくれ、毎年、原爆が投下された八月六日の朝八時一五分にはテレビの前で黙祷する習慣がありました。そういう影響もあり、姉が高校生のとき、観光客に市内の被爆者慰霊碑を案内するボランティア活動をしていました。

小学校六年生のときの担任だった女性の先生のことは、よく覚えています。クラスのなかに、イジメとまではいかないけれど、無視するとか、席替えのときにあいつの隣になるはイヤだ、みたいなことがありますよね。そういうものを含めて、差別につながるんだと厳しく叱る先生でした。私たちの日常に潜んでいる、差別だと意識しないようなレベルの感覚も、実は社会の大きな問題とひとつながりなんだよと教えてくれていたんだろうと思います。

中学高校は、鹿児島にあるミッションスクールに進学し、寮生活をしました。自由な校風で、変わった先生も多く、のびのびやらせてもらったという気がします。生徒会活動を熱心にやって、新聞を学校に持っていって友達に政治的な議論をふっかけたりもしていました。そういえば、中学に入ったときに、親から買ってもらったのが、家永三郎さんの検定不合格教科書だったんです。こういうのも読んでおいたほうがいいよって。広島で育っているので、日本は戦争の被害者という意識が強かったのですが、加害者の側面もあることを知りました。

ひとりの人間として出会う

大学院に在籍していた一九九四年、東京都による新宿西口地下道の路上生活者強制排除があり、それに反対する活動にのめり込みました。強制排除で追い出された人たちが寒空のもと凍死するという事態は、自分にとっては、ある意味戦争と同じだったんです。自分たちの税金が人を殺すために使われるのはイヤだという生理的な嫌悪感と、強制排除をやめさせないと自分も加害の側に立たされてしまうという意識がありました。その後、仲間とともに新宿で野宿者支援の活動を立ち上げ、それが〈もやい〉設立につながります。

当時一緒に活動を立ち上げた見津毅くんが、「個々の実存とむきあう」という言葉を常々口にしていました。社会運動は、全体の社会的政治的状況の中でいかに効果的に動くかを考えるので、どうしても、一人ひとり、当事者の思いがないがしろにされがちな部分がでてきます。だけど、そういう一人ひとりの思いにもきちんと向き合っていく必要があるんだよ、と彼はよくいっていました。見津くんが若くしてバイク事故で亡くなった後も、ぼくは、彼の言葉はこの場面ではどういうことなのだろうと考えながら行動してきたように思います。

現在、力を入れている活動のひとつに、路上生活者への襲撃事件をなくす授業活動があります。こういった襲撃では、加害者の側の子どもたちにも、家庭が貧困だったり、ネグレクトや虐待があったりという状況が多くみられ、弱者が弱者をたたくという今の社会を象徴するような事件ともいえます。授業では、お題目のように「命は大切です」と唱えても子どもたちには伝わらないので、ホームレスの当事者あるいは経験者の方に一緒に教室に来てもらい、体験談を話してもらいます。“ホームレス”としてひとくくりで見るのではなく、だれだれさん、というひとりの人間として出会うことが大切だと思っています。

ますます弱肉強食的な社会になってきているなか、弱い立場の人に実際に会い、共感する機会を提供することが、これからの教育には求められるんじゃないでしょうか。最近は、中学生のときに稲葉さんの話を聞きました、とボランティアに来てくれる大学生もいてうれしいですね。

 

【いなば つよし】
1969年、広島市生まれ。東京大学教養学部教養学科卒。在学中から平和運動、外国人労働者支援活動にかかわる。
2001年、湯浅誠らと自立生活サポートセンター・もやいを設立し、幅広い生活困窮者の相談・支援活動を開始。2009年まで学習塾講師として生計を立てながら活動を続けた。生活保護制度の改悪に反対するキャンペーンにも本格的に取り組んでいる。現在、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科准教授。
近著に『生活保護から考える 』(岩波新書、2013年)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために―野宿の人びととともに歩んだ20年』(エディマン/新宿書房、2014年)など。

【2015年7月17日】 信濃毎日新聞にインタビュー記事が掲載されました。

メディア掲載

2015年7月17日付け信濃毎日新聞夕刊にインタビュー記事が掲載されました。共同通信の配信記事で、京都新聞、山形新聞にも掲載されました。

住まいの貧困問題 若者たちも孤立 支援を
NPO理事 稲葉剛さん

 

IMG_3007

 

〈10人が亡くなった今年5月の川崎市の簡易宿泊所火災。不安定な居住環境で暮らす高齢者の「住まいの貧困(ハウジングプア)」問題を浮き彫りにした。しかし、ハウジングプアは高齢者だけでなく、今や多様な形で若い世代にも広がっていると、警告する〉

20年以上前から路上生活者の支援活動をしています。2001年に「自立生活サポートセンター・もやい」をつくりました。住まいの問題は、当初は「路上生活から抜け出たいのに、保証人がいないのでアパートに移れない」という50~60代の日雇労働者からの相談がほとんどでした。それが非正規雇用の拡大とともに、ワーキングプア層の20~30代の若者たちからの相談が、どんどん増えてきたのです。

仕事をして、その日の所持金でネットカフェやサウナに泊まったり、金がないと24時間営業のファストフード店で夜を過ごしたり、完全になくなれば路上生活…。住み込みの仕事で寮に入っても、解雇されると住む場所を失い、転々とする。

時々の状況で一晩を過ごす場所を変えるので、ネットカフェ難民のように寝る場所だけに注目しても意味がありません。仕事が不安定なワーキングプアが増えると住むところも不安定になるという意味では「表裏一体の問題じゃないか」と気づき、6年前に本を出版して問題提起しました。

ハウジングプアの問題は、住まいがないことで経済的な貧困から抜け出せない悪循環になるだけでなく、人間関係のつながりが切れ、社会的にも孤立すること。経済と人間関係の二重の貧困に陥ってしまいます。

〝路上一歩手前〟の若者は増え続けていると感じています。最近も「違法貸しルーム」が社会問題になったように、住む場所が多様化して、その実態が見えない不可視化が進んでいる。

非正規雇用で住まいの確保が難しい人は、無年金や低年金になりやすい。将来的には低所得の高齢者があふれかえる状況になるが、今の制度だと生活保護以外に使えるセーフティーネットがありません。それでいいのでしょうか。

〈対策に腰の重い行政に業を煮やし、「つくろい東京ファンド」を立ち上げた。住まいのない生活困窮者のために個室シェルターを提供する試みだ〉

欧米では「ハウジングファースト」と言い、住まいのない人の支援は、プライバシーが守られ安全が確保された住居の提供から始めるのが主流です。そこで、ビル所有者にマンション8室を提供してもらい昨年、個室シェルターを始めました。

住まいのない人がいる一方、空き家が約13.5%もあるというミスマッチは何とかならないか。国が空き家対策で低所得者に貸す仕組みをつくってくれるといいが、動きません。まず民間でモデル的な事業をやってみようと踏み出したわけです。大都市なら空き家の活用は有効だと思います。

ハウジングプア対策として「住宅省」をつくって、行政の一元化を図れと言いたいですね。箱物は国土交通省、生活に困窮している人への支援は厚生労働省と分かれ、現在は縦割りの弊害が大きい。これでは居住福祉的な観点が広がっていきません。国交省と厚労省がセットで動いて、箱物の規制や整備を行い、住まいに困っている人が適切な住居に入れる支援をやっていかないといけないのです。(聞き手・保坂渉/写真・萩原達也)

【いなば・つよし】
1969年広島市生まれ。東大教養学部卒。94年から路上生活者の支援活動に取り組む。認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人。今年4月から立教大大学院特任准教授。著書に「ハウジングプア」(山吹書店)「生活保護から考える」(岩波新書)など。

※つくろい東京ファンドへの寄付については、こちらのページをご覧ください。

 

< 1 2 3 4 5 >