2015年を振り返って~『鵺』、安保法案反対からハウジングファーストまで

日々のできごと

私にとっての2015年は、新著『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)の出版から始まりました。

この本は、過去20年の間に私が野宿者支援、生活困窮者支援の活動の現場に関わりながら書いてきたエッセイをまとめたものです。私にとっては20年間の活動の集大成のような本になりました。

この本の出版をきっかけに、2月には(意外なことに)読売新聞の「顔」欄に私の紹介記事が掲載されました。

【2015年2月19日】 読売新聞:「顔」欄に稲葉剛の紹介記事が掲載されました。 

友人たちが企画してくれた「出版を祝う会」も大盛況で、とても幸せな時間を過ごすことができました。

出版記念会の座談会 右から吉水岳彦さん、星野智幸さん、私、司会の小林多美子さん 撮影:吉田敬三

出版記念会の座談会 右から吉水岳彦さん、星野智幸さん、私、司会の小林多美子さん 撮影:吉田敬三

 

写真で見る『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』出版を祝う会

動画で見る『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』出版を祝う会

また、春には昨年12月にビッグイシュー基金/住宅政策提案・検討委員会が発表した調査報告書『若者の住宅問題』に関する取材が相次ぎ、私も委員の一人として様々なメディアにお話をしました。

【2015年3月26日】 毎日新聞:貧困の若者:過半数家賃払えず…実家に「居候」

2月には東京で、5月には大阪で、調査報告書に基づくシンポジウムが開催され、私もシンポジストとして発言しました。

活動家と大学教員という2足の草鞋

今年4月、私は立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に着任しました。
「大学の先生になって、貧困の現場から遠ざかるのでは?」という周りからの懸念を払しょくするために、あえて「現場続投宣言!」という記事をアップし、活動家と大学教員という2足のわらじを履くことを宣言しました。

「21世紀」着任のお知らせ&現場続投宣言! 

21世紀社会デザイン研究科は社会人向けの大学院です。私は年間を通して「貧困と社会的排除」と「居住福祉論」という2つの授業と論文指導を担当しています。

7月の下旬に春学期の授業が終わり、少しは自分自身の研究の時間が取れるかとも思ったのですが、夏休み期間中はちょうど安全保障関連法案が国会で審議されている期間にぶつかったため、できる限り時間を作って、国会前の抗議活動に参加しました。

個人として抗議に参加するかたわら、7月末に設立された「安全保障関連法案に反対する立教人の会」にも教員の一人として参加し、集会運営などに協力しました。国会前の抗議活動にも立教の教職員や学生グループと一緒に参加して、声をあげました。

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残念ながら、法案は通ってしまいましたが、立教の有志は「安全保障関連法に反対する立教人の会」と名称を変更して、活動を続けています。

「ハウジングファースト」シンポジウムを開催!

秋には、その立教大学のキャンパスで「ハウジングファーストと社会デザイン」という国際シンポジウムを開催しました。

大学に着任した時から、居住福祉に関する授業や研究と、現場の活動とをつなげられないか、と模索してきたのですが、半年の準備期間を経て、ひとつの形を創ることができたと思います。
シンポジウムには予想を超える200人が集まってくださり、「ハウジングファースト」の理念を日本社会に定着させる第一歩になったと考えています。

公開講演「ハウジングファーストと社会デザイン」(その1):講演 ヴァンサン・ジェラールさん 

ただ住宅政策をめぐっては、今年、生活保護の住宅扶助基準の引き下げや川崎市での簡易宿泊所火災といった出来事もありました。

こうした問題でも、集会や記者会見、メディア取材などを通して発言を行ないました。

【2015年1月13日】 東京新聞:15年度予算案 住宅扶助、冬季加算カット 「命にかかわる」

単身・低所得の高齢者が安心してアパート入居できる仕組みを! 

また、10月には呼びかけ人の一人として、「人間らしく生きたい – まもろう憲法25条」をスローガンにした「25条大集会」に参加しました。この大集会には約4000人が集まりました。

これらの活動と並行して、NPO法人もやいでの日常活動(今年度はサロンと入居支援事業のコーディネイターを担当)や、つくろい東京ファンドでのシェルター事業を行なってきました。

つくろい東京ファンドは、新規の事業として、夏にニュースサイト「マチバリー」を開設したほか、秋には新たな住宅事業のためのクラウドファンディングを行ない、そこで得た約120万円を元手に、新たなシェルター(新宿区)と若者向けシェアハウス(墨田区)をオープンしました。
来年1月には、墨田区のシェアハウスのダイニングスペースを使って、こども食堂をオープンする予定です。

他にも、各地での講演活動など、様々な活動を一年を通して行なうことができました。これも皆様のご協力があってのことと思います。

本年も多くの方の応援をありがとうございました。2016年も「いのち・すまい・けんり」にこだわった活動を続けていきたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。

冬を越すためのシェルター事業にご協力を!(物品募集は締め切りました)

日々のできごと

【12月30日追記】保管スペースの都合により、今回の物品募集は締め切らせていただきました。多くの方のご協力をありがとうございました。

早いもので、今年も今日(12月28日)で仕事納め。明日29日から年末年始のお休みに入ります。

連休に入るのは役所も同じです。年末年始の連休は、生活に困窮している人にとって相談できる福祉の窓口が閉まってしまうことを意味します。

役所の閉庁期間中(12月29日~1月3日)でも、夜間休日窓口に生活保護の申請書を提出することはできますが、一部の地域を除き、緊急宿泊や当面の生活費貸し付けといった公的な支援策は実施されていないからです。

そのため、この期間中、全国の各地で集中的な野宿者支援、生活困窮者支援の取り組みが民間レベルで行なわれます。東京都内も各地で炊き出しや夜回り、ボランティア医師らによる相談会などが実施されます。

こうした活動に加え、一昨年からは都内の支援団体関係者が連携をして、「ふとんで年越しプロジェクト」という取り組みも行なっています。クラウドファンディングで集めた資金をもとに都内のビジネスホテルなどの宿泊場所を確保し、各地の団体と連携をしながら、病気療養が必要な方などに宿泊と生活の支援を行なうというものです。

今年も「ふとんで年越しプロジェクト2015」として、明日からこの活動を行ないます。クラウドファンディングもまだ継続中ですので、ぜひご協力ください。

ふとんで年越しプロジェクト2015 ~誰もが暖かく年を越せるように~ – クラウドファンディング MotionGallery(モーションギャラリー) 

私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドは、東京都中野区で個室シェルター「つくろいハウス」を通年で運営しているのですが、この期間中は「ふとんで年越しプロジェクト」に複数の部屋を提供する予定です。

 

過去にご提供いただいた品々。

過去にご提供いただいた品々。

 

つくろい東京ファンドでは、活動資金を募集しています。
下記の銀行口座にお振り込みの上、上記のお問い合わせフォームにご連絡ください。

◆つくろい東京ファンドの銀行口座
みずほ銀行 飯田橋支店(061)
普通 2634440 「つくろい東京ファンド」

また、クレジットカードを利用したAmazonギフト券によるご支援も可能です。下記ウィッシュリストでご購入いただけます。

「つくろい東京ファンド」Amazonウィッシュリスト

いただいたギフト券は、日々の活動で必要な物品の購入に使わせていただきます。

一人でも多くの方が厳しい路上生活から抜け出せるように支援を続けていきたいと思います。ぜひ皆様のあたたかいご協力をお願いいたします。

東京都内で、また野宿者襲撃事件が発生。人権行政・教委の対応を求めます。

提言・オピニオン

残念ながら、都内でまた中高生による野宿者襲撃事件が発生しました。

NHKニュース(「強盗の疑いで中高生逮捕 路上生活者も襲撃か」)によると、事件の概要は以下のとおりです。

東京・新宿区の路上で会社員の男性から現金などを奪ったとして中学生と高校生の少年合わせて3人が逮捕されました。新宿区内ではことし7月以降、公園などで路上生活者が暴行される事件が相次いでいて、警視庁は供述などから3人が関わったとみて調べています。

この事件の3時間ほど前、新宿区の都立戸山公園で60代から70代の路上生活者の男性3人が顔を殴られるなどしていて、少年らは一部について関与を認めているということです。ことし7月以降、この公園や近くの路上では路上生活者が暴行される事件がほかにも8件相次いでいて、警視庁は3人が関わったとみて調べています。

こうした襲撃事件は1990年代半ばから東京や大阪などで頻発しています。昨年夏、都内の野宿者支援団体、生活困窮者支援団体が合同で、野宿者への襲撃の実態に関するアンケート調査(野宿者347人への聞き取り)を実施したところ、40%の方が襲撃を受けた経験があるということがわかりました。

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昨年8月14日、私たちはこの調査結果を公表し、東京都に対して、襲撃の実態把握と人権教育・人権啓発の強化などを求める申し入れをおこないました。

舛添要一都知事は翌8月15日、定例の記者会見で対策を徹底すると明言しました。

舛添都知事が野宿者襲撃への対策を徹底すると表明!実効性ある対策を求めます。(2014年8月16日)

しかし、その後、具体的な対策はほとんど行われませんでした。

都が今年8月に策定した東京都人権施策推進指針では、人権課題の一つとして「路上生活者」の項目が設けられ、「ホームレスに対する偏見や差別をなくし、ホームレスの置かれている状況や自立支援の必要性について都民の理解を促進するため、啓発等を行っていきます。」という記述が盛り込まれましたが、具体的な取り組みが実施されたという話は聞いたことがありません。

「人権啓発や人権教育はあまり効果がないのではないか」という意見をいただくこともありますが、区内で襲撃が続いたことを受けて、教育委員会と学校現場が野宿の当事者・支援者と連携をして、野宿者の人権に関する授業をおこなった墨田区では、実際に襲撃が激減しています。

東京都墨田区で野宿者襲撃が10分に1に減少(2014年10月17日)

今回の事件を受けて、東京都が姿勢を改め、野宿者襲撃をなくすための対策に本腰を入れることを求めます。また、地元の教育委員会にも働きかけをおこなっていきたいと思います。

年末の生活困窮者支援にご協力を!&困っている方はお早めにご相談を!

日々のできごと

師走も半分が過ぎ、世の中はクリスマス&年末ムードになってきました。

今回の年末年始の連休は6日間と若干、短めですが、それでも福祉の窓口が閉まる年末年始は、ホームレス状態にある人など生活困窮者にとって厳しい時期であることに変わりはありません。

これから年末年始にかけて、生活困窮者支援に関わる各団体は集中的な相談・支援活動に取り組む時期になります。

私が理事を務めるNPO法人もやいでは、歳末寄附のキャンペーンも行なっているので、ぜひご協力ください。

歳末寄附のお願いです。マンガ家の柏木ハルコさんにバナーを描いていただきました!

ご家庭や職場で不要になった本やDVD・CDで寄附をすることもできます(1月末まで買い取り額20%アップキャンペーン中です)。

あなたの本が自立をめざす生活困窮者の方々の「はじめの一歩」をお手伝いします。

 

生活にお困りの方、困りそうな方はお早めにご相談を!

現在、各地の支援団体や相談機関は「いま生活に困っている方、年末にお金が尽きて困りそうな方は、お早めにご相談ください」と呼びかけています。

年末年始の間でも、生活保護の申請行為自体は、役所の夜間休日窓口に申請書を出すことで可能なのですが、宿泊などの緊急支援は一部の自治体でしか行なっていません。

そのため、各団体では年末の休みに入るまでに相談をしていただき、早めに生活保護を申請することをお勧めしています。

通年で開設されている民間の相談窓口の一覧は、生活保護問題対策全国会議のブログにアップされているので、ぜひご参考にしてください。

生活保護のことで相談したい場合は、こちらへどうぞ(相談先リスト)

私が理事を務めるNPO法人もやいの場合、面談相談は12月22日(火)、電話相談は25日(金)が年内最後になります(年明けはいずれも1月5日(火)より)。

また、生活保護制度の概要については、こちらのパンフレット(PDF)をご参照ください。生活保護については、誤解をされている方も多いので、ぜひ正しい知識を知っていただければと思います。

NPO法人もやい『困った時に使える最後のセーフティネット活用ガイド』(PDF)

 

12月23日(祝・水)には、全国の法律家が中心となった拡大電話相談会が実施されます。私も呼びかけ人になっています。

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東京では、12月24日(木)、25日(金)に「つながる総合相談ネットワーク東京」による総合相談会が四谷の日司連ホールで開催されます。

なんでも総合相談会のご案内 12/24(木)25(金) 1/25(月)

支援を必要としている方に、こうした情報が届くよう、ぜひこうした広報にご協力ください。

よろしくお願いいたします。

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