舛添都知事が野宿者襲撃への対策を徹底すると表明!実効性ある対策を求めます。
8月14日、NPO法人もやい、山谷労働者福祉会館活動委員会、ひとさじの会など、都内の野宿者支援団体9団体は連名で、「野宿者襲撃への対策を求める要望書」を東京都に提出しました。
都内各地で野宿をしている人たち347人を対象に実施したアンケート調査で、「40%の人が襲撃を受けた経験がある」、「襲撃は夏季に多く、襲撃者(加害者)の38%は子ども・若者である」といった事実が判明したことから、「都としても実態調査をおこなうこと」、「都民にむけて広報・啓発活動をおこなうこと」、「学校教育において野宿者への正しい理解をうながす教育プログラムを策定し、実行すること」、「襲撃を受けた野宿者が訴えでた場合は必要な保護をおこない、再発防止に向けた協議の場をもつこと」を求めたのです。
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東京都の各部局との話し合いの場には、野宿の当事者も参加し、被害の実情を訴えましたが、都の各担当者は「持ち帰って検討します」と言うばかりで、今後の動きに期待できるような対応ではありませんでした。
しかし、このニュースが各マスメディアで大きく報道された影響もあったのか、翌日(8月15日)に動きがありました。
舛添都知事が定例記者会見の場で、野宿者襲撃問題への対応を質問され、「対策を徹底する」と答えたのです。
東京都庁のウェブサイトに掲載された舛添知事の記者会見録によると、舛添知事の発言は以下のとおりです。
【記者】毎日新聞の竹内と申します。昨日、市民団体の発表で、都内でですね、ホームレスの方が襲撃された経験があるというのは4割だと。うちですね、また約4割ぐらいが子供とか若者に襲われたという調査結果が出ているということです。都にも調査を求めてますけど、今後、都としてこういう問題にですね、どう取り組まれるのでしょうか。
【知事】そういう誰に対しても暴力というのは決してやってはいけないことだと思いますし、特にホームレスの方々という、ある意味では弱い立場にある方に対して暴力振るうというのは決してやってはいけないと思います。特に若い人たちが加害者になるというのは、これは教育現場の問題でもありますので、教育の現場でも、今までもずっと都の教育委員会を中心にやってきておりますけど、しっかりと徹底したいと思っています。
それから、いろいろな事情があってホームレスになられたのだと思いますけれども、できれば1日も早くホームレスから脱却していただきたいということで、都のほうはそれぞれの区とですね、一緒になって定期的な巡回活動をして、聞き取りをしたり、一時的な宿泊場所の提供とかいろいろなことをやってますので、今後ともこれを継続的に続けてやっていきたいと思っております。
今申し上げましたように、直接声をおかけして、例えば新宿、隣の中央公園にもブルーテントがありますけど、そういう所に直接行って、直接ホームレスの方に声かけして、どうですかと。状況を聞いて、例えばこういう仕事を探されたらどうですかと、こういうところありますよということをですね、都の職業紹介場所として飯田橋にあるところを紹介したりというようなこともやりたいと思っています。
それから、やはり人権週間とかイベントにおいて、こういう啓発活動をやっていきたいと思っております。非常にこういう暴力というのは、何か陰湿な感じがしますし、決してあってはならないので、全力を挙げてこういうことがないように、都としてもこれまでもやってきていますけども、継続的にこういう活動を続けていきたいと思っています。
私たちとしてはこの動きを歓迎し、都知事の発言が「リップサービス」に終わらないよう、実効性のある対策を求めていきたいと考えています。
野宿者への襲撃を止めるための教育プログラムは、川崎市では1990年代半ばから実施されてきました。また今年に入り、東京都墨田区でも当事者や支援団体の働きかけに応じる形で、墨田区教育委員会が襲撃事件の再発防止プログラムを区内の全ての小中学校(小学5年~中学3年の全学年が対象)で実施しています。
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川崎市でも墨田区でも、プログラムが形だけのものにならないよう、野宿の当事者や支援者と話し合いを重ねながら具体的なプログラム内容を詰めていきました。
私もこの5月から7月にかけて、墨田区教育委員会の教職員研修に3回にわたって呼ばれ、「子どもに『ホームレス』をどう伝えるか」をテーマにレクチャーをしてきました。そして、襲撃が多発する夏休み前に、区内の全ての小中学校で襲撃の再発防止を目的として授業が実施されたのです。
こうした取り組みの結果、川崎では襲撃件数を激減させることができ、墨田区でも今年の夏休みには今のところ襲撃が報告されていないと聞いています。
また、民間では私も理事を務める「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」が学校の先生たちにも協力してもらいながら、学校の授業で教材として使えるDVDや資料集を制作してきました。
舛添都知事や都教育委員会の関係者にまず取り組んでいただきたいのは、こうした先駆的な事例に学ぶことです。
そのために私たちも民間の立場で協力をしたいと考えています。
襲撃をなくしていくためには、継続的な取り組みが必要とされます。
ぜひ引き続き、多くの方のご注目、ご支援をお願いいたします。
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関連サイト:生田武志さんのウェブサイト「野宿・貧困問題の授業を行なっています」
2014年8月16日