日々のできごと
国会前で撮影したパノラマ写真。
本日8月30日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会などが呼びかけた国会前デモに参加してきました。
主催者発表で約12万人が参加し、「戦争法案絶対廃案!」、「安倍政権は今すぐ退陣!」と訴えました。
私が参加する「安全保障関連法案に反対する立教人の会」は13時半に桜田門駅に集まり、国会前へと向かいました。私は会ののぼりを持つ役割を担当しました。
8月26日に「安全保障関連法案に反対する学者の会」が主催した「100大学有志共同行動」の際に、学者の会が各大学有志のために作ってくれたのぼりです。
立教大学の教職員だけでなく、立教の学生でつくるSPAR(平和のために行動する立教大生の会)の皆さんも参加。SPARのメンバーは独自にプラカードも用意していました。
国会前に着いてみると、すでに車道が「決壊」していて「解放区」状態!
一番盛り上がったのは、「安倍やめろ!」という巨大なバナーが白と黒のバルーンによって浮かび上がった時。これを思いついて、実行した方(どなたか知りませんが)は「えらい!」と思います。
デモは16時から総がかり行動実行委員会からシールズの皆さんにバトンタッチ。16時時点で、総がかり行動実行委員会の高田健さんから「12万人が集まった」という報告がありました。
今日は、全国各地で何百ものアクションがあり、大阪では3万人が集まったと言います。全国あわせると、いったいどのくらいの人が集まったのでしょうか。
これだけの大きな規模の抗議行動が起こったことは、安倍政権にとって大きなダメージになったのは間違いありません。
立教・上智有志による集会を開催
「立教人の会」は、前日29日の夜に上智大学の教職員有志とともに聖アンデレ教会聖堂で「私たちはなぜ安保法案に反対するのか?ー立教・上智有志からの発信ー」という集会を開催しました。
立教と上智から、それぞれ4名がスピーチをおこない、私も立教の教員として貧困と戦争の関係について話をさせていただきました。
8月29日、聖アンデレ教会聖堂にて。
集会では、西南学院大学、名古屋学院大学、東京基督教大学、恵泉女学園大学の教員からも連帯メッセージをいただきました。
この集会には約180名が参加し、反対の声を広げていこう、ということが確認されました。
今後とも、「立教人の会」として、また個人として、「戦争法案を絶対に許さない!」という声をあげていきたいと思います。
2015年8月30日
講演・イベント告知
一般社団法人つくろい東京ファンド主催
「マチバリー」開設記念シンポジウム
『伝わりにくいものをどう伝えるか?~貧困とメディアと私たち~』
閉塞感を増す日本社会。
その中で、貧困や差別・排除などの問題は深刻さを増しているにも関わらず、なかなか世論へ本質的な理解が深まっていきません。
未だ単純な誤解に基づいた偏見が、ネットを中心に広がっている現実があります。
そうした中で、メディアはどのような役割を果たすことができるのでしょうか。
本シンポジウムでは、様々な立場でメディアに関わり、それぞれのやり方で「伝わりにくいもの」を問題提起してきた方々をお招きして、現状の課題の整理と、今後よりよく伝えるための方法を、一緒に発見する機会に出来ればと考えています。
●日時
9月13日(日) 開場:13時30分 開始:14時(16時30分 終了予定)
●会場
東京しごとセンター 5階 セミナー室
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3丁目10番地3号 地図はこちら。
・飯田橋駅から
JR中央・総武線「東口」より徒歩7分
都営地下鉄大江戸線・東京メトロ有楽町線・南北線「A2出口」より徒歩7分
東京メトロ東西線「A5出口」より徒歩3分
・水道橋駅から
JR中央・総武線「西口」より徒歩5分
・九段下駅から
東京メトロ東西線「7番出口」より徒歩8分
東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄新宿線「3番出口」より徒歩10分
●入場料
無料
●シンポジスト(五十音順)
稲葉剛さん(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事・NPOもやい理事・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授)
上坂修子さん(東京新聞論説員)
遠藤大輔さん(ビデオジャーナリスト・ビデオジャーナリストユニオン代表)
水島宏明さん(法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター)
●主催:一般社団法人つくろい東京ファンド
‶生きる“を支える人を応援するメディア マチバリー
URL: http://machibarry.jp E-Mail: info@machibarry.jp
※お問い合わせは、上記メールアドレスまでお願いいたします。
※関連記事:”生きる”を支える人を応援するメディア「マチバリー」が始まりました!
2015年8月23日
講演・イベント告知
稲葉が参加している「安全保障関連法案に反対する立教人の会」からのお知らせです。ぜひご参加ください。
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私たちはなぜ安保法案に反対するのか?
ー立教・上智有志からの発信ー
安全保障関連法案は、現在参議院に審議の舞台を移しています。私たちはなぜこれに反対し、廃案を求めるのか?
立教・上智両大学の有志によるリレートークを行って、私たちの考えを発信していきます。
キリスト教系他大学からの連帯メッセージも予定されています。
他大学のかたがたを含め、多くのみなさまのご参加をお待ちしております。情報の拡散もお願いいたします。
日時:2015年8月29日(土)18:00~20:30(予定)
会場:聖アンデレ教会アンデレホール
東京メトロ日比谷駅「神谷町駅」より徒歩8分 地図はこちら。
<リレートーク>
立教有志:浅井春夫(コミュニティ福祉学部)、稲葉剛(21世紀社会デザイン研究科)、西谷修(文学研究科)、ジャスミン(大学院生)
上智有志:光延一郎 (神学部)田中雅子(総合グローバル学部)他
<フロアスピーチ>
宮平望(西南学院大学)、阿部太郎(名古屋学院大学)他
入場無料・申込不要
*参加者からのカンパをいただければ幸いです。
主催:
安全保障関連法案に反対する立教人の会 http://rikkyo9.wix.com/home
安全保障関連法案強行採決に抗議し、同法案の廃案を求める上智大学教職員有志
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※関連記事:「安全保障関連法案に反対する立教人の会」発足!声明に込められた戦争の記憶とは?
※翌31日(日)には、総がかり行動実行委員会主催の「戦争法案廃案!安倍政権退陣!8・30国会10万人・全国100万人大行動」が開催されます。こちらにも稲葉が参加する予定。みんなで集まりましょう!
2015年8月23日
日々のできごと
一般社団法人つくろい東京ファンドが個室シェルター「つくろいハウス」(東京都中野区)を開設してから、この8月で一年になりました。
「つくろいハウスとは?」の説明は、こちら。
「つくろいハウス」では、都内の様々な生活困窮者支援団体の紹介で、この一年間に約30名の入居者を受け入れました。
利用期間は、1週間程度のショートステイ利用と、1ヶ月~半年のステップハウス利用がほぼ半々。ステップハウスとして利用して、アパートに移った方も10名を超えました
アパートに移った方とも、毎月の「なべ会」の開催などを通して継続的なつながりを作っています。精神疾患や知的障がい、発達障がいを抱えている人も多いため、精神科の訪問看護ステーションなどとも連携をして地域生活をサポートしています。
物資カンパも引き続き、募集中です。
シェルターに入居される方の中には、着の身着のままの状態の方もいます。つくろい東京ファンドでは、必要に応じて生活保護の申請支援を行なっていますが、当面の対応として食料などの緊急支援も行なっています。
こうした緊急支援のために以下の物品を提供できる方がいらっしゃれば、ぜひカンパをお願いします。
◆募集する物品
・インスタント食品、缶詰(賞味期限内のもの)
・お米
・男性用下着(新品)、靴下(新品)、Tシャツ
・石けん
・洗剤
・布団用シーツ(大きめのもの)
・バスタオル
・クオカード
保管スペースが限られているため、あらかじめ、品目と数量をお問い合わせフォームでお知らせください。
【お問い合わせフォーム】 http://tsukuroi.tokyo/information/
折り返し、送付先住所をお知らせします。申し訳ありませんが、送料はご負担をお願いします。
つくろい東京ファンドでは、引き続き活動資金も募集しています。
下記の銀行口座にお振り込みの上、上記のお問い合わせフォームにご連絡ください。
◆つくろい東京ファンドの銀行口座
みずほ銀行 飯田橋支店(061)
普通 2634440 「つくろい東京ファンド」
また、クレジットカードを利用したAmazonギフト券によるご支援も可能です。下記ウィッシュリストでご購入いただけます。
「つくろい東京ファンド」Amazonウィッシュリスト
いただいたギフト券は、日々の活動で必要な物品の購入に使わせていただきます。
ぜひご協力をお願いいたします。
2015年8月14日
日々のできごと
寺尾紗穂さんの「ホームレスの当事者や経験者と一緒に音楽を楽しみたい」という呼びかけから始まった「りんりんふぇす」。
ホームレスの人たちの仕事をつくる雑誌「ビッグイシュー日本版」の応援イベントでもあり、私が理事を務める認定NPO法人もやいも協力しています。
もうすっかり恒例となった「りんりんふぇす」ですが、今年の開催は10月4日(日)に決定!すでに予約受付も開始しています。
→ご予約はこちらのページで。
詳しくは以下の画像をクリックして、公式サイトをご覧ください。
今年のステージには、寺尾紗穂、イルリメ、柴田聡子、とんちピクルス、テニスコーツ、ソケリッサ!の6組が登場。
座談会は「こどもの未来を支えるために」をテーマに、子どもの貧困に取り組むNPO関係者にもご登壇いただき、「私たちにできること」を考えます。
もちろん、もやいの自家焙煎「こもれびコーヒー」も販売します。
ぜひご参加ください!
◇イベント詳細
●名 称:
りんりんふぇす Sing with your neighbors
THE BIG ISSUE support live vol.6
●日 時:
2015年10月4日(日)
開場 14:00/開演 14:30 ※終演20:00予定
●料 金:
前売券 2,500円 ※税込・入退場自由
当日券 3,000円 小学生以下無料
●会 場:
梅窓院 祖師堂(そしどう)
〒107-0062 東京都港区南青山2丁目26-38
※東京メトロ銀座線 外苑前駅1a出口徒歩1分
※駐車場はございません。お車での来場はお控えください。
●予 約:
メール予約のみ。チケット申込のフォームからどうぞ。
●内 容:
音楽ライブ/1部・2部制
座談会/1部終了後に行います
炊き出し/簡単な食事(無料)、フェアトレードのコーヒー販売
●出 演:
寺尾紗穂、イルリメ、柴田聡子、とんちピクルス、テニスコーツ、ソケリッサ!
●座談会:
「こどもの未来を支えるために」
寺尾紗穂、稲葉剛、吉水岳彦、佐野未来、ビッグイシュー販売者、他
●主 催:
「THE BIG ISSUE」 support Live vol.6実行委員会
●協 力:
有限会社ビッグイシュー日本、認定NPO法人ビッグイシュー基金
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、社会慈業委員会ひとさじの会
浄土宗 梅窓院
●問合せ:
singwithyourneighbors@gmail.com
※梅窓院(会場)へのお問合せはご遠慮下さい。
●備 考:
観覧席は倚子を200脚、座布団を100個ほど用意。ゆったり観れます。
小学生以下はチケット代なし。ぜひとも家族そろってお楽しみください。
※皆さまへのお願い※
当日、ホール内での飲食は禁止となっています。会場外もしくはロビーの飲食スペースをご利用くださいますよう、どうかよろしくお願いします。
2015年8月12日
メディア掲載
『子どものしあわせ』2015年7月号に稲葉のインタビュー記事が掲載されました。
「私を育ててくれた人たち」というテーマで語っています。
リレートーク:私を育ててくれた人たち
「個々の実存とむきあう」稲葉剛さん
路上生活者の方の生活支援に携わるようになって以来、「いのち・すまい・けんり」という言葉にこだわって活動を続けています。二〇〇一年に設立した自立生活サポートセンター〈もやい〉では、最初は湯浅誠との共同代表、二〇〇三年にNPO法人化してからは理事長。若手に理事長職をゆずった今は、理事としてかかわりながら、ホームレスの人たちが一時入居する個室シェルター事業を新たに立ち上げ、活動しています。
戦争にたいする憤り
広島出身ということもあり、戦争で理不尽に人の命が奪われることへの憤りはずっともっていました。幼いころに両親が離婚したので、母子家庭で育ったのですが、両親ともに原爆で家族や友人を失った経験を持っていました。母親は、一〇歳のときに疎開先の学校の校庭でキノコ雲を見て、その数日後に広島市内に入り、「入市被爆」をしました。積極的に語るわけではなかったですが、毎年夏になるとぽつりぽつりと当時の話をしてくれ、毎年、原爆が投下された八月六日の朝八時一五分にはテレビの前で黙祷する習慣がありました。そういう影響もあり、姉が高校生のとき、観光客に市内の被爆者慰霊碑を案内するボランティア活動をしていました。
小学校六年生のときの担任だった女性の先生のことは、よく覚えています。クラスのなかに、イジメとまではいかないけれど、無視するとか、席替えのときにあいつの隣になるはイヤだ、みたいなことがありますよね。そういうものを含めて、差別につながるんだと厳しく叱る先生でした。私たちの日常に潜んでいる、差別だと意識しないようなレベルの感覚も、実は社会の大きな問題とひとつながりなんだよと教えてくれていたんだろうと思います。
中学高校は、鹿児島にあるミッションスクールに進学し、寮生活をしました。自由な校風で、変わった先生も多く、のびのびやらせてもらったという気がします。生徒会活動を熱心にやって、新聞を学校に持っていって友達に政治的な議論をふっかけたりもしていました。そういえば、中学に入ったときに、親から買ってもらったのが、家永三郎さんの検定不合格教科書だったんです。こういうのも読んでおいたほうがいいよって。広島で育っているので、日本は戦争の被害者という意識が強かったのですが、加害者の側面もあることを知りました。
ひとりの人間として出会う
大学院に在籍していた一九九四年、東京都による新宿西口地下道の路上生活者強制排除があり、それに反対する活動にのめり込みました。強制排除で追い出された人たちが寒空のもと凍死するという事態は、自分にとっては、ある意味戦争と同じだったんです。自分たちの税金が人を殺すために使われるのはイヤだという生理的な嫌悪感と、強制排除をやめさせないと自分も加害の側に立たされてしまうという意識がありました。その後、仲間とともに新宿で野宿者支援の活動を立ち上げ、それが〈もやい〉設立につながります。
当時一緒に活動を立ち上げた見津毅くんが、「個々の実存とむきあう」という言葉を常々口にしていました。社会運動は、全体の社会的政治的状況の中でいかに効果的に動くかを考えるので、どうしても、一人ひとり、当事者の思いがないがしろにされがちな部分がでてきます。だけど、そういう一人ひとりの思いにもきちんと向き合っていく必要があるんだよ、と彼はよくいっていました。見津くんが若くしてバイク事故で亡くなった後も、ぼくは、彼の言葉はこの場面ではどういうことなのだろうと考えながら行動してきたように思います。
現在、力を入れている活動のひとつに、路上生活者への襲撃事件をなくす授業活動があります。こういった襲撃では、加害者の側の子どもたちにも、家庭が貧困だったり、ネグレクトや虐待があったりという状況が多くみられ、弱者が弱者をたたくという今の社会を象徴するような事件ともいえます。授業では、お題目のように「命は大切です」と唱えても子どもたちには伝わらないので、ホームレスの当事者あるいは経験者の方に一緒に教室に来てもらい、体験談を話してもらいます。“ホームレス”としてひとくくりで見るのではなく、だれだれさん、というひとりの人間として出会うことが大切だと思っています。
ますます弱肉強食的な社会になってきているなか、弱い立場の人に実際に会い、共感する機会を提供することが、これからの教育には求められるんじゃないでしょうか。最近は、中学生のときに稲葉さんの話を聞きました、とボランティアに来てくれる大学生もいてうれしいですね。
【いなば つよし】
1969年、広島市生まれ。東京大学教養学部教養学科卒。在学中から平和運動、外国人労働者支援活動にかかわる。
2001年、湯浅誠らと自立生活サポートセンター・もやいを設立し、幅広い生活困窮者の相談・支援活動を開始。2009年まで学習塾講師として生計を立てながら活動を続けた。生活保護制度の改悪に反対するキャンペーンにも本格的に取り組んでいる。現在、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科准教授。
近著に『生活保護から考える 』(岩波新書、2013年)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために―野宿の人びととともに歩んだ20年』(エディマン/新宿書房、2014年)など。
2015年8月11日
提言・オピニオン
本日8月6日(木)は、広島に原爆が投下されて70年の節目の日になります。
今日18時半から衆議院議員会館前で開催された「戦争法案反対国会前集会」(主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)には約3000人が集まりました。私も短いスピーチをおこないました。
以下にそのスピーチ原稿を転載するので、ご一読いただけるとありがたいです。
稲葉剛です。この4月から、NPOもやいの活動を続けながら、立教大学大学院で特任准教授として貧困問題を教えています。
7月31日に発足した「安全保障関連法案に反対する立教人の会」の呼びかけ人も務めさせていただいています。
「立教人の会」が学内のチャペルで開催した「発足の祈り」には立教大学の教職員・学生・卒業生が190人も集まり、「もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、 私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます」という声明を読み上げられました。
その声明の中に以下の言葉があります。
「『戦争』とは決して抽象的なものではありません。具体的な名前をもった若者たちが戦場で向かい合い、殺し殺されることを意味します。そして、子どもたちを含む多くの戦争犠牲者を生み出し、いのちの尊厳を踏みにじるものです。」
具体的な名前をもった若者が戦場で殺し殺され、具体的な名前をもった一人ひとりの子どもが命を奪われたり、心や体を傷つけられる。それが、戦争です。
70年前の今日、8月6日、10歳だった私の母親は、広島で幼なじみの友だちと叔母を失い、同じく10歳だった私の父親は家族を失って、原爆孤児になりました。
被爆二世として原爆の話を親から聴かされて育った私は、大学生の時に起こった湾岸戦争に反対するために友人たちと学生のグループを作り、平和運動に参加しました。
その後、バブル経済が崩壊し、1990年代半ばから街に路上生活を強いられる人があふれ出すと、私は炊き出しや夜回りなどの支援活動に関わりました。当時は新宿区だけで年間40~50人の人々が路上で命を落とすという状況があり、私は路上の人々の命を守ることが自分にとっての平和運動だと思って活動を続けてきました。
路上生活をしている人からライフヒストリーを聴くと、戦争の話がよく出てきました。
ある男性は9歳の時に大阪の空襲で戦災孤児となり、長年、各地の建築現場を渡り歩いて生きていました。家族全員が亡くなったために、自分が誰であるか証明できる人が一人もいなくなり、自分自身も空襲で死んだことにされて戸籍がなくなった。そのために正規の就職をすることができずに日雇いの仕事を続けている、ということでした。
また、私の父親と同じように広島の原爆により家族を失い、天涯孤独の人生を送ってきた男性にもお会いしました。この男性も戸籍を失い、炭坑や建築現場で働いてきた、という話をしてくれました。
路上生活者からは、自衛隊で働いた経験を聴くことがよくありました。
演習場での訓練の爆音によって難聴になって失業した人や、隊内の人間関係のストレスから精神疾患を患って働けなくなった人にもお会いしました。そうした人々のほとんどが、もともとは地方の貧困家庭の出身でした。
このように貧困家庭出身の若者たちが自衛隊にリクルートされるという経済的徴兵制は昔から存在しました。
安保法制が成立すれば、自衛隊の活動エリアは飛躍的に拡大し、自衛隊員が殺し殺されるリスクは確実に高まります。それによって自衛隊が人材不足に陥れば、防衛省はこれまで以上に貧困家庭の子どもたちにターゲットを絞って、経済的徴兵制を強化していくでしょう。
憲法違反の安保法制を推し進める安倍政権は、同時に生活保護基準を引き下げるなど、人々の命と暮らしを支える社会保障制度を後退させ、さらに労働者派遣法を改悪することによって貧困を拡大させようとしています。ある意味、安倍政権は自ら率先して、経済的徴兵制を拡大するための社会環境を整備していると言えます。
安保法制が通れば、具体的な名前を持った一人ひとりの人間の命が危険にさらされます。海外の戦場に送られた自衛隊が殺し殺される。国内に暮らす子どもや大人がテロの危険にさらされる。
一人の命が奪われれば、その家族や友人も人生が変わるほどのダメージを被ります。
戦後70年の夏に安保法案をぶつけてきた安倍首相が望んでいることは何でしょうか。
それは私たちが歴史を忘却することです。
ヒロシマ、ナガサキ、オキナワを、日本の被害や加害の歴史を私たちが忘却すること。それこそが彼の望んでいることです。
そうであれば、私たちは戦争の記憶を継承していくことで抵抗をしていけると私は考えます。
70年前の夏に、広島や長崎の子どもたち、大人たちに何が起こったのか。戦場に送られた若者たちに何をおこない、何をされたのか。
私が親から原爆の話を聴いて育ったように、親の世代から子の世代へ、祖父母の世代から孫の世代へ、記憶を継承することで、戦争への道をくい止めることができる。私はそう信じています。
※関連記事:【2015年7月1日】 平和フォーラムニュースペーパーにインタビュー記事掲載
※関連記事:「安全保障関連法案に反対する立教人の会」発足!声明に込められた戦争の記憶とは?
2015年8月6日
提言・オピニオン
東京都渋谷区は、今年4月に行われた区長選で初当選した長谷部健・新区長のもと、新たな野宿者支援プロジェクトを実施するための検討を始めました。
プロジェクトメンバーの一人である駒崎弘樹さん(認定NPO法人フローレンス 代表理事)が、自身のブログで明らかにしたところによると、プロジェクト名は「アイ リブ シブヤ」プロジェクトという名称になったようです。
「アイ リブ シブヤ」プロジェクト始めました(駒崎弘樹ブログ)
プロジェクトの検討会議は6月29日に第1回会合が開催され、7月24日の第2回会合には都内で生活困窮者への支援を実施している団体へのヒヤリングが行われました。
私は一般社団法人つくろい東京ファンドの代表者として、このヒヤリングに呼ばれたので、「東京におけるハウジングファーストの実践」というタイトルで発表をおこない、個室シェルター「つくろいハウス」の取り組み等について説明しました。
渋谷区がこれからホームレス支援施策を実施するにあたって、私が提言したのは以下の3点です。
ヒヤリング発表資料より
このうち、「自己決定権の尊重」に関しては、オーストラリア・シドニー市における「公共空間におけるホームレスのためのプロトコル(議定書)」を紹介しました。
2000年にオリンピックが開催されたシドニーでも、野宿者への排除が問題となり、支援団体と行政が議論を重ねました。
その結果、ホームレスの人は、本人が支援を要請した場合や苦しんでいる場合、その人のふるまいが自身や他者の安全を脅かしている場合などを除き、「介入されるべきではない」とする内容のプロトコルが締結されたのです。
ヒヤリング発表資料より
実は、このプロトコルの存在については、7月上旬にお会いした東京工業大学の土肥真人研究室の研究者から教えてもらったばかりだったのですが、あまりに素晴らしい内容なので、さっそく活用させてもらいました。
参考文献:「行政機関が締結している公共空間におけるホームレス・プロトコルの研究ーオーストラリアNSW州シドニー市を対象としてー」(PDF)
「公共空間にいるホームレスのためのプロトコル」(日本語訳:シドニー大学 河西奈緒)
渋谷区では、長年、行政による野宿者への排除が繰り返されてきました。その様子は、2012年に公開されたドキュメンタリー映画『渋谷ブランニューデイズ』(遠藤大輔監督)の中で、克明に描かれています。
ドキュメンタリー映画「渋谷ブランニューデイズ」予告編
この日のヒヤリングには、渋谷で野宿者支援をおこなってきた団体も呼ばれたようですが、参加していませんでした。
当事者と支援者でつくる「のじれん」は、7月23日付けで長谷部区長宛に手紙を出し、区長が直接、プロジェクトの趣旨や概要を説明することを求めています。
のじれんTwitterより。
@shibuyanojiren
私もヒヤリングの中で、地元の当事者・支援者と直接対話をおこなうことを求めました。
渋谷区が長年の対立を解消したいと本当に願っているのであれば、まずはシドニー市の取り組みを謙虚に学んだ上で、地元の団体と話し合いながら当事者の自己決定権に基づく支援の在り方を模索していくべきだと考えます。
2015年8月3日
メディア掲載
2015年7月17日付け信濃毎日新聞夕刊にインタビュー記事が掲載されました。共同通信の配信記事で、京都新聞、山形新聞にも掲載されました。
住まいの貧困問題 若者たちも孤立 支援を
NPO理事 稲葉剛さん
〈10人が亡くなった今年5月の川崎市の簡易宿泊所火災。不安定な居住環境で暮らす高齢者の「住まいの貧困(ハウジングプア)」問題を浮き彫りにした。しかし、ハウジングプアは高齢者だけでなく、今や多様な形で若い世代にも広がっていると、警告する〉
20年以上前から路上生活者の支援活動をしています。2001年に「自立生活サポートセンター・もやい」をつくりました。住まいの問題は、当初は「路上生活から抜け出たいのに、保証人がいないのでアパートに移れない」という50~60代の日雇労働者からの相談がほとんどでした。それが非正規雇用の拡大とともに、ワーキングプア層の20~30代の若者たちからの相談が、どんどん増えてきたのです。
仕事をして、その日の所持金でネットカフェやサウナに泊まったり、金がないと24時間営業のファストフード店で夜を過ごしたり、完全になくなれば路上生活…。住み込みの仕事で寮に入っても、解雇されると住む場所を失い、転々とする。
時々の状況で一晩を過ごす場所を変えるので、ネットカフェ難民のように寝る場所だけに注目しても意味がありません。仕事が不安定なワーキングプアが増えると住むところも不安定になるという意味では「表裏一体の問題じゃないか」と気づき、6年前に本を出版して問題提起しました。
ハウジングプアの問題は、住まいがないことで経済的な貧困から抜け出せない悪循環になるだけでなく、人間関係のつながりが切れ、社会的にも孤立すること。経済と人間関係の二重の貧困に陥ってしまいます。
〝路上一歩手前〟の若者は増え続けていると感じています。最近も「違法貸しルーム」が社会問題になったように、住む場所が多様化して、その実態が見えない不可視化が進んでいる。
非正規雇用で住まいの確保が難しい人は、無年金や低年金になりやすい。将来的には低所得の高齢者があふれかえる状況になるが、今の制度だと生活保護以外に使えるセーフティーネットがありません。それでいいのでしょうか。
〈対策に腰の重い行政に業を煮やし、「つくろい東京ファンド」を立ち上げた。住まいのない生活困窮者のために個室シェルターを提供する試みだ〉
欧米では「ハウジングファースト」と言い、住まいのない人の支援は、プライバシーが守られ安全が確保された住居の提供から始めるのが主流です。そこで、ビル所有者にマンション8室を提供してもらい昨年、個室シェルターを始めました。
住まいのない人がいる一方、空き家が約13.5%もあるというミスマッチは何とかならないか。国が空き家対策で低所得者に貸す仕組みをつくってくれるといいが、動きません。まず民間でモデル的な事業をやってみようと踏み出したわけです。大都市なら空き家の活用は有効だと思います。
ハウジングプア対策として「住宅省」をつくって、行政の一元化を図れと言いたいですね。箱物は国土交通省、生活に困窮している人への支援は厚生労働省と分かれ、現在は縦割りの弊害が大きい。これでは居住福祉的な観点が広がっていきません。国交省と厚労省がセットで動いて、箱物の規制や整備を行い、住まいに困っている人が適切な住居に入れる支援をやっていかないといけないのです。(聞き手・保坂渉/写真・萩原達也)
【いなば・つよし】
1969年広島市生まれ。東大教養学部卒。94年から路上生活者の支援活動に取り組む。認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人。今年4月から立教大大学院特任准教授。著書に「ハウジングプア」(山吹書店)「生活保護から考える」(岩波新書)など。
※つくろい東京ファンドへの寄付については、こちらのページをご覧ください。
2015年8月3日
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