シドニー「ホームレス議定書」を見習い、自己決定権に基づく支援を!渋谷区に提言しました。
東京都渋谷区は、今年4月に行われた区長選で初当選した長谷部健・新区長のもと、新たな野宿者支援プロジェクトを実施するための検討を始めました。
プロジェクトメンバーの一人である駒崎弘樹さん(認定NPO法人フローレンス 代表理事)が、自身のブログで明らかにしたところによると、プロジェクト名は「アイ リブ シブヤ」プロジェクトという名称になったようです。
「アイ リブ シブヤ」プロジェクト始めました(駒崎弘樹ブログ)
プロジェクトの検討会議は6月29日に第1回会合が開催され、7月24日の第2回会合には都内で生活困窮者への支援を実施している団体へのヒヤリングが行われました。
私は一般社団法人つくろい東京ファンドの代表者として、このヒヤリングに呼ばれたので、「東京におけるハウジングファーストの実践」というタイトルで発表をおこない、個室シェルター「つくろいハウス」の取り組み等について説明しました。
渋谷区がこれからホームレス支援施策を実施するにあたって、私が提言したのは以下の3点です。
このうち、「自己決定権の尊重」に関しては、オーストラリア・シドニー市における「公共空間におけるホームレスのためのプロトコル(議定書)」を紹介しました。
2000年にオリンピックが開催されたシドニーでも、野宿者への排除が問題となり、支援団体と行政が議論を重ねました。
その結果、ホームレスの人は、本人が支援を要請した場合や苦しんでいる場合、その人のふるまいが自身や他者の安全を脅かしている場合などを除き、「介入されるべきではない」とする内容のプロトコルが締結されたのです。
実は、このプロトコルの存在については、7月上旬にお会いした東京工業大学の土肥真人研究室の研究者から教えてもらったばかりだったのですが、あまりに素晴らしい内容なので、さっそく活用させてもらいました。
参考文献:「行政機関が締結している公共空間におけるホームレス・プロトコルの研究ーオーストラリアNSW州シドニー市を対象としてー」(PDF)
「公共空間にいるホームレスのためのプロトコル」(日本語訳:シドニー大学 河西奈緒)
渋谷区では、長年、行政による野宿者への排除が繰り返されてきました。その様子は、2012年に公開されたドキュメンタリー映画『渋谷ブランニューデイズ』(遠藤大輔監督)の中で、克明に描かれています。
この日のヒヤリングには、渋谷で野宿者支援をおこなってきた団体も呼ばれたようですが、参加していませんでした。
当事者と支援者でつくる「のじれん」は、7月23日付けで長谷部区長宛に手紙を出し、区長が直接、プロジェクトの趣旨や概要を説明することを求めています。
私もヒヤリングの中で、地元の当事者・支援者と直接対話をおこなうことを求めました。
渋谷区が長年の対立を解消したいと本当に願っているのであれば、まずはシドニー市の取り組みを謙虚に学んだ上で、地元の団体と話し合いながら当事者の自己決定権に基づく支援の在り方を模索していくべきだと考えます。
2015年8月3日