「安全保障関連法案に反対する立教人の会」発足!声明に込められた戦争の記憶とは?

提言・オピニオン

衆議院で強行採決された安保法制に対する反対の声が広がっています。

私の所属する立教大学でも、このたび「安全保障関連法案に反対する立教人の会」を設立され、7月31日(金)に開催される「安全保障関連法案に反対する学生と学者による共同行動」に合流することになりました。

会の設立集会は、キリスト教系の大学らしく、学内のチャペルで「発足の祈り」として開催されます。

安全保障関連法案に反対する立教人の会・発足の祈り(設立集会)
日時:2015年7月31日(金)14時〜15時
会場:立教学院諸聖徒礼拝堂(チャペル)(立教大学池袋キャンパス)

「立教人の会」の声明「もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、 私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます」には、84名の教職員(チャプレンや元職の方も含む)と1つの学生団体(SPAR 平和のために行動する立教大生の会)が呼びかけ人になりました。

私はこの4月に立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に着任したばかりで、立教にはまだ約4ヶ月しか在籍していないので、「呼びかけ人」になるのはおこがましいかとも思ったのですが、縁があって「呼びかけ人」に加えていただきました。

声明文の全文は以下のとおりです。ぜひご一読ください。

 

声明:もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、

私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます

 現在、国会では、安倍晋三政権が提出した「国際平和支援法」と 10 本の戦争関連法を改悪する「平和安全法制整備法案」が審議されており、衆議院平和安全法制特別委員会および衆議院本会議で採決・可決されました。これら安全保障関連法案は、日本国憲法第 9 条 に違反するものであり、日本を「戦争をしない国」から「戦争ができる国」へと変えようとするものです。安倍政権がこれを、十分に説明を果たさないまま審議を打ち切り、強行採決によって可決したことは、日本の立憲主義と民主主義を破壊する行為です。

私たちの立教大学は、太平洋戦争中の 1942 年 9 月に、創立以来のキリスト教主義による教育から皇国の道による教育に教育理念を変更して戦争に協力し、多くの学生を戦地に送り出したという歴史を持っています。その罪責の自覚のもと、戦後 70 年間、立教大学・立教学院はキリストの伝える平和に根ざした教育と研究を探求してきました。

「戦争」とは決して抽象的なものではありません。具体的な名前をもった若者たちが戦場で向かい合い、殺し殺されることを意味します。そして、子どもたちを含む多くの戦争犠牲者を生み出し、いのちの尊厳を踏みにじるものです。1945 年までの戦争への反省の上に立って戦後日本が国是としてきた平和主義に逆行し、日本に戦争への道を開く安全保障 関連法案の可決に、私たちは強く抗議し、法案の即時廃案を要求します。

古代キリスト教神学者であり、哲学者であるアウグスティヌスに帰せられる言葉に「希望には二人の娘がいる。一人は怒りであり、もう一人は勇気である」とあります。私たちは、人間としてのまっとうな怒りを持ち続け、それぞれの持ち場でできることをやっていく勇気をもって行動し、発信し、希望を創り出していくために、連帯していきます。もう二度と、学生たちに武器を取らせず、戦地に赴かせないために、私たちは、安全保障関連法案を廃案にすることを求めます。

2015 年 7 月 24 日
安全保障関連法案に反対する立教人の会

 

現在、立教大学・立教学院教職員、元教職員、学生、卒業生、その他立教に関係する方に声明への賛同を呼びかけています。賛同していただける関係者は、ウェブサイトのフォームにご記入をお願いします。

声明は、立教大学が「太平洋戦争中の 1942 年 9 月に、創立以来のキリスト教主義による教育から皇国の道による教育に教育理念を変更して戦争に協力し、多くの学生を戦地に送り出したという歴史」に言及しています。

現在、立教大学の池袋キャンパスにある立教学院展示館では、企画展「戦時下、立教の日々―変わりゆく「自由の学府」の中で」が開催されています。

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私も先日、この企画展を見学に行き、1247名もの立教大生が学徒出陣で戦地に送られたことを知りました。

展示館の常設展には、稀有な運命をたどった「寄せ書きが書かれた一枚の旗」が展示されていました。

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この「寄せ書きの旗」は、学徒出陣で出征し、戦死した渡邊太平さんが身につけていたもので、戦場で相対した米兵アール・ツヴィッキーさんのもとで60年以上保管されていたのことです。

2010年、67年ぶりに日本に帰還し、立教大学でご遺族への返還式がおこなわれました。

祈念礼拝「平和を祈る夕べ~寄せ書きの旗返還」(立教大学)

「立教人の会」の声明にある「「戦争」とは決して抽象的なものではありません。具体的な名前をもった若者たちが戦場で向かい合い、殺し殺されることを意味します。」という言葉は、大学に残る戦争の記憶を踏まえて書かれたものです。

「寄せ書きの旗」の返還に尽力された立教大学文学部長で、前副総長の西原廉太先生は、今年7月18日、安保関連法案の廃案を求める個人的な声明を発表されました。その中で、「寄せ書きの旗」をめぐる経緯について詳しく説明をされています。

西原廉太先生の「声明」

また、立教大学チャプレン団と立教大学キリスト教教育研究所(JICE)が7月17日に発表した『敗戦70年を迎えて』という声明書では、戦争中に「皇国ノ道ニヨル教育」をおこない、「創立以来のキリスト教主義大学としての教育理念を手放し、結果、多くの学生を戦地に送り出した、という過去」についての反省に立って、戦後の立教は「平和の構築に寄与する学問の探究」をおこなってきたと述べた上で、学生や教職員に対して「再び、日本が戦争に荷担し、人を傷つける蛮行へと向かわないように、しっかりと見張っていてください。」と呼びかけています。

「立教人の会」が今回発表した声明には、こうした立教大学の中で継承されてきた戦争の記憶と自らが戦争に荷担した歴史への反省が刻み込まれている、と私は感じています。

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