【2018年8月2日】朝日新聞「住を支える そしあるハイム火災から半年」にコメント掲載

メディア掲載

2018年8月2日付け朝日新聞朝刊「住を支える そしあるハイム火災から半年(上)困窮者の物件、届かぬ支援」に稲葉のコメントが掲載されました。

新たな住宅セーフティネット制度の課題について述べています。ぜひご一読ください。

 

https://www.asahi.com/articles/CMTW1808020100005.html

住を支える そしあるハイム火災から半年

2018年8月2日11時55分

(上)困窮者の物件、届かぬ支援

「家賃が安かったから『そしあるハイム』に入居した。我々みたいな人間は、ああいう古い木造のところに住むしかない」

札幌市東区の生活困窮者向け共同住宅「そしあるハイム」で1月に発生し、入居者11人が死亡した火災。2階の窓から飛び降りて助かった元入居者の中島勲さん(76)は振り返った。

ハイムの家賃は月3万6千円と安かったが、建物は木造で築50年ほど経過し、老朽化が進んでいた。火の回りが早く、被害拡大につながったとみられている。

中島さんは家賃の滞納で自宅アパートから退去し、知人の紹介でハイムに入った。経済的に困窮した人たちは、家賃滞納の懸念から一般的な賃貸住宅の入居を断られることが多い。その結果、家賃は安いが火災や災害に脆弱(ぜいじゃく)な物件にたどり着くことになる。

「入居断らない」

こうした人たちの住まいを確保するため、国は昨年10月、新たな住宅支援策を始めた。困窮者や高齢者、障害者らを「住宅確保要配慮者」と位置づけ、要配慮者の入居を断らない物件を「セーフティネット住宅」として都道府県や政令指定市などに登録する。登録には、耐震性や面積などの基準を満たす必要がある。

制度が始まって9カ月。住宅の登録数は伸びていない。7月30日現在、全国で1140戸。国は2020年度末までの目標として17万5千戸を掲げるが、達成率はわずか0・7%だ。

物件を登録した不動産業者は「面積など登録に必要な条件が厳しいうえ、図面提出や書類準備などの手続きが大変だった。他の業者は嫌がったのではないか。民泊をやった方が手っ取り早い、となる」と明かす。

国土交通省は7月、住宅セーフティネット法の施行規則を改正し、申請手続きを簡素化する対応を取った。図面の一部や建物の登記などの提出を原則不要にし、事務負担を軽減。25平方メートル以上とする面積要件は元々、自治体の判断で緩和が認められていたが、実際に緩和する自治体は少なく、国は同月、改正に合わせ改めて全国に周知した。

登録の地域的な偏りも課題になっている。都道府県別でみると、大阪が438戸で飛び抜け、東京162戸、山梨88戸、岡山81戸と続く。一方、登録ゼロは青森、長野、三重など24県で、10戸未満も宮城、埼玉、福岡など8道府県ある。

大阪府の登録戸数が突出している背景には、国が制度を始める以前から、府が同様の登録制度を独自に実施していたことがある。すでに府に登録されていた物件を、国の新制度へ移行させている最中だという。

「ぼやける対象」

府の登録戸数は全国最多なものの、全てが低所得者や生活困窮者の支援を目的にしているわけではない。全体の約半数にあたる211戸はサービス付き高齢者向け住宅と旧高齢者向け優良賃貸住宅(制度は現在廃止)。高優賃の物件を登録した不動産業者は「府内は介護事業者が多く、高齢の入居者の奪い合い。国の制度で安心感もあるし、物件を知ってもらおうと登録した」と狙いを話す。

北海道の登録は札幌市と帯広市の計8戸。札幌の業者は、地震などの自然災害で被災した人たちに住居を提供することを目的にマンションを登録した。「セーフティネットといっても、そしあるハイムの火災の件とは趣旨が別」という。

立教大大学院の稲葉剛特任准教授(居住福祉論)は「国が定義する『要配慮者』の範囲が広すぎるため、どの層を支援のターゲットにするかがぼやけてしまっている。困窮者にとって有効に機能させるには、家賃補助の利用をもっと進めていく必要があるのではないか」と指摘する。(布田一樹、磯部征紀)

札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で入居者11人が死亡した火災から半年。火災は、低所得者や身寄りのない高齢者らが安全な住まいに行き着くことの難しさを浮き立たせた。住まいのセーフティーネットをめぐる現状と課題を探る。

◆キーワード

<セーフティネット住宅> 生活困窮者や高齢者、障害者といった住宅確保に配慮が必要な人の入居を拒まない賃貸住宅。昨年10月に施行された改正住宅セーフティネット法で登録が始まった。貸主が物件を都道府県などに登録すると、物件情報がホームページで公開される。国と自治体から耐震改修工事などにかかる費用の3分の2(最大100万円)まで補助される。低所得者への家賃補助として最大4万円の助成を受けられるが、いずれも自治体がそのための予算を計上していることが条件だ。

 

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