【2015年1月25日】 東京新聞:差別助長、効果に疑問 大阪市の生活保護支給プリペイド化

メディア掲載

1月25日付け東京新聞朝刊の特報面に「差別助長、効果に疑問 大阪市の生活保護支給プリペイド化」という記事が掲載されました。

私も参加した生活保護問題対策全国会議の記者会見に関わる部分を中心に以下に一部転載します。

同会議の要望書もご参考にしてください。

プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書

 

差別助長、効果に疑問 大阪市の生活保護支給プリペイド化

全国最多の約十五万人の生活保護受給者を抱える大阪市は、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業を実施する。市によれば全国初の試みだ。二〇一六年度にも本格導入する。過度な浪費の防止が狙いだが、生活保護への風当たりが強いだけに、受給者は「偏見が助長される」とおびえる。肝心の削減効果も期待できず、受給者のプライバシー権と自己決定権を侵害するだけに終わりかねない。(白名正和)

生活保護費支給のプリペイドカード化は、橋下徹大阪市長が昨年12月26日の記者会見で発表した。橋下氏は「受給者の自立に向けた家計収支の把握に役立つ」と意義を強調した。

二千世帯の利用を目標に来月から希望者を募り、新年度から実施する。受給者には三井住友カード(東京)が発行するプリペイドカードを貸与。食料品や衣料品の購入などを目的とする生活扶助(同市では単身世帯で約8万円)のうち、約3万円をカードにチャージ(入金)する形で支給する。明細を市で確認し、過度な飲酒やギャンブルへの支出などがあれば、生活や金銭の管理の指導につなげる。

だが、特に恒例の受給者にとっては、カード使用自体への警戒感が強い。
「現金でしか買い物してへん、こんなおばあちゃんが、急にプリペイドカードなんか使い始めたら、すぐに生活保護の受給者だって分かってしまうやんか」。
大阪市港区のアパートで一人暮らしの女性(83)は不安を口にする。
(中略)

大阪市の生活保護受給者は2014年10月時点で約14万9千人。市区町村別では全国最多である。100人あたりの受給者は5.5人と、全国平均の1.7人を大きく上回る。14年の保護費は2944億円に上る。

市は12年度から「生活保護費の適正化」と銘打ち、保護費の削減に取り組む。主なターゲットは、過度な飲酒やギャンブルへの支出だ。今回のプリペイドカード化も、その流れの中に位置付けられている。

果たして効果はあるのか。全国の法律家や支援者でつくる「生活保護問題対策全国会議」は8日に厚生労働省で記者会見し、事業の撤回を求めた。

会議のメンバーで、依存症からの回復を支援するNPO法人・ジャパンマックの武沢次郎事務局長は「依存症の治療には金銭管理だけでなく長期的な治療が必要だ。カードを発行しただけでは効果は出ない」とみる。市は将来的に、一日に使える金額の限度額も設定できるようにする考えだが、「限度額を設けてもすべて酒やギャンブルにつぎ込むだけで、根本的な解決にならない」。

さらに問題なのは、細かな使い道まで行政側に把握されれば、プライバシー権や自己決定権を侵害しかねないことだ。この点、カードを使うかどうかは受給者の判断に委ねるようだが、浪費癖のある受給者が自らカード化に手を挙げる事態は想定しにくい。となれば、削減効果はない。

(中略)

全国会議メンバーの小久保哲郎弁護士は「利益を上げるのはカード会社だけの自治体規模の貧困ビジネスだ」と指摘した上で、「必要なのは、受給者の生活を支援するケースワーカーなどの体制を整えることだ」と訴える。

社会福祉法は、ケースワーカー一人当たりの受け持ち世帯の目安を80~65世帯と定める。大阪市は、働ける年齢の世帯は一人につき60世帯を受け持つ一方、高齢者の受給世帯は一人で380世帯を担当している。働ける世帯に集中するのは結構だが、高齢者世帯には支援が届きにくくなっている。

「カードで受給者を管理しても効果は望めない。保護費の削減が進む中、カード化が他の自治体に広がる恐れもある。一自治体の限定的な取り組みだからと放っておける話ではない」


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