【2014年7月1日】 週刊女性:漂流する高齢者の行き先

メディア掲載

「週刊女性」2014年7月15日号(主婦と生活社、7月1日発行)の記事「漂流する高齢者の行き先」の中で私の発言が掲載されました。

写真 (49)

私の発言に関わる部分のみを抜粋して掲載します。

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(前略)

貧困からアパートを借りられなくなり、住処を失う人たちも増えつつある。

困窮者支援を行うNPO法人『自立生活サポートセンター・もやい』理事の稲葉剛さんは、こう話す。

「’11年の東日本大震災以降、都内の木造アパートを取り壊してワンルームマンションに建て替えようとする動きが非常に目立ってきています。地域によっては2~3万円代のアパートがあったのに、どんどん取り壊されている。何十年も暮らしていた方は、出て行かざるを得なくなります」

建て替えられたマンションの家賃は月6~7万円とおよそ3倍に跳ね上がる。対して、年金は月に10万円前後。到底、払えない。

「次の部屋を借りようとしても家賃が高い。敷金・礼金などの初期費用も20~30万円はかかります。経済的に厳しいという問題に加えて、保証人が見つからないということも大きい。かつて頼んだ家族やきょうだいは亡くなられていたり、あるいは保証人が年金生活者では嫌がられることもあって、審査が通らなかったりする。年金が低いなど収入状況が悪いと、それも通らない理由になります」(稲葉さん、以下同)

また、入居差別の問題もある。孤独死が広く報じられるようになり、高齢者のひとり暮らしを敬遠する家主が増えたためだ。

「自室で亡くなったときに高額の賠償請求をする家主もいます。70歳より75歳というように、年齢を重ねるほど借りづらくなるのが実情。東京だけでなく、大きな都市部はどこも似たような状況だと思います」

住まいを失った高齢者はどこへ行くのか?

「生活保護しかなくなるわけですが、ただ、そのときも民間の住宅に入る際のハードルは変わりません。すると『無料低額宿泊所』という貧困ビジネスの温床になっているような施設に入れられてしまう。こうした状況は広がっています」

‘09年3月、群馬県渋川市にある高齢者入所施設『静養ホームたまゆら』で発生した火災は、貧困ビジネスとして大きく報じられた。亡くなった10人のうち6人が東京都墨田区、1人が東京都三鷹市で生活保護を受けており、施設にいた22人中15人は墨田区の紹介で入所していたからだ。

「都で生活保護を受けているのに、北関東や東北などの遠隔地の施設に送られてしまう。『たまゆら』で問題となって以来、都も対策は行っていますが、高齢者全体が増えているため、郊外へと送られる人の数も増えているのが実情です。また、特別養護老人ホームが空いていないので、役所の紹介で入れられてしまうパターンも増加しています」

サポートがあれば住み慣れた地域で暮らしていけるはずの人も、遠隔地へ送られてしまっているという。

「本来はきちんとした介護施設へ移るまで中間的に利用する施設ですが、平均入所期間がどんどん伸びており事実上、終の棲家になってしまっています。こうした施設は居住環境が悪いところが多く、認知症などの知識がある専門的なスタッフが配置されているわけではない。軽い認知症のある人や生活に困難のある方が、きちんとしたケアを受けられないまま失踪してしまうことも当然、起こり得る」

(中略)

国はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を増やすことで受け皿にしようとしているが、それだけで解決を図るのは困難だ。

「夫婦で子どもがいて、収入は年功序列で上がり、いずれ住宅ローンを組んで……という高度経済成長時代の家族モデルを前提に制度が作られているのが問題。例えば、行政やNPOが空き家を借り上げ低所得者向けの住宅として活用するなど、低所得者が最低限の住宅を確保できるよう考え方をシフトしていかなければならない」

(後略)

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