対談・インタビュー

湯浅誠との対談(前編)

対談・インタビュー

〈もやい〉を創設した二人の活動家、湯浅誠と稲葉剛。稲葉は理事長として〈もやい〉を13 年間まとめ続け、湯浅は〈もやい〉を飛び出して、活動の幅を多彩に広げて今に至ります。
とはいえ、どちらも気にかけるのは、貧困問題をどう世の中に訴えていくか。『おもやい通信』通算50 号を記念して、二人の対談が実現しました。

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「イメチェン」のこと

稲葉:まずは、湯浅誠くんが昨年イメチェンした理由について教えてもらえますか。
湯浅:軽い話のようで、結構真面目な話になる。私自身、これまでいろんな活動をしてきた。〈もやい〉もあったし、本も書いたし、テレビも出たし、年越し派遣村もやったし、内閣府参与もやった。その中で、理解してくれる人は増えたと思う。でも、それは世の中全体から見ればごく一部にすぎないということに、内閣府参与として公的政策を作ると中でぶつかった。民間の活動は、基本的に賛同してくれる人たちでやるけど、政策は反対する人の税金も使うから、本当の意味で世論の全体にぶつかる。そこで限界を感じたわけです。「自分で思いつくことは結構形にしてきたけど、それではまったく足りない」と。
そこで、自分で思いつく事はやってきたので、逆に、自分に思いつかないことをやってみようと思った。それで、今までの活動では出会わなかった異分野の人たちと積極的に会うようにしたら、「あんた、いろいろ言うんだったら、まず自分の恰好から変えてみたら?」っていう人がいた。まったく考えたこともなかったので、「じゃあ、それ採用」と。
稲葉:で、眼鏡変えたの?
湯浅:そう。眼鏡も変え、服も変え、靴も変え、鞄も変え、すべて変えた。服は全部、スタイリストの人が買ってくれたのを着ている。
稲葉:でも、微妙に戻ってるでしょ。
湯浅:そうかな? 戻ってないと思うけど。
稲葉:いやいや。去年、急に変えたばかりの時のイメージから、その後また元に戻りつつある。「ああ、整いきれてないな」という感じが…。
湯浅:そうなんだ・・・。
稲葉:君、もともと毎日、お風呂入ってなかったでしょ?
湯浅:お風呂は今でも毎日は入ってません。(会場大爆笑)
稲葉:だからさ、戻ってるなっていうのは、テレビ見てて、「あー、相変わらず髪がぺったんこだな、風呂入ってないな」と。
湯浅:あー、なるほど。イメチェンが不徹底であると。それはもう大切なアドバイスとして受け止めておきます。

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「現場」はどこにあるのか?

稲葉:(眺めまわしながら)うーん。で、採用して何やるの? それが良くわからないんだよね。やっぱり現場のこだわりってあるじゃない? 君が2002 年に渋谷の「のじれん」※を辞めた時に、路上の野宿者支援の現場から離れることに対する悲壮感に陥っていて、それに対して僕がメールをしたの、覚えてる?
(※のじれん:東京都渋谷区で活動する、野宿者問題の当事者団体。炊き出し、夜回り、医療福祉相談等を行っている)
湯浅:すみません。覚えてません。
稲葉:覚えとけよ(笑)。「別に路上だけが現場じゃない。〈もやい〉だって、ある意味、現場になり得るんだ」って。当時、〈もやい〉は社会的にそんなに注目されていなかったし、
今のように生活に困っている人たちがたくさん相談に来るっていう状況は想定してなかった。でも、「路上だけが現場じゃない! 〈もやい〉だって現場になりうるんだ」とメールを送ったわけですよ。それが、結果としてそうなったわけじゃん。〈もやい〉が現場となって、それから更に派遣村や内閣府参与の話があったわけだけど、それから先の湯浅君の動きが正直よく分かんないなって感じている。イメチェンを見て、〈もやい〉のスタッフの中にも「もう貧困からこの人は遠ざかってしまったんだ」って、ある意味、象徴的な出来事のように受け止めた人もいたんだよ。

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湯浅:そういう受け止め方をした人がいるということは、知っている。
稲葉:貧困の現場から距離が離れてしまったと感じた人は多い。もちろん、貧困だけが現場じゃないんだけど。
湯浅:一つは、何をやっていても「社会の当事者」ということから離れられないということがある。その意味では社会が現場です。
あともう一つは、〈もやい〉の役割は変わりなくあっていいし、あるべきだと思う。私は「活動家は一人三役だ」と言ってきた。対個人の対人支援と、対社会的な世論形成と、政治的な打ち込みと。人によって、重点の置き方はさまざまでいい。得手不得手もあるし。ただ、どんな配分でやるにしても、3つの次元全体を意識することが大事だと思う。
私自身はいま、社会的に、たとえば活動ではなかなか出会わないビジネスセクターの人たちだとか、市民活動の外側にいる人たちにアプローチしようとしている。そのことだけが唯一重要とは思っていない。ただ、それを自分の役割として引き受けたにすぎない。だから、他のことが意味がないと思っているわけではない。
稲葉:それは分かっているんだけど、自分の中では整合性は取れてるの?
湯浅:取れているかどうかというレベルではなく、必然と感じている。政策を自分でつくることがなければ、そう思わなかった可能性が高いけど、すでに経験してしまった。経験してしまったことを「なかった」ことにはできない。

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