【2019年2月8日】朝日新聞「無料低額宿泊所『法的位置づけ』効果は」にコメント掲載

メディア掲載

2019年2月8日付け朝日新聞「無料低額宿泊所 『法的位置づけ』効果は」に、稲葉のコメントが掲載されました。

https://www.asahi.com/articles/CMTW1902180100004.html

 

無料低額宿泊所 「法的位置づけ」効果は

同様の施設「無料低額宿泊所」へ

昨年1月31日の火災で入居者11人が死亡した生活困窮者向け共同住宅「そしあるハイム」(札幌市東区)は、法的な位置づけがない施設だった。国は同様の施設を無料低額宿泊所に位置づけ、規制を強める方針だ。札幌市は防火対策のため、火災後に独自の補助制度を設けたが、困窮者支援の現場に行き届くには、課題が多い。

来年春、安全確保の規制強化

ハイムは社会福祉法が定める「無料低額宿泊所」(無低)にも、老人福祉法上の「有料老人ホーム」にも当てはまらない、法的位置づけのない施設だった。行政による安全確保のための規制が及びにくく、補助の対象にもならなかった。

厚生労働省の調査によると、ハイムのような施設は2015年時点で全国に1236施設あった。このうち道内には307施設あり、3868人が入居していた。国は火災を受け、こうした施設を無低として位置づけようとしている。

来年4月に改正社会福祉法が施行されると、その無低に対する規制が強化される。設置するには、都道府県への事前の届け出が必要になる。施設の床面積や職員数、災害時の安全確保に関する基準を省令で定め、基準を満たさない施設には、都道府県が改善命令を出せるようにする。

さらに国は、ハイムのような施設を無低と位置づけることで規制を強める。時期は未定だが、省令や通知などで無低の定義を改め、来年4月の改正法施行に間に合わせたい考えだ。

一方、無低と位置づけられることで、補助を受けられるようにもなる。国は来年度、無低を対象に、スプリンクラーの設置といった防火対策工事の費用の補助を始め、国と都道府県で費用の4分の3を負担する。

立教大大学院の稲葉剛特任准教授(居住福祉論)は「首都圏を中心に貧困ビジネスが深刻な問題になる中、規制を設けて住宅の質を底上げすることには賛成だ」と話し、スプリンクラーの設置補助も評価する。その一方で、「規制のやり方次第では、これまで困窮者を幅広く受け入れてきた小規模な事業者などが運営しづらくなる可能性があり、注意を払う必要がある」とも指摘している。

消火装置、補助申請にも「壁」

札幌市は昨年11月、「自動消火装置」の設置費の補助を独自に始めた。火災時に熱を感知し、天井などから消火剤をまく装置で、価格は数万円。2万8700円を上限に、費用の9割を補助する。今月15日までに、すでに補助されたものも含め72世帯89台の補助が決まっている。65歳以上だけで暮らす高齢世帯が対象だ。

しかし、生活困窮者は高齢者に限らない。ハイムを運営していた「合同会社なんもさサポート」は現在、同市内のアパート22棟で一部の部屋を借り、入居者約220人を支援している。年齢は20代から70代まで幅広く、藤本典良代表は「補助の対象年齢ではない人の方が多い」と話す。

補助の対象になっていても課題はある。入居者が暮らすアパートはなんもさの所有物件ではない。自動消火装置の設置には大家の許可が必要で、補助申請のハードルになっている。

実際、高齢の入居者で補助を受けている人はいないという。藤本代表は「生活保護を受け、ギリギリの状態で暮らしている人にとって、数千円の自己負担はかなり厳しい」と話す。

ハイムの火災を受け、生活困窮者の支援団体も独自の取り組みをしているが、限界があるという。

NPO法人「ほっとらんど」(北広島市)は昨年6月、初めて避難訓練をした。消防から避難時の心構えについて助言を受け、消火器の使い方も学んだ。ただ、スプリンクラーの設置は、業者の見積もりで900万円以上かかることが分かり、断念したという。

なんもさは、入居者に灯油ストーブではなく、ガスストーブをできるだけ使うようお願いしている。ただ、避難訓練は一般の入居者の協力が必要で、実現していない。「制度が使えなければ、自分たちで最低限の防火対策をしていくしかない。お金をかけずに済む対策などほとんどないと思うが……」。藤本代表は、こう漏らした。(平賀拓史、遠藤美波、布田一樹)

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