【2019年2月5日】朝日新聞北海道版にインタビュー記事掲載

メディア掲載

2019年2月5日付け朝日新聞北海道版に、稲葉のインタビュー記事が掲載されました。

自立支援住宅「そしあるハイム」の火災から1年を経たことを踏まえた特集記事の一つです。

そしあるハイム 火災から1年 貧困に寄り添う

困窮者支援 背景にある問題は
福祉・住宅政策を一体で

立教大大学院特任准教授 稲葉剛さんに聞く

そしあるハイムのように高齢者や障害者が暮らす施設で多くの犠牲者が出た火災は、過去にも繰り返されてきました。背景には、構造的な問題があります。

ハイムの運営会社は、行政の補助金などがない中で、行き場を失った人たちの住宅支援を手弁当でやってきたのだと思います。

民間の団体や個人が住宅支援をしようとすると、提供できるのは誰も借り手がつかないような木造の古い建物になりがちです。入居者は足の不自由な高齢者や障害者のなどの「災害弱者」が多い。火事で逃げ遅れるリスクの高い人たちが、災害に弱い物件に行き着くことになります。

民間任せの行政に責任がある。生活保護を中心とした福祉政策と、公営住宅などの住宅政策を一体で進めなければならないのに、厚生労働省と国土交通省が縦割りで動いてきました。

地方自治体は財政難の中、公営住宅の数を抑えており、十分な受け皿になっていません。生活保護はあっても、住まいという「器」は自力で用意しないといけない状況です。

貧困には、経済的な貧困と人間関係の貧困という二つの側面がある。困窮者支援には、一から人間関係を作り直すような支援も重要です。例を挙げるなら、「子ども食堂」。栄養バランスの取れた食事が提供されると同時に、地域の大人たちや子ども同士でつながることができる。人と人のつながりを結び直す場所としても機能しています。

貧困状態にある人は、恥ずかしいという気持ちを内面化しがち。困っていることをなかなか周囲に言えない。地域でいろんな人とつながれば、相談できる関係性が生まれるはずです。

アメリカには「ゲーテッド・コミュニティー」と呼ばれる町があります。周辺を壁で囲い、その中で富裕層だけが集まって暮らしているのです。税金が貧困対策に使われることへの拒絶感が強くなった結果です。

塀のすぐ外でホームレスの人が路上で亡くなっていても、見て見ぬふりをするのか。それとも、どんな環境に生まれても、誰もが最低限の生活を営める社会にするのか。私たちがどういう社会を選択するのか、という問題だと思います。

【略歴】
1969年、広島県生まれ。立教大大学院特任准教授(居住福祉論)。一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表理事を務め、住まいを失った生活困窮者のためのシェルターやホームレス経験者が働くカフェなどの運営に関わる。著書に「貧困の現場から社会を変える」など。

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