生活保護引き下げは貧困層の社会保障を脅かすと国連人権専門家が警告

提言・オピニオン

5月24日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の人権専門家(国連人権理事会の「特別手続き」に属する専門家で、テーマ別特別報告者)は、プレスリリースを発表し、日本政府が進めている生活保護基準の引き下げについて、貧困層の社会保障を脅かすとして警告を発し、見直しを求めました。

また現在、国会で審議されている生活保護法改正案の中に、生活保護利用者のみにジェネリック医薬品を事実上強制する条文が含まれていることについても、「生活保護受給を理由に、医薬品の使用に制限を課すことは、国際人権法に違反する不当な差別に当たる」と懸念を表明し、改正案を慎重に再検討することを求めました。

 

プレスリリース英語版はこちら。
国連の特別報告者に関する説明ページはこちら。今回のプレスリリースを行なったのは、4名のテーマ別特別報告者です。

プレスリリースの日本語版は下記の通りです。

特別報告者たちは日本政府との対話を求めていますが、強制力があるわけではないので、政府が対話に応じるかどうかはわかりません。
日本政府がこの警告を正面から受け止め、特別報告者との対話を行うことを求めていきたいと思います。

【以下はプレスリリースの日本語版全文です】

日本:「貧困層の社会保障を脅かす生活保護削減」国連の専門家が警告

ジュネーブ(2018年5月24日)国連の人権専門家*は、今年10月から実施予定の生活扶助費の段階的な引き下げについて、貧困層、特に障害者、一人親世帯、また高齢者の最低限の社会保障を脅かすものとして、日本政府に見直しを求めた。

昨年12月に生活扶助の支給額が今後3年間で最大5%引き下げられることが決定されたのを踏まえ、人権専門家が警告を発した。今回の措置により、現在の受給世帯の約3分の2の世帯で生活扶助額が減額される見通し。

「日本のような豊かな先進国におけるこのような措置は、貧困層が尊厳を持って生きる権利を踏みにじる意図的な政治的決定を反映している」と専門家は述べた。

「日本は緊縮政策が必要な時においても、差別を撤廃し、すべての人に基本的な社会的保護を保証する義務がある。貧困層の人権への影響を慎重に考慮せずに採択されたこのような緊縮政策は、日本の負っている国際義務に違反している」と付け加えた。

今回の削減は、2013年に行われた同様の生活保護の予算削減に続くものである。専門家は、年収を10段階に分けた場合の最も低い所得世帯層の消費支出の状況に基づいて生活保護基準を見直すという方式の正当性に疑問を呈している。

「この基準に基づいて決定される最低生活水準は、国際人権法で要求される適切な生活水準と合致しない。このような欠陥のある方式に基づく受給額減額によって、日本はますます多くの人々を貧困に陥れることになる」と主張した。

「高齢者の貧困と社会的排除により、またも多くの人々が声を上げられないまま苦しむことになろう。これらの政策が修正されなければ、貧困に最も影響を受けやすい人々、特に女性の高齢者、女性世帯主世帯、女性の障害者などを傷つけるだろう」と強調した。

「今回の削減によって最も打撃を受けるのは障害者であろう。経済的負担の増加により、施設に入ることを余儀なくされたり、自殺を図るケースが増えているとのが報告もある。生活扶助費の削減は、障害者権利条約によって保証された、障害者が地域社会で自立して生存する平等の権利を奪うものである」と専門家は述べた。

専門家は、国際義務に基づき、生活扶助費の引き下げの包括的な人権アセスメントを行い、そして負の影響を緩和するために必要な対策を講じるよう、政府に要請している。
また、専門家は、政府が生活保護改正法案を現在審議していることに触れ、生活保護受給者が非受給者と同等に医療を受ける権利を制限する可能性があると指摘した。「生活保護受給を理由に、医薬品の使用に制限を課すことは、国際人権法に違反する不当な差別に当たる。政府は改正法案を慎重に再検討するよう強く要請する」と述べた。

専門家は、日本政府にすでに直接懸念を表明した。

以上

* 今回の声明を発表した国連人権専門家一同:フィリップ・オルストン氏、極度の貧困と人権の特別報告者;ホアン・パブロ・ボホスラブスキー氏、対外債務と人権の独立専門家;カタリーナ・デバンダス氏、障害者の権利の特別報告者;ローザ・コーンフェルド・マッテ氏、高齢者の人権の独立専門家。
国連人権専門家は、国連人権理事会の「特別手続き」に属する専門家である。「特別手続き」とは数々の独立専門家を擁する、国連人権機構の中の最大組織である。特定の国における人権状況やテーマ別の人権状況について事実調査・監視を行う、国連人権理事会の独立した数々のメカニズムを総称して「特別手続き」という。全ての国が調査対象となる。「特別手続き」の専門家は国連職員ではなく、金銭的報酬も受け取らず、自らの意思で調査に取り組む。いかなる政府、組織からも独立し、個人の資格で任務にあたる。

-国連人権高等弁務官事務所(OHCHR) 各国ページ 日本:
http://www.ohchr.org/EN/countries/AsiaRegion/Pages/JPIndex.aspx

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