日々のできごと
TIMELINEというウェブメディアにハウジングファースト東京プロジェクトの取り組みを紹介する動画(約3分)を作っていただきました。
私がインタビューに応じており、つくろい東京ファンドの個室シェルター「つくろいハウス」や夜回りの様子も出ています。
下記よりご覧ください。
[NEWS] ホームレスというレッテルを外す。東京から始まる新しい自立支援とは
ハウジングファーストに関する動画は、こちらにもあります。まだの方はぜひご覧ください。
ハウジングファースト東京プロジェクト
『ハウジング・ファースト』 フィラデルフィアにおける成功の記録
※稲葉が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドは、都内の7つの団体で作るハウジングファースト東京プロジェクトに加入しています。つくろい東京ファンドのウェブサイトは、こちらです。
2018年3月30日
講演・イベント告知
《4・18院内集会》
公共住宅、民間住宅の居住実態と真のセーフティネット
―改正住宅セーフティネット法の成立から1年―
日時:2018年4月18日(水) 12時30分~15時
会場:参議院議員会館・B107会議室(地下1階)
(地下鉄「永田町」駅からすぐ)
※事前予約不要。12時から議員会館玄関で通行証配布します。
〔開催趣旨〕
昨年4月19日「高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など」を新たに盛り込んだ「改正住宅セーフティネット法」が全党の賛成によって成立しました。
それから1年、今年3月までの登録住宅は500戸程度(国の計画は3月末までに2万5千戸)にとどまります。
こうした中で、真のセーフティネットの実現を求め、公共住宅、民間住宅の居住実態を明らかにし、施策の抜本転換などについて各党国会議員の方々と意見交換します。
〔プログラム〕
◆ 主催者あいさつ 稲葉 剛 (住まいの貧困に取り組むネットワーク・世話人)
◆ 基調報告 坂庭国晴 (国民の住まいを守る全国連絡会・代表幹事)
◆ 各党国会議員のあいさつ
◆ 居住実態と家賃問題など真の住宅セーフティネットについての報告
公営住宅、UR(公団)賃貸住宅、公社賃貸住宅、民間賃貸住宅の各居住者団体から
◆ 識者と会場からの発言、意見交換
〔開催団体〕
国民の住まいを守る全国連絡会、住まいの貧困に取り組むネットワーク、借地借家法改悪反対全国連絡会(全国公団住宅自治会協議会など)、日本住宅会議・関東会議
〔連絡先〕
NPO住まいの改善センター
℡03-3837-7611 fax03-6803-0755
※関連記事:世代を越えて広がる「住まいの貧困」。国会での真摯な議論を求めます。
2018年3月21日
提言・オピニオン 日々のできごと
いのちのとりで裁判全国アクションと生活保護問題対策全国会議は、3月19日、厚生労働省に生活保護基準引き下げ撤回等を求める署名と生活保護「改正」法案に関する要望書を提出しました。
要望の項目は以下のとおりです。
1 2013年度からの史上最大(平均6.5%、最大10%、総額670億円)の生活扶助基準の引き下げを撤回してください。
2 2018年10月からのさらなる生活扶助基準の引き下げ(平均1.8%、最大5%、総額160億円)はしないでください。
3 今国会で審議予定の生活保護「改正」法案のうち次の各条文案は削除してください。
①生活保護法63条に基づく「払いすぎた保護費の返還債権」について非免責債権化するとともに保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護「改正」法案77条の2及び78条の2
②生活保護利用者については「原則として後発医薬品によりその給付を行う」とする生活保護「改正」法案34条3項
4 2018年度から全国的に推進するとしている「薬局一元化事業」は実施しないでください。
5 すみやかに政務三役が直接当事者・支援者の声を聴く機会をもうけるとともに,今後,生活保護基準の見直しや法改正を行う場合には,必ず当事者や支援者の意見を聞くようにしてください。
以 上
また、生活保護問題対策全国会議が作成した意見書も同時に提出しました。こちらの意見書には、現在、国会に提出されている生活保護「改正」法案の問題点が詳しく書かれています。全文は以下のページでご覧ください。
生活保護「改正」法案の一部削除等を求める意見書
申し入れには、国際NGOの「世界の医療団」のスタッフも同席して、生活保護利用者のみにジェネリック医薬品の使用を原則化することに反対する声明を提出しました。
声明:生活保護受給者に対する後発医薬品(ジェネリック)の使用を原則化する法案の撤回を求めます | 国際協力NGO 世界の医療団
要望書等を提出した後、定塚社会・援護局長との話し合いが行われました。
この話し合いには、各地で生活保護を利用している4人の当事者も参加し、発言をしました。
もともと、私たちは厚生労働省の政務三役が生活保護の利用当事者に直接会うことを求めていました。
今年3月5日、参議院予算委員会で、山本太郎議員(自由党)と安倍晋三首相との間で、以下のような質疑がありました。
山本:総理、(生活保護の)当事者の声聞いたことありますか。聞いたことがない、聞いたことがないのであればセッティングします、直接聞いていただきたいんです。(生活保護基準の引き下げによって)もう今みんなぎりぎりなんですよ。死ぬか生きるかなんです。よろしくお願いします。
安倍:まさにこれは担当の厚労大臣がしっかりと所管をしているわけでありますから、そうした声については担当の大臣あるいは役所からしっかりと承りたいと、このように考えております。
このやりとりを受けて、私たちは厚生労働大臣または副大臣、政務官が当事者と会って、直接、話を聞くことを求めてきました。しかし、「政務三役の都合がつかない」ということで、この日は社会・援護局長が対応することになったのです。
話し合いには、山井和則議員、山本太郎議員、初鹿明博議員、高橋千鶴子議員も同席してくれました。
ただ、社会・援護局長の対応は通り一遍のものでした。今後、政務三役との話し合いをセッティングしてほしいという要望にも、「私が三役の代わりに出てきている」と述べて消極的でした。
参加した当事者の方々は、その後の記者会見でそれぞれ「話が伝わった気がしない」とお話しされていました。
30代の女性は、「声は届いたとは思えない。政務三役に会いたいという気持ちでいたが、かなわなかった。社会・援護局長に、今回の基準引き下げ発表の後に緊急に実施したホットラインに寄せられた切実な声をお伝えした。食事の回数を減らすなど、基本的な生活の部分を削らないと生活できない状態になっている。愚痴を聞いてほしいわけではなく、当事者の声を聞いた上で制度に反映させてほしい」と述べていました。
最年長の八木さんは、「最近は、私たちの声は国会には届かないと思うようになった。5月で92歳になるが、歩ける間はがんばっていきたい」とお話されていました。
2013年法改正の「附帯決議」にも「受給者」の意見を聴くと明記
2013年に生活保護法の一部が「改正」された際、参議院厚生労働委員会で採択された附帯決議には、「5年後の見直しに際しては…生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を充分聴収した上で、必要な改正を行なうこと」と記されていました。
附帯決議の全文はこちら。
しかし、5年後にあたる今回の法改正の手続きにおいて、当事者の声は全く反映されていません。これは決議違反だと言えます。
引き続き、厚生労働省の政務三役が当事者に直接会う場の設定を求めていくので、ご注目をお願いします。
※関連記事:【2017年12月29日】SYNODOSに生活保護に関するインタビュー記事掲載
2018年3月20日
メディア掲載
2018年3月4日付け神奈川新聞に、稲葉へのインタビューに基づく記事「受け皿、行政が役割を 札幌火災1カ月 問われる生活困窮者住宅」が掲載されました。
記事は下記リンク先で読むことができます。全文を読むには登録が必要です。
受け皿、行政が役割を 札幌火災1カ月 問われる生活困窮者住宅 http://www.kanaloco.jp/article/314998
同日のこちらの記事にも、稲葉のコメントが出ています。
困窮者、行き場どこへ 札幌支援住宅火災1カ月 「人ごとではない」 http://www.kanaloco.jp/article/315001
※関連記事:世代を越えて広がる「住まいの貧困」。国会での真摯な議論を求めます。
2018年3月15日
提言・オピニオン
今年に入り、「住まいの貧困」に関連するニュースが相次いでいます。
「ネットカフェ難民」、都内だけで4000人
1月26日、東京都は「住居喪失不安定就労者」、いわゆる「ネットカフェ難民」の実態調査の結果を発表しました。
「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果|東京都
それによると、都内のネットカフェ、漫画喫茶、サウナ、カプセルホテルなどをオールナイト利用している人のうち、住居を喪失しているか、喪失するおそれがあると見られる人は約4000人いると推計されています。
年齢別には30代が38.6%と最も多く、次いで50代(28.9%)が多くなっています。20代も12.3%いて、20~30代の若年層が全体の半分を占めていることになります。
住居喪失者の平均月収は、11万4千円。お金のない時は路上生活をしている人は全体の43.8%もいて、かなり厳しい生活を強いられていることがわかります。
この問題については、新聞やラジオから取材を受けたほか、「若年者をめぐる格差への取り組み」をテーマに開催された2月14日の参議院国民生活・経済調査会に参考人として招致された際にも、都の調査結果を紹介しました。
私は調査会において、「ネットカフェ難民」が増えている背景に、都市部で住宅を確保する際の初期費用が高いという問題があることを指摘した上で、従来の住宅政策を転換して、若者への住宅支援を強化する必要があることを国会議員に訴えました。
私の問題提起に対する各会派の議員の反応はさまざまでした。私の提言に賛意を示してくれる議員も少なくありませんでしたが、中には「ネットカフェに暮らす若者たちは甘えているのではないか」、「きつい仕事を避けているのではないか」と、自己責任論を振りかざしてくる議員もいました。
調査会の議事録も公開されているので、ご参考にしてください。
第196回国会:国民生活・経済に関する調査会第3号(2018年2月14日)議事録
また低所得者が犠牲となった札幌・共同住宅火災
1月31日には、生活困窮者の自立支援を掲げる札幌市の共同住宅「そしあるハイム」で火災が発生。入居者16名のうち11名が死亡する惨事となりました。
「そしあるハイム」を運営する合同会社「なんもさサポート」は、札幌市内において同様の共同住宅を約20ヶ所、運営しており、路上生活者など行き場のない生活困窮者の受け入れを行なってきたことで知られていました。
この火災については、新聞やラジオから取材を受け、火災の背景にある構造的な問題について解説をしました。
【2018年2月9日】毎日新聞などに札幌・自立支援住宅火災の背景を論じた記事が掲載
【音声配信】「低所得者・高齢者住宅の課題とは」稲葉剛×高橋紘士×荻上チキ▼2018年2月5日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)
昨年の5月と8月には、北九州市と秋田県横手市で、それぞれ生活困窮者を受け入れていたアパートで相次いで火災が発生しました。
その際、私は2件の火災に共通する背景に、民間団体が独自の住宅事業を行なう際の資金不足など「民間の善意の限界」があるという点を指摘しましたが、今回の札幌の火災でも同じ構図があったと私は考えています。
まったくの偶然ですが、札幌での火災が発生した翌日の2月1日、NHKの『クローズアップ現代+』で「思いがけない退去通知 あなたも住宅を追われる!?」という番組が放映されました。
この番組は、老朽化したアパートの取り壊しなどで賃貸住宅に暮らす高齢者が立ち退きに遭うケースが増えており、高齢者が次の住宅を探そうとしても、孤独死を恐れる大家さんがなかなか部屋を貸してくれないという実態を紹介していました。
この番組にスタジオゲストとして生出演をした私は、前日に起こった札幌の共同住宅火災に関連して、「こうした住宅や宿泊施設は、ホームレスの人たちを受け入れ、アパートに移ってもらうまでの間の一時的な居所として民間団体によって整備されてきたが、近年、そうした場所に、もともとアパートで暮らしていた高齢者が立ち退きに遭って入所してくる、という『逆流現象』が起きている」と指摘しました。これも「住まいの貧困」の広がりを示す現象だと思います。
番組内容の文字起こしはこちらのサイトでご覧になれます。
思いがけない退去通知 あなたも住宅を追われる!? | NHK クローズアップ現代+
屋内での凍死増加の背後にも「住まいの貧困」がある。
高齢者の住宅に関連するニュースとしては、今年2月3日に共同通信が配信し、各紙に掲載された「凍死、熱中症死の1・5倍/冬の寒さ 屋内でも要注意」という記事もショッキングでした。記事の内容は、2000年から2016年にかけて低体温症で死亡した人の数は累計で1万6千人にのぼり、熱中症による死者の1・5倍に上る、凍死の大半が屋内で起こっており、背景には高齢化や貧困、孤立の問題がある、というものでした。
東京新聞:凍死、熱中症死の1.5倍 冬の寒さ 屋内でも要注意:社会(TOKYO Web)
私はこの問題でもラジオ番組でコメントを求められ、低所得者の住環境の問題が影響している可能性が高い、と指摘しました。
【音声配信】「熱中症よりも多い凍死!その実態と背景とは?」横田裕行×藤部文昭×稲葉剛×荻上チキ▼2018年2月13日放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)
2015年の厚生労働省の調査では、生活保護世帯の暮らす住宅の13.8%が「腐朽・破損あり」と判定されており、老朽化した木造住宅で隙間風に耐えながら生活をしている人が多いことがわかっています。
今年の冬は東京でも複数回、雪が降るなど、特に寒さが厳しかったのですが、私がふだん接している生活保護利用者の中には、築40年を越す木造アパートのエアコンのない部屋に暮らしているため、室内の気温が4度以下になったこともあったと話している人がいました。
この人は、毎晩、パーカーとジャンパーを重ね着して、その上から布団をかけることで、寒さをしのいだと言っていましたが、同様の住環境で暮らしている低所得者の中には、寒さにより健康を害している人も少なくないと思われます。
遅々として進まない「住宅セーフティネット」の整備
このように、国内における「住まいの貧困」は世代を越えて広がっています。
国の対策の「切り札」として、昨年4月に住宅セーフティネット法が改正され、10月に空き家を活用したセーフティネット住宅事業が始まりました。しかし、事業開始から5ヶ月近く経っても、空き家の登録数は全国で500戸程度と伸び悩んでおり、半年で2万5千戸という目標にほぼ遠い状況です。
【国土交通省】セーフティネット住宅情報提供システム
私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、改正住宅セーフティネット法の制定から間もなく1年になるのを踏まえ、4月18日(水)12時半から参議院議員会館で院内集会を開催する予定です(詳細は後日お知らせします)。ぜひご注目ください。
世代を越えて広がる「住まいの貧困」にどう向き合うのか。国会の場で正面からの議論が行われることを求めていきます。
※関連記事:改正住宅セーフティネット法が成立!まずはハウジングプアの全体像に迫る調査の実施を!
2018年3月10日
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