CRIMELESS 事業検討委員会の委員として「意見書」を発表しました。
今年3月、大阪でホームレス支援を行なってきたNPO法人Homedoorが「GPSによる治安維持とホームレス雇用の両立」(CRIMELESS事業)というアイデアでGoogleインパクトチャレンジのグランプリを受賞したことは、関係者の間で大きな議論を呼び起こしました。
防犯の見回りを実施するにあたり、事業の従事者に危険が及ぶのではないか、一般市民から情報を集めることにより監視社会の助長につながるのではないか、といった懸念や批判が多くの個人や団体から寄せられました。
そのため、NPO法人Homedoorは、今年4月、CRIMELESS事業を再考するための第三者機関として検討委員会を立ち上げました。私もこの事業には懸念を抱いており、事業の見直しを促したいと思い、委員の一人として検討委員会の議論に参加しました。
CRIMELESS事業について検討委員会を開催することになりました(NPO法人Homedoor)
検討委員会は議論を重ねた結果、「防犯」を事業目的として掲げる以上、根本的な問題点を払拭できないことを指摘し、「防犯」に関わる事業を実施しないよう、Homedoor事務局に勧告しました。
しかし、本日7月22日、Homedoorは「Google インパクトチャレンジ受賞事業について」というウェブサイト上のリリースで、事業を一部手直ししながら「防犯」事業を実施することを表明しました。
表明された方針では、「犯罪数の減少等の目標を掲げることは行わず、地域への貢献活動としての見守り活動を主目的としていくこと」が述べられています。
個人的には「犯罪数の減少等の目標」を設定しないという点は評価したいと思いますが、「防犯」事業そのものを撤回すべきだという検討委員会の結論が反映された内容にはなっていません。
検討委員会は委員全員の連名で以下の「意見書」を発表しました。ご参考にしてください。
私個人としては事業の抜本的な見直しを実現したいと思って委員会に参加していただけに、力不足を痛感しています。
Homedoor事務局の決定が残念でなりません。
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意 見 書
2015年7月2 2 日
CRIMELESS 事業検討委員会
委 員 生 田 武 志
同 稲 葉 剛
同 木 原 万樹子
同 徳 武 聡 子
同 中 桐 康 介
同 福 原 宏 幸
今般 、N P O 法 人 Homedoor が 、Google インパクトチャレンジでグランプリを受賞した事業について、正式に事業開始することを決定したとの報告を受け、上記事業検討委員としては、下記のとおり、意見を表明いたします。
記
1 見直し後も事業に伴う危険が存すること
市民の声をもとに防犯パトロールを行った場合、誤解や偏見にもとづく通報がなされる危険性があり、 現に野宿生活を強いられている人達を排除する結果をうみかねません。
2 当事者に対する配慮が欠けること
上記事業が 「防犯」を標榜する以上、大きなトラブルにまき込まれる可能性はあり、放置自転車対策活動に従事していた当事者にとって、予想外の危険な活動に当事者をまきこみかねません。
3 検討委員会の議論が反映されていないこと
以上の問題点をはらんでいることは、検討委員会において再三指摘し、 Homedoor としても、いったんは「防犯」事業の中止を表明しておられました。
にもかかわらず、 当初事業案を撤回せず、事業開始を決定されたことは、 遺憾であるといわざるを得ません。
以 上
2015年7月22日