【2014年5月9日】 中日新聞:「監視社会助長」懸念も 生活保護不正通報、12市導入

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http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014050990085418.html

「監視社会助長」懸念も 生活保護不正通報、12市導入

2014年5月9日 08時54分

生活保護費の不正受給に関する情報を住民から募る専用電話(ホットライン)が、少なくとも全国12市で開設されている。市側は「不正受給が増え、行政だけでは発見できない事案もある」と説明するが、受給者の支援団体や有識者からは「本当に必要な人が申請しにくくなる」「監視社会を招く」との批判も出ている。

さいたま市は2月末、ホットラインを設置。「生活保護適正化」を名目に、専用電話とメールで(1)不正受給(2)生活困窮者(3)貧困ビジネス-などの情報を受け付け、保護課や各区役所の福祉課が調査する。保護課は「市民に情報提供してもらい、早期に対応することで不正件数の削減につながれば」と説明する。4月末までに47件の情報が寄せられた。内訳は不正受給関連が14件、生活に困っている人に関する情報が6件。不正があるかどうかはこれから調査する。

最も早く設置したのは大阪府寝屋川市で2011年8月。13年までに大阪府の東大阪など6市、京都府の京都市、八幡市が設置。今年に入ってから、北海道函館市が4月中旬、福岡市が今月初めに開設した。寝屋川市では13年度は252件の情報が寄せられ、うち25件で受給が止められた。

生活保護は08年のリーマン・ショック後に受給者が急増。12年に高額所得者とみられる人気芸能人の母親が受給者だったことからバッシングが激化した。改正生活保護法に盛り込まれた不正受給対策と保護費抑制策が一部を除き今年7月から実施されるのも影響し、ホットラインを設置する自治体は徐々に増えている。12年度の不正受給は約190億5千万円で過去最悪。保護費全体では0・5%程度だった。

一方、さいたま市がホットライン設置に合わせて作成したちらしに、情報提供を求める例として「財産を隠している」「世帯構成が虚偽」などと列挙したのに対し「受給者が犯罪者予備軍であるといった偏見を助長する」などと苦情が寄せられ、4日後にちらしを差し替えた。

自立生活サポートセンター・もやいの稲葉剛理事長は「行政は本来『困ったときは相談してください』と広報するべきなのに、かえって生活困窮者を窓口から遠ざけかねない。本当に不正受給を減らしたいのならば、うわさレベルの情報に人数を割くのではなく、ケースワーカーを増やすべきだ」と批判する。


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