こんなに多くが「住まい」に不安・危機感

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「ホームレスに保証人提供。アパート入居を支援」という内容の記事が新聞に掲載されて以来、事務所の電話が鳴りっぱなし。

「他人事とは思えない」「金利が低い銀行に預けるくらいなら」と、保証人提供事業を支える市民債権を購入したいという申し出が次から次に来る。一口五万円という決して安くはない「買い物」をあえてしようとする多くの市民(なぜか女性が多い)の声を聞いていると、「この社会捨てたもんじゃない」という気になってくる(注:市民債権は2001年に募集し、2003年に返還。寄付金に振り替えてくれた方も多かった)。

一方で、「新聞記事を読んだのですが、私にも保証人を提供してくれるのでしょうか」という相談の電話も後を絶たない。路上生活やビジネスホテル住まいを強いられているホームレス状態の人たちだけでなく、一人親家庭、年金生活者、外国人労働者、精神障がい者などさまざまな境遇にある人たちから「アパートを立ち退かないといけないのだけど、次の保証人が見つからない」「保証人なしでいいアパートを探しているけど不動産屋では相手にしてもらえない」といった切実な相談が寄せられる。また、「今後、離婚して一人暮らしをするかもしれないけど、その際の保証人が心配」と電話をかけてきた専業主婦がいたように、将来的な住まい確保の不安を口にする相談者も多かった。

「住まい」という生活の根幹にかかわることに危機感や不安を抱いている人がこれほどいるということは、予想をはるかに上回る驚きだった。小さな市民団体に過ぎない自分たちが今まで誰も開けてこなかった「パンドラの箱」を開けてしまったのではないか?
相談業務に忙殺されながら、そんな懸念を打ち消せないでいる。

「困っている人に保証人を提供し、安心してアパートに入ってもらう」だけが私たちの活動の目的ではない。保証人が見つからないことに象徴される都会の人間関係の希薄さ。その極限の形態である「路上生活の末の孤独死」を見続けてきた私たちは、同時にホームレス状態に追い込まれた人々が助けあって、互いの命を支えていく「仲間どうしのつながり」を確かに路上で目撃してきた。だからこそ私たちは極限状態に置かれた人々の姿に学び、「孤立」へと人々を導く現代社会において生活困窮者自身が手を取り合って「人的なセーフティネット」を再構築していくことを目指していきたいと考えている。

現代に生きる多くの人々が感じている「住まいの喪失」「人間関係の喪失」という危機に対して、正面から立ち向かう社会福祉関係者が一人でも増えてくることを心から願う。

(2001年10月15日付け『福祉新聞』「福祉週評」欄掲載)

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