『若者の貧困・居場所・セカンドチャンス』が刊行されました。

日々のできごと 書評・関連書籍

このたび、青砥恭+さいたまユースサポートネット編『若者の貧困・居場所・セカンドチャンス』が太郎次郎社エディタスから刊行されました。

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この本は、さいたま市を中心に社会に居場所をなかなか見つけられない若者や子どもへの支援活動を展開するNPO法人さいたまユースサポートネットが主催した連続講座やシンポジウムの内容をまとめた書籍で、私も「若年ホームレス問題と生活保護」に関するパートを担当しています。

ぜひご一読ください。

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『若者の貧困・居場所・セカンドチャンス』
青砥恭 編 さいたまユースサポートネット 編

発行日 2015年06月発行
判型 四六判
頁数 240ページ
価格 本体2000円+税
ISBN ISBN978-4-8118-0782-9
Cコード C0036

内容
このままでは若者が「国内難民化」する?!

貧困家庭の子ども325万人(6人に1人)、好転しない不登校・ひきこもり、高校中退者はこの10年で100万人超。若年無業者が増加している。学生でも社会人でもない不安定な10代・20代。使い捨てられて無業となる30代。変わらなければならないのは、「若者」だろうか?

学校が育ちの場にならず、企業社会にはイスがない。従来型ライフコースからはずれていく多くの若者を、だれが、どこで、どのように支えているのか。

「学び直し」「居場所づくり」「就労支援」を実現する貧困研究の生きた知見と、先進的な実践者が集い、安心して普通に生きられる社会へのモデルを指し示す。

執筆者
稲葉剛〈若年ホームレス問題と生活保護/NPO法人自立生活サポートセンター・もやい〉
黒田安計〈発達障害への視点/さいたま市保健福祉局保健部〉
才門辰史〈非行少年のリ・スタート/NPO法人セカンドチャンス!〉
関口昌幸〈コミュニティビジネスと行政/横浜市政策局〉
津富宏〈就労支援・静岡方式/静岡県立大学教授〉
中西新太郎〈居場所論/横浜市立大学名誉教授〉
松田考〈就労支援と連携/札幌市若者支援総合センター〉
宮本みち子〈若者政策/放送大学副学長〉
山野良一〈子どもの貧困対策/千葉明徳短期大学教授〉

目次
【序】子ども・若者支援がめざすもの
「高校中退」から「セカンドチャンス」へ●青砥恭

【第1部】現場でいかす
[現場のための「生活保護」入門]私たち自身のまなざしが問われている●稲葉剛
[現場のための「発達障害」入門]子どもの特性を医療の視点から理解する●黒田安計
[現場のための「相対的貧困率」入門]相対的貧困率と子どもの貧困対策法を考える●山野良一

[コラム]生きる場所はどこに①──自己責任論を超えて●戸高七菜

【第2部】現場からはじまる
[市民が伴走する地域若者サポートステーション◎静岡方式]働きたいけれども働けない若者たちと●津富 宏+池田佳寿子
[学校と社会のすきまを埋める支援ネットワーク◎札幌]新規の来談、毎月40名●松田考
[少年院を出た若者たちのネットワーク]セカンドチャンスを支える 少年院出院者として●才門辰史
[地域でサービス、モノ、カネ、ヒト、情報がまわる仕組み◎横浜]就労支援から地域経済の再生へ●関口昌幸

[コラム]生きる場所はどこに②──子ども・若者の貧困と格差が日本社会に突きつけたもの●青砥恭

【第3部】視点をひらく
[日本の現実と各国の若者政策]若者が自立できる環境をどうつくるか●宮本みち子
[普通に安心して働くことが困難な時代に]居場所という〈社会〉を考える●中西新太郎
[問題提起を受けてのトーク]見えてきた課題と新しい社会のモデル●松田考+宮本みち子+関口昌幸+中西新太郎+青砥恭

著者紹介
青砥恭(あおとやすし)
NPO法人さいたまユースサポートネット代表理事。1948年生まれ。元埼玉県立高校教諭、現在、明治大学・埼玉大学講師。子ども・若者と貧困、自立…続きを読む
さいたまユースサポートネット(さいたまゆーすさぽーとねっと)
2011年設立。高校を中退、通信制高校生、不登校や引きこもりを経験、障害で生きづらさを感じている子ども・若者など、この社会に居場所がなかなか見つからない子ども・若者たちを無償で応援するNPO法人。

【2015年6月18日】 東京新聞:川崎・簡易宿泊所火災に関するコメントが掲載

メディア掲載

2015年6月18日付け東京新聞の特報面に「『怖いけど ついのすみか』川崎・簡易宿泊所火災1カ月ルポ」という記事が掲載されました。

NPO法人もやいによる厚生労働省への申し入れや私のコメントも詳しく掲載されています。

※関連記事:単身・低所得の高齢者が安心してアパート入居できる仕組みを!

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015061802000185.html

【特報】「怖いけど ついのすみか」 川崎・簡易宿泊所火災1カ月ルポ

10人が死亡した川崎市川崎区の簡易宿泊所(簡宿)火災から17日で1カ月。簡宿は、高齢の生活保護受給者の最後のトリデとなっている。現場を歩くと、身寄りのない「住人」たちは「火事は怖いが、ほかに居場所がない」と口をそろえた。対策はあるのか。困窮者を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛さん(45)は、民間アパートの借り上げによる公営住宅の拡充などを提案している。 (白名正和)

(中略)

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今月十日、東京・霞が関の厚生労働省。稲葉さんはNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の仲間とともに、同省の担当者に「困窮と住宅問題を統一的に議論してほしい」と申し入れた。

「過去に起きた類似の火災の際も要望したが、建物は国土交通省、利用者は厚労省の管轄と分かれるため、有効な対策が打ち出せていない。根本的な解決策がないまま悲劇が繰り返されている」。要望の後、稲葉さんは記者に強調した。

「類似の火災」の一つが、群馬県渋川市の無届け老人施設「静養ホームたまゆら」だ。二〇〇九年三月、入所する高齢の生活保護受給者ら十人が死亡した。施設の壁の一部にはベニヤなど燃えやすい素材が使われ、火災報知設備も設置していなかった。

二年後には、東京・大久保の築四十八年の木造二階建てアパート「ローズハウス林荘」が全焼し、生活保護を受ける単身高齢者五人が死亡。アパートは四畳半一間がほとんどだった。

「川崎の火災も含め、高齢の受給者が住宅の選択肢を失って劣悪な環境に追いやられ、火災によって命を失った点で共通している」と稲葉さんは指摘する。

困窮する高齢者の住宅確保は難しい。本来の受け皿である公営住宅だが、川崎市内では約一万七千戸があるものの空きはほとんどなく、新規建設の予定もない。
民間アパートもハードルが高い。保証人が確保しづらく、孤独死を嫌う大家も貸し渋るためだ。実際、日本賃貸住宅管理協会の一〇年の調査では、高齢者の入居に拒否感がある大家は全体の59・2%に達した。

稲葉さんが、ある契約書類を見せてくれた。「もやい」が法人として高齢者の保証人となった際に大家と交わしたものだ。「(孤独死した場合は)部屋全体の原状回復を行わなければならず、相応の費用をご負担いただくことになります」との一文が明記されていた。これでは、一般の人は二の足を踏むだろう。

中には受給者を受け入れる「福祉可」という物件もあるが、「建物が老朽化していることが多く、大久保の物件のように、住環境が良いとは言えない」(稲葉氏)。こうなると選択肢は、無料低額宿泊所や簡宿しか残らない。

川崎市は一三年十一月、簡宿の住人にアパートへの転居を促す取り組みを始めた。今年三月末までに百十五人が簡宿を出たが、宿泊所で生活保護を受ける人の数は、制度の導入前後でほぼ変わらない。

川崎市保護課の担当者は「受給者が出ても、別の受給者が入ってくる」と説明する。一時的な宿であるはずの簡宿が、住宅に困る困窮高齢者の受け皿となっている実態が見て取れる。火災現場や簡宿を歩いた記者の実感とも重なる。

では、どうするべきなのか。稲葉さんは以前から「自治体が民間アパートを借り上げる形の公営住宅を増やし、さらに公的な入居保障制度を導入することで、アパートが借りやすくなる。空き家対策として、民家への入居を促す方法もある」と唱えてきた。

公営住宅の新規建設よりは、現実的な提案に聞こえるが、行政の反応は鈍かった。川崎の火災を受けても、国交省は違法建築の確認と是正を徹底する通知、厚労省は情報収集にとどまる。川崎市は、再発防止に向けた対策会議を開いているが、違法建築対策が主な議題だ。

稲葉氏は「通知を出すだけでなく、今こそ、困窮高齢者の住宅対策を一から話し合うべきだ。(簡宿の利用者は)これまでの住宅政策の不備によって『ここでいい』と思わされてしまっている。住宅政策の不備をこれ以上押しつけてはいけない」と訴える。

 

【2015年6月15日】 民医連新聞にインタビュー記事が掲載されました。

メディア掲載

2015年6月15日付け民医連新聞に、生活困窮者自立支援法に関するインタビュー記事が掲載されました。

※関連記事:仕事さえあれば、貧困から抜け出せるのか?~生活困窮者自立支援制度の問題点

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http://www.min-iren.gr.jp/?p=23748

4月からスタートした生活困窮者自立支援法 問題点は? 自立生活サポートセンター・もやい理事 稲葉剛さんに聞く

今年四月から生活困窮者自立支援法が施行されました。地方自治体は「生活困窮者」の自立支援事業を行わなければいけなくなりました。当初は「生活保護の手前のセーフティーネット」として議論されていた同法ですが、「社会的孤立者」への支援が削られるなど、問題もはらんでいます。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事の稲葉剛さんに聞きました。

民主党政権(二〇〇九~一二年)時、「生活保護の手前のセーフティーネットを充実させよう」と議論が始まりました。一二年暮れに自民党が政権に返り咲くと、法制化される過程で内容が縮小していきました。
民主党の「生活支援戦略」では「経済的困窮者・社会的孤立者を早期に把握し、必要な支援につなぐ」と書かれていました。しかし「社会的孤立者」という文言は削除されました。支援内容を就労支援に限定し、支援の対象も「就労できそうな層」に絞り、就労が見込めない高齢者や障害者は排除しています。

■経済給付は一部のみ

事業には、自治体が行わなければならない「必須事業」と、やってもやらなくてもいい「任意事業」があり、必須は「自立相談支援事業」と「居住確保支援」のみ。家計相談や子どもへの学習支援などは任意事業になります。支援内容に地域格差が生じるでしょう。
「中間的就労」をすすめていることも問題です。これは就労訓練の一つで、最低賃金以下で働いてよいことになっています。生活困窮者が最賃以下の劣悪な労働環境に置かれ、労働市場全体の劣化も招きます。
同法には経済的な給付はほとんどありません。生活に困窮している人たちにとって、最低限のお金は必要不可欠です。しかし、政府の方針は「社会保障費を減らす」ことですから、「支援にはつなげるが、お金は渡さない」内容なのです。

■機能しない住宅支援

唯一の経済給付は「住居確保給付金」ですが、家賃補助(三カ月)の対象を離職者に限定しており、非常に使い勝手が悪いのです。
ネットカフェや脱法ハウスで暮らす人の多くは仕事をしています。収入は低く、せいぜい月一四~一五万円程度。敷金や礼金を用意できず、劣悪な脱法ハウスなどで暮らさざるをえません。生活困窮者ですが、仕事をしているため、給付金は利用できません。
給付金の前身である住宅手当・住宅支援給付の実績を見ると、制度開始時の二〇〇九年に三二九〇件だった新規利用は一三年には九〇一件に激減。一方で常用就職率は七・八%から七五・四%に上昇しました。自立支援事業に変わっても同じことが危惧されます。

■就労に偏った支援

相談窓口業務は民間委託が可能です。受託した事業者は実績を求められます。新規利用を減らせば就職率は上がるので、再就職ができそうな人にしか給付金の利用を認めないなどの運用になりかねません。
すでにパソナなどの人材派遣会社に委託する自治体も。派遣会社が福祉的な対応をするとは考えにくく、自社で安い労働力として働かせる危険まであります。
もともと自治体には、困窮者のための生活保護の窓口があります。それと別に新しい窓口を作ることで、生活保護を受けるべき人が自立相談窓口に回され、「就労支援」しか受けられず、帰されかねません。同法からは「仕事さえ与えれば貧困から抜け出せる」という発想が透けて見えます。

■雇用と住居の充実を

同法が主な対象としている若年層の現状から、あるべき支援を考えてみましょう。こんなデータがあります。二〇~三〇代で未婚・年収二〇〇万円未満の人の七七%が親と同居。一方、四人に一人は親と別居で、うち一三・五%が「定まった住居がない」経験が「ある」と回答。広い意味でのホームレス状態です。
若年層に貧困が拡大しているのは、度重なる法改正で低賃金で不安定な派遣労働を拡大し、非正規労働者が急増したためです。雇用の劣化と住居確保へのアクセスの悪さこそ解決しなければなりません。
生活保護につなぐべき人がつなげられないなど、制度の問題点が浮き彫りになってくると思います。ぜひ医療や福祉の現場で働く人たちが発信してほしい。それが制度改善の力になります。(丸山聡子記者)

いなば・つよし 1969年、広島市生まれ。被爆二世。立教大学准教授。東京大学在学中から平和運動や外国人労働者支援に関わり、94年から路上生活者支援。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。09年、「住まいの貧困にとりくむネットワーク」を設立。11年から生活保護改悪に反対するキャンペーンを展開。

(民医連新聞 第1598号 2015年6月15日)

【つくろいハウス】屋上にミニ菜園が誕生!

日々のできごと

個室シェルター「つくろいハウス」の入っているビルの屋上にミニ菜園ができました。

入居者のうち、最高齢のKさんが「屋上にプランターを設置して、植物を育てたい」とスタッフに要望。ゴールデンウィークにプランターや土を買ってきました。

何を育てるか、話し合った結果、やはり実用も兼ねてトマトやキュウリ、ピーマンを植えることに。

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Kさんが丹精込めて育てた野菜は、初夏の陽気の中ですくすく育ち、一部は早くも収穫の時期を迎えています。

収穫した野菜は、月1回、みんなでおこなっている食事会でも使わせていただく予定です。

 

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そんな野菜たちを、Kさんがいつの間にか屋上に設置した風車が見守っています。

つくろい東京ファンドのウェブサイトはこちら。

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