【2015年6月18日】 東京新聞:川崎・簡易宿泊所火災に関するコメントが掲載

メディア掲載

2015年6月18日付け東京新聞の特報面に「『怖いけど ついのすみか』川崎・簡易宿泊所火災1カ月ルポ」という記事が掲載されました。

NPO法人もやいによる厚生労働省への申し入れや私のコメントも詳しく掲載されています。

※関連記事:単身・低所得の高齢者が安心してアパート入居できる仕組みを!

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015061802000185.html

【特報】「怖いけど ついのすみか」 川崎・簡易宿泊所火災1カ月ルポ

10人が死亡した川崎市川崎区の簡易宿泊所(簡宿)火災から17日で1カ月。簡宿は、高齢の生活保護受給者の最後のトリデとなっている。現場を歩くと、身寄りのない「住人」たちは「火事は怖いが、ほかに居場所がない」と口をそろえた。対策はあるのか。困窮者を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛さん(45)は、民間アパートの借り上げによる公営住宅の拡充などを提案している。 (白名正和)

(中略)

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今月十日、東京・霞が関の厚生労働省。稲葉さんはNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の仲間とともに、同省の担当者に「困窮と住宅問題を統一的に議論してほしい」と申し入れた。

「過去に起きた類似の火災の際も要望したが、建物は国土交通省、利用者は厚労省の管轄と分かれるため、有効な対策が打ち出せていない。根本的な解決策がないまま悲劇が繰り返されている」。要望の後、稲葉さんは記者に強調した。

「類似の火災」の一つが、群馬県渋川市の無届け老人施設「静養ホームたまゆら」だ。二〇〇九年三月、入所する高齢の生活保護受給者ら十人が死亡した。施設の壁の一部にはベニヤなど燃えやすい素材が使われ、火災報知設備も設置していなかった。

二年後には、東京・大久保の築四十八年の木造二階建てアパート「ローズハウス林荘」が全焼し、生活保護を受ける単身高齢者五人が死亡。アパートは四畳半一間がほとんどだった。

「川崎の火災も含め、高齢の受給者が住宅の選択肢を失って劣悪な環境に追いやられ、火災によって命を失った点で共通している」と稲葉さんは指摘する。

困窮する高齢者の住宅確保は難しい。本来の受け皿である公営住宅だが、川崎市内では約一万七千戸があるものの空きはほとんどなく、新規建設の予定もない。
民間アパートもハードルが高い。保証人が確保しづらく、孤独死を嫌う大家も貸し渋るためだ。実際、日本賃貸住宅管理協会の一〇年の調査では、高齢者の入居に拒否感がある大家は全体の59・2%に達した。

稲葉さんが、ある契約書類を見せてくれた。「もやい」が法人として高齢者の保証人となった際に大家と交わしたものだ。「(孤独死した場合は)部屋全体の原状回復を行わなければならず、相応の費用をご負担いただくことになります」との一文が明記されていた。これでは、一般の人は二の足を踏むだろう。

中には受給者を受け入れる「福祉可」という物件もあるが、「建物が老朽化していることが多く、大久保の物件のように、住環境が良いとは言えない」(稲葉氏)。こうなると選択肢は、無料低額宿泊所や簡宿しか残らない。

川崎市は一三年十一月、簡宿の住人にアパートへの転居を促す取り組みを始めた。今年三月末までに百十五人が簡宿を出たが、宿泊所で生活保護を受ける人の数は、制度の導入前後でほぼ変わらない。

川崎市保護課の担当者は「受給者が出ても、別の受給者が入ってくる」と説明する。一時的な宿であるはずの簡宿が、住宅に困る困窮高齢者の受け皿となっている実態が見て取れる。火災現場や簡宿を歩いた記者の実感とも重なる。

では、どうするべきなのか。稲葉さんは以前から「自治体が民間アパートを借り上げる形の公営住宅を増やし、さらに公的な入居保障制度を導入することで、アパートが借りやすくなる。空き家対策として、民家への入居を促す方法もある」と唱えてきた。

公営住宅の新規建設よりは、現実的な提案に聞こえるが、行政の反応は鈍かった。川崎の火災を受けても、国交省は違法建築の確認と是正を徹底する通知、厚労省は情報収集にとどまる。川崎市は、再発防止に向けた対策会議を開いているが、違法建築対策が主な議題だ。

稲葉氏は「通知を出すだけでなく、今こそ、困窮高齢者の住宅対策を一から話し合うべきだ。(簡宿の利用者は)これまでの住宅政策の不備によって『ここでいい』と思わされてしまっている。住宅政策の不備をこれ以上押しつけてはいけない」と訴える。

 


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