あまりに非人道的な生活保護の住宅・冬季加算ダブル削減方針
1月14日に閣議決定される2015年度予算案で、生活保護費のうち住宅扶助と冬季加算が削減されることが大臣折衝で決まりました。
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家賃に相当する住宅扶助は、国費ベースで2015年度に約30億円、2018年度には約190億円の削減を見込んでいると報道されています。
厚生労働省は、有識者で構成される社会保障審議会・生活保護基準部会の報告書を踏まえて引き下げを決めたと説明しているようですが、ライターのみわよしこさんが報告されているように、同部会の報告書は引き下げを容認する内容にはなっていません。
生活保護の住宅扶助引き下げを、社保審・生活保護基準部会は決めていません(みわよしこ)
報告書のとりまとめがなされた1月9日の部会を私も傍聴しましたが、民間の委員からは口々に「引き下げ方針」がマスメディアで事前報道されていることへの不快感が表明されていました。
安倍政権が社会保障費全体を削減していくという方針を明確にする中で、厚生労働省は財務省からの削減圧力に屈してしまったのでしょう。
私は、NPO法人もやいで生活保護利用者の入居支援(アパート入居時の保証人や緊急連絡先の提供)をおこなってきた経験から、「現状でも生活保護の住宅扶助基準は十分ではない」ということを訴えてきました。
2013年には、東京都千代田区で生活保護利用者が福祉事務所職員の紹介により「脱法ハウス」に入居していたことが社会問題になりましたが、その背景には住宅扶助の基準内で入居できるアパートが地域の中にないことがあります。
国土交通省の調査でも、「狭小・窓無し」のシェアハウス(脱法ハウス)の入居者のうち、11%を生活保護利用者が占めていたことが明らかになっています。
車いすで暮らす障がい者からも、現状の基準では車いす生活をできる居住環境を確保できない、という問題が指摘されています。
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厚生労働省の調査でも、生活保護利用者の住宅の13.8%に「腐朽・破損」があることが判明するなど、居住環境が劣悪であることが判明しています。
今回の削減方針は予算の大枠を決めただけであり、具体的にどの地域で、どのような形で基準が引き下げられるかは明らかになっていませんが、現状でも住宅扶助基準が充分と言えない状況で、さらに生活保護利用者の居住環境が悪化してしまう危険が高まります。
また、冬季加算の引き下げは寒冷地で暮らす生活保護利用者の健康悪化につながりかねません。
しかも、住宅扶助と冬季加算が同時に下げられると、2つの引き下げによる相互作用で、さらに深刻な影響を与えかねません。
一般に、家賃の水準と住居の断熱性・気密性は比例関係にあります。
家賃が低ければ、「腐朽・破損」があり、すきま風が吹く木造の住宅に暮らさざるをえません。すると、当然、暖房費は鉄筋の住宅に暮らすよりも高くかかります。
現在でも、そのために暖房費の捻出に苦慮している生活保護利用者は多いのですが、冬季加算が下げられると、最悪の場合、生命の危機に直結してしまいます。
厚生労働省や財務省は、こんなことも理解できないのでしょうか。あまりに人々の生活実態が見えていないと言わざるをえません。
ただでさえ、生活保護の生活費にあたる生活扶助基準は段階的に引き下げられています。食品などが値上がりしているにもかかわらず、厚生労働省は今年4月に第三弾の引き下げを強行しようとしています。
人々の健康を害し、いのちをないがしろにする非人道的な住宅扶助・冬季加算の削減方針の撤回を求めます。
2015年1月13日