生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する記者会見を行いました

提言・オピニオン

本日(2014年7月9日13時~)、厚生労働記者会において、生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する記者会見が行われました。kaiken

●プレス向け告知・主な発言者一覧はこちら
●共同声明(全文)はこちら

会見の冒頭「生活保護の住宅保護基準引き下げの動きに反対する共同声明」の趣旨説明をした稲葉剛の発言と、身体障がいをもつ生活保護利用当事者として登壇された川西浩之さんの発言を以下に書き起こします。

稲葉剛


hatugen01よろしくお願いします。
「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の世話人で、「生活保護問題全国対策会議」の幹事も務めております稲葉と申します。
私からは生活保護の住宅保護基準引き下げの動きに反対する共同声明の内容についてご説明させていただきます。
お手元に共同声明の文章があるかと思いますが、それと基準額の一覧表がついた資料がありますので、あわせてご覧ください。

ご存知のように厚生労働省の社会保障審議会、生活保護基準部会で現在生活保護基準をめぐる議論が急ピッチで進められております。
基準部会では昨年一月に、まず生活扶助の基準について引き下げを容認する報告をまとめ、それに基づいて昨年8月から生活保護基準の段階的な引き下げが始まっております。
今年の4月にまた、第二段の引き下げが行われておりますが、その後基準部会では、今度家賃分にあたる住宅扶助に関する議論が進められております。

今年の5月16日には第17回の部会、30日には第18回の部会、一ヶ月の間に二度も部会が開催されるという状況になっていて、今後スケジュールと致しましては、7月以降調査を進めて、11月にはとりまとめを行うというような流れになっております。
7月以降には生活保護を受けている世帯の居住実態に関する調査を行うということで、細部について部会の中で作業部会を作って細部を詰めた上で実施して、その報告を受けて11月には取りまとめを行い、おそらく来年度から住宅保護基準の引き下げという動きになっていくのではないか、と推測しています。

こうした動きに対して反対するための共同声明を本日発表したわけですけれども、さまざまな問題点があるといえます。
まず、最初から、これは生活保護基準の時も同様のことがあったんですが、厚労省の方で最初から引き下げありきという形で議論を誘導しているのではないか、ということです。
たとえば第17回の部会の中では、財務省の財政制度等審議会の資料がそのまま出されているのですけれども、そこに「住宅保護基準の水準」ということで、生活保護基準の基準額と一般低所得世帯の家賃実態の棒グラフの比較がありまして、住宅保護基準が4.6万円、一般低所得者世帯の家賃実態が3.8万円ということで、わざわざグラフのところに「住宅保護基準の方が2割程度高い」というような指摘がなされています。

ただ、これを細かく見てみますと、住宅保護基準の方は、これは地域ごとに住宅保護の基準が定められてまして、これは上限額なわけですね。
あとで述べますように、特に大都市部においては住宅保護基準の上限額に家賃が擦り寄ってしまうという傾向はあるのですが、それでも実際は全ての生活保護世帯の方のアパートの家賃が全て上限額ということはありえないわけです。上限以下の方もたくさんいるわけです。
にもかかわらず、上限額と、一般低所得者世帯の家賃の平均額を比較するというのはミスリーディングではないかということが、実際部会の委員からも指摘が出ています。
これはあきらかに引き下げありきの方向に議論を誘導するものではないか。
おそらく財務省側からのいろんな圧力等もあるんじゃないかと予測していますけれども。

2つ目の問題点として、第18回の部会の中では住宅扶助に関する主な論点というものがまとめられています。
その中で最低居住面積水準に関する考え方というものも、いくつか出ています。
部会の資料の中において、質問の形で、住宅保護特別基準額の妥当性を検証するにあたって、健康で文化的な最低限度の住生活を営むことができる住宅かどうかを見るための基準・尺度は、住生活基本法に定められている最低居住面積でよいか、という、わざわざ質問にしてあって、その下に米印として、全国の民間借家で約三分の一の世帯でこの水準が未達成な状況にあると書いています。
さらに資料では、最低居住面積以下の世帯はどれくらいいるか、というデータが出ておりまして、全国の民間借家で約三分の一、東京の民間借家で四割を超えていると、わざわざこういう資料を出しているということでして。
これはあきらかに一般低所得者の世帯で、最低居住面積を割っているところが多い、だから、そうした基準というのは考慮しなくてもいいんだ、という方向に議論を誘導しているのではないかな、と考えております。

そもそも最低居住面積水準というのは、国土交通省のほうで定めている水準になります。
住宅政策に関しては、これは縦割りの問題があるんですけど、厚生労働省じゃなくて国土交通省の管轄ということになって、2006年以降、年によってこの基準は変わっていきますが、2006年度以上の基準についてはですね、単身で25平米以上というような基準が作られています。
2011年に閣議決定された住生活基本計画の全国契約の中でもですね、この最低基準面積水準の住宅については、早期に解消するようにということが指標として定められていると。
このように国土交通省で策定をして、国・政府として閣議決定をした指標を、こともあろうに厚生労働省が有名基準化してもいいんだ、そういう基準というのは無視してもいいんだ、といわんばかりの方向に議論を誘導している、というは、非常に由々しき事態ではないかと、考えています。

この最低居住面積水準というのは、今回は生活保護に関して議論が進んでおりますが、たとえば公営住宅であるとか、たとえば行政が民間の改修費の補助を出す際のさまざまな基準としても活用されているということで、こうした基準を有名無実化する、ないがしろにするということは、生活保護世帯だけではなくて、社会全体の住まいの貧困化、住まいの貧困の悪化、ということを招くのではないか、と考えております。

三点目の問題点と致しまして、今後、前回の第18回部会で話されてましたが、委員の一部によって作業部会を設置すると。そして生活保護世帯の居住実態に関する調査を行うとなっているわけですけれども、その作業部会は、この場合委員長が指名するということをいってましたけれども、その議論というのは非公開になっているということですので、検証がなかなか出来ない、出てきた時には結果が出てしまって、その後の流れが決まっていく、ということになっていくのではないかな、と思っております。これも問題であろうと思っております。

おそらく、この作業部会が行われて、そして生活保護世帯の居住実態の調査が行われると。
これは各地域で福祉事務所のケースワーカーが生活保護世帯を家庭訪問して、それで居住の状況、住環境を調査すると。そして、その中にはたとえばそのアパートの家賃や居住環境というものが、その地域の一般の低所得者世帯と比較してどうなのか、ということも含めて調査する、と。
部会の中では、それを本当にケースワーカーが調査する力があるのか、ということにも疑問の声が上がってましたが。そういう風な調査をするというような内容になっています。

一般低所得者世帯の住宅と比べた時にですね、おそらく生活保護世帯の方が同じ居住環境にあったとしても、割高の住宅に暮らしているというような結果が出るのは、ほぼそうなるであろうという風に予測しています。
というのも、生活保護世帯が暮らしている民間の賃貸住宅が従来の家賃水準よりも高めになってですね、それぞれの地域の住宅扶助の基準の上限額に近づいていくということが、さまざまな関係者から指摘されています。
私自身もずっと、NPOのもやいで生活保護世帯の方々のですね、アパートの保証人提供を行ってきたので、東京における生活保護世帯の方々の居住実態は知っているんでけれども、単身の高齢者の方とかですね、障がい者の方、一人親家庭の方、あるいは外国籍の方、こうした方々が生活保護世帯に多いのですが、そうした方たちに対する居住差別・入居差別というのが、かなり根強くあります。
そのために、借りる側からとするとオーナーさんや不動産業者から本来4万円とか、4万5千円で取引きしている・されている物件を紹介されても、でもオーナーや不動産業者からは、たとえば東京の場合上限額が5万3700円ですから、「ここは5万3700円なら貸しますよ」と言われてしまうとですね、入居者の側は交渉力がありませんので、他に不動産業者をまわっても断られてしまうという状況の中で、結局その家賃額を飲まざるをえないと、いうような状況があります。

さらに、社会的孤立の問題もあってですね、人間関係が切れてしまっている、親族・身内に保証人が頼めないという場合はさらに条件は不利になってきますので、そういう入居差別の問題ですね、民間の賃貸住宅における入居差別が結果的に生活保護世帯の家賃を割高にさせているという状況があります。
数字だけ見ると一般低所得者世帯より高いところに住んでいるじゃないか、という議論になりがちですが、その背景にはそのような問題があることを知っていただければと思います。

しかも、現在における住宅扶助の基準は十分であると思っておりません。
たとえば東京の場合は5万3700円、障害があったり複数世帯だったりすると6万9800円というようになっておりますが、地域によってはこれでも適切な住宅を確保するのが困難な地域があります。
昨年、住まいの貧困に取り組むネットワークでは、脱法ハウスの問題に取り組んでおりましたけれども、たとえば東京都の千代田区では、特別基準が6万9800円を出しても、賃貸住宅が借りられない、という状況があります。
そのために、なかなかドヤで生活保護を受けている、旅館で生活保護を受けている方が、アパートに移れない、アパートが見つからないんです、ということを福祉事務所の職員に相談したところ、「だったらこういうところがあるよ」といわれて、マンボーという会社が経営する脱法ハウス、違法貸しルームですね、そこを紹介されるという事案も起こっております。
今年度から厚労省はこうした違法貸しルームのようなところに生活保護世帯が暮らしている場合は適切な場所に移れるように支援しなさい、というような通知を出しておりますけれども、現在ですら、そういうような実態があります。

あと、後ほど、車椅子で生活されている生活保護世帯の方にも発言して頂きますけれども、特に車椅子で、室内でも生活をしている方がですね、その車椅子で使えるような居室を探すというのは非常に困難を極めておりまして、東京都内で6万9800円を出してもなかなか見つからない、そうするともともと7万5000円とかですね、8万円近い物件をやむなくですね、たとえば家賃は6万9800円、管理費・共益費が5000円・6000円というような形で、結果的に生活費の中から、生活扶助費の中から家賃分を出さざるを得ない、そのために場合によっては食費とかですね、生活費に使うお金を削って、実質的に家賃にあてている、というような状況も生まれておりますので、必ずしも十分ではない、といえるかと思います。

あと、非常に奇妙なのはですね、基準額の一覧表を見ていただければわかるかと思いますが、一番右のところですね、基準額1.3倍額、そして7人世帯基準というのがありますけれども、2人世帯から6人世帯までの基準がまったく同じだ、ということになっております。
東京では6万9800円、大阪では5万5000円、ということでして、特に子供の多い世帯ですね、お子さんが3人とか4人とかいらっしゃる世帯だと、東京で6万9800円だとワンルームしか借りられませんので、全く実態にあってない、というような問題もあって、現状でも住宅扶助基準は、決して高いとはいえないという状況があると考えています。

そうした住宅扶助をめぐる現状をなんですけれども、根本的には背景に、日本の住宅政策の失敗という問題があると私たちは考えております。
この間、どこの地域でも公営住宅を増やさない、東京でも増やさない、という政策が行われてきましたし、一方で低所得者の方々が公営住宅に入れないものですから、民間の賃貸住宅市場で部屋を探さざるを得ないんですけれども、その民間の住宅市場というのは、野放し状態になっている。
先ほど申し上げた、入居差別の問題も放置されているというような状況があります。
また、保証人の問題であるとか、貧困ビジネスに関する問題でも規制が進んでいないというような状況があって、そうした結果、さまざまな今言われているような住宅扶助をめぐる問題というようなことが起こっているんだろうと思っております。

そうした状況にきちんとメスを入れればまた話は別なんですけれども、こうした民間の賃貸住宅市場を放置したまま、住宅扶助基準の金額だけを切り下げると、そうすると結果どうなるかというと、ますます生活保護世帯の方が劣悪な住居に追いやられてしまうと、質の低下をまねくということで、これは健康で文化的な最低限度の生活を保障するという、生活保護の理念に真っ向から反しているといわざるをえない、と考えております。

最後に、私たちとしては、今回216団体の賛同も頂きましたが、この生活保護基準部会が作業部会も含めて、きちんと透明な形でオープンに議論することを求めていきたいと考えていますし、11月までに検討結果を取りまとめるというのは、あまりに拙速すぎると、こういうスケジュールは撤回すべきだと考えております。
そして、生活保護を実際に利用されている方、居住支援を行っているNPOの関係者、住宅問題に詳しい研究者・法律家などから意見を徴集し、議論を進めていくべきだと考えます。

そしてそもそも、根本に住宅政策の失敗という問題があります。
この間、脱法ハウスの問題、ネットカフェ難民の問題、と折に触れて住宅政策の問題というが社会に出てきていますけれども、本来は厚労省と国土交通省が縦割りではなくて、一緒になって、たとえば「住宅政策総合本部」というようなものを作って、健康で文化的な最低限度の住生活というものをどう保障すればよいのか、という観点のもと、住宅政策を転換すべきではないかと、住まいの貧困にきちんとメスを入れていくべきではないかと考えております。
そうした議論と平行して、この生活保護の住宅基準の問題も考えていくべきではないかというように考えております。

 

川西浩之さん(身体障がいをもつ生活保護利用当事者)


hatugen02私は東京世田谷に住んでいる車椅子の者です。
私は一日11時間弱ぐらいの、ヘルパーさんの援助を受けながらの生活をしています。そしてヘルパーさんには食事を作って貰ったり、着替えとかを手伝ってもらったりする生活をしております。
室内でも手動の車椅子を利用して、生活をしております。もうかれこれ、世田谷区内で生活をして14年目くらいになります。

ひとり暮らしを始める時に、不動産屋さんをまわってみた時のことを思い返しますと、車椅子を利用してすごせる住宅はありません、あなたはトイレとかお風呂周りに手すりをつけたいということですけれども、手すりをつけると壁に傷をつけるので、修繕と修復にトラブルが発生しますので、うちを貸したくありません、という不動産屋さんがほとんどでありました。
そんな中、10件か15件くらいヘルパーや支援してくれる仲間たちと探しましたが、全くそんなおうちはありませんでした。
公営住宅も少なく、非常に(住宅扶助基準の)引き下げに困っております。

なぜ私たちが車椅子ですごさなくてはならないかという、基本的な意味が、皆さんわかっておられないように思います。
車椅子は、私は脳性まひではあるんですけれども、車椅子がないとお腹の力が弱くて体が支えられていないからこそ、車椅子で生活しているのであります。
車椅子ですごしてはいけない家があるなんてことが、とても信じられません。アメリカ等の外国では、車椅子で室内をすごすこと、事務所内ですごすことが当たり前の生活になっています。
そういった僕たちの障がいの状況をちゃんと理解してもらった上で、生活を見ていただけたらと思います。

私は8万を超える住宅に住んでおります。
やはりワンルームとかですと食事する部屋と書類を書く部屋が一緒で、僕らの仲間にはワンルームなんかですと、車椅子で中に入るのが精一杯で、身動きが取れないおうちに住んでいるというものが大勢います。
住宅改造の問題で、室内で寝たきりでリフトとかベッドまわりでも必要という仲間は数多くいます。

そういった人たちが家賃基準が下げられてしまうと引っ越さなくてはいけなくなり、とてもどこへいっても嫌な目で、後ろめたい目で苦労する姿が目に浮かびます。そして、なにせ不動産屋さんは僕らが話をしても、あまり話を聞いてくれません。
ほとんど、僕の場合は、ヘルパーさんへ「こういううちに住みたいから」ということで、話をしてもらいました。
そしてその中で、やっと住宅を見つけてきました。
不動産屋さんにも話しました。僕たちは10軒・20軒まわっても住む家がありませんと。お風呂釜を代えたいということでしたが、手すりの位置とかもあるので、微妙に違うと入りにくくなってしまいますから、ということで、このままで住居も変えず生活しています。

もう少し実態に即した、私たちの本当に生の声を聞いた上でいろいろと見直しをして頂きたいと思います。
よろしくお願いします。


>

« »