小田原市ジャンパー問題を検証する書籍が出版されました!

日々のできごと 書評・関連書籍

全国の福祉関係者に衝撃を与えた小田原市「保護なめんなジャンパー」問題の発覚から半年が経ちました。

今年春、小田原市はこの事件を検証する検討会を設置し、検討会は画期的な内容の「報告書」を発表しました。

このジャンパー問題の核心に迫り、検討会報告の意義についてまとめた書籍が出版されました。私も「『住まいは人権』が欠如した小田原市生活保護行政の問題点」という文章を寄稿しています。

ぜひご一読ください!以下の画像をクリックすると、出版社のサイトに移ります。

「生活保護なめんな」ジャンパー事件から考える-絶望から生まれつつある希望
生活保護問題対策全国会議/編著
尾藤廣喜、小久保哲郎、田川英信、藤藪貴治、渡辺潤、橋本真希子、西田真季子、稲葉剛、雨宮処凛、吉永純/著

A5判/144頁  2017年7月発行
1500円(税別)
ISBN978-4-87154-152-7

小田原市で発覚した衝撃の「生活保護なめんな」ジャンパー事件…。 生活保護利用者を侮蔑するジャンパーなどを10年もの間、職員は身にまとい続けることができたのか? 問題の核心はなにか? 全国の福祉現場に「見えないジャンパー」は蔓延していないか? 小田原市ジャンパー事件発覚を契機に、生活保護行政の問題点と改善の道筋を、生活保護利用者、弁護士、研究者、福祉職員、ジャーナリストが考え合い、提起する話題の労作。

その後、小田原市では画期的な検証作業によって、生活保護行政が大きく改善されようとしている。それは、「絶望から生まれつつある希望」でもある。その詳細を、本書は網羅する。 「検証委員会報告書」、改訂『生活保護のしおり』も全文収録。

【目次】

はじめに   「生活保護なめんな」ジャンパー事件をどう見るか ………尾藤廣喜

1章 ジャンパー事件の背景、その後の経緯、そして改善への課題………小久保哲郎
2章 改善された小田原市『生活保護のしおり』………田川英信
3章 全国の「見えないジャンパー」問題を解決するために………藤藪貴治・渡辺 潤

寄稿
◆小田原市生活保護問題について感じたこと、考えたこと……橋本真希子
◆背景にある生活保護バッシング……西田真季子
◆「住まいは人権」が欠如した小田原市生活保護行政の問題点……稲葉 剛
◆変わり始めた小田原市……雨宮処凛

終章 小田原市「生活保護行政のあり方検討会報告書」を片手に、
利用者と「ともに命を輝かす」ケースワーカーに………吉永 純

検討会報告書、改訂『生活保護のしおり』全文所載

 

今年の「りんりんふぇす」は10月15日(日)開催!予約受付開始しています!

日々のできごと

ミュージシャンの寺尾紗穂さんが「ホームレスの当事者や経験者と一緒に音楽を楽しみたい」と、私を含むホームレス支援の関係者に声をかけたことから始まった「りんりんふぇす」。

ホームレスの人たちの仕事をつくる雑誌「ビッグイシュー日本版」の応援イベントとして、すっかり定着し、今年で8回目を迎えることになりました。

「りんりんふぇす2017」は、10月15日(日)に行われることが決定!すでに予約受付も開始しています。

詳しくは以下の画像をクリックして、公式サイトをご覧ください。

当日は、フェアトレード&自家焙煎の「潮の路珈琲」の販売も行います。お楽しみに!

●名 称:
 りんりんふぇす2017
 Sing with your neighbors
 THE BIG ISSUE support live vol.8
●日 時:
 2017年10月15日(日) 
 開場 13:00/開演 14:00 ~  ※終演19:00予定
●料 金:
 前売券 2,500円  ※税込・入退場自由
 当日券 3,000円     小学生以下無料
●会 場:
 梅窓院 祖師堂(そしどう)
〒107-0062 東京都港区南青山2丁目26-38
※東京メトロ銀座線 外苑前駅1a出口徒歩1分
※駐車場はございません。お車での来場はお控えください。
●内 容:
 音楽ライブ/1部・2部制
 座談会/1部終了後に行います
 炊き出し/簡単な食事(無料)、フェアトレードのコーヒー販売
●出 演:
 折坂悠太、OKI(Oki Dub Ainu Band)、加納真実(パフォーマンス)
 キセル、ソケリッサ!、寺尾紗穂+エマーソン北村
●座談会:
 「ひとりの老いを、みんなで生きる」
 寺尾紗穂、稲葉剛、吉水岳彦
 ビッグイシュー販売者、他
●主 催:
 「THE BIG ISSUE」 support Live vol.8実行委員会
●協 力:
 有限会社ビッグイシュー日本、認定NPO法人ビッグイシュー基金
 一般社団法人つくろい東京ファンド、社会慈業委員会ひとさじの会
 キーン・ジャパン合同会社、公益財団法人 浄土宗ともいき財団
 コミュニティホーム べてぶくろ、池袋あさやけベーカリー
 高田馬場福祉作業所、在日ベトナム仏教信徒会、浄土宗 梅窓院
●問合せ:
 singwithyourneighbors@gmail.com
※梅窓院(会場)へのお問合せはご遠慮下さい。
●備 考:
観覧席は倚子を200脚、座布団を100個ほど用意でゆったり観れます。
小学生以下(12歳以下)はチケット代は無料です。
ぜひとも家族そろってお楽しみください。

※皆さまへのお願い※
当日、ホール内での飲食は禁止となっています。会場外もしくはロビーの飲食スペースをご利用くださいますよう、どうかよろしくお願いします。

多様な人が「混ざる」場をめざして~カフェ潮の路の挑戦は続いています

日々のできごと

西武新宿線・沼袋駅から徒歩11分の場所に、「カフェ潮の路(しおのみち)」をオープンして、まもなく4ヶ月になろうとしています。「カフェ潮の路」とは、私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドが、ホームレス経験者の「居場所」と「仕事」を創出するために新たに始めた事業です。

関連記事:【2017年4月21日】 朝日新聞に「カフェ潮の路」開店に関する記事が掲載 

「住まい」の次は「仕事」と「居場所」!

つくろい東京ファンドでは、これまで東京都中野区、豊島区を中心に、空き家を活用した生活困窮者へのシェルター事業を展開してきました。2014年の事業開始以来、私たちの住宅支援事業を利用して、アパートでの生活に移った人は、すでに50人を超えています。

ただ、ホームレス状態を抜け出して地域での生活に移ったからと言って、すべての問題が解決するわけではありません。ホームレス経験者の中には、高齢や障害・疾病のため、一般就労が難しい人が多く、そうした人々は地域の中で孤立しがちだからです。これまでも、アパートに入ったものの、引きこもりがちになってしまい、「話し相手はテレビしかない」という人に何人も会ってきました。

そこで、このたび、アパート入居後の「居場所」と「仕事」を創るためにカフェを作ることにしました。たまたま中野区の個室シェルター「つくろいハウス」から徒歩15分の場所に3階建ての一軒家を確保することができ、改装作業を行なって、今年4月に「カフェ潮の路」がオープンしました。

2月から5月まで行なったカフェ開設費用を集めるためのクラウドファンディングでは、計169人の方から計185万円以上のご寄付をいただきました。ご協力ありがとうございました。

毎週火曜日と木曜日の午後に開かれるカフェは、ホームレス経験のある人たちの居場所となっています。また、自家焙煎コーヒーの製造や販売を通して、ホームレス経験者の雇用も創出しています。現在、20代から70代までの計6人がご自身の体調にあわせて働いています。

多様な人々が「混ざる」場をめざして

「居場所」と「仕事」に加えて、カフェがめざしていることの一つに「多様性」があります。カフェを開設するにあたり、さまざまなバックグランドを持つ人が自然に混ざり合う場を作りたいと考えました。その思いを強くしたきっかけは、昨年7月に相模原市で発生した「津久井やまゆり園」での障害者殺傷事件でした。
カフェの担当者である小林美穂子は、つくろい東京ファンドのウェブサイトにアップした記事の中で、以下のように書きました。

私たちが「カフェ潮の路」をオープンするにあたって、一番の目標に掲げたのは、「いろんな人が混ざる場所にしたい」ということでした。その方向性を決定づけたのは、相模原で起きた忌まわしい事件。あの事件は多くの人の心に癒えることのない深い、深い傷を残しましたが、私も例外ではありませんでした。ホームレス支援という仕事をしている私にとって、この事件は他人事とは思えないおぞましい事件でした。犯人の言い分に共感する意見や、きっぱりと否定しきれない一部の世論にも衝撃を覚えました。
その時、私は、支援対象者を守ったり、マジョリティに配慮や遠慮をしたりすることの限界や、困難を抱える人々を見えにくい状態にすることの弊害を見たような気がしました。自分と異なる存在への無理解が進んでしまうことで、社会の偏見、差別を助長されると考えたのです。
特定の困難を抱える人たちの安心できる場も必要ですが、私たちは誰もが参加しながらも安全な場所を作ってみたいと考えました。多種多様な人々が混ざって共存するのが健全な社会。それを自分達の足元から実現してみたいと思いました。

この思いをどこまで実現できているか、心もとないのですが、オープンしたカフェは、ホームレス経験のある高齢者や障害者だけでなく、近所にお住いの住民や近隣の企業にお勤めの会社員、近くの幼稚園に通うお子さんと親御さん、地元の自営業者の方など、さまざまな立場の人が集い、混ざり合う場になっています。

お福わけ券がつなぐ縁

また、さまざまな立場の人が「混ざる」ための一つのツールとして導入したのが、欧米のホームレス支援カフェに見られる「ペイ・イット・フォワード」のシステムです。これはカフェに来たお客さんが自分の分だけでなく、「次の来る誰か」のために飲食代を先払いする仕組みであり、お金のない人もそのチケットを使うことにより無料で飲食をすることができるというものです。日本でもすでに「恩送りコーヒー」や「ゴチ飯」といった名称で実践しているカフェもありますが、「カフェ潮の路」では「お福わけ券」という名前のチケットを用意することにしました。

「お福わけ券」は700円券と200円券の2種類を販売しており、店内で買うことができます。誰かが買ってくれた700円券を使えば、日替わりランチ(500円)と自家焙煎コーヒー(200円)を実質的に無料で飲食できるという計算になります。ありがたいことに、カフェ開設から約3ヶ月間に、320枚以上の「お福わけ券」が販売され、券を使って飲食する人も延べ200人を超えました。

「お福わけ券」の裏面には、チケットを購入した人のお名前(ニックネーム可)とコメント、チケットで飲食した人のお名前(ニックネーム可)とコメントをそれぞれ書く欄があります。購入した人も、飲食した人も、それぞれ相手のことを少し想像する時間を持ってもらうために、あえて手書きで書いてもらうようにしています。使用された「お福わけ券」は店内で掲示されるほか、つくろい東京ファンドのFacebookページでも画像を公開しており、自分が買ったチケットがどのように使われたのかを確認できるようになっています。

格差が広がり、他者への共感が薄れつつある日本社会の中で、さまざまな立場の人たちが垣根を越えて出会い、つながり、支えあえる場を作っていきたいと考えています。

今後とも、カフェ潮の路の挑戦を応援してください!

【カフェ潮の路】2017年8月の営業日のお知らせ(22日、24日はお休みです)

また、7月からはカフェのスペースを子どもの支援に取り組んでいる団体にお貸しして、地元の中学生を対象とする無料塾「中野つむぎ塾」が始まっています。こちらもぜひ応援してください。

中野つむぎ塾のブログは、こちら。

 

オンラインショップもあります!

つくろい東京ファンドオンラインショップでは、自家焙煎の「潮の路珈琲」を販売しています。カフェ潮の路で使用する「お福わけ券」の購入や、生活困窮者支援活動への寄付も可能です。ぜひご覧ください。

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