2018年を振り返る。そして新たなプロジェクトへ

日々のできごと

早いもので、今年も残すところ約3週間になりました。2018年の自分の活動を振り返ってみたいと思います。

『ハウジングファースト』を刊行!

今年の一番大きな出来事は、4月に『ハウジングファースト』を刊行したことです。
ずっと前から「ハウジングファーストをきちんと紹介した本邦初の本を出したい」と思っていたのですが、ようやく実現することができました。

稲葉剛・小川芳範・森川すいめい編『ハウジングファースト』、好評発売中です!

『ハウジングファースト』の刊行をきっかけに、このテーマで講演をする機会も増えてきました。

6月には、尊敬する生田武志さんとの対談も書籍化されました。

生田武志×稲葉剛『当たり前の生活って何やねん?! 東西の貧困の現場から』、6月2日刊行!

昨年、オープンした「カフェ潮の路」は今年4月に開店1周年を迎えることができました。
1周年を記念して、カフェのすぐそばにあるカトリック徳田教会の会場をお借りして、「感謝の集い」を開催しました。

カフェ潮の路1周年記念イベントを開催しました!

また、「カフェ潮の路」の名物の一つである「お福わけ券」は8月に累計1000枚を突破し、今では1200枚を超えています。

【カフェ潮の路】お福わけ券がついに1000食突破しました!

「お福わけ券」や自家焙煎の「潮の路珈琲」は、つくろい東京ファンドオンラインショップでも扱っています。ぜひご覧ください。

LGBTコミュニティとの協働

今年新たに取り組んだのは、「LGBT支援ハウス」を開設するプロジェクトです。
昨年、「LGBT×貧困」というシンポジウムに呼んでいただいたのがきっかけになり、LGBTの生活困窮者を支援する方法について、LGBTコミュニティに関わる方々と議論を続けてきました。

今年の夏には「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」が発足。「日本初!貧困・孤独・病気 負のスパイラルから抜け出すための『LGBT支援ハウス』をつくりたい!」というタイトルのクラウドファンディングを展開し、見事、目標額を達成することができました。

「LGBT支援ハウス」がなぜ必要なのか、という点については、私がWEBRONZAの連載に書いた記事をご参考にしてください。

[19]LGBT支援ハウスがなぜ必要なのか? – 稲葉剛|WEBRONZA – 朝日新聞社の言論サイト

「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」では現在、物件の選定を進めており、早ければ年内にも支援ハウスをオープンさせる予定です。

 

10月には、LGBT支援ハウスのプロジェクトでもご一緒している中野区議の石坂わたるさん、ALSなど難病を抱える人たちの介護支援に取り組むNPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会の事務局長の川口有美子さんと共に、「政治から差別発言をなくすために私たちがすべきことは?」と題した院内対話集会を開催しました。

この集会は、杉田水脈議員のLGBT差別発言が直接のきっかけとなった企画でしたが、集会では麻生財務大臣の問題発言についても議論されました。

【2018年10月26日】朝日新聞「麻生氏また舌禍」にコメント掲載

院内集会での基調講演は東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎さんにお願いしました。

最近、BuzzFeed Newsに、この日の熊谷さんの講演録(全3回)が掲載されたので、そちらもぜひご一読ください。

なぜ政治家が差別発言をしてはいけないのか? 「障害は皮膚の内側ではなく、外側にある」

90年代からの活動を振り返る

私が貧困問題に関わるようになって、来年でちょうど25年になります。今年は90年代の支援活動を振り返る取材も多く受けました。

今年の1月、『AERA』の「社会企業家」特集のインタビューを受け、2月5日号(1月29日発行)に記事が掲載されました。
「私は、『社会企業家』というより『活動家』なのですが、それでもいいですか」という点を確認させていただき、インタビューに応じたのを覚えています。
記事では、1994年からの私の活動を紹介していただきました。

【2018年1月29日】AERA「社会起業家」特集にインタビュー記事が掲載

また、5月には拙著『鵺の鳴く夜を恐れるために』(エディマン/新宿書房、2015年)を読んだ映像制作者の方から、本の内容を映像化したいというご提案があり、新宿ダンボール村時代の活動を振り返る16分の動画を作っていただきました。

90年代の新宿ダンボール村を振り返る動画が公開されました。

 

生活保護問題と「住まいの貧困」問題への取り組み

このように今年もさまざまな活動を行なってきましたが、従来から取り組んでいる生活保護問題や「住まいの貧困」問題に関する活動も続けています。

生活保護問題では、生活保護問題対策全国会議の幹事及び「いのちのとりで裁判全国アクション」の共同代表として、今年度、再び強行された基準引き下げへの抗議と2013年度からの過去最大の引き下げを憲法違反とする全国の裁判の応援を続けています。

生活保護の利用当事者、経験者の声が国政の場に響き始めた!

「住まいの貧困」問題では、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の世話人として、今年2月に参議院国民生活・経済調査会で参考人として意見陳述を行なったほか、折に触れて発信を続けています。

世代を越えて広がる「住まいの貧困」。国会での真摯な議論を求めます。

【2018年8月2日】朝日新聞「住を支える そしあるハイム火災から半年」にコメント掲載

広がる住宅支援と仕事づくり、そして新プロジェクトへ

私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドでは、「市民の力でセーフティネットのほころびを修繕する」というコンセプトのもと、カフェ潮の路の運営のほか、都内の空き家・空き室を活用したハウジングファースト型の住宅支援を他団体と連携しながら展開しています。つくろい東京ファンドが都内で借り上げている部屋は計23室になりました。

『新たな社会的住宅の創出×運営の試み』(NPOコレクティブハウジング社)の事例として取り上げられました

そして仕事づくりの分野では、現在、「カフェ潮の路」及び「潮の路珈琲」(自家焙煎珈琲の製造・販売)に続く新たなプロジェクトが始動しています。
それは、この壺を活用して「あるもの」を作る事業です。

順調に行けば、来年の初めには新プロジェクトの全貌を紹介できるかと思います。
ぜひご期待ください。

また本日(12月8日)、国会で「改正」入管法が成立しました。働く外国人の人権をどう守るのか、という議論が不充分なまま、来年4月より外国人労働者の受け入れが拡大することになります。
入管法「改正」をめぐる国会での審議では、外国人の人権擁護に取り組んできたNPOや労働組合関係者などでつくる「移住者と連帯する全国ネットワーク」の尽力により、すでに日本国内で働いている外国人技能実習生の劣悪な労働実態が明らかになりました。

今後、本格的な移民の時代を迎えるにあたり、生活困窮者支援に取り組んできた私たちも外国人の貧困問題への取り組みを強化しなければならないと考えています。来年はその模索の年にしていきたいと思います。

今年もさまざまな方のご支援、ご協力により、活動を進めていくことができました。ありがとうございます。

来年も「いのち・すまい・けんり」にこだわった活動を続けていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

つくろい東京ファンドへのご支援は、こちら。

 

【2018年12月7日】ダイヤモンドオンライン「生活保護のリアル」にコメント掲載

メディア掲載

2018年12月7日、ダイヤモンドオンラインのみわよしこさんによる連載記事「生活保護のリアル~私たちの明日は?」「社会的弱者を『劣悪な終の棲家】に押し込みかねない住宅政策の危うさ」に稲葉のコメントが掲載されました。

ぜひご一読ください。

以下のタイトルをクリックすると、リンク先に移ります。

社会的弱者を「劣悪な終の棲家」に押し込みかねない住宅政策の危うさ | 生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ | ダイヤモンド・オンライン

 

関連記事:【2015年11月6日】 ダイヤモンドオンライン「生活保護のリアル」にインタビュー記事掲載

【2018年12月2日】北陸中日新聞「誰でも入居 窓口支援」にコメント掲載

メディア掲載

2018年12月2日付け北陸中日新聞「誰でも入居 窓口支援/金沢の企業 物件掘り起こし始動」という記事に稲葉のコメントが掲載されました。

http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2018120202000226.html

北陸発 誰でも入居 窓口支援 金沢の企業 物件掘り起こし始動

国推進「セーフティネット住宅」 

高齢者 困窮者 外国人 障害者 母・父子家庭

一人暮らしのお年寄りや低所得者らの入居を拒まない「セーフティネット住宅」を石川県内で増やそうと、金沢市の企業が賃貸物件の掘り起こしや入居後の生活サポートに乗り出した。国が登録を増やそうと推進するこの住宅は県内でこれまでゼロだったが、金沢、小松両市内に計五十二戸を確保した。三日から入居の相談窓口を本格稼働させる。(押川恵理子)

窓口を開いたのはマンション管理や清掃業務の企業「テオトリアッテ」(金沢市糸田)。竹森茂社長(42)は「持ち家を売却してアパートに住もうとした高齢者が年齢を理由に入居を断られた。そんなケースが身近でも数件あった」と開設の理由を話す。県から「住宅確保要配慮者居住支援法人」の指定を受け、高齢者や母子家庭、外国人就労者らの住まい確保を助ける。

相談窓口を担う鈴木芳幸さん(63)は「リスクが高い人に大家さんは貸したがらない。制度もまだまだ浸透していない」と話す。協力する大家を増やすため入居者の安否を電話で確認し、不慮の事故などで入居中に亡くなった場合の補償に応じるサービスを導入した。

入居後の生活サポートにも力を入れる。高齢の入居者らの希望に応じ、食料や日用品の買い物を請け負う。買い物代行の事業者、桶田淳平さん(38)=石川県白山市=は「顔を見て、元気ですかと声を掛ける。見守りにも役立つ」と語る。理学療法士と連携して一緒に運動したり、交流したりできる機会も設ける予定だ。

竹森さんは入居者やスタッフらがつながり、支え合う場として「子ども食堂のような『居住支援食堂』もつくりたい。就労支援も考えている」と語った。

安否確認のサービスと入居中に亡くなった場合の費用補償(部屋の清掃や葬儀の費用)を受けるには、初回登録料一万円と月額利用料千五百円(ともに税別)を支払う。買い物代行の利用料などは相談して決める。問い合わせはテオトリアッテ=電076(227)8014=へ。

単身高齢者 10年後は100万人増
専門家「公営住宅拡充も重要」

セーフティネット住宅は耐震性や広さなどの条件を満たした賃貸住宅の空き物件を登録する国の制度で、昨年十月に始まった。耐震改修や家賃の補助もある。国土交通省は二〇二〇年度までに全国十七万五千戸の登録を目指すが、十一月末現在で五千八百四十二戸にとどまる。大阪府が最多の四千五百十八戸を占め、富山や三重、滋賀など十二県はゼロ。

空き家は全国に約八百二十万戸あり、増加傾向にもかかわらず、セーフティネット住宅の登録は低迷している。背景には手続きの煩雑さに加え、家賃滞納や孤独死などのリスクへの懸念がある。一方で単身の高齢者は今後十年で百万人増えるとみられる。

ハウジングプア(住まいの貧困)問題に詳しい立教大大学院特任准教授の稲葉剛さんは「セーフティネット住宅と呼ぶにはそもそもの目標数が少ない。民間の空き家の活用は賛成だが、公営住宅の拡充と一緒に行うべきだ。低所得者に対しては公営住宅が第一と考えている」と話す。

「住まいを失うと、仕事探しに影響し、安定した仕事に就けない。住まいがないことを恥じ、自ら人間関係を断ってしまうケースも多い」と指摘する。経済と人間関係の二重の貧困に陥りやすいという。入居後の見守り、サポートの重要性も訴えた。

 

関連記事:【2018年8月2日】朝日新聞「住を支える そしあるハイム火災から半年」にコメント掲載

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