改正住宅セーフティネット法が成立!まずはハウジングプアの全体像に迫る調査の実施を!

提言・オピニオン

4月19日、参議院本会議で改正住宅セーフティネット法が可決、成立しました。本サイトでも何度が取り上げていますが、この法律は高齢者、障害者、子育て世帯、低所得者など、賃貸住宅市場で住宅の確保に困難を抱えている人たちを「住宅確保要配慮者」と位置づけ、都道府県ごとに空き家の登録制度を新設して、オーナーが登録に応じた空き家を活用することで「住宅確保要配慮者」の入居を促進しようとするものです。

これはいわば、全国各地で増え続ける空き家問題と、深刻化する高齢者などへの入居差別の問題を「一石二鳥」で解決しようとする施策であり、「住まいの貧困」(ハウジングプア)を解決するために私がこれまで行なってきた提言とも合致する内容になっています。

増え続ける空き家を貧困対策に活用することを提言してきました。

 

国土交通省は2020年度末までに全国で計17万5000戸の登録住宅を確保したいとしています。しかし、若年層にも増えている低所得者の入居を促進するためには、空き家の登録制度を作るだけでは不充分で、貸し出される際の家賃を下げる施策が必要になります。そのため、政府は空き家のオーナーに月最大4万円の補助(国から2万円、地方自治体から2万円)を出すことで、家賃を低く抑えてもらう事業を実施するのですが、なぜかこの部分は法律の条文には盛り込まれず、予算措置にとどまっていました。

条文に明記されない事業は、その時々の財政状況によって縮小されたり、停止されたりする可能性が高まります。また、この家賃低廉化以外にも、支援の対象とされる「被災者」が災害発生三年以内に限られるという記述がある等、法案にはいくつか不充分と思える点がありました。

そこで、私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」では、この間、「家賃低廉化も条文に盛り込むこと」などを求めて、各政党に対する働きかけを行なってきました。4月7日には衆議院国土交通委員会における審議に私も参考人として呼んでいただき、意見陳述と委員との質疑を行ないました。

【関連記事】衆議院国土交通委員会で参考人招致。住宅セーフティネットの強化を提言しました。 

その結果、残念ながら条文の修正は行われませんでしたが、衆議院及び参議院の国土交通委員会での採決の際、それぞれ私たちが懸念している点についての「附帯決議」が採択されることになりました。

附帯決議に何が盛り込まれたのか

参議院国土交通委員会での附帯決議は下記のような内容になりました。重要な部分は太字にしています。

◆参議院国土交通委員会:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。

一 本法に住宅セーフティネット機能の強化と併せ、公営住宅を始めとする公的賃貸住宅政策についても、引き続き着実な推進に努めること。

二 低額所得者の入居負担軽減及び安定的な住宅確保を図るため、政府は予算措置を含め必要な支援措置を講ずること。

三 高齢者、障害者、低額所得者、ホームレス、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居が拒まれている実態について、国土交通省と厚生労働省とが十分に連携し、住宅政策のみならず生活困窮者支援等の分野にも精通した有識者や現場関係者の意見を聞きながら、本法律の趣旨を踏まえ、適宜調査を行うなど、各々の特性に十分配慮した対策を講ずること。

四 住宅確保要配慮者が違法な取立て行為や追い出し行為等にあわないよう、政府は適正な家賃債務保証業者の利用に向けた措置を速やかに講ずること。

五 地方公共団体による賃貸住宅供給計画について、その策定の促進を図るとともに、地域の住宅確保要配慮者の実情に即し、かつ空き家対策にも資する実効性のあるものとなるよう、必要な支援を行うこと。

六 住宅セーフティネット機能の強化のためには、住宅確保要配慮者居住支援協議会の設立の促進とその活動の充実等を図ることが重要であり、また、地方公共団体の住宅部局及び福祉部局の取組と連携を強化することが不可欠であることに鑑み、各地域の実態を踏まえ、必要な支援を行うこと。

七 災害が発生した日から起算して三年を経過した被災者についても、必要が認められるときには、住宅確保要配慮者として支援措置を講ずること。

 

このうち、「三」に盛り込まれた「調査」の実施については、私が参考人陳述において最も強調した点でした。ハウジングプア(住まいの貧困)問題については、国土交通省と厚生労働省という行政の縦割りの壁に阻まれ、これまで包括的な実態調査が実施されたことがありません。法改正を機に本格的な調査をぜひ実施してほしいと願っています。

4月7日(金)に衆議院国土交通委員会で参考人として意見陳述をした際の資料より

 

空き家を活用した住宅セーフティネット事業は、今年の秋に開始される予定です。法律が中身を伴ったものになるよう、事業の実施状況をチェックし、適宜、国や地方自治体に働きかけを行なっていきたいと考えています。

5月25日には、今回の法改正に至る経緯を振り返り、今後の課題について考えるための報告集会を開催いたします。私と一緒に衆議院の国土交通委員会で参考人として意見陳述をした坂庭国晴さん(国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事)、参議院の国土交通委員会で意見陳述をした塩崎賢明さん(立命館大学特別招聘教授)も登壇されます。

報告集会の詳細はこちらで。ぜひご参加ください。

5月25日(木)「住宅セーフティネット法改正」の報告集会 ―国会審議の特徴と今後の課題を考える

5月28日(日) 公正な税制を求める市民連絡会設立2周年記念集会 :誰もが支えあう税制へ ~格差社会を乗り越えるために~

講演・イベント告知

公正な税制を求める市民連絡会 設立2周年記念集会
誰もが支えあう税制へ ~格差社会を乗り越えるために~

日 時:5月28日(日)13:15から(13:00受付開始)
会 場:日司連会館地下ホール
東京都新宿区本塩町9番地3 TEL03-3359-4171
JR中央線・総武線 四ツ谷駅徒歩5分/東京メトロ 丸の内線・南北線 四ツ谷駅徒歩6分
アクセスマップはこちら。

資料代:1000円★事前申込不要
共 催:公正な税制を求める市民連絡会/全国青年司法書士協議会

プログラム
13:15 公正な税制を求める市民連絡会 総会

13:30 設立2周年記念集会

(1)記念講演「誰もが支えあう税制とは~普遍主義の実現に向けて」
講師 井手英策 氏(慶応大学教授)

(2)パネルディスカッション 徹底討論「普遍主義は本当に実現可能か?」
パネラー       井手 英策 氏(慶応大学教授)
稲葉  剛 氏(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事)
宇都宮健児 氏(弁護士・公正な税制を求める市民連絡会共同代表)
赤石千衣子 氏(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)

コーディネーター   猪股  正 氏(弁護士・公正な税制を求める市民連絡会事務局長)

16:50 終了

【お問い合わせ】
公正な税制を求める市民連絡会 
〒330-0064 さいたま市浦和区岸町7-12-1 東和ビル4階 埼玉総合法律事務所内 
事務局長 弁護士 猪股 正
電話:048-862-0355、FAX:048-866-0425

5月25日(木)「住宅セーフティネット法改正」の報告集会 ―国会審議の特徴と今後の課題を考える

講演・イベント告知

「住宅セーフティネット法改正」の報告集会
―国会審議の特徴と今後の課題を考える―

日時:2017年5月25日(木) 午後6時30分~8時30分
会場:豊島区・目白第二区民集会室 (ビルの3階)
(豊島区目白3-4-3 JR目白駅徒歩3分) アクセスマップはこちら。

〔趣旨〕 
今国会に、「住宅セーフティネット法」(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)の一部改正案が提出され、衆参国土交通委員会で審議が行われました。
私たちは国会審議に先立って全政党に対し、詳細な要請書を提出し、各党との意見交換を行いました。また、2回にわたって院内集会を開催し、多くの議員の参加を得ました。

こうした活動の中で、国会での参考人意見陳述が実現し、4月7日衆議院、4月18日参議院の国土交通委員会で質疑を含めて行われました。
今回、国会に参考人として出席し、意見を述べた3人の方々から報告してもらい、他の識者からの発言も交え、国会審議での成果と今後の課題について考えます。

〔報告・発言者〕         
衆議院・参考人 稲葉 剛(立教大学特任准教授・住まいの貧困ネット世話人)
  同       坂庭 国晴 (住まい連代表幹事・日本住宅会議理事)
参議院・参考人 塩崎 賢明(立命館大学特別招聘教授・日本住宅会議理事長)
発言者       林 治 (弁護士・全国追い出し屋対策会議)

会場からの発言、質疑も行います。

(会場への行き方) 目白駅を背に左へ、すぐ交番があり、その脇の階段を下りて、道なりに
行き、三差路を右に進み、若林歯科医院の手前のビルの3階。

〔開催団体〕 住まいの貧困に取り組むネットワーク、国民の住まいを守る全国連絡会、
全国追い出し屋対策会議、日本住宅会議(関東会議)
〔連絡先〕 NPO住まいの改善センター
℡03-3837-7611 fax03-6803-0755

【2017年4月21日】 朝日新聞に「カフェ潮の路」開店に関する記事が掲載

メディア掲載

2017年4月21日付け朝日新聞に、稲葉が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドが開設した「カフェ潮の路」に関する記事が掲載されました。

http://www.asahi.com/articles/ASK4N6VR1K4NUBQU010.html

ホームレス経験者が働くカフェがオープン

清川卓史 2017年4月21日06時00分

ホームレスを経験した人が働き、地域の人と交流できる場所をつくりたい――。そんな願いを込めた小さなカフェが東京都練馬区に18日、オープンした。フェアトレードの豆を自家焙煎(ばいせん)したコーヒーや本格カレーが味わえる。
名前は「カフェ潮(しお)の路(みち)」。一般社団法人「つくろい東京ファンド」(稲葉剛・代表理事)が、クラウドファンディングなどで集めた寄付金で開設した。民家を改修し、2階がカフェ、1階がコーヒースタンドになっている。

つくろい東京ファンドは2014年7月、空き家を利用した生活困窮者のための個室シェルター「つくろいハウス」を東京都中野区に開設し、住まいの確保や生活支援をしている。いまは都内4区に22部屋を用意。これまでに約50人が生活保護を利用するなどして一般のアパートに移った。

ただ、アパート入居後も地域で孤立しがちで、仕事を探そうにも高齢や障害のためフルタイム勤務は難しい人が多い。稲葉さんは「『住まい』の次は『仕事』と『居場所』が必要。それなら自分たちでつくろうという思いでカフェを立ち上げました。地域の方も高齢者もお子さんも集まれる、みんなの居場所にしていきたい」と話す。

カフェでは20~70代のホームレス経験者5人がスタッフとして働く。時給は1千円。その人の事情や体調に応じて柔軟な働き方ができる。さらに多くの人に呼びかけていくという。将来的には子ども食堂や学習支援にもカフェを活用していきたいとしている。

コーヒーは200円、日替わりランチ500円、カレー700円。シェフを務める同ファンドの小林美穂子さんは「カレーは3時間かけてつくっています。おいしいですよ」。お金がない人も足を運べるよう、余裕のある人が「次に来店する誰か」のために飲食代を前払いする仕組みも採用し、「お福わけ券」と名付けた。200円と700円の2種類がある。

見学会やプレオープン日には、かつて新宿駅の段ボールハウスで暮らしていたホームレス経験者も含め、稲葉さんの長年の知人が集まった。かつて日雇いで建築の仕事をしていたという男性(64)は「顔見知りが多いから、またコーヒー飲みに来ます。お店がはやるといいな」と話していた。

カフェは火、木の12~17時、コーヒースタンドは火~金の12~15時。今後営業日を増やしていきたいとしている。詳細は同ファンドのウェブサイト(http://tsukuroi.tokyo 別ウインドウで開きます)で。

【関連記事】ホームレス経験者が働く「カフェ潮の路」が沼袋にオープン!朝日新聞に紹介記事が掲載されました。

 

ホームレス経験者が働く「カフェ潮の路」が沼袋にオープン!毎週火曜・木曜に開店しています。

日々のできごと

私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドは、東京都中野区を中心に住まいを喪失した生活困窮者のためのシェルター事業を行なってきましたが、シェルターから近隣のアパートに移った人が増えてきたのを受け、このたび新たな事業に乗り出すことにしました。

社会的に孤立しがちな元ホームレスの人たちの仕事づくり、居場所づくりを進めるためにカフェを作る、という事業です。

2月24日(金)からはカフェの開設費用を集めるためのクラウドファンディングのキャンペーンを行ない、たくさんの方々のご支援をいただくことができました。皆様のご協力に感謝いたします(キャンペーンは5月12日まで続きます)。

「住まい」の次は「仕事」と「居場所」!ホームレス経験者が働く自家焙煎カフェを作りたい! – クラウドファンディング MotionGallery(モーションギャラリー) 

そして4月18日(火)、ついに「カフェ潮の路(しおのみち)」オープンの日を迎えることができました。

「潮の路」の名前の由来などは、クラウドファンディングのアップデート記事をご覧ください。

4月21日(金)には、さっそく朝日新聞に「カフェ潮の路」開店に関する記事が掲載されました。ぜひご一読ください。

【2017年4月21日】 朝日新聞に「カフェ潮の路」開店に関する記事が掲載

 

初日の日替わりランチは、チキンとマッシュルームのクリーム煮でした。

 

一番最初のお客さんは、新宿ダンボール村時代からの付き合いがあるKさんでした。

 

カフェ(2階)の内部の様子。

 

「カフェ潮の路」は毎週火曜日・木曜日の12~17時に営業いたします。最初は週2日のみの営業ですが、そのうち徐々に日数を増やしていきたいと考えています。

また、同じ建物の1階では、駐車場スペースを改装したコーヒースタンドの営業を行なっています。こちらは毎週火曜日~金曜日の12~15時に開いています。

 

私も週1回、コーヒースタンドで売り子をしています。

 

私の所属する立教大学大学院の研究科の皆様から素敵なロゴ入りキャッシュトレーをいただきました。

 

「カフェ潮の路」の場所は、西武新宿線「沼袋」駅から徒歩11分。駅からまっすぐ北に歩いて右側にあります(中野江古田病院の3軒先)。

住所は東京都練馬区豊玉南1-4-2です。近くにお立ち寄りの際はぜひお越しください。

地図(グーグルマップ)はこちら。

カフェのフライヤーもできましたので、ぜひご活用ください。

末永く、皆様に愛されるカフェにしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

「潮の路珈琲」はオンラインショップでも買うことができます!

「カフェ潮の路」では、元ホームレスの人たちが焙煎した「潮の路珈琲」をお出ししていますが、「潮の路珈琲」のオンラインショップもオープンしています。カフェまで足を延ばすのが難しいという方は、ぜひオンラインショップでコーヒーをご注文ください。

下記をクリックすると、オンラインショップのページに移ります。

つくろい東京ファンドオンラインショップ

オンラインショップでは、自家焙煎「潮の路珈琲」の商品やフェアトレードのウバ茶が購入できます。

「潮の路珈琲」は、 すべてフェアトレード(民衆交易)のコーヒー豆を使用しています。 ベースは 東ティモールの無農薬のコーヒー豆です。

代金の決済は、クレジットカード、コンビニ払い、銀行振込の中から選ぶことができます。

また、オンラインショップを通して、つくろい東京ファンドの生活困窮者支援事業に寄付をすることもできるようになりました。ぜひご活用ください。

ぜひよろしくお願いいたします。

 

【関連動画】デモクラシータイムス:稲葉剛さん 「住まいの次は仕事と居場所」 池田香代子の世界を変える100人の働き人 1人目

 

【2017年4月12日】 毎日新聞「論点」欄にホームレス自立支援法に関する意見が掲載

メディア掲載

2017年4月12日付け毎日新聞「論点」欄で、今年8月で期限切れを迎えるホームレス自立支援法の延長問題に関する特集記事が掲載されました。
NPO法人抱樸理事長の奥田知志さん、生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎さんとともに、稲葉の意見も掲載されました。

https://mainichi.jp/articles/20170412/ddm/004/070/027000c

新たな住居喪失者に対応を

稲葉剛・一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表理事

ホームレス自立支援法で言う「ホームレス」の定義は、屋外生活をしていて、路上、公園、河川敷などで寝ている人たち、外で寝ている人たちだ。だが、ホームレスをめぐる状況は、2000年代に入って大きく変化した。ネットカフェや友達の家にいるといった、広い意味での「ホームレス状態」にある人たちが生まれたのだ。ホームレス自立支援法は、こうした人たちに対処できていない。

1994年からホームレスの人たちの支援活動をしてきたが、03年秋、ネットカフェで暮らす若者から初めて相談を受けた。さらに、年収200万円以下の貧困層の若者から「アパートを失い、ネットカフェや友人宅で漂流しながら生活している」という相談が日常的に来るようになった。

ネットカフェ難民が問題になった時、厚生労働省はホームレス対策の枠内で動くことはできなかった。ホームレスの定義を拡大するのではなく、新たに「住居喪失不安定就労者」という定義を作って調査を始めた。しかし、調査を実施する根拠となる法律が存在しないため、調査が継続的に実施されないという問題が生じた。

東京都はネットカフェを規制する条例を作り、入場時の本人確認を義務づけたため、身分証を持てない人たちはネットカフェを利用できなくなった。ネットカフェにも泊まれなくなった人は「脱法ハウス」に移り、状況はさらに悪化した。

NPO法人「ビッグイシュー基金」が14年に行った調査によると、首都圏・関西圏に暮らす20代、30代の未婚で年収200万円未満の若者の6・6%が、ホームレスを経験していた。親と同居していないグループに限ると、13・5%にまで跳ね上がる。「住まいの貧困」は若年層に広がっている。

若者が貧困に陥る理由には、いくつかのパターンがある。一つは貧困の世代間連鎖だ。親が生活保護を受けている場合や、児童養護施設の出身で大学に進学できず、高校を中退したり、高卒で非正規の仕事に就きながら職を転々としたりして、最終的にホームレス状態になってしまう。もう一つは、最近だとブラック企業だ。大学を出て正社員として就職しても、長時間労働やパワハラなどが横行するブラック企業でうつを発症して働けなくなり、生活に困窮する人も出てきている。

住まいの貧困に陥る若年層は、収入や待遇が不安定な非正規雇用の人が多い。08年のリーマン・ショックでは「派遣切り」で仕事とともに住居を失った若者が多く生まれ、年越し派遣村も作られた。非正規雇用が雇用者の約4割に達し、社会状況は変化している。

若者はアルバイトや派遣社員として働けるうちは路上生活には陥らないが、安定した住まいを失う可能性は誰にでもある。だが、それに対応する法律や恒久的制度が存在しないのが問題だ。広い意味でのホームレス状態にある人たちを支援するには、現行法の定義を拡大して大幅に改定するか、生活困窮者自立支援法の中の居住支援を強化する制度改正が必要だ。

 

【関連記事】仕事さえあれば、貧困から抜け出せるのか?~生活困窮者自立支援制度の問題点

 

立川市生活保護廃止自殺事件調査団が結成され、東京都に申し入れを行ないました。

提言・オピニオン

2015年12月10日、東京都立川市で生活保護を利用していた一人暮らしの40代男性(Aさん)が自宅のアパートの部屋で自殺しました。

立川市福祉事務所は、同年11月21日付けでAさんを就労指導に従わないという理由で保護廃止にしており、その通知書を12月9日にAさん宛に送っていました。この経緯から、Aさんは保護廃止の通知書を受け取った直後、絶望して自殺に至ったのではないかと考えられます。

この事件は、同年12月31日、立川市の日本共産党市議団控え室にAさんの知人と名乗る人より匿名のFAXが送られたことにより発覚しました。

共産党市議団に送られたFAX

その後、立川市議会の上條彰一議員(日本共産党)が立川市に対して事実関係を明らかにするように求めましたが、市側は個人情報の保護を理由に応じませんでした。

以下は上條市議による市への質問とその回答です。

そこで、弁護士や研究者らが中心となり、この事件の真相究明と再発防止を目的とする調査団を結成することになりました。

本日(4月11日)、立川市生活保護廃止自殺事件調査団(共同代表:宇都宮健児弁護士、後藤道夫都留文科大学名誉教授)が結成され、立川市の生活保護行政を監督する立場にある東京都に対する申し入れと記者会見を行ないました。

東京都に対しては、「質問状」と「要請書」の2つの文書を提出しました。それぞれ、下記で内容をご確認ください。

東京都の保護課長は申し入れの席上、「昨年、立川市から事故報告を受け、ヒヤリングを行なった。自分もケース記録などの書類を見た。(保護廃止に至る)手続き的なものについては、指導・助言すべきことはなかった。」と発言しました。

申し入れにも参加した上條市議によると、事件発覚直後、立川市の担当者と話し合いを行なった際、「懲らしめの意味で保護を切ったんですか?」と聞いたところ、「そうなんです」と認めたと言います。

また、Aさんに路上生活歴があることに関連して、「保護を切っても何らかの形で生きていけるのではないかと思った」という発言もあったと言います。

このような認識のもとに生活保護を打ち切ったのであれば、生活保護行政の責任を放棄した人権侵害以外の何物でもないと考えます。

申し入れ後の記者会見の場で、調査団の事務局を務める田所良平弁護士(三多摩法律事務所)は、「行方不明になり、連絡が取れないというような場合に保護廃止にするのはやむをえないが、そこにいる人の保護を廃止するのは、命綱を断ち切る行為であり、するべきでない」と指摘しました。

私も今回の事件の背景に、生活保護の利用世帯数を抑制しようとする政府の政策があることを見る必要があると発言しました。

また、過去にAさんの相談にのった民間団体の支援者が「Aさんから『死にたい』という発言を聞いたことがあり、うつ症状と思われる言動が認められた」と証言していることに関連して、「生活保護世帯の中で、Aさんのような人は『その他の世帯』と分類されるが、『その他の世帯』がみんな働ける状態にあるというわけではなく、中には隠れた障害や疾病が発見されていないだけの人もいる。隠れた障害や病気を見つけるために福祉事務所職員の専門性を高める必要性がある」と指摘しました。

調査団は東京都に「質問状」への文書回答を求めています。ぜひ多くの方のご注目をお願いします。

***************

【調査団による質問状の文面】

2017年4月11日

質問状

東京都知事 殿
東京都福祉保健局生活福祉部保護課長 殿

立川市生活保護廃止自殺事件調査団
共同代表 宇都宮 健児
同  後藤 道夫

去る2015年12月、立川市内で生活保護を受けていた方が、就労指導違反を理由とする生活保護廃止処分を受け、処分の翌日に自殺をするという事件(以下「本件自殺事件」といいます)が発生しました。我々は、この事件を受け、就労指導や保護の停止・廃止の在るべき運用を今一度確認すると共に、2度とこのような痛ましい事件が起こることのないよう、特定の職員に責任に矮小化することなく、構造的な要因も含めた原因の究明とこれを踏まえた再発防止策を講ずることが喫緊の課題であると考えております。

つきましては、下記のとおり、就労指導や保護の停止・廃止処分の運用の在り方(第1)並びに、立川市福祉事務所の人員体制と本件(第2)に関して質問いたしますので、後日文書にてご回答いただきますようお願い致します。

第1 就労指導及び保護の停止・廃止の在り方について

(1) 就労指導の前提となる稼働能力の有無・程度及びその把握について

① 就労指導の前提となる稼働能力の有無・程度は、年齢や医学的な面のみならず、職歴や、ホームレス経験の有無・期間などの生活歴なども考慮して、客観的かつ具体的に判断されるべきであると考えますが、いかがでしょうか。

② 精神疾患、依存症、軽度知的障害や発達障害の疑い、既往症など(以下、「精神疾患等」といいます。)、稼働能力の存在・程度を慎重に検討すべき生活保護利用者について稼働能力の有無・程度を判断するにあたっては、対象者に医療機関等の診断を促し、その診断結果を参照しつつ慎重に行われるべきであると考えますが、いかがでしょうか。

③ 上記の稼働能力の存在・程度を慎重に検討すべき生活保護利用者については、ケース診断会議等の組織的検討を経て判断すべきと考えますが、いかがでしょうか。

(2) 就労指導の内容について

① 就労指導は、稼働能力が存在することを前提に、具体的な稼働能力の程度に応じた内容でなくてはならず、同人の稼働能力を超える労働条件や職種への求職活動を指導してはならないと考えますが、いかがでしょうか。

② 就労指導は、対象者の職業選択の自由を尊重するものでなければならず、対象者の職歴やその有する知識、技能、経験等のみならず、同人の希望についても考慮した上でなされるべきと考えますが、いかがでしょうか。

(3) 指導指示違反を理由とする保護の停止・廃止について

① 保護の停止・廃止により対象者の衣食住が維持できなくなり、あるいは、必要とする治療や支援を打ち切られる等、その生存が脅かされるおそれがある場合には、指導指示違反(就労指導に限らない)を理由とする保護の停止・廃止をするべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

② 指導指示違反を理由とする保護の停止・廃止が行われた場合、要保護状態が解消されるわけではないため、放置すれば心身の健康を害し、ひいては生命の危機に瀕する蓋然性があることから、福祉事務所は引き続き対象者の生活状況を把握し、必要に応じ職権で保護を再開すべきであると考えますが、いかがでしょうか。

③ 就労指導による保護の停止・廃止の目標値の設定は、個々の事情を無視した、不適切な就労指導を誘発する危険があるため、妥当ではないと考えますが、いかがでしょうか。

第2 本件自殺事件の原因究明について

構造的要因も含めた本件の原因究明のため、下記事項について立川市から事情聴取等を行ない、後日書面でご回答下さい。

1 前提事情
(1) 担当職員の人員体制等について
①配置職員の人数(生活保護担当全体、各係の人数、役職、正規職員と非正規職員の各人数、元警察、職安職員等の人数)
②各職員の経験年数、各職員の担当件数、
③生活福祉課の人事配置の方針、研修体制と研修内容
④上記①~③について改善が必要と考える点

(2) 国の生活保護行政、社会保障行政の姿勢に対する意見
2 本件事件について

(1) 稼働能力の有無・程度について

書面・口頭を問わず、就労指導を行う前の時点における次の各項目の事情をご説明下さい。

① A氏の健康状態、とりわけ精神疾患の有無、既往症、その他疾病の有無をどのようなものとして把握していたのでしょうか。

② A氏を支援した経験のある者によれば、A氏は対人関係を築くことが苦手で、「死にたい」等の発言もみられ、うつ症状と思われる言動が認められたとのことです。担当ケースワーカーはAのこのような言動を確認していなかったのでしょうか。

③ A氏の稼働能力の判断に際して、医療機関受診の促しや、医師の意見聴取等は行なわれていたのでしょうか。

④ A氏の稼働能力の有無・程度の判断に際して、ケース診断会議等の組織的検討が行われていたのでしょうか。

⑤ A氏の稼働能力の有無・程度に関する立川市福祉事務所の認識はいかなるものだったのでしょうか。

(2) 就労指導について

① A氏に対する就労指導(口頭、書面問わず)の時期と具体的な内容はいかなるものだったのでしょうか。
ⅰ 口頭の就労指導は該当部分のケース記録も開示してください。
ⅱ 書面による就労指導は指導指示書も開示して下さい。
② A氏に対する書面による就労指導の内容に関して、ケース診断会議等の組織的検討が行われたのでしょうか。
*ケース診断会議記録も開示して下さい。

(3) 保護停止・廃止処分について

ア 保護停止処分について

① 保護停止処分を行なう前提として、告知聴聞の機会は、いつ、どのようにして付与され、A氏はいかなる弁明を行ったのでしょうか。
*この点に関するケース記録も開示して下さい。
② 保護停止処分を行う前提として、ケース診断会議等の組織的検討は、いつ、誰が参加して行われ、どのような理由で停止の結論に至ったのでしょうか。
*ケース診断会議録に基づいてご説明下さい。同記録も開示して下さい。

イ 保護廃止処分について

① 保護廃止処分を行なう前提として、告知聴聞の機会は、いつ、どのようにして付与され、A氏はいかなる弁明を行ったのでしょうか。
*ケース記録も開示してください。

② 保護廃止処分を行う前提として、ケース診断会議等の組織的検討は、いつ、誰が参加して行われ、どのような理由で廃止の結論に至ったのでしょうか。
*ケース診断会議録も開示して下さい。

③ 保護停止処分から保護廃止処分までの間に、自宅訪問は実施されましたか。

④ 立川市福祉事務所は、保護廃止処分にあたり、廃止後の生活がどのようにして維持されていくものと認識していたのでしょうか。

⑤ 立川市福祉事務所は、保護廃止後、A氏の生活状況を把握するための何らかの措置を講じていたのでしょうか。
以上

***************

【調査団による要請書の文面】

2017年4月11日

要請書

東京都知事 殿
東京都福祉保健局生活福祉部保護課長 殿

立川市生活保護廃止自殺事件調査団
代表 宇都宮 健児
同 後藤 道夫

2015年12月、立川市内で生活保護を受けていた方が、就労指導違反を理由とする生活保護廃止処分を受け、その翌日に自殺する事件が発生しました。二度と同様の事件が繰り返されないよう、立川市福祉事務所を含む都内各福祉事務所を指導監督すべき立場にある貴庁において、全都の福祉事務所で下記事項を実現することを強く求めます。

1. 就労指導、指導違反に対する停止・廃止の在り方について

(1) 就労指導のあり方について

① 就労指導ないし就労による保護廃止数の目標値設定を直ちに中止すること。

② 精神疾患歴がある方やホームレス経験のある方など就労指導の前提となる稼働能力の制限ないし喪失が疑われる場合、稼働能力の有無・程度の判断は、ケースワーカーの独断にまかせることなく、精神疾患や軽度知的障害、発達障害の有無等に関する医師等の専門家の意見を踏まえて、ケース診断会議等の組織的検討の上で行うこと。

③ 就労指導は、形式的・画一的に行うことなく、当該保護利用者の稼働能力、家族の状況等の個別の事情を十分に踏まえて行うこと。

④ 就職活動が芳しくない人については、その原因の把握に努め、精神疾患、依存症、知的障害、あるいは同居家族の状況等、稼働能力を阻害ないし喪失させる事情の存在が疑われる場合には、上記②と同様に稼働能力の有無・程度を改めて把握すること。

⑤ 就労は、経済的な自立のために必要なだけでなく、社会参加や自己実現の機会でもあることを踏まえ、保護利用者の意思を尊重した就労指導を行うこと。また、様々な事情により稼働能力が喪失された場合でも、個人として尊重し、無理のない範囲で社会参加や自己実現を保障すること。

(2) 指導・違反に対する停止・廃止について

① 弁明の機会を付与する際は、形式的な質問と回答確認に留まることなく、十分な時間を確保し、本人の言い分を聴取し、これを記録に残すこと。とりわけ、知的能力の障害や精神疾患等により本人の言い分を独力で説明することに困難が伴う方については、聴取する職員の側において積極的に発問する等して、本人の言い分を丁寧に聴取するよう努めること。

② 保護の停止・廃止は、当該保護利用者の生存を危機的状況に追い込む具体的現実的危険性のあることに鑑み、就労指導違反のみを理由とする保護の停止・廃止は行わないこと。

③ 保護の停止・廃止を行った場合には、その後もその者の最低限度の生活が確保されているかを確認し、要保護状態に陥る場合には、再度の生活保護申請を促し、必要に応じて職権で保護を再開すること

2.保護の実施機関として適切に職務を遂行するための組織・人員体制について

(1) 職員研修の実施について

国民の人権、とりわけ憲法及び生活保護法に基づく国民の生存権保障と社会保障制度の意義を職員が充分に理解するための研修・教育に徹底すること。

(3) 人員体制の充実について

①  社会福祉専門資格有資格者を増員すること。
②  ケースワーカーを増員し、ケースワーカー一人当たり80件を実現すること

以上

関連記事:「生活保護利用者の人権は制限してもよい」の先には、どのような社会があるのか?

衆議院国土交通委員会で参考人招致。住宅セーフティネットの強化を提言しました。

提言・オピニオン

空き家活用型住宅セーフティネット事業の新設を盛り込んだ住宅セーフティネット法改正案の国会審議が始まりました。

この改正法案について、私が世話人を務める「住まいの貧困に取り組むネットワーク」は、「法案の趣旨には賛同するが、不充分な点が多く、一部修正が必要」という意見を表明し、この間、各党の担当者への働きかけを行なってきました。

【関連記事】住宅セーフティネット法改正案は「住まいの貧困」解決の切り札となるのか?

【住まいの貧困に取り組むネットワークブログ】住宅セーフティネット法改正案について各党に要請書を提出しました!

このたび、法案が衆議院国土交通委員会で審議されるのにあたり、参考人として招致されることになりました。

本日4月7日(金)午前9時から、坂庭国晴さん(国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事)、浅見泰司さん(東京大学大学院工学系研究科教授)とともに、参考人として10分間の意見陳述を行ない、その後、各議員からの質疑を受けました。

坂庭さんは、「住まいの貧困」の解消に向けた社会運動を一緒に進めている仲間でもあるので、二人で役割分担を行ない、私は若年の低所得者層の「住まいの貧困」の実情と住宅支援の必要性を中心に発言しました。

委員会の場で配布したパワーポイント資料をもとに、発言の要旨をお知らせします。

 

・1990年代半ばから路上生活者など住まいを失った生活困窮者の相談支援を行なってきたが、活動の中で日本の福祉政策・住宅政策の縦割りの弊害を常に感じてきた。

・ヨーロッパでは「福祉は住宅に始まり、住宅に終わる」と言われてきた。日本でも「居住福祉」の理念に基づく政策が必要とされている。

・2007年に住宅セーフティネット法が施行されたが、生活困窮者支援の現場で、この法律に基づく仕組みはほとんど機能していない。


・2009年に『ハウジングプア』という書籍を出し、世代を越えて「住まいの貧困」が広がっていることを問題提起した。

・「ハウジングプア」とは、「貧困ゆえに居住権が侵害されやすい場所で起居せざるをえない状態」を指し、狭い意味での「ホームレス」だけでなく、ネットカフェや脱法ハウス、派遣会社の寮などにいる人たちも含んでいる。

・「住まいの貧困」の全体像を明らかにする調査を行ない、その上で対策を行なうべきだと提言してきた。

・だが、こうした「住まいの貧困」の全体像に迫る調査は未だ行われていない。

・2007年の厚生労働省による「ネットカフェ難民」調査も一度だけで、しかも対象は「ネットカフェに週3、4日以上寝泊まりしている不安定就労者」に限定されている。

・新たな住宅セーフティネット事業を実施する前提として、「住まいの貧困」の全体像に迫る実態調査は不可欠。国土交通省だけでなく、生活困窮者支援を管轄する厚生労働省と合同で調査を実施するべき。

・定期的に調査を実施することで、住宅セーフティネット事業の効果測定も可能になる。


・行政が調査をしないので、民間で実施した調査として「若者の住宅問題」調査がある。

・首都圏・関西圏の低所得の若者を対象に住宅状況を聞いたところ、全体の6.6%がネットカフェ生活や友人宅での居候など「広い意味でのホームレス」を経験していることが判明。親と別居して、自分でアパートやマンションなどを確保している層では、13.5%が「ホームレス経験あり」と回答した。


・同じ調査では、結婚に関する意向も質問したが、約7割が結婚に消極的・悲観的な回答。住まいの確保もままならない中、将来の見通しが立たない若者が多いと見られる。これは日本社会の持続可能性が危機にさらされていると言っていい状況。

・先日発表された国立社会保障・人口問題研究所の調査でも「生涯未婚率」が過去最高(男性約23%、女性約14%)になっていたが、その背景には住宅問題もある。

・欧米では家族政策、少子化対策として、若年層への住宅支援が行なわれており、日本でも若年単身者に対して低家賃の住宅を供給する政策が必要。


・厚生労働省は2015年度より生活困窮者自立支援制度を新設し、その中には住宅支援のメニューもあるが、実績は右肩下がり。その背景には、事業の使い勝手が悪く、住宅政策を管轄する国土交通省との連携が進んでいないという問題がある。


・世代を越えて広がる「住まいの貧困」を解消するためには、貧困対策としての住宅政策が必要である。


・その観点から住宅セーフティネット法改正案を見ると、不充分な点がいくつかある。

・特に家賃低廉化措置が法の条文に盛り込まれず、予算措置にとどまっているという問題は大きい。2017年度に家賃低廉化にあてられる予算は約3億円と聞いているが、これだと家賃が下がるのは2500戸程度(登録住宅全体の約1割)にとどまり、「住宅セーフティネット」と呼べる規模にならないのではないかと懸念している。

・若年層への住宅支援がどこまで進むのかも疑問であり、家賃保証会社が「追い出し屋」化しているという問題もある。

・また支援対象となる「被災者」の定義が災害発生3年以内に限定されているのも問題である。

・改正法の趣旨には賛成だが、これらの点の修正を求めていきたい。

 

参考人による意見陳述と質疑が終了した後、委員による質疑が行われ、住宅セーフティネット法改正案は全会一致で可決されました。
法案が修正されなかったのは残念ですが、私たちの懸念している点を踏まえた附帯決議も全会一致で採決されました。

************

衆議院国土交通委員会:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

一 本法による住宅セーフティネット機能の強化とあわせ、公営住宅をはじめとする公的賃貸住宅政策についても、引き続き着実な推進に努めること。

二 低額所得者の入居負担軽減を図るため、政府は必要な支援措置を講ずること。

三 高齢者、低額所得者、ホームレス、子育て世帯等の住宅確保要配慮者について、入居が拒まれている理由など各々の特性に十分配慮した対策を講ずること。

四 住宅確保要配慮者が違法な取立て行為や追い出し行為等にあわないよう、政府は適正な家賃債務保証業者の利用に向けた措置を速やかに講ずること。

五 住宅セーフティネット機能の強化のためには、地方公共団体の住宅部局及び福祉部局の取組と連携の強化が不可欠であることから、政府はそのために必要な支援措置を講ずること。

六 災害が発生した日から起算して三年を経過した被災者についても、必要が認められるときには、住宅確保要配慮者として支援措置を講ずること。

************

今後、議論は参議院に移っていきますが、住宅セーフティネット機能の強化に向けて、さらに議論が深まることを願っています。

※附帯決議の文面を追加しました(4月7日14:37)

5月3日(水・祝)LGBT×貧困 ~性的マイノリティが遭遇する困難・ピアサポートの可能性

講演・イベント告知

https://sites.google.com/site/lgbtcath/symposium

LGBT×貧困 ~性的マイノリティが遭遇する困難・ピアサポートの可能性

【主催】カラフル@はーと・東京大学教養教育高度化機構
【開催日時】2017年5月3日(水・祝)13:30~17:00
【会場】21 KOMCEE East B1階 K011 

京王井の頭線「駒場東大前」すぐ。東京大学駒場キャンパス内。

キャンパスマップはこちら。

ビジネスや人材という側面で活躍するLGBTたちは、メディア等で多く目にするようになりました。かたや、LGBTならではの困難から、さまざまな排除にあい孤立し『貧困』といわれる状態におちいる当事者たちも実は少なくありません。

LGBTたちが遭遇する貧困とは?基礎的な知識や実際の事例等から学び、社会制度はもちろん当事者同士のサポートがどのように貧困をサバイバルする力となるのか、支援経験豊富なゲストと、LGBT当事者・そのまわりの人たちがともに考えます。

ゲスト
稲葉剛さん(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院特任准教授)
大江千束さん(LOUD代表・パートナー法ネット共同代表)
生島嗣さん(NPO法人ぷれいす東京代表)

手話通訳(日本手話)付き
資料代:500円
学生・各種福祉制度ご利用の方:300円
*学生証・障がい者手帳(精神・身体・愛の手帳)、自立支援医療受給者証提示で資料代300円となります

4 月22日(土)奨学金問題から考える 「若者の貧困」

講演・イベント告知

http://www.tokyocitizens.com/shogakukinsyukai2017.pdf

奨学金問題対策全国会議 設立4周年集会
奨学金問題から考える 「若者の貧困」

奨学金という名の多額の借金を背負ってマイナスからのスタートを余儀なくされ、結婚や出産、親元からの独立など大切な人生の選択肢を奪われる若者。在学中から、生活費と学費を稼ぐためにアルバイト漬けの生活を強いられ、学業に大きな支障を来す大学生など。奨学金問題への取り組みから見えてきたのは、以前とは比べものにならない、若者を取り巻く状況の厳しさでした。国は、本年度から、給付型奨学金の導入、貸与型奨学金の無利子化、所得連動返還型奨学金制度など、様々な改革を打ち出しましたが、現在の若者の深刻な窮状に照らせば、改革はまだ第一歩に過ぎません。

本シンポジウムでは、長年、生活困窮者の支援活動を続けてこられた稲葉剛氏からお話を頂く、とても貴重な機会を得ました。支援の現場から見た若者の貧困の生の姿、日本社会における自立の困難さなどを正しく知り、共に考え、当事者の目線を大切に、現状を打開する道を皆で探りたいと思います。

「奨学金が日本を滅ぼす」(朝日新書)、「奨学金地獄」(小学館新書)という話題の新刊本を著した当会議のメンバーによる対談や、若い皆さんの報告、当事者の方のメッセージ、貴重な活動報告など、盛りだくさんの内容ですので、ふるってご参加下さい

日時:2017年4月22日(土)12時10分~14時40分(開場11時50分)
基調講演:稲葉剛さん(つくろい東京ファンド代表理事)
場所:弘済会館4階 菊・梅(西)
東京都千代田区麹町5-1 アクセスマップはこちら。
電話 03-5276-0333
JRまたは東京メトロ丸ノ内線四谷駅から徒歩5分

資料代 一般:無料、弁護士・司法書士:2000円

主催:奨学金問題対策全国会議
〒113-0033 東京都文京区本郷2-13-10 湯淺ビル7階 東京市民法律事務所内
電話 03(5802)7015 Fax 03(5802)7016 事務局長 弁護士 岩重佳治

1 2 >