鵺がつないだアートと小説~武盾一郎さん×星野智幸さんのコラボが完成!

日々のできごと

作家の星野智幸さんの自選作品集(人文書院・全4巻)の刊行が始まりました。現在、第1巻、第2巻が刊行されています。

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星野さんはホームレスサッカー「野武士ジャパン」の応援団や「路上文学賞」の選考委員を務めるなど、ホームレス支援の活動にも深く関わっていらっしゃり、私も大変お世話になっています。

星野さんの小説は、日本社会の闇の部分が投影されたものが多く、昨年刊行された『呪文』には、打ちのめされるほどの衝撃を受けました。その一方で、『夜は終わらない』(2014年)では、「読み終わりたくない」と思わせるほど、想像力あふれる世界を描いていらっしゃいます。

その星野さんの選集の装画を担当したのが、画家の武盾一郎さんです。武さんは、1990年代半ばに新宿の路上生活者コミュニティ「新宿ダンボール村」でダンボール絵画を制作していたことで知られています。

新宿西口地下道 段ボールハウス絵画集

その縁もあり、昨年刊行された私のエッセイ集『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』で、「鵺(ぬえ)」をモチーフにした装画を描いていただきました。

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昨年2月に開催された『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』の出版記念イベントでは、座談会の参加者として星野さんにお越しいただき、武さんにもスピーチをしていただきました。その場で、『新宿鵺』の原画を披露していただきました。

出版記念会の座談会 右から吉水岳彦さん、星野智幸さん、私、司会の小林多美子さん 撮影:吉田敬三

出版記念会の座談会 右から吉水岳彦さん、星野智幸さん、私、司会の小林多美子さん 撮影:吉田敬三

座談会の動画はこちらでご覧になれます。

動画で見る『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』出版を祝う会 

武盾一郎さんと『新宿鵺』原画 撮影:吉田敬三

武盾一郎さんと『新宿鵺』原画 撮影:吉田敬三

武さんの『新宿鵺』に感銘を受けた星野さんが、ご自身の選集を出版するにあたり、武さんに装画制作を依頼し、全4巻の選集の全ての表紙を武さんが担当することになりました。

拙著がきっかけとなり、武さんのアートと星野さんの小説が結びついたのは、不思議な縁を感じます。私自身は特に何もしていないのですが、嬉しい限りです。

ぜひ星野さんの選集を手に取っていただき、小説の世界とアートの世界の融合を楽しんでいただければと願っています。

 

【2016年9月23日】 「低所得者に住宅 自立支援」 ハウジングファーストの紹介記事が毎日新聞に掲載

メディア掲載 日々のできごと

2016年9月23日付け毎日新聞朝刊の「くらしナビ・ライフスタイル」欄に、「低所得者に住宅 自立支援」という記事が掲載されました。

稲葉が代表を務める一般社団法人つくろい東京ファンドの活動とクラウドファンディングが紹介されています。

 

http://mainichi.jp/articles/20160923/ddm/013/100/005000c

 低所得者に住宅 自立支援

生活困窮者や路上生活者のために住まいを確保しようという動きが進んでいる。民間団体がアパートを借り上げて困窮者に提供する「ハウジングファースト」活動を実施。国も低所得者らのセーフティーネットとして空き家を活用できないか検討中だ。

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●路上生活戻る例も

従来は施設や病院への収容が中心だったが、相部屋で人間関係がうまくいかなかったり、結局、路上生活に戻ったりする例が出ていた。ハウジングファーストでは、まず安定した住まいを提供したうえで、医療や福祉の専門家が支えていく。1990年代に米国で始まり、欧州にも広がった。しかし、住宅購入を促進する「持ち家政策」がとられてきた日本では、低所得者向けの賃貸住宅が少なく、公営住宅の倍率も高いため、住まいの対策はなかなか進んでいなかった。

このため、生活困窮者の支援団体が中心となって2014年に「一般社団法人つくろい東京ファンド」(稲葉剛代表理事)を設立。東京都中野区のアパートを借りて、路上生活者やネットカフェ難民らを支援する個室シェルターを開設した。一時的に住宅を提供し、自立へとつなげる。これまで約60人が利用したほか、新宿区や墨田区などにも施設を設置した。

●仕事探しにも利点

中野区のシェルターで暮らす派遣社員の男性(42)は、仕事が切れたためシェアハウスの家賃が払えなくなり、追い出されてシェルターを利用。その後、東京都の自立支援センターに移り、一度はアパートに入ったが、再び職がなくなり、ネットカフェ難民となったあと戻ってきた。男性は「雨露をしのげ、屋根があるところに暮らせるかどうかで天国か地獄になる。仕事探しのうえでも住所があるのは大きい」と話す。さらに、施設の集団生活でない点について「自分の好きな時間に風呂に入れたり、食事を作れたりすることも大きい」と歓迎する。

この活動の延長線上で、豊島区ではアパートを丸ごと借り上げた「ハウジングファースト東京プロジェクト」が始まっている。契約時に必要となる敷金・礼金などの資金をインターネットで募るクラウドファンディングを9月末まで続行中。稲葉さんは「低収入で自分の家は夢のまた夢という人が増えている。ネットカフェや路上と施設を行き来させるのでなく、住宅のセーフティーネットが必要だ」と訴える。市民団体「住宅政策提案・検討委員会」の14年の調査では、年収200万円未満の20〜30代の若者の77・4%が親との同居を余儀なくされている。独立して住居費を払うのは困難だからだ。今後、親の高齢化が進めば、老朽化した住宅の修繕も難しくなり、相続税が払えず手放さざるを得ないケースが多発すると予想される。

●空き家の活用検討

一方、国土交通省の「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」は、低所得の高齢者についても、賃貸住宅の大家が家賃滞納や孤独死のリスクから入居を拒むケースがあると指摘。さらに、生活保護受給世帯を著しく狭い住宅に住まわせて不当な利益を得る「貧困ビジネス」の存在も問題視している。

検討会では、公営住宅は建て替え優先で大幅な増加が見込めない一方、民間の賃貸住宅も供給が進んでいないと分析。空き家や民間賃貸住宅を活用した住宅セーフティーネットの強化策を議論した。今後は住宅情報を都道府県または市町村に登録する仕組みを作り、家賃負担が困難な世帯には比較的低家賃が期待できる空き家の活用を促す。住宅改修や家賃の低廉化のために、地域の実情に応じて自治体が支援する仕組みも作れるようにする。

9月5日には国会内でシンポジウムが開かれ、低所得者対策に取り組んでいる韓国・ソウル市住宅供給公社の担当者も参加した。ソウル市では住宅費補助のほか、団地内の作業場を活用した雇用創出にも取り組んでいるという。担当者は「仕事がないと家賃が払えないので自分たちで働いて住めるようにしている」と説明した。ミニ図書館をベースにしたコミュニティー作りもしているという。住宅を確保した後に、どのような支援ができるかは、日本でも課題になりそうだ。【柴沼均】

 

※ハウジングファーストの実現をめざすクラウドファンディングは、9月30日までおこなっています。引き続き、ご協力をお願いいたします。詳細は下記をクリックしてください。

路上からアパートへ!東京・池袋でハウジングファーストを実現したい! – クラウドファンディング MotionGallery(モーションギャラリー)

 

関連記事:【2016年8月29日】 「路上生活者に『まず住まいを』」 ハウジングファーストの紹介記事が東京新聞に掲載

関連記事:「空き家活用+家賃補助」の新たな住宅セーフティネット整備へ! 

【2016年8月24日&28日】 つくろい東京ファンドの活動を紹介した記事がハフィントンポストに掲載

メディア掲載

稲葉が代表を務める一般社団法人つくろい東京ファンドの活動を紹介した記事が2本続けて、ハフィントンポストに掲載されました。

記事を書いてくださった松岡宗嗣さん、望月優大さん、ありがとうございました。

下記をそれぞれクリックしてください。

空き家で貧困を解決する!?「ハウジングファースト」とは(松岡宗嗣)

情報発信主体としてのNPOのポテンシャル(望月優大)

 

関連記事:「路上生活者に『まず住まいを』」 ハウジングファーストの紹介記事が東京新聞に掲載

 

 

生活保護引下げ違憲 東京国賠訴訟が進行中!9月26日(月)の口頭弁論を聴きに行こう!

提言・オピニオン

私も応援している生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟の第2回口頭弁論期日が、9月26日(月)14時より東京地裁103号法廷で開かれます。

5月16日の第1回口頭弁論では、大法廷の傍聴席が満席になり、訴状と答弁書の陳述、松野靖・原告団共同代表と宇都宮健児弁護団長それぞれによる意見陳述などが行われました。

写真は報告集会で発言する宇都宮弁護団長です。報告集会では、私も「支える会」(準備会)の呼びかけ人として発言を行ないました。

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第2回の口頭弁論もみんなで参加して、傍聴席をまたいっぱいにしましょう!

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以下は弁護団のブログからの引用です。

【お願い】
生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟(はっさく訴訟)の第2回口頭弁論期日が2016年9月26日(月曜)午後2時から、東京地裁1階の103号法廷で開かれます。
原告のみなさんは、東京都内の生活保護受給者31世帯33人です。障害を抱えている方も多いです。
2013年8月1日以降3回にわたって実施された生活保護基準の引下げは、憲法25条に違反する違憲・違法のものであるとして、国などに対し、国家賠償と保護費減額の取消しを求めています。
今回の法廷では、原告の1人が裁判に向けた思いを語る意見陳述等を行う予定です。
憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」の切り下げを絶対に許さないためにも、ぜひ傍聴に来ていただきたいと思います。

閉廷後、午後2時30分ころから、裁判所近くの日比谷図書文化館(日比谷公園内)で報告集会も予定しています。
こちらにもご参加をお願いします。

関連記事:生活保護基準引下げは違憲!東京国賠訴訟がスタートします! 

 

新著『貧困の現場から社会を変える』が刊行されました!

日々のできごと 書評・関連書籍

稲葉剛の新著『貧困の現場から社会を変える』が刊行されました。

ブラック企業対策プロジェクト主催の連続講演会(全6回)の講演録をもとに、大幅に加筆・修正して完成させました。私自身がこの二十余年の間に行なってきた生活困窮者支援の活動を紹介しながら、「生活保護」、「バッシングと差別」、「住まいの貧困」、「自立支援」といったテーマについて考察しています。

最終章では、『下流老人』(朝日新書)の著者であり、NPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典さんとの対談が収録されています。

「国内の貧困問題について学びたい」という方、「自分も何かアクションを起こしてみたい」という方に、ぜひ読んでいただければと思います。ご協力ください!


 

POSSE叢書

貧困の現場から社会を変える
稲葉剛(著/文)
発行:堀之内出版

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176頁  並製
価格 1,800円+税

ISBN 978-4-906708-61-1 C0036

発売日 2016年9月15日

 

【紹介】

政治だけじゃない。
貧困が広がる社会を、私たち自身が変えることができる。

下流老人、貧困女子……。一億総中流社会の崩壊がより深刻な今、貧困問題はだれにとっても人ごとではありません。ではどのようにしたら、そうした問題を解決したり、未然に防いだりすることができるのでしょうか。長く貧困問題の現場に関わり、さまざまな提言や制度改革に取り組んできた著者が記す、貧困社会を変える希望の1冊。用語解説もつき、中学生くらいからでもよみやすく、わかりやすい内容です。

【目次】

第1章 私が取り組んできた生活困窮者支援
第2章 権利としての生活保護
第3章 バッシングと差別
第4章 拡大する住まいの貧困
第5章 自立支援を問う
第6章 対談・藤田孝典×稲葉剛

【著者プロフィール】

稲葉剛(イナバツヨシ)

1969年広島県生まれ。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事。著書に『鵺(ぬえ)の鳴く夜を正しく恐れるために―野宿の人びととともに歩んだ20年』(エディマン、2014年)、『生活保護から考える』(岩波新書、2013年)、『ハウジングプア』(山吹書店、2009年)など。

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