生活が苦しいなら声をあげよう!~「家賃下げろデモ@新宿」スピーチ
今年6月12日、若者を中心とした「Call For Housing Democracy」主催による「家賃下げろデモ@新宿」が開催され、私も参加しました。
約120人が「住宅手当で家賃を下げろ!」、「最賃上げて、家賃を下げろ!」等と声をあげながら、新宿の街をデモ行進しました。
このデモの様子は、雨宮処凛さんのコラムや賃貸住宅業界の専門誌、ジャパンタイムズなど様々なメディアで取り上げられました。
マガジン9「雨宮処凛がゆく!」:「家賃を下げろデモ!~住宅問題でも声を上げ始めた若者たち〜の巻」
全国賃貸住宅新聞:新宿で学生ら120人がデモ 「住宅手当で家賃負担を下げろ」
The Japan Times:A rise in vacancies won’t mean drops in rent
デモの様子は秋山理央さん撮影の動画でも見ることができます。
秋山理央・動画(YouTube):家賃下げろデモ – 2016.6.12 新宿
「Call For Housing Democracy」のtumblr に、デモの中で私が行なったスピーチの内容がアップされたので、以下に転載します。
現在行われている東京都知事選挙でも、深刻化する住まいの貧困への対応が議論されることを願っています。
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住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人の稲葉剛です。
今から20年前、ここ新宿で、新宿段ボール村というホームレスの人たちのコミュニティが強制排除されるという事件がありました。当時はバブル経済が崩壊した後で、日雇い労働者の人たちが仕事がなくなって、路上生活に追い込まれ、新宿の西口で、段ボールハウスを作って、たくさん暮らしていました。そこを東京都が強制的に排除したわけですが、そのとき、野宿の人たちは、デモを行い、座り込みを行って、自らの居住権を守るために闘いました。
しかし、残念ながら、私もその現場にいたのですが、多くの人たちの反応というのは非常に冷たかった。仕事がなくなって住まいを失って、ホームレスになる。そして路上からも追い出されてしまう。そうしたことが、自分の身にも起こるとは、当時はほとんどの人が思っていませんでした。
しかし、その後20年間、私たちの社会はどうなってしまったでしょうか。私は、この20年間ずっと、住まいを失った人たちの相談支援を行ってきましたが、10年ちょっとくらい前から、20代・30代の若い人たちの相談に乗ることが多くなってきました。私たちのNPOには、ワーキングプアで、あるいは仕事がなくなって住まいを維持できなくなり、ネットカフェに暮らしていたり、あるいは友だちのうちを転々としている、広い意味でのホームレス状態にある方が、次々と相談に来るという状況がなっています。
2年前、NPO法人ビッグイシュー基金が調べたアンケート調査では、20代・30代のワーキングプアの若者、親と別居しているワーキングプアの若者の実に13.5%が、広い意味でのホームレス状態を経験している。路上生活、ネットカフェ、友人宅での居候など、安定した住まいを失った経験があると答えています。13.5%です。7人・8人に1人の若者たちが、自分の住まいを確保することすらできず、この都会の中で、おそらくこの新宿のまちでも、漂流しながら不安定な生活を送らざるをえない、そういう状況が広がっています。
みなさん、新宿を歩いていらっしゃるみなさんも、家に住んでいると思います。賃貸住宅で暮らしている方も多いと思います。みなさんの家賃はいかがですか。みなさんの家賃、おいくらですか。みなさんの家賃を、みなさんの月の収入で割ると、どれくらいの割合になりますか。例えば、20万円の月給で暮らしている人が、6万円の家賃で暮らしている。これはもう30%を家賃で費やしているということになります。非常に苦しい生活です。
しかし、国の統計では、いま単身で賃貸住宅に暮らしている人の、家計支出の3割が家賃に費やされている。家賃のために働かざるをえないような状況が広がっているんです。しかもこれは全国の統計ですから、東京ではおそらく、3割どころか4割、人によっては5割を家賃に費やさざるをえない。そんな状況が広がっています。
かつてはごく一部の日雇い労働者の人たちの問題であった住宅喪失という問題、ホームレス化という問題が、今や、若い人たちにまで広がってしまっている。今ここの道を歩いている、デモ参加者だけでなく、沿道歩いているみなさんにいつ起こってもおかしくない、住まい喪失・住居喪失という問題が、現にあるということを私たちは見なければなりません。
私は思います。家賃の負担が苦しいなら声を挙げればいいんです。賃金が低くて困っているんなら、声を挙げればいいんです。奨学金の返済に困っているなら、声を挙げればいいんですよ。声を挙げないから、我慢しなくちゃいけないから、そういうふうに思いこんでいるから、変な方向にエネルギーが向かってしまう。
なにか、自分の隣にいる人がいい思いをしているんじゃないか、ねたんでしまうような気持が生まれてしまうんです。自分の権利のために声を挙げないから、生活保護の人がなにか楽をしているんじゃないかというふうにデマを信じてしまったり、在日の人たちが特権があるんじゃないかと妄想にとりつかれたり、そんな輩が出てくるんですよ。だから、みなさん、自分のために、自分の生活や自分の権利のために声を挙げましょう。
一か月後には選挙が迫っています。参議院選挙、この選挙は、私たちが、私たちの生活のために、私たちの権利のために、声を挙げる、そのための機会です。このチャンスを失ってしまえば、私たちはもう、ずっと耐え忍んで、黙らされてしまうかもしれない。
家賃の負担がつらい、声を挙げましょう。家賃を下げろと声を挙げましょう。給料が低い、困っている、給料上げろと声を出しましょうよ。奨学金の返済に困っている、保育園が見つからない、日々の生活どうしたらいいか分からない。そういう人たちが今やマジョリティなんですよ。マジョリティの私たちが声を挙げて、この社会を、この政治を変えていきましょう。
2016年7月24日