空き家を準公営住宅に!パブコメを出して住宅政策を転換させよう!
今年1月22日、国土交通省は今後の住宅政策の方向性を示す住生活基本計画(全国計画)の見直し案を発表しました。
新たな計画案の最も大きな柱は、既存の住宅ストックの利活用推進です。年々、増加の一途をたどっている全国の空き家は、年には戸数で約820万戸、割合で総住宅数の13.5%を占めるまでに至っており、各地で深刻な社会問題となっています。
私たち、「住まいの貧困」に取り組むNPO関係者や研究者は、こうした空き家を住宅の確保に苦しむ低所得者への居住支援に活用できないかと、様々な形で提言活動を行なってきました。
空き家率同様、上がってほしくないのに上がり続けているのが日本の相対的貧困率です。「空き家を活用した低所得者支援」は、私たちの社会が抱える二大問題を一石二鳥で解決する方策だと言えます。
こうした問題意識に基づき、昨年5月にも、『市民が考える!若者の住宅問題&空き家活用』というシンポジウム(主催:NPO法人ビッグイシュー基金)が開催されました。このシンポジウムの報告書は下記のページでダウンロードできます。
NPO法人ビッグイシュー基金:「若者の住宅問題&空き家活用」シンポ報告書が完成しました
また、一昨年、私が立ち上げた一般社団法人つくろい東京ファンドは、まさにこうした問題意識から民間の資金で「空き家を活用した低所得者への居住支援」を実施することを目的とした事業体であり、民間の物件オーナーの協力を得ながら、都内に複数のシェルターや若者向けシェアハウスを開設してきました。
民間のレベルで空き家活用事業を形にして見せることで、腰が重い行政に発破をかけようと思ったのです。
空き家を「準公営住宅」に!ついに国が動いた!
そうした私たちの動きに刺激されたのかどうかはわかりませんが、今回の計画案には住宅セーフティネット機能を強化するために「民間賃貸住宅を活用した新たな仕組み」を構築する、という文言が盛り込まれました。
また報道によると、国土交通省は耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を「準公営住宅」に指定し、子育て世帯や高齢者等などに貸し出す仕組みを検討しているとのことです。今後、詳細を詰めて、来年の通常国会にはそのための法案を提出する予定だということです。
日本経済新聞:空き家を「準公営住宅」に 国交省、子育て世帯支援
ようやく国のレベルで、空き家を低所得者支援に活用する動きが出てきたことは歓迎したいのですが、この「準公営住宅」構想は住生活基本計画の見直し案にはっきりと書かれているわけではありません。
せっかく出てきた構想が尻すぼみにならないように、住生活基本計画にきちんと書きこませることが重要だと私は考えています。
住生活基本計画の見直し案は、2月12日までパブリックコメントを受け付けているので、ぜひ多くの方に意見を寄せていただければと思います。
パブコメの出し方については下記のリンク先をご覧ください。
「住生活基本計画(全国計画)の変更(案)」に関する意見の募集について
基本計画の見直しにおいて、私が重要だと思うポイントは、以下のとおりです。
・一定の基準を満たす空き家を「準公営住宅」として位置付けることを計画に明記する。
・「準公営住宅」の対象は、子育て世帯や高齢者だけでなく、若年単身者なども含めた低所得者全般とする。
・「準公営住宅」が従来の「公営住宅」とあわせて住宅セーフティネットの役割を果たせるように大量に供給できる体制をつくる。従来の「公営住宅」も削減をせず、特に抽選倍率の高い都市部では戸数を増やす。
・「希望出生率1.8 の実現につなげる」ことを住宅政策の目標に掲げるのは、個人のライフスタイルへの干渉になりかねず、不適切。「三世代同居・近居の促進」も削除すべき。
まだまだ楽観はできない。パブコメで後押しを!
空き家を活用した「準公営住宅」が大規模に実施されれば、戦後の住宅政策の大転換とも言える事業になるでしょう。
その一方で、これまで国土交通省が作ってきた住宅セーフティネットがあまりに貧弱であった、という「実績」を踏まえると、楽観ばかりできないと私は考えています。
最悪のシナリオは、「準公営住宅」という仕組みを作ったものの、実際にはほとんど整備されず、「新しい制度ができたから」ということが口実になり、従来の公営住宅の戸数が削減される、という結果になることです。
そのため、ぜひ多くの方にパブリックコメントを出していただき、「空き家を準公営住宅に!」という声をあげていただければと思っています。
住宅政策の大転換を実現させるためにご協力をお願いします!
2016年2月2日